【ポイント解説】建物配置・屋外環境

【目次】

1.外部から建物に出入りしやすく、建物間の移動がしやすい建物配置
2.安全で移動しやすい敷地内通路
3.建物から円滑に移動でき、利用しやすい屋外運動場
4.利用しやすい駐車場

スロープ、エレベーター、車椅子使用者用駐車区画を備えたバリアフリー建築の断面イメージ

1.外部から建物に出入りしやすく、建物間の移動がしやすい建物配置

 車いす使用者等が敷地外から校舎等までのアクセスがしやすいよう、建物までの距離が短く、段差が発生しないような建物配置とすることが重要です。また、校舎間の移動が円滑になるようスロープの設置や段差解消機の活用なども検討しながら、動線が短く、上り下りがない動線とすることが重要となります。また、今後、校舎の増改築等が行われる見込みがあるかどうかを確認し、その可能性が高い場合には、増改築が行われた際であっても、建物間の移動が容易となるよう、あらかじめ計画しておくことも検討の観点として必要となります。

(建物配置の検討のポイント)

  • 敷地境界及び駐車場等から明確で、できる限り段差のない建物配置とすることが重要である。
  • 校舎間、校舎と屋内運動場間等の移動については、動線が短く、できる限り円滑な平面移動が可能な建物配置とすることが重要である。
  • 児童生徒数の将来動向を的確に検討、把握し、校舎の増改築など建物間の移動に影響する要因を敷地全体で十分に検討するなど、長期的な視野に立った建物配置とすることが重要である。

[事例]

2.安全で移動しやすい敷地内通路

建物のバリアフリー設計について、スロープや動線、視覚障害者への配慮事項を注釈付きで説明した断面図

 敷地外から校舎等までの通路については、車いす等での移動をしやすくするため、歩行者と車との動線分離や直線的な動線とするなどの明快さ、雨天時を想定して、水たまりができにくくしたり、晴天時も含め、滑りにくい表面とするなどの対応が必要となります。また、建物へのアプローチに当たっては、段差がある場合にはスロープが必要となりますが、スロープの長さが著しく長くなる場合には、段差解消機等の活用を検討することも有効です。また、視覚障害者への対応として、歩行者の動線上に、敷地外からの連続性も配慮しながら、点字ブロックの設置を検討したり、聴覚障害者への対応として、入り口のインターホンをモニター付きのものにするなどの配慮を行うことも計画に当たって必要な視点となります。

(敷地内通路の計画のポイント)

  • 敷地境界及び駐車場から建物の出入口までの通路、建物間の通路等の敷地内通路は、歩行者と車の動線を分離した計画とし、安全かつ円滑に利用できるものとすることが重要である。
  • できる限り段差を設けず、表面は滑りにくい仕上げとすることが重要である。やむを得ず段差が生じる場合は、適切な幅員及び勾配のスロープ、段差解消機等を設置することが重要である。

    [段差が生じる場合の基準] ※建築物移動等円滑化基準に規定

    • 手すりを設ける
    • 踏面の端部(段鼻)とその周囲の部分との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより段を容易に識別できるものとする
    • 段鼻の突き出しその他のつまずきの原因となるものを設けない
  • 路面の雨水処理には十分に留意することが重要である。
    ※透水性の高い路面にすることなどが考えられる。
  • スロープの上下端部、踊り場は、車いすの利用者も含め、施設の利用者の円滑な移動が可能となるよう、十分な面積を確保することが望ましい。

    [スロープの基準] ※建築物移動等円滑化基準に規定

    • 勾配が1/12を超え、又は高さが16センチメートルを超え、かつ、勾配が1/20を超える傾斜がある部分には、手すりを設ける
    • 前後の通路との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことによりその存在を容易に識別できるものとすること
  • 通路やスロープを横断する排水溝等の蓋は、通路面との段差をなくし、蓋のスリット等は杖や車いすのキャスタ等が落ちないように配慮することが重要である。

当事者からのコメント(視覚障害)

弱視者などの視覚障害のある人にとっては、床壁にコントラストがないと歩きにくいです。色覚にも多様性があり、特性によっては、同系色の色が混在していると境界線を認知しづらいです。

(避難路の整備のポイント)

  • 津波等災害時の緊急避難場所への避難路は、車いすの利用者等の利用も踏まえ、スロープとすることが重要である。この場合に、適切な勾配を確保することが困難な場合は、周囲の助けを得て押し上げてもらうことを前提とした勾配のスロープとすることも有効である。
  • 災害時の避難時間を短縮するために、避難経路を複数確保することが望ましい。

当事者からのコメント

施設利用に当たっては、災害時の避難経路が確保されているかも重要視しています。バリアフリー化された避難経路が複数あると安心してその施設を利用できます。

(視覚障害者への観点)

 視覚障害者の利用が想定して、移動等円滑化経路を構成する敷地内の通路等は、次に掲げるものとすることが必要です。

  • 視覚障害者の誘導を行うために、線状ブロック等及び点状ブロック等を適切に組み合わせて敷設し、又は音声その他の方法により視覚障害者を誘導する設備を設ける(進行方向を変更する必要がない風除室内を除く)。
  • 車路に近接する部分、段がある部分又は傾斜がある部分の上端に近接する部分には、視覚障害者に対し警告を行うために、点状ブロック等を敷設する。
  • 建築物又はその敷地には、建築物又はその敷地内のエレベーターその他の昇降機又は便所の配置を点字、文字の浮き彫り、音による案内、その他これらに類する方法により視覚障害者に示すための設備を設ける(案内所を設ける場合を除く)。

当事者からのコメント(視覚障害)

誘導用ブロックについては、最低限、学校の受付、職員室など人のいるところまで行きつけるように敷設がされていると移動がスムーズです。

建築物移動等円滑化誘導基準に相当する整備内容や設計例等については、「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」(令和7年5月国土交通省)の「第2章 1.敷地内の通路」(P29~P35)を参照。

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001892119.pdf(※別ウィンドウで開きます)

3.建物から円滑に移動でき、利用しやすい屋外運動場

(アクセスしやすい配置、段差のないアプローチ)

  • 建物の出入口から屋外運動場へ至る通路には、できる限り段差を設けないように計画することが重要である。
  • やむを得ず段差が生じる場合は、適切な幅員及び勾配のスロープ、段差解消機等を設置することが重要である。
  • 建物出入口から屋外運動場への移動に配慮した、アクセスしやすい配置を示す写真

    昇降口から屋外運動場へ段差なくアクセスできるように計画されている事例
    (東京都中央区立晴海西小学校・晴海西中学校)

(屋外運動場の表層の仕様)

 屋外運動場の表層の仕様によって、車いすでの移動しやすさが変わります。例えば、人工芝が貼られた屋外運動場では、芝の種類、長さによっても移動のしやすさが変わってきます。当事者から移動のしやすさなどの意見も聞きつつ、転倒時の安全性などの観点も考慮しながら、仕様を検討することが重要です。

 また、芝などの比較的汚れの発生が少ない仕様にすることによって、一足制の導入が容易となり、昇降口や教室からの出入口等の段差をなくす設計も容易となります。

  • 人工芝が張られた屋外運動場の写真

    グラウンドにショートパイルの人工芝を使用した事例
    (東京都北区立飛鳥中学校)

当事者からのコメント(車いす使用者)

人工芝の長さが長いと、芝が車いすの車輪に絡まって動きにくくなってしまうことがあります。飛鳥中学校の人工芝は縮毛タイプで長さ18ミリメートルのものを採用しており、珪砂も10ミリメートル入っていたので芝が短く感じ、移動しやすかったです。

コラム 遊具のバリアフリーについて

  • 車いす使用者でも上ることができる遊具の写真

    車いすでも上ることができるスロープ

 屋外運動場に設置する遊具にもバリアフリー仕様のものがあります。
 例えば、豊島区立西巣鴨小学校では、屋外運動場の改修の際に、誰もが楽しく遊ぶことができるよう、車いすでも上ることができるスロープ等を備えたインクルーシブな遊具を設置しています。現在は、休み時間や放課後の校庭開放などで使用されています。

当事者からのコメント(感覚過敏)

感覚過敏のある児童からの相談事項として、白いものがまぶしい、太陽光が眩しいという声があります。対応として、外壁を白すぎないようにする、屋外に光の反射で眩しくなるものがないようにする、体育などの屋外活動の際に太陽光から逃れられる木陰を作るといった方法が考えられます。

4.利用しやすい駐車場

幅350センチメートル以上確保した駐車場のイラスト

 学校においても、車いす使用者用の駐車場を設けることが重要です。その際には、バリアフリー基準に基づいて、必要なサイズを満たした駐車場を設けることが重要です。駐車場と乗降スペースの関係では、車両の後部からリフトやスロープで車いすのまま乗降する場合も多いため、車両後部側のスペースについても考慮することが必要です。また、駐車場からの乗り降りに際しては、雨天時の対応を想定して、乗り降りの場に屋根を設けたり、屋根のある場所に駐車場を設けることが有効です。加えて、乗り降りの場から校舎等への移動に際しても、屋根等があるところへスムーズに移動できるよう駐車場の配置等を検討することも必要な視点です。

(駐車場の位置などのポイント)

  • 建物の出入口に到達しやすい安全な位置に、十分なスペースを持つ車いす使用者等の利用する駐車場を確保することが望ましい。
  • 車いす使用者等の利用する駐車場には、わかりやすい表示をすることが望ましい。

    ※国際シンボルマークを使用することが望ましい。

  • 国際シンボルマークの形状及び使用 国際シンボルマークは、英語の International Symbol of Access を日本語とした呼称である。障害者が利用できる建築物であることを明確に示す世界共通のシンボルマークである。シンボルマークの形状は下図のとおりである。・なお、本図は2002年3月、JIS Z 8210(案内用図記号)に、身障者用設備(2010年以降は「障害のある人が使える設備」)、障害のある人が利用できる建築物及び施設であることを表示する図記号として標準化された。・日本において国際シンボルマークは、公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会が使用管理を行っている。

    「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」(令和7年5月国土交通省)より

[駐車場に関する主な基準]※建築物移動等円滑化基準に規定

  1. 駐車スペースのうちの2%は車いす使用者用の駐車スペースとする
    ※駐車スペースが200カ所以下の場合
  2. 車いす使用者用駐車施設の幅は350センチメートル以上
  3. 車いす使用者用駐車施設は、当該車いす使用者用駐車施設から利用居室までの経路の長さができるだけ短くなる位置に設ける
  4. 移動等円滑化の措置がとられた駐車施設の付近には、当該駐車施設があることを表示する標識を設ける
    • 表示板(標識)は、高齢者、障害者等の見やすい位置に設ける
    • 表示板(標識)は、ピクトグラム等の表示すべき内容が容易に識別できるもの(当該内容がJIS Z 8210案内用図記号に定められているものは、これに適合するもの)とする

建築物移動等円滑化誘導基準に相当する整備内容や設計例等については、「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」(令和7年5月国土交通省)の「第2章 2.駐車場」(P36~P45)を参照。

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001892119.pdf(※別ウィンドウで開きます)