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平成25年度「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(姫路市)

平成25年度に実施した取組の内容及び成果と課題【実施主体 姫路市教育委員会】

1.事業の実施体制(運営協議会・ 連絡協議会の構成員等)

1.事業の実施体制(運営協議会・ 連絡協議会の構成員等) 


 

2.具体の取組内容
[1]運営委員会・連絡協議会の実施
・大学教員及び姫路市教育委員会指導主事・姫路市内各学校の日本語指導教員・支援員等で構成する「連絡協議会」を3回実施した。
○第1回姫路市帰国・外国人児童生徒受入れ促進事業連絡協議会(平成25年6月4日開催)
【参加者】 各校担当者等 28人 支援員 3人 指導主事等 7人
【内容】  ・事業説明
       ・実践発表 「クラスの子供たちは、本当にわかっていますか?」
       ・グループ協議「各校の現状や取組・課題について」
○第2回姫路市帰国・外国人児童生徒受入れ促進事業連絡協議会(平成25年11月18日開催)
【参加者】 大学教員1人 各校担当者等 23人 支援員 4人 指導主事等 3人
【内容】  ・授業公開  中学3年1組  数学「中点連結定理」
        ・実践報告 「本校の取組」
        ・指導助言及び講義「日本語指導の要素を取り入れた在籍学級での学習支援について」
○第3回姫路市帰国・外国人児童生徒受入れ促進事業連絡協議会(平成26年2月4日開催)
【参加者】 各校担当者等 29人 支援員 4人 指導主事等 7人
【内容】  ・実践報告「日本語指導を通して見えてきた成果と課題」他  
      ・グループ協議「今年度の各校の取組の成果と課題について」

[3]日本語能力測定方法の活用
・「日本語能力測定方法(DLA)」の活用により、日本語能力を把握し日本語指導に活(い)かすための実践研究を2月に行った。

[4]日本語指導ができる支援員の派遣
・日本語指導が必要な外国人児童生徒の在籍する小学校(3校)・中学校(1校)に、日本語指導ができる支援員を1人ずつ派遣し、日本語指導及び教科指導、学校との連絡調整を行った。

[5]児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
・日本語指導が必要な外国人児童生徒の在籍する小・中学校等に、外国語が話せるバイリンガル支援員(スタディサポーター)・バイリンガル支援員(通訳)を派遣し、日本語指導の補助や学校との連絡調整を行った。
・バイリンガル支援員(スタディサポーター)・バイリンガル支援員(通訳)を派遣し、コミュニケーションの円滑化を図ることにより、児童生徒及び保護者の心の安定を図った。
○バイリンガル支援員(スタディサポーター)対応言語
ベトナム語 中国語 フィリピノ語 ポルトガル語 韓国・朝鮮語 イタリア語 フランス語
○バイリンガル支援員(通訳)の対応言語
ベトナム語 中国語 フィリピノ語 ポルトガル語 韓国・朝鮮語  スペイン語

[6]その他(外国人の子供の就学促進)
・平成18年度以降実施している就学状況調査の手法を踏襲し、学校や関係機関等と連携し、外国人の子供たちの就学状況調査を行った。また、不就学の子供がいる外国人家庭に対して、日本の教育制度や就学についての具体的な説明や働きかけを行い、就学を促した。
(1)住民窓口センター届出窓口担当より、市内に居住する就学年齢に当たる外国人児童生徒に関する情報を得た。【小・中学校の就学年齢に相応する中長期在留者・特別永住者618人】
(2)市立小・中・特別支援学校に、外国人児童生徒の在籍調査を依頼し、市立小・中・特別支援学校児童生徒の在籍状況を把握した。また、外国にルーツのある児童生徒の在籍についても、可能な限り調査し、実態の把握に努めた。
(3)市内の西播朝鮮初中級学校の協力により、在籍児童生徒を調査した。
(4)姫路市教育委員会の学事・保健課に連携を要請し、端末によって市立・小中特別支援学校での在籍を調査した。
(5)今年度、不就学生徒1人に対して、指導主事2人と就学促進員で2度家庭訪問し就学を促したが、就学の意志がなく現在も就学していない。

 

3.成果と課題
[1]運営委員会・連絡協議会の実施
<成果>
・第1回連絡協議会では、外国人児童に対して指導に深く携わった教師の実践発表から、指導・支援のポイントを数多く得ることができた。また、対象となる児童に指導を行う際に有効となる指導グッズなどを知ることができ有意義な実践報告となった。その後のグループ協議では、内容を「各校の現状や取組・課題について」に絞ったことで、課題が焦点化され、深まりのある話合いとなった。参加者からは、「今後指導していく上で参考になった」という感想が多数あった。
・第2回連絡協議会では、中学3年生のクラスで数学「中点連結定理」の授業公開を行った。授業後の参加者の感想には「外国人生徒が理解しやすいような手立てがたくさん仕組まれており、参考になった」や「外国人生徒に限定されず、低学力の生徒にも有効な手立てが仕組まれていて、非常に参考になった」などがあり、授業実践に役立つ公開授業となった。その後の大学教員による指導助言・講義では、公開授業での講評及び指導ポイントの事例等を示唆していただき、具体的な指導の在り方を学ぶことができた。
・第3回連絡協議会では、2名の小学校の先生方に実践発表をしていただき「悩み・課題」等を含めて、分かりやすい発表をしていただいた。特に、小学校段階から高校入試に向けた進路を考えていかねばならないこと、更には、就職まで見通した指導をしていかねばならないという発表があり、参加者からも「非常に参考になった発表であった」と事後の感想に多く書かれていた。また、グループ協議では、今年度の各校の取組成果や課題を出しあったが、その中で特に、今年度から日本語指導を必要とする児童生徒の担任になった先生方からは、「様々な手法などを学べて有意義な分科会であった」などの感想が見られ、効果的なグループ協議となった。
<課題>
・各校担当者等の定期的な意見交換が不可欠で、各校における悩みや課題を共有する機会を継続的に設定していきたい。また、公開授業も取り入れながら、学校間での効果的な学習教材や指導・支援方法等の情報を共有できるような連携を視野に入れ、今後も年3回程度の実施を行っていきたい。
・校内での受入れ及び研修体制をより充実させ、担任のみならず、学校全体で日本語指導が必要な児童生徒に関わり、情報を共有する体制づくりが必要である。
・今後も、先進的な研究者による適切な助言を受ける場や実践発表の機会・公開授業を設けることにより、姫路市内の帰国・外国人児童生徒教育の充実を図っていきたい。
※渡日歴の浅い生徒の進路をどう保障するかが大きな課題である。

[3]日本語能力測定方法の活用
<成果>
・日本語能力測定を行うことで、客観的に対象生徒の日本語能力の現状を把握することができた。
・日本語指導に対する捉え方が曖昧であったが、DLAを活用することで、より焦点化して日本語の指導の在り方を考えて対応することができた。
<課題>
・日本語能力測定を活用するに当たっては、かなりの分量であり、有効に活用していくための様々な情報などが今後必要となりそうである。
・特に中学校において、測定するとき間の確保が難しいため、どのように実施していくか課題である。
・日本語能力を測定した結果を、日本語指導に有効に活用していくことが重要である。
・日本語能力測定の方法などを、多くの先生方に理解してもらうための研修などが必要となりそうである。

[4]日本語指導ができる支援員の派遣
<成果>
・姫路市内で日本語指導の必要な外国人児童生徒が特に多く在籍する小中学校(4校)に、日本語指導ができる支援員を派遣した。日本語指導及び教科指導を、1年間に28回派遣予定であるが学校の実態に応じて有効に活用していただいている。小学校では主に基礎学力の定着に向けた指導、中学校では進路保障に向けた取組を充実させることができている。
・日本語支援教室での学習指導では、一人一人の現状を的確に把握し、個に応じて効果的な指導を行い、学習成果を上げることができた。
<課題>
・今年度初めて「日本語指導ができる支援員」を派遣したが、かつて学校で教べんをとっていた支援員であり、指導についてはポイントを押さえた効果的な指導ができていた。来年度の派遣回数については今年度の状況を踏まえて考えていきたい。
・学習言語を十分に理解させるとともに、文章問題や記述回答への対応が必要不可欠であり、引き続き支援員の協力を得ながら推進していきたい。

[5]児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
<成果>
・日本語理解が十分でない児童生徒には、教科書や参考図書を翻訳し、児童生徒が理解できる言語で学習を進められた。また、難しい日本語の意味を母語で説明することで、学習への意欲が持続し日本語での理解が深まった。
・学習の習得が困難な教科については、漢字に読み仮名をふったり、問題の意味をわかりやすく説明したりしてもらうことにより、一斉授業の中でも、該当児童の理解度に合わせて学習することができた。特に、書くことに抵抗があった児童は、学習言語の理解が進み、テストにも少しずつ答えられるようになった。
・サポーターが近くにいることで、定期テストでは安心してテストを受けることができ、1問でも多くの問題に取り組むことができた。また、中学校のテストに早く慣れることができた。
・他の学校で使用している教材などを紹介してもらい、よりよい教材を共有することができた。
・多文化共生教育の授業にゲストティーチャーとして参加してもらい、出身国の魅力等について語ってもらった。児童たちはベトナムの魅力を知り、世界の国々の良いところを調べるきっかけとなった。また身近にいるベトナム人の友達のことについて知ろうとする気持ちが高まった。
・渡日歴の浅い児童生徒にとって心のよりどころとなり、心配なことや分かりにくい所、悩み等の相談にのり心の安定を図ることができた。また、友達とのトラブルがあったときも母語で話を聞いてもらい、自分の思いなどをしっかりと伝えることができたので安心することができた。
・性格的におとなしく自分から質問に行くことが少なかったが、少しずつ学習に対して積極的になり、分かりにくい箇所を質問したり、クラスで自分の意見を述べたりすることが少しずつできるようになってきた。
・学校行事のプリントなど、保護者に伝えるものを翻訳したり、家庭訪問などでの通訳をしたりして、学校と保護者とをつなぐ重要な役割を果たした。(保護者への連絡を徹底することができた。)
・特に中学三年生の保護者会では、進路決定に関する細かな通訳により、保護者の理解を得ることができた。
<課題>
・進路に関することへの通訳は難しく、専門的な語句やシステムを事前にサポーターに指導し理解を得る必要がある。
・学習言語を十分に理解させるとともに文章問題や記述回答への対応が必要不可欠であり、引き続きサポーターの協力を得ながら推進していきたい。
・支援児童につきっきりになってもらうことが多く、周囲の児童が多文化理解をするためのとき間としては生かしきれなかった。来年度も、児童の母国についても理解を深めながら、児童同士の円滑で豊かなコミュニケーションに繋(つな)げられるようにしたい。
・母語による通訳や連絡文書の翻訳及び学習支援は、外国人の児童にとって日本で生きていく力をつけ、将来の展望を持って学習していく上で重要な支援であり、外国人児童生徒の集住している学校においては、渡日歴にかかわらず配置する必要がある。
・サポーターのより効果的な支援方法や、教科指導についても研修・普及を推進していく必要がある。
・保護者向け配布物等は、なるべくデータ化しているが、その都度見直しが必要である。
・個々に応じて的確な支援を行うには、児童生徒の情報の共有が重要である。そのためには、教師とサポーターの打ち合わせのとき間確保や、児童生徒連絡票等の活用など、より連携体制を整備していく必要がある。
・台風や地震等の自然災害ときの対応及び緊急ときの引き取り方法等、日本語ができない保護者や渡日間もない児童生徒には、サポーターの翻訳や通訳が必要不可欠である。

[6]その他(外国人の子供の就学促進)
<成果>
・本取組によって、市内に居住する就学年齢に当たる外国人の実態を把握することができた。不就学の実態を把握することができた。
<課題>
・今後も関係各課、外国人学校との連携及び母語の使用できる就学促進員の活用が不可欠だと考えられる。

 

4.その他(今後の取組等)
・3回目の運営協議会を行い、今年度の各学校における取組を報告しあう。その中で、効果的であったことや課題などを出し合い、よりよい日本語指導の在り方を共有しあっていきたい。
・日本語能力測定(DLA)を行い、有効に活用していきたい。ただ、分量が多く、更に実施方法が難しいところがあるため、改善の余地がありそうである。

 

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

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-- 登録:平成26年10月 --