教育課程部会事務局だより 第1号 平成15年10月17日

目次

  • 創刊に際して 文部科学省初等中等教育局教育課程課長大槻達也
  • 特集 「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について」中央教育審議会答申の趣旨
     ~新学習指導要領のねらいの再確認とよりよい実現を目指して~(1)
  • 連載 答申に関連する各種調査結果や資料等の解説(第1回)
     ~新学習指導要領等の周知について~

創刊に際して

 はじめまして、文部科学省で教育課程課長をしております大槻です。
 皆様におかれましては、日頃からそれぞれのお立場で、教育課程・指導行政について格段の御尽力・御協力をいただきありがとうございます。

 私の方から、このたびの「教育課程部会事務局だより」の創刊に際しまして、発行の背景等について簡単に御説明したいと思います。

 既に御承知のことと存じますが、先週7日に中央教育審議会から答申が提出されました。答申では新学習指導要領のねらいを一層実現するため、当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について提言されております。その中で、新学習指導要領のねらいや学力についての考え方等を継続的かつ積極的に周知することが必要であることも提言されています。

 国では、これまでも各種会議での説明やパンフレットの作成、学力向上アクションプラン等の実施を通じて周知を図ってまいりましたが、これらを広く、迅速かつ体系的に情報提供するとともに、それらについて関係者からご意見を伺う面で必ずしも対応が十分とは言えませんでした。

 このため、希望する方々に、教育課程部会の最新の審議内容や配布資料、関連する文部科学省の各種施策を簡潔に説明する「教育課程部会事務局だより」を電子メールで配信し、情報提供を行うことといたしました。
 あわせて、掲載内容についての皆様の意見を伺い、今後の施策の参考にしたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願いします。

特集

 「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について」中央教育審議会答申の趣旨~新学習指導要領のねらいの再確認とよりよい実現を目指して~(1)

 今回は、先日提出された「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について(答申)」の検討の背景や答申を受けての学校などでの取組に関して、主に教育課程部会で行われた議論に基づき説明し、提言内容については次回具体的にふれることとします。

なぜ今検討が行われたのか

 平成14年度から実施している学習指導要領は、子どもたちに基礎的・基本的な事項を確実に身に付けさせ、自ら学び自ら考える力などの「生きる力」をはぐくむことをねらいとしています。これは、変化の激しい時代をたくましく生き抜くために、子どもたちには、将来色々な課題に直面したときに自分で考えて判断、選択、決定していくための力を養うことこそ重要である、との考えに立ってのことです。
 このねらいを実現するために、新学習指導要領では、「教育内容の厳選」、「総合的な学習の時間の導入」、「選択学習の幅の拡大」、「個に応じた指導の充実」、「体験的な学習や問題解決的な学習の充実」などが行われています。

 「考える」ためには、知識や技能が不可欠であるのは言うまでもありませんし、そもそも知識や技能と考える力はどちらか一方が重要であると捉えるようなものではなく、両方の力が相まって発展するものである筈です。新学習指導要領の目指すところも、基礎・基本をおろそかにすることではありませんでした。
 例えば、上に掲げた「教育内容の厳選」も、子供たちに教える事柄を真に必要なことに絞り、生じた「ゆとり」を活用して、それを丁寧にきめ細かく教えることによって「7・5・3」と呼ばれる学習内容の理解度の現状の改善を図り、また、自ら考える力を養う指導を行おうとするものです。これは、決して必要な事柄まで教えるのをやめてしまおうというものではありません。

 ところが、昨今の学力をめぐる論議の中で、子供たちに必要となる力はどのようなものであるかということがともすれば見失われがちとなり、また、新学習指導要領のねらいとするところが必ずしも正しく受け止められていない状況が見受けられていました。今回の中央教育審議会における検討は、以上のような状況を踏まえ、子供たちに必要な力をよりよく身に付けさせるために現在欠けているものは何で、これから何を成すべきかについて明らかにすることを目指して行われたのです。

答申を受けての学校の取組はどのようなものになるのか

 答申の提言内容については、次回、具体的にふれることとしますが、提言は、学習指導要領を基準としつつも、そこに示されていない事柄を加えての指導が可能であることを一層明らかにすることや、基礎・基本を徹底する上での個に応じた指導の方法等を場面に応じて柔軟かつ多様に導入したりすることなどを求め、学校により大きな創意工夫を期待しています。このような方向性は、既に新学習指導要領で示されているものですが、現状での学校現場の取組には温度差が見られ、また、必ずしも国民一般に理解されているとは言えない状況にあります。
 したがって、答申を踏まえて学校で行われることは、新学習指導要領のねらいの再確認、教員間の共通理解となるでしょう。そして、これに照らし自らの教育活動を顧みて、不十分な点があればこれを改善していくということになる筈です。その際、答申に具体的な充実・改善方策として示された事柄が指針や参考となります。

 今回の答申は、新学習指導要領の大きな方向性を変えることを求めるものではないのですから、新学習指導要領のねらいの実現に向けて努力している学校関係者には、その方向性を再確認し、自信を持ってさらに取組を進めていただきたいと思っております。

連載

 答申に関連する各種調査結果や資料等の解説(第1回)
 ~新学習指導要領等の周知について~

 答申では、学校の実態に即した議論を行うため、審議の過程において各種調査等を参考にしており、意識調査や教育課程編成・実施状況調査など、審議会で初めて公表した、また、全国的規模の資料も含まれています。
 この連載では、答申の裏付けとなった各種調査の結果を踏まえ、各学校や各教育委員会での取組の留意点について解説していきたいと思います。

 第1回は、新学習指導要領等の周知についてです。
 答申では、新学習指導要領の実施状況について、各学校及び各教育委員会でその基本的なねらいの実現に向けて創意工夫に満ちた多くの取組が進められる一方で、新学習指導要領のねらいを十分に踏まえた指導がなされていない取組も見受けられる状況にあると指摘しています。その上で、学校によって取組の状況に差があるのは、新学習指導要領の周知が結果として不十分になっていることが一因ではないかと指摘しています。

 例えば、文部科学省が今年の6月~7月に保護者や教員、児童生徒を対象に実施した「学校教育に関する意識調査」では、保護者に対して新学習指導要領の認知度を調査しています。この調査によると、小・中学校とも約3割の保護者は、新学習指導要領が実施されていることすら知りませんでした。
 一方、新学習指導要領の説明の有無について校長・教員に聞いたところ、校長レベルでは9割以上が何らかの形で説明しているものの、教員レベルで説明をしているのは小学校で約7割、中学校で約5割どまりでした。また、趣旨やねらいだけでなく、実際にどのように授業がかわるのかを説明しているのは、校長レベルでも小学校で約7割、中学校で約5割であり、教員レベルでは小学校で約3割、中学校で約2割にすぎませんでした。

 各教育委員会においては、この結果を踏まえ、特に校長や教員に対して、改めて直接・間接に様々な方法により、学習指導要領のねらいについて、継続的かつ積極的に周知いただくようお願いします。
 また、各学校においても、具体的な取組内容を含め、新学習指導要領のねらいが正確に理解されるよう分かりやすく周知を図っていくことが期待されます。その際、意識調査によれば「総合的な学習の時間」により学校であったことを家で話すようになったと答える保護者が多く、「総合的な学習の時間」の取組を充実することは、新学習指導要領のねらいを周知する上でも有効だと思われます。

 文部科学省としては、答申の内容を周知するため、早急に学習指導要領の一部改正を行い、指導通知を発出するべく準備中であり、また、答申の内容について臨時の都道府県・指定都市指導事務担当課長会議(10月22日)や指導主事等を集めた教育課程研究協議会(10月30日~)、エルネット(10月31日(金曜日)13:00~1ch)においても詳しく説明します。
 さらに、都道府県や校長会、教員向け研修会・セミナー等にも、日程があえば、文部科学省の関係官が直接出向いて説明したいと思いますので、御希望の場合には下記までご連絡下さい。

編集後記

  • 「教育課程部会事務局だより~第1号~」はいかがでしたでしょうか。創刊号ということで、何かと至らない点もあったかと思いますが、今後とも多くの情報を迅速にお届けできるよう努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  • 今週号の小泉内閣メールマガジンに河村文部科学大臣の『これからの子どもたちに求められる「学力」とは~新学習指導要領の目指すもの~』という寄稿が掲載されています。ご覧下さい。
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お問合せ先

文部科学省初等中等教育局教育課程課教育課程企画室企画係

電話番号:03-3592-1194
メールアドレス:kyokyo@mext.go.jp

(文部科学省初等中等教育局教育課程課教育課程企画室企画係)

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