平成22年度 帰国・外国人児童生徒受入促進事業に係る報告書の概要(松阪市)
実施団体名【松阪市教育委員会】
平成22年度に実施した取組の内容及び成果と課題
1.事業の実施体制
1 運営協議会(年2回)
(大学、松阪国際交流協会、松阪市観光交流課、センター校、県教委、市教委)
2
連絡協議会
〇プロジェクト会議(年4回)
(大学、センター校担当者、母語スタッフ、いっぽ教室担当者、市教委)
〇ネットワーク会議(年2回)
(大学、市内全小中学校外国人児童生徒教育担当者、市教委)
〇担当者会(年6回)
(センター校担当者、いっぽ教室担当者、母語スタッフ、市教委)
4 指導補助者・支援員の設置
(母語スタッフ3人<タガログ語2人、ポルトガル語・スペイン語1人)
2.研究内容 〈具体の取組内容〉
1 運営協議会
- 事業説明、センター校における取組について、事業の経過報告、成果と課題の検討等
2 連絡協議会
〇プロジェクト会議
- センター校及び準センター校の外国人児童生徒の実態把握と年間計画の作成
- 日本語指導から教科指導への実践研究について
- アイデンティティの確立をめざす取組(フォトストーリーづくり)について
- 進路ガイダンス及び高校見学バスツアーについて
〇ネットワーク会議
- センター校の取組の報告
- 「日本語指導の基礎」についての研修
- リライト教材の活用及びJSLカリキュラムの指導法による教科学習の取組について
〇担当者会
- 各校の児童生徒の実態についての交流
- 大阪教育大学関係者の学校訪問について
- 外国人児童生徒教育に係るアンケート調査の実施について
- 多文化理解の授業について
4 指導補助者・支援員の設置
- ポルトガル語親子教室の実施
- 放課後日本語教室「にじ」の実施
- 保護者の教育相談、翻訳
- 多文化共生教育に関する学習会の講師
- 学校における児童生徒の言語支援
5 プレクラス(就学前指導)の実施
- 外国人児童生徒のための初期適応支援教室「いっぽ」の実施
- 就学前支援教室「ふたば」の実施
6 センター校の設置
- センター校(3校)・準センター校(2校)を設置し、受入体制を整備
- 学習支援のあり方について実践研究
- アイデンティティの確立をめざす取組
- センター校職員合同研修会の実施
7 教育委員会と関係機関等との連携による就学支援
- 進路ガイダンスの実施
- 高校見学バスツアーの実施
- 先進地視察の実施
- 多文化理解の授業の実施(三重大学人文学部との連携)
- 学生アシスタントの派遣(三重大学教育学部との連携)
- アイデンティティの確立をめざす取組(愛知淑徳大学との連携)
- 市民課や学校支援課、育ちサポート室等との連携による就学促進の取組
8 外国人の子どもの就学状況調査
- 就学促進員の活用はなかったが、三重県教育委員会より派遣された調査員と人権まなび課職員が個別訪問を実施。
- 1月から2月にかけて23戸を訪問→不就学状況にある児童生徒はなし。
3.成果と課題
1 運営協議会
<成果>
- 大学関係者から様々な情報や専門的な知見からの助言をえることができ、今後の方向性を見出すことが出来た。
- センター校は同じ校区の小中学校であり、小中連携につながった。
<課題>
2 連絡協議会
<成果>
- 学校間での情報交換により互いに学びあうことができ有意義であった。
- 同じ校区の小中学校の担当者が交流をすることにより、小中連携を深めることができた。
- 松阪市としての受入ハンドブック、児童生徒の実態把握や年間指導計画の様式を作成することができた。
<課題>
- 会議の内容を各校でしっかり還流し、教職員間の共通理解を図っていく必要がある。
- プロジェクト会議等で作成した教材等の共有化を図る必要がある。
4 指導補助者・支援員の設置
<成果>
- 母語支援員がいることで、外国人児童生徒の不安も解消され安心して「いっぽ」教室や学校生活を送ることができた。
- 母語支援員が地域の学習会の講師を務めることにより、多文化共生についての理解を地域の方にも広げることができた。
<課題>
- 4月から6月にかけてフィリピンからの渡日の生徒が急増したため、母語が話せる支援員の需要が急増し、予算との兼ね合いで活動時間を確保するのにとても困った。
5 プレクラス(就学前指導)の実施
<成果>
- 「いっぽ」教室は4年が経ち、初期適応支援教室として市内で定着してきた。日本語初期指導を「いっぽ」で終えることにより、学校生活にスムーズに入っていけるようになった。
- 本年度初めて就学前支援教室「ふたば」を開設した。12人の幼児が参加し、小学校入学に向けての準備を整えることができた。
<課題>
- 「ふたば」教室には10人を超える希望があった。財政の関係上、指導員が1人であったため、これ以上希望者が増えると指導に支障が出てくると考えられる。
- 本年度「ふたば」教室を開設したがカリキュラムの見直しと実施日数の見直しが必要である。
6 センター校の設置
<成果>
- センター校を設置して研究に取りくむことにより、外国人児童生徒教育の課題が明らかになった。
- 受入体制の整備や校内推進体制が整いつつある。
- 初期日本語指導から教科指導におけるギャップが激しく、そこをどのような指導でつなげていくかが課題であることが明らかになってきた。
<課題>
- 日本語指導から教科指導への指導法について実践研究をすすめる必要がある。
- 担当者だけが苦労している現状があり、校内に外国人教育推進委員会を設置して、全教職員の理解のもと、取組をすすめていく必要がある。
- センター校から他の学校へ取組を広めていく必要がある。
7 教育委員会と関係機関等との連携による就学支援
<成果>
- 育ちサポート室との連携により、「障がい」のある生徒の指導のあり方等、協働することでよりよい方向をめざすことができた。
- 進路ガイダンスや高校見学バスツアーを実施することにより、外国人児童生徒や保護者の学校に対する理解が深まるとともに在籍校における学習意欲の向上につなげることができた。
- 大学との連携により、専門的な知見から助言を得ることができ、的確な方向性を提示していただくことができた。
<課題>
- 外国にルーツがある児童生徒の実態が多様化してきており、様々な機関との連携が不可欠になってきている。
- 小学生の進路ガイダンスや高校見学バスツアーへの関心がまだまだ薄い。小さい時から進路に関心を持ち、長いスパンで教育を考えていくことの大切さの理解を図っていきたい。
8 外国人の子どもの就学支援
<成果>
- 不就学状況にある児童生徒はいないことがわかった。
- 個別訪問をすることにより松阪市の現状がよくわかった。
<課題>
- 籍を置いたまま帰国している子どもが多数いることもあり、今後も就学状況調査を実施していく必要がある。
4.その他(今後の取組等)
- 国際教室における指導からクラスにおける指導への広がりと指導内容の研究を深める。
- 自尊感情を高める取組をさらに進め、アイデンティティの確立をめざす。
- 教職員の共通理解を図るための校内推進体制づくりを構築していく必要がある。