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6.今後の展開について

6.6 インターネットを利用した生涯学習情報提供についての私見

はじめに
   近年、インターネットを中心とした情報通信環境において、我が国のブロードバンドネットワークは世界で最も低廉且つ高速な世界最高水準のものとなった。地方でも社会資本整備として情報通信インフラが整備されつつある。しかしながら利用者の情報リテラシーには地域ごとに格差が見られ、公共あるいは民間による一層の支援が望まれる状況である。
 本検討会における委員の報告や協議において得られた今後の課題や展望を私なりにまとめておきたいと思う。

1. コンテンツの流通について
 
コンテンツの流通を促進する、企画者にとっていい事例は共有することによって有効に活用され、また学習者にとっていいコンテンツはみんなで利用したいところであろう。一次情報の説得力はそのコンテンツを作った人である情報を持っている人本人からの発信がまずは重要だが、それをどのように活用してもらう状態にするかを考える必要がある。情報化時代にキーワードは共有化や利用促進である。
利用を促進するには著作権の問題があるので、再利用ができるような著作権契約をする必要がある。
様々な組織・団体間でお互いに共有化、再利用できるあり方を整理する必要がある。NICERで行なうことによってそのモデルに成り得る。
利用促進によって生涯学習の幅を広がるが、同時に質の保証が必要である。どう保障するかが今後の課題である。

2. 学習目的・学習相談について
 
学習者が学習したい事柄について完璧に理解していない場合は、学習者が求めている情報が的確に検索できるとは限らない。そのため何らかの補助が必要となる。自己学習が基盤であるからこそこのような補助は重要である。これは検索の意欲また、調査したいという意欲とも言える。学習者は遥か遠くの情報をあつめてどうなるのという意識であり、学習情報をインターネットを通じて活用しようという意識が弱いのが現状ではあるが、目下のところは意識と行動の間のつながりがないので、ここをどうするかが今後の課題である。
学習者が講師になったり、講師が学習者になり得るという、双方向性と表現するかコンパチビリティという表現なのか、という状況がある。学習が発展し、中身が深まっていくと、学習者は受け身ではなく、講師やサポーター、学びの場のプロデューサ等、色々と変化していくと思われる。
学習者、講座提供者に加えてその間をつなぐ第三者がいるケースがある。学習者が学習したい事柄について完璧に理解していないケースなどである。学習者でも講座提供者(企画者)でもないその第三者は、講座をやってくれる講師と受講者との間で色々と悩んでいる人たちをサポートする役目がある。know who?(誰が知っているか)という情報あたりがまずは第一歩である。
生涯学習ディレクターをアシストするような公的な情報提供が必要である。地域で生涯学習を進める主役は自治体ではなく、自ら学びの場を作って行くような市民講師である。
生涯学習ディレクターが主役になって、学び場を作っていく情報提供があると良い。

3. 学習者について
 
主体的に学ぶことを決める能力のある人については、ネットワーク上に国としてのデータベースを構築し、各地域の学習情報を体系的にまとめ、所在情報を明確に示すものを構築することが学習者にとって非常に役に立つと思われる。今回NICERで実現したものは正にこれである。
学習者は地域で学んでいくが、地域における学習だけでなく、インターネットを通じて地域を越えた学習の可能性もあるそこで学習者コミュニティにおけるSNSの可能性がある。
eラーニングやVOD等新しい形の生涯学習によって、どこにいても他の作ったコンテンツを見ることができ、都道府県市町村レベルにとどまらない生涯学習コンテンツの利用が考えられる。

4. e-learningという観点から
 
この観点から生涯学習を見ると、ブレンディングとメンタリングの点が今後の研究テーマとなり得る。
ブレンディング:遠隔と対面授業をブレンディングする講座は、遠隔のみの生涯学習と比べても、学校教育と比べても生涯学習では有効であろう。生涯学習では、学習者は地域で学ぶのである。この場合、学習内容・受講者数・受講場所・受講者の属性によって、ブレンディングがどのような効果をあげるか、また、ブレンディングの方法でどのような効果の違いがあるかというのは、今後の実践事例の報告で興味があるところである。
メンタリング:ブレンディングと同じく、学校教育と比べても生涯学習では有効であろう。メディアの種類や受講者数によってメンターの数をどの程度にしたらよいか、また、様々な受講が想定される生涯学習の特性に対応できるメンターの質とは何か、更にはメンターを養成するしくみをどうするか、という興味深い点がある。

国立教育政策研究所教育研究情報センター研究官 福本 徹


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