1.教員免許状の授与の仕組みの見直し

 教員を取り巻く社会状況や学校教育の現状等を踏まえ、今後、教員が幼児児童生徒や保護者はもとより、広く国民や社会から尊敬と信頼を得られるような存在となるためには、教員免許制度を改革し、教員免許状の授与の仕組みを見直すとともに、新たに更新制を導入することが必要である。その場合、教員として最小限必要な適格性及び専門性の確保を図りつつ、教員が教職生活の全体を通じて、専門性の絶えざる向上を図ることができるようにするため、以下のような方策について検討することが適当である。

現行制度において、教員免許状は、学士の学位等の基礎資格と大学の教職課程における所要の単位修得により授与される仕組みとなっており、教員としての全体的な資質能力を総合的に評価・確認した上で授与される仕組みとはなっていない。教員免許状が、適格性を含めた教員としての全体的な資質能力を確実に保証するものとなるようにするためには、現行の免許状の授与の仕組みを見直すことが必要である。その場合、具体的には、以下のような方策が考えられる。

  • 【案1】
    • 教員養成を行う大学において、教員としての適格性を適切に確認した上で、教員免許状を授与する。具体的には、例えば教育実習の評価を通じて、あるいは、教員としての適格性に関する科目を新たに設けてその履修を通じて、さらには、教職課程の履修全体を通じて身に付けた資質能力を総合的に評価する新たな方策を講ずること等により、適格性を適切に確認することとする。
  • 【案2】
    • 一定の勤務実績により、教員としての適格性を適切に確認した上で、教員免許状を授与する仕組みに改める。具体的には、大学で学士等の学位を取得し、教職課程を履修した者に対して、暫定的な免許状(一定の有効期限があり、更新不可)を授与し、その後、一定の勤務経験を積み、当該期間の勤務実績を評価した結果、適格性に問題がないと判定された場合に、正規の免許状を授与することとする。
  • 【案3】
    • 案2に加えて、教職課程の履修状況を適切に確認した上で、教員免許状を授与する仕組みに改めるため、新たに教職課程の履修者を対象とする試験(例えば、教職課程で身に付けた知識を問う国レベルの筆記試験)を実施する。

 【案1】については、大学における養成の原則や現行の免許制度の基本を維持しつつ、養成段階で適格性を含めた教員としての資質能力を確認することができるという点で、意義がある。
 他方、教員としての適格性は、教職に就いた後、教科指導や生徒指導、学級経営等を実践していく中で適切に確認できるものであり、この役割を大学における教職課程の履修や評価に期待することが適当かどうか、また現実に可能かどうかについては、十分検討する必要がある。

 【案2】については、教科指導や生徒指導、学級経営等の教員の職務全体を通じて、教員としての適格性をより確実に判定することができるという点で、意義がある。
 他方、大学における養成の原則の変更につながることや、教員免許制度が複雑になること、授与権者である都道府県教育委員会等の事務負担の増加が見込まれることなどの課題があり、これらの点について、十分検討することが必要である。

 【案3】については、教員志願者の専門性を保証することができるとともに、学校現場のニーズに対応した教職課程の改善・充実が期待できるという点で、意義がある。
 他方、教員免許状の授与における教職課程の位置づけや、教員志願者や大学の教員養成教育への影響、教員採用選考試験との関係等、検討すべき課題も多い。

 大学において教員養成を行う以上、専門性と同時に適格性を身に付けるための教育を大学において行うことは当然求められるところであり、養成段階で適格性を含めた全体的な資質能力を確認することは必要であるが、一方で、教員としての適格性を大学で確実に判定することが可能かどうかという課題もある。このため、教員免許状の授与の仕組みの見直しについては、【案1】又は【案2】の方向を基本としつつ、上記に示した課題等について、引き続き検討することが適当ではないか。

【案1】、【案2】のいずれの場合でも、免許状の授与にあたっては、学士の学位等の基礎資格及び大学の教職課程における所要単位の修得に加えて、免許状の授与権者である都道府県教育委員会において教員としての適格性に問題がないと判定されることが必要となる。

 【案1】による場合、教員としての適格性の実質的な判定権者は、教員養成を行う大学となるが、各大学において、公正かつ公平な判定が行われるよう、あらかじめ国において、具体的な判定基準を定めておくことが必要である。

 【案2】による場合、教員としての適格性の判定は、教員が所属する学校の校長等からの報告に基づき、免許状の授与権者である都道府県教育委員会が行うこととするのが適当ではないか。その場合、【案1】と同様、公正かつ公平な判定が行われるよう、あらかじめ国において、具体的な判定基準を定めておくことが必要である。また、暫定的な免許状は、正規の免許状への速やかな移行が望まれる免許状であることから、一定の有効期限(例えば、3~5年程度)を設けることが適当ではないか。「一定の勤務実績」については、教員として最小限必要な適格性及び専門性を適切に判定する上で必要な期間を設定することが適当ではないか。
 なお、この案による場合、いわゆるペーパーティーチャーのように、有効期限内に一定の勤務実績がない者については、当該免許状は失効することとなるが、多様な経歴を有する人材を幅広く学校教育に登用することは、学校現場の活性化にもつながり、有意義であることから、当該免許状の再授与の申請を可能とすることが適当ではないか(後述の2.教員免許更新制の導入(2)6参照)。

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