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第1章 障害のある児童生徒等に対する教育の現状と課題

1.現状と課題

 これまでの特殊教育においては、障害のある児童生徒等が自立し社会参加する資質を培うため、一人一人の障害の種類や程度に応じて、盲・聾・養護学校(幼稚部・小学部・中学部・高等部)並びに小・中学校の特殊学級及び通級による指導において、きめ細かな教育が行われてきた。近年、養護学校や特殊学級に在籍している児童生徒が増加する傾向にあり、通級による指導を受けている者も平成5年度の制度開始以降増加してきている。現在、特殊教育の対象となる児童生徒等は約21万6千人(全体の約1.3%)であり、このうち、義務教育段階は約17万2千人(全学齢児童生徒数の約1.6%)となっている。

 これまで小・中学部における訪問教育(通学して教育を受けることが困難な児童生徒に対し、教員が家庭、児童福祉施設、医療機関等を訪問して行う教育)の対象となっていた障害の重い児童生徒の盲・聾・養護学校への受入れが進むとともに、盲・聾・養護学校(小・中学部)においては、現在、約43.5%(肢体不自由養護学校においては約74.8%)の児童生徒が重複障害学級に在籍している。こうした障害の重度・重複化に伴い、盲・聾・養護学校においては、医療・福祉関係機関と密接に連携した適切な対応が求められている。

 また、特殊学級に在籍する児童生徒や通級による指導の対象となっている児童生徒についても、関係機関と連携した学校全体での適切な対応や、障害のない児童生徒との交流及び共同学習の促進、担当教員の専門性向上などが課題となっている。

 さらに近年、医学や心理学等の進展、社会におけるノーマライゼーションの理念の浸透等により、障害の概念や範囲も変化している。平成14年に文部科学省が実施した全国実態調査では、小・中学校の通常の学級に在籍している児童生徒のうち、LD・ADHD・高機能自閉症により学習や生活の面で特別な教育的支援を必要としている者が約6%程度の割合で存在する可能性(注2)が示されており、これらの児童生徒に対する適切な指導及び必要な支援は、学校教育における喫緊の課題となっている。

  • (注2)この調査結果は、医師等の診断を経たものでないため直ちにこれらの障害と判断することはできず、あくまで可能性を示したものである。

2.障害者施策を巡る国内外の動向

 近年、障害者施策を巡る国内外の状況は大きく進展してきている。

 1992(平成4)年に国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP(エスカップ))が決議した「アジア太平洋障害者の十年」の最終年に当たる2002(平成14)年、この「十年」がESCAP(エスカップ)総会において我が国の主唱によりさらに10年延長され、同年10月に滋賀県で開催されたハイレベル政府間会合において、すべての人のための障壁のないかつ権利に基づく社会に向けた行動課題「びわこミレニアムフレームワーク」が採択された。

 また、「アジア太平洋障害者の十年」が始まることを契機として、障害者の自立と社会参加の一層の促進を図ることを基本理念として、心身障害者対策基本法の一部改正により、平成5年12月に障害者基本法が公布された。障害者基本法は、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進し障害者の福祉を増進することを目的としているが、平成16年6月に一部改正され、基本的理念として障害者に対して障害を理由として差別その他の権利利益を侵害してはならない旨が規定されたほか、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流及び共同学習の積極的推進による相互理解の促進についても規定がなされた。

 さらに、平成14年12月、平成15年度を初年度として10年間を見通した障害者関連施策の基本的な方向を盛り込んだ新しい「障害者基本計画」が閣議決定された。障害者基本計画は、新長期計画における「リハビリテーション」及び「ノーマライゼーション」の理念を継承するとともに、障害者の社会への参加、参画に向けた施策の一層の推進を図るため、10年間に講ずべき障害者施策の基本的方向について定めたものであるが、この中において、障害のある子ども一人一人のニーズに応じてきめ細かな支援を行うために乳幼児期から学校卒業後まで一貫して計画的に教育や療育を行うとともに、学習障害、注意欠陥/多動性障害、自閉症などについて教育的支援を行うなど教育・療育に特別のニーズのある子どもについて適切に対応することが基本方針として盛り込まれた。

 また、現在、LD・ADHD・高機能自閉症等に関して、早期発見、早期療育、教育、就労等に対する国及び地方公共団体等の責務を明らかにすること等を目的とした議員立法(「発達障害者支援法案」)の検討が進められるなど、発達障害者・児に対する総合的な支援の充実が重要な政策課題となっている。

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