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6.今後の展開について

6.1  事業企画者への情報提供の充実
 
(1) 市町村の行政担当者のニーズ
   ここではまず、市町村の行政担当者の情報提供に関するニーズについて、国立教育政策研究所社会教育実践研究センター(以下「社会教育実践研究センター」という)において実施した調査研究から考えてみる。
 図6.1−1と図6.1−2は、平成15年度に社会教育実践研究センターで実施した、「生涯学習センター等と市町村との連携方策に関する調査研究」における調査結果から引用したものであり、市町村の社会教育関係職員の、都道府県立の生涯学習センター等(以下「県の生涯学習センター」という)に対する期待を調査したものである。図6.1−1では、期待する大項目の一番目に「情報の提供」があげられている。以降、「養成研修」「研究開発事業」の順となっており、「施設・設備の充実と利用の促進」というハード面に関しては、他と比べて期待が低くなっていることがわかる。
 「情報提供」の具体的な小項目については、図6.1−2に示すように、「市町村職員をサポートする情報ネットワークの開発」「住民や職員の活用のしやすさに配慮した生涯学習情報提供システムの改善」「県からの国や県の生涯学習関連情報の提供」となっており、いずれも上位に入っている。情報収集・提供システムは市町村職員も直接利用できることを考えあわせると、国の情報システムへの期待にもつながるものであるといえよう。
図6.1−1 県の生涯学習センターに対する市町村のニーズ(大項目)

図6.1−2 県の生涯学習センターに対するニーズ(全項目)
 これらの小項目の中で、「市町村職員をサポートする情報ネットワークの開発」という項目が一番多くなっているが、情報収集・提供においては市町村職員の職務をサポートするような情報も盛り込んでいくことが必要であるといえる。具体的にどのような情報を市町村職員が求めているかについては調査を行っていないが、社会教育実践研究センターの資質向上事業に参加している行政職員からの情報などから類推すると、「学習プログラム」「事業予算」「事業実施における連携先」等の情報が必要なのではないかと考える。
 「住民や職員の活用のしやすさに配慮した生涯学習情報提供システムの改善」についても比較的高い期待があり、日頃から地域住民に接している市町村職員は、住民の利用も含めてさらに活用しやすい生涯学習情報提供システムを求めているといえよう。
(2) 企画者に対する情報提供の状況
   ここで、企画者への情報提供の一例を示す。図6.1−3は、岡山県生涯学習センターが運営している、「ぱるネット岡山」のトップページの画面である。このシステムの特徴としては、生涯学習担当者・学習相談員対象のページが用意されているところである。
図6.1−3 岡山県生涯学習情報提供システム「ぱるネット岡山」のトップ画面
 図6.1−4は、生涯学習担当者・学習相談員対象のページ画面であるが、講座・講演情報から、学習プログラム情報まで、企画者として得たい情報が得られるようなシステムなっている。これらの情報を得るには、ユーザー登録が必要となっており、一般の利用者には閲覧できないようになっているが、このような企画者専用のページを設置することは、市町村職員をサポートするという観点からも、非常に有効なものと思われる。また、このシステムでは、生涯学習担当者用掲示板も設置しており、担当者同士のネットワークづくりにも活用されている。
図6.1−4 「ぱるネット岡山」生涯学習担当者・学習相談員対象のページ
(3) 今後の展開
 
a) 情報の収集について
   学習者向けの情報の収集については、eラーニング等の遠隔学習のコンテンツも充実してきており、国としては都道府県・市町村の学習情報を広域的に収集し、学習者に対する多様な学習機会の情報提供を支援することが必要となってくると思われる。
 また、企画者向けの情報の収集については、効果的もしくはトピック的な事例について、事業の企画や運営に必要な情報を収集する必要がある。近年、各地域において生涯学習に関する予算の確保も難しくなってきており、各地域の情報を情報提供システムで共有することにより、予算要求や事業評価の際の基礎資料として活用してもらうことが期待される。
 いずれの場合も、情報の収集方法が問題となってくるが、学習者向けの情報については必要な情報について、リンク集を作るなどして情報の所在を知らせることで、一定の成果を収めることができるのではないかと考える。また、企画者向けの情報についても、情報源情報として必要かつ最低限の情報を収集することが大切であると考える。その際、収集の趣旨を周知して協力してもらえるような体制を作ることも必要である。
b) 情報の提供について
   情報の提供については、収集した情報を単に提供するだけでなく、評価・分類して利用者が効果的に活用できるようにする必要がある。例えば、収集した情報を現代的課題等で分類することにより、学習者にとっては受講したい講座に早くたどり着くことができる。それに加えて、地域別の情報では検索が難しい遠方の講座情報でも、課題別の分類であれば、遠隔講座等の情報が得られる可能性もある。
 企画者向けの情報提供についても、同様に分類することにより企画したい講座の関連情報を容易に検索することができる。さらに、同じテーマの事業を複数参考にすることができ、事業の企画を効果的に支援するものと思われる。学習プログラムに関する情報についても、少なくとも事業の日程表が掲載されていれば、担当者としては非常に参考になるものであろう。例えば、現在のフリーター・ニート対策など、その時のトピック的な課題について、先進的に実施した事業の状況が分かれば、企画者は、新規企画の立案の際の参考に資することができるようになると考える。
(4) まとめ
   以上、生涯学習情報の収集・提供について、現状と今後の展開について述べてきたが、システム構築の際には、ユビキタス社会の到来を見据えながら、効率的かつ効果的に行っていく必要があると考える。情報の蓄積については、インターネット等の普及により分散型で行うことにより、システムの規模を小さくすることができるのに加えて、いつでも最新の情報を利用者に提供することができるであろう。
 最後に、情報提供システムは利用者の範囲として、基本的には学習者向けということになろうかと思われるが、冒頭の調査研究の結果から分かるように、市町村の企画者も事業に関する情報を求めており、そのような情報を提供することができれば、結果として各種事業・講座等の充実につながっていくものと思われる。

  国立教育制政策研究所社会教育実践研究センター専門調査員 井上 昌幸

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