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平成26年度「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(豊中市)

平成26年度に実施した内容及び成果と課題【実施団体 豊中市教育委員会】

1.事業の実施体制
2.具体の取組内容
3.成果と課題
4.その他(今後の取組等)

【1運営協議会・連絡協議会の実施】
【4「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた協議会の実施】
(1)国際教育推進

 

 国際教育推進


(内容)
協議会を3回開催した。それぞれの回では、特別の教育課程実施に向けた調査・研究のために協議する場を国際教育推進協議会の実務担当者会として設け、DLA実施に向けて今年度の豊中市国際教育研究テーマの一つとしてDLA実践と教職員向けDLA研修を実施することを盛り込むこと、義務教育諸学校における日本語指導の新たな体制整備とDLAの資料を紹介し、DLAの目的と実施結果からの学校における日本語指導の取り組み体制について説明を行った。また、実施したDLAの報告を映像資料とともに説明などを行った。
(成果)
今年度は、「特別の教育課程」とDLAを進めることを確認し、特に日本語指導対応教員の加配措置を受けている学校については、取組を先導する役割があることを確認した。DLAについては昨年度より多い3人の児童に対して実施することができたので、この経験を生かした取組を計画していきたい。また、「特別の教育課程」は文部科学省からの通達やHPの情報を提供した上で、市として研究をスタートさせることを共通確認した。
(課題)
豊中市独自で進めていた日本語指導の必要な児童生徒の実態調査(気づきのチェックシート)については、DLAとの関連や個人情報保護条例をどのようにクリアさせるか等が大きな課題となっている。
このような課題があることを受け、次年度はより子供の課題に向き合う現場教員の資質向上に向け、これまで大阪・豊中で取り組まれてきた「違いを豊かさ」につなげる在日外国人教育の視点を踏まえた取組が必要である。これとともに、教育委員会としては「特別の教育課程」編成の教育委員会提出書類や校内書類についての検討を始め、より学校現場で使いやすく児童生徒のためになるものにしてきたい。

(2)実務担当者会議(日本語指導)
(内容)
会議を2回開催した。チャート図を利用しDLA実施に向けた調査の流れの説明を行った。また、特別の教育課程編成・実施計画、個別の指導計画、DLA実施の際に使用するカードやテキストを提示し取組に向けた検討を行った。
(成果)
「特別の教育課程」について、法改正を踏まえ丁寧に説明し各委員から一定の理解を得た。「特別の教育課程」実施に関しては、日本語習得を含めた児童生徒理解が不可欠であることから教職員の資質向上につながるツールが必要であることを確認した。一定、DLAの有用性を共通理解した上で、そのスキル面向上に向けた課題について検討した。

(課題)
調査は学校が主体となって実施する必要があり手順や方法などを細かく決めていく必要が今後の課題。DLAをどの学校でも実施できるまでには様々な調整・課題解決を必要とするためスピード感を持って取り組めるよう来年度は組織を編成して取り組んでいきたい。

(3)こどもにほんごプロジェクト企画会議
(内容)
会議を3回開催した。今年度の運営目標や来年度の総括に向けての話合いを行った。
(成果)
公益財団法人とよなか国際交流協会が主体として実施していた「にほんご教室」を官民協働事業として位置づけし、企画会議を通じて協働体制を構築しながら実施できたことは大きな意義があると考える。
本企画会議を通じてそれぞれの課題や成果を共有することができ、それぞれの長所と短所が明確になるとともに、お互いの短所を補いながら事業を進めることができたのも企画会議を定期的に運営してきた成果だと考える。また、企画会議では、市広報誌に指導者養成講座募集案内を掲載したり、学校園と交流会を実施したりするなど積極的な提案がなされた。
(課題)
企画会議では協働体制を構築する者のそれぞれの立場や意見にまだまだ解決すべき溝があることも確認した。今後は協働体制の構築のための会議から脱却し、指導ノウハウを蓄積したり、それらを内部に留保したりするだけではなく、積極的に外部へ広げ、指導方法を始め、事業の在り方を検証するための企画会議に変えていくことが望ましいと考える。

(4)意見交流会(こどもにほんご教室)
(内容)
〇連絡会
毎月1回のペース(9回)で、こどもにほんご教室へ通室している子供や本市に編入した帰国渡日の子供について相互に交流する場とした。
〇日本語指導の必要な子供に関わる情報交換会 
教職員(希望者)、とよなかJSL、とよなか国際交流協会、教育委員事務局が参加して、こどもにほんご教室での児童生徒の様子と、学校生活の中での児童生徒情報について情報交換会を行った。
(成果)
定期的に交流会を開催することで以前にも増し支援対象者の様子を知ることができ、支援者との意見交流も進めることができた。また、情報共有も進み、トラブルなどに連携して対応することができた。
日本語指導を必要とする対象者が在籍する学級担任との意見交流会では、学校からの積極的な参加が多くあり、意見交流も活発で充実したものとなった。指導者にとってはこどもにほんご教室では見られない学校での様子を知ることができ、より一層学校生活につながる指導内容を模索できるきっかけとなった。また、教職員にとっては他の学校の児童生徒の様子や取組を知ることで、今後の対応の参考となった。日本語の習得過程や様々なトラブル事例を知ることができ、その知識を生かした対応が期待できる。
(課題)
情報交換会では、今回以上に活発な交流ができるよう席の配置方法など細かな修正を行いたい。

 

【2初期指導教室やセンター校等の設置】
(1)プレクラス

 

プレクラス

 

(内容)
編入時の保護者に対し学校についての説明や書類の書き方、持ち物の説明など通訳者をとおして行った。また、子供へは持ち物や学校生活についての説明補助を行った。
(成果)
保護者には体操服や給食エプロンが購入できる販売店まで教員と通訳者が案内することで学校の準備物を早めにそろえることができるなど丁寧な対応ができた。
初めて日本の学校に通う子供にとって通訳者が側(そば)で対応してくれることが心の支えになっており大変不安な様子だった子供にも笑顔が戻る様子が見受けられた。
(課題)
受入れ時の保護者への支援なのか、子供に対しての支援なのかあやふやだった。また、プレクラスとして十分な準備が整わなかったため学校にもプレクラスとしてのアピールがうまくできず、通常の通訳派遣と混同するような形になった。プレクラスをどのように生かしていくのか今年度中に内容を検討し、来年度からは通訳派遣とプレクラスを明確にわけて事業が実施できるよう取り組んでいきたい。


(2)こどもにほんご教室

 

こどもにほんご教室   

(内容)
日本語の支援を必要とする子供を対象に日本語指導を行った。
日本語指導者の養成講座を行った。
(成果)
市内広域より通級する参加者同士のつながりができ、教室に通うことを楽しみにしている子供も多かった。獲得した日本語能力は学校生活上の「積極的な態度」となって、クラスにおいての交友関係にも広がりをみせるようになった。日本語力の上達に伴う児童生徒の変化は学校関係者にも伝わり、学校教育において日本語指導の重要性が再度認識されつつある。
指導者養成講座参加者から今後指導者として活動してもらえる方が増えた。
(課題)
子供の日本語のレベルが多岐にわたり、指導力のある人材の確保・育成の難しさから、学習者の一人一人の要望に応えることが難しい。
低学年は保護者の同伴での通室になるため、遠い学校からの参加が難しい実情があり、毎回参加することに難色を示す保護者もいる。
本事業は3年間の年限を設けたプロジェクトであったが、いまだ多くの対象者が日本語指導を必要としている状況を鑑み現運営体制のままで来年度まで事業を継続することとなった。しかし来年度は総括年として今後事業の一定の方向性をまとめていく。以降の教室運営に向け、豊中市の実状を踏まえた日本語指導、日本語教室の在り方について本格的な協議を実施していく。

【3日本語能力測定方法の活用】


【3日本語能力測定方法の活用】
   
(内容)
3人の児童にDLA(はじめの一歩(導入会話、語彙力チェック)と話す(基本タスク、対話タスク))を行った。
(成果)
第1回、2回は教育委員会事務局が実施した。第3回は学校が主体となり実施できたことは大きな進歩だった。学校が主体となり実施するに当たり、教育委員会事務局より教職員研修を実施し、学校全体での合意とDLAに関する目的や手法・方法などを共有した。
教育委員会事務局と学校とが連携を取りながら、必要と思われる児童に対しDLAを実施していく方向性の確認がとれた意義も大きい。今後市内全域に広げていく上で、DLA実施ノウハウを蓄積する拠点となることが期待される。
今までの日本語指導は指導者の経験とノウハウを持って主観的に実施されてきたが、DLA考察後のビデオを複数で見直すことで、単語力偏りや現在・過去形などの時制の不一致など、日本語のどの部分の支援が必要なのか見つけ出すことができた。
(課題)
DLA実施から見つかった日本語力の課題に対してどのようなアプローチで、次への指導につなげていくか。個別児童ごとのカリキュラム作成や、指導・支援者の配置、対象校の校内体制整備や教材の確保、指導者の指導力の底上げなどが今後の重点的な課題となろう。
市内全域においてDLAを実施するに当たり、校内体制も含め積極的に実施を期待できる学校と、校内体制の整備に時間を要する学校の存在が考えられるため、市内全ての学校や対象者にDLAを実施するには今後更に相当期間を要するものと思われる。
またDLAの実施に当たっては、個人情報保護条例に鑑み、情報媒体に記録を残すことに関する保護者の了解を文章で得ることや、DLA実施に際しては、その理解とともに被験者との関係性や日本語指導に関する経験や見識等も、相当必要とされるものと推測される。
今後更なるDLA実施のためには、
[1]人材の確保と育成に関して、適時研修会を行うことなどが必要になる。
[2]確認された日本語課題についてそれらを補うための指導教材、指導体制の構築、情報交換会などの実施が急務となるものと思われる。
[3]対象校にDLAの有効性の周知とその理解、実施協力を広げていく。

【5日本語指導ができる支援員の派遣】
(1)日本語指導ができる支援員の派遣

 

日本語指導ができる支援員の派遣
   
(内容)
日本語の支援を必要とする児童生徒に日本語指導者を派遣した。
(成果)
学級内で学んでいる教科の用語を教えることで、学習活動に積極的に参加する姿勢への変化が現れた。
学校生活の中で日々学ぶ単語を文の中に組み込んでいくことで、文章として言葉を味わい表現の広がりを学ぶことができた。
(課題)
抽出授業の日本語指導は子供にとって一息つける場となっている。その反面、日本語を勉強する意味や意欲をみいだせない子供にとっては、日本語の勉強に身が入りづらい状況となっている。
個別対応で丁寧な支援ができる反面子供によっては緊張したり、活発な授業が難しく活動範囲が狭まったりしている。
市で教材を保管・管理できる場所は限られている。また、子供の日本語レベルは様々で市内の各学校に少数在籍している。そのため、充実した日本語指導教材を準備・提供することは難しい。指導者が各自用意する教材に頼らざるを得ない状況だったため、教材準備と管理・保管の課題解決に向けて検討している。
他市からの転入生や長期滞在者が多くなる中で、将来に向けて十分な日本語力をつけられる細かな支援体制の充実が課題となっている。

(2)国際教室

 

国際教室
   
(内容)
児童生徒がそれぞれのルーツに誇りを持ちつつ、学びあえる環境づくりのため、まず母語話者を教室に配置しており、各児童の学校生活上の課題や不安を取り除くことから教室指導を始めている。
(成果)
日本語力の習得や自尊感情の育成、文化の理解には時間を要するため、同教室では通級の終了年限を設けておらず、最大義務教育を終了するまでの期間において必然と通級の必要がなくなるまで通うことができるようにしている(平均通級期間約2-3年間)。
通級終了後も立ち寄れる場所になっており、修了生が学校でのテスト期間中に日本語による設問について指導を受けにくるなど地域の拠点となりつつある。

(課題)
様々な言語と個々の日本語力、学齢のばらつきから一斉指導には限界があり、個々の実情に応じたきめ細やかな指導が今後も必要となる。
交通の面で教室に通える子供とできない子供に差が生じてしまう。

(3)帰国教室(サロン、教育相談)

 

帰国教室(サロン、教育相談)

 

(内容)
国語科の指導に重点を置き、教職経験者を配置している。日本でのスムーズな学校生活に備え基礎日本語力の指導に注力することや様々なテキストを活用し学習を進めるとともに、海外において接することの少なかった日本文化に対する学びも積極的に取り入れた。
また、保護者が学校生活上における不安や心配事などを相談したり、交流したりするための「保護者サロン」を実施(年間10回)、保護者間の情報交流の貴重な場とした。さらに、臨床心理士による教育相談会も年間3回実施した。
(成果)
漢字の音訓が判別できなかったり、慣用句、ことわざ、四字熟語などを十分に理解できなかったりするケースが多く見受けられ、日常会話ができることによって見逃されがちな「見えない日本語力」について重点的に指導することができ、経験豊富な指導者とともに学びを深めることで国語科の自信につながり、教科学習を始め学校生活全体において効果を生んだ。
(課題)
帰国生の状況は年々変化し、国際結婚により多文化にルーツを持つ子の存在や現地校に通い日本語を正しく話せないケース、あるいはある程度の日本語力を保有しているにも関わらず、海外生活が長いために日本の文化的理解の経験が欠如しているケースなど、必要な支援もより多岐に及んでおり、今後ますますきめ細やかな支援、対応が必要となるものと思われる。
現在開催している会場では交通の利便性から、同教室に通級しづらい児童が存在しているため、来年度より、とよなか国際交流センター内の一室で開催する準備を進めている。また、中学生対象の帰国教室を一時閉じていたが、再開することとし、帰国生・渡日生と分けることなく、様々な立場の子供が共に集い学べる場としての発展を目指していきたい。


【6児童生徒の母語が分かる支援員の派遣】
(内容)
子供の学校生活への通訳支援を行うとともに、個人懇談などの保護者支援を行った。
(成果)
クラスの中でみんなと同じことができる喜びや自分の考え・思いを表現できることが、子供の自信につながり、少しずつ通訳者に頼らなくても自分から発言をし、友達との交流の輪に積極的に関わるようになった。
子供や保護者間のトラブルも、通訳者を介して丁寧に話し合うことで、問題の早期解決に向けて取り組めた。
個人懇談などでは、保護者と担任との丁寧な意見交流をすることができることが子供への細やかな支援につながった。
(課題)
教育相談や医療関係、家庭事情での通訳を必要とするケースもあり、専門的で適切な言葉選びや守秘義務が通訳者に求められる。
言語によっては支援者を見つけるのに時間がかかることがある。

学校によっては通訳者に全面的に頼らざるを得ない状況になっているケースもあり、学校全体で子供の支援に取り組めるよう、今後とも学校訪問を行うことで管理職に意識づけをしていきたい。


【7その他】
(1)渡日児童生徒相談室の開設
(2)児童・生徒、保護者及び学校支援
(内容)
通訳・日本語指導者派遣業務や帰国教室・国際教室の開催。外国にルーツを持つ児童生徒の諸課題の解決に向けた取組や学校巡回を行った。
(成果、課題、その他)
支援を必要とする児童生徒が在籍する学校へ積極的に訪問し、支援者や学級担任などと情報を交流したり、あるいは対象者とその保護者から聞き取りをしたりすることによって、双方の悩みや指導上の課題を明確にすることに努めた。
今年度、国が進める規制緩和において、介護職に従事する東南アジアからの数家族が同時期に渡日してきた。事業者によると今後も積極的に東南アジアからの受入れを考えているとのことである。今後、このようなケースが増えることが予見されるため、企業からの情報提供なども踏まえ、豊中市の受入れ体制を強化する必要性が高まってくるものと思われる。また、日本語指導を必要とする対象者の学齢にもさらなる「ばらつき」が多く見られることになり、中長期支援を要する高学年期や中学生期、あるいは場合によっては過就学齢期の子のサポートの検討が必要になってくるものと思われ、今後そのような児童生徒、保護者が気軽に相談でき、地域への参加ができるように、公的機関やNPO、支援者たちとも積極的に連携して交流を行っていきたい。
また、学校園において児童・生徒間における人権侵害発言が数件あったことも看過できないものと考えている。そのような人権侵害発言事例が起こった場合は、学校長や教育委員会に報告し人権啓発の取組も行いたい。また、支援者においても人権に関する講習会への案内や参加を呼びかけ人権に対する啓発を行いたい。

 

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035

-- 登録:平成27年10月 --