物質を形作っている原子そのものや、原子を構成する更に微細な電子・中性子・陽子などの極めて小さな世界では、私たちの身の回りにある物理法則(ニュートン力学や電磁気学)とは異なる、「量子力学」というとても不思議な法則が作用していることが知られています。
「量子技術」とは、量子力学で記述される原子、電子、光子などの物理現象について、これまで人類が利用困難であった量子特有の性質(重ね合わせ、量子もつれなど)のを操作・制御、利活用する技術のことです。量子技術は、将来のコンピューティング性能の飛躍的な向上をもたらす量子コンピュータ、従来よりも格段に高感度な量子計測・センシング、高セキュアな量子セキュリティ・ネットワークなどにより、創薬・医療、材料、金融、エネルギー、生活サービス、交通、物流、工場、安全・安心などの多様な分野において、経済・社会等を飛躍的に発展させる鍵となる革新技術とされています。
我が国においては、令和2年1月の「量子技術イノベーション戦略」に基づき、量子技術の基礎研究から技術実証、オープンイノベーション、知的財産管理、人材育成等に至るまで産学官で取り組む拠点として、令和3年2月に8つの「量子技術イノベーション拠点」を整備しました。また、産業界においても令和3年9月に「量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)」が設立され、組織的に量子技術の研究開発、産業化を推進するための新たな体制の整備が進められています。
上述のとおり、研究開発等の取組を着実に推進してきたところですが、量子コンピュータの国際競争の激化、コロナ禍によるDXの急速な進展、カーボンニュートラル社会の実現に向けた動きなど、量子技術に期待される役割は増大し、取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。
このような環境変化等を踏まえ、政府は令和4年4月、我が国の産業の成長機会の創出や社会課題の解決のために量子技術を活用し、社会全体のトランスフォーメーションを実現していくため、量子技術により目指すべき未来社会ビジョンやその実現に向けた戦略、いわば“量子技術による社会変革に向けた戦略”として、新たに「量子未来社会ビジョン」を策定しました。同ビジョンでは、(1)量子技術を社会経済システム全体に取り込み、従来型(古典)技術システムとの融合により(ハイブリッド)、我が国の産業の成長機会の創出・社会課題の解決、(2)最先端の量子技術の利活用促進(量子コンピュータ・通信等のテストベッド整備等)、(3)量子技術を活用した新産業/スタートアップ企業の創出・活性化、の3つの基本的考え方を踏まえ、産学官が一体となって取組を推進することとしています。
(1)量子技術イノベーション会議(内閣府)(外部ウェブサイトへリンク)
・量子技術関連予算(令和3年補正及び令和4年度予算)(外部ウェブサイトへリンク)
※第10回 量子技術イノベーション会議(令和4年1月24日(月曜日))資料4から8を参照。予算案は了承済み。
量子技術イノベーション創出に向け国内外から人や投資を呼び込む「顔の見える」拠点形成の本格化が進み、基礎研究から技術実証、人材育成に至るまで産学官で一気通貫で取り組んでいます。量子未来社会ビジョンを踏まえ国内10拠点において体制を構築します。
量子技術イノベーション拠点(外部ウェブサイトへリンク)
(1)光・量子飛躍フラッグシッププログラム<Q-LEAP>(外部ウェブサイトへリンク)
<MEXT - Quantum Leap Flagship Program <MEXT Q-LEAP>>(Links to external website)
(2)共創の場形成支援プログラム(外部ウェブサイトへリンク)
(3)未来社会創造事業(外部ウェブサイトへリンク)
<JST-Mirai Programs>(Links to external website)
(4)戦略的創造研究推進事業(外部ウェブサイトへリンク)
<Strategic Basic Research Programs>(Links to external website)
(5)ムーンショット目標6 2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現(外部ウェブサイトへリンク)
<Moonshot Goal #6 Realization of a fault-tolerant universal quantum computer that will revolutionize economy, industry, and security by 2050.>(Links to external website)
(6)戦略的イノベーション創造プログラム<SIP>(外部ウェブサイトへリンク)
(1)文部科学省/米国エネルギー省(DOE)間の、量子情報科学に関するProject Arrangementの署名について
研究振興局基礎・基盤研究課量子研究推進室