特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議(第3回) 配付資料

1.日時

平成20年9月8日(月曜日) 13時30分~16時

2.場所

中央合同庁舎第7号館 東館3階 文部科学省 3F2特別会議室

3.議題

  1. 菅原委員による説明
  2. 江本委員による説明
  3. 山岡委員による説明
  4. 自由討議
  5. その他

4.配付資料

5.議事要旨

  • (1)高倉座長より挨拶が行われた。
  • (2)事務局より配付資料の確認が行われた。
  • (3)事務局より、平成21年度概算要求主要事項の概要について説明された。
  • (4)菅原委員、江本委員、山岡委員より特別支援教育の現状と課題等について説明された後、質疑応答。その後、自由討議となった。その概要は以下のとおり。

概要

菅原委員の説明について

【委員】
 資料中に個別指導計画の作成と活用についての記載があるが、個別の教育支援計画的なものなのか、又は個別の指導計画を併せ持つようなものか。

【発表者】
 通常の学級においても、医療機関にかかって診断名がある子どもについては、できるだけ個別の教育支援計画を使い連携するよう取組を進めているが、まだその専門機関との連携が十分ではないので、今回は個別の指導計画に限定して説明した。

【委員】
 発達障害等の子どもの教科書については、レイアウト、色彩、文言等も含めた構造的な視点での検討が今後必要になる。それが、発達障害等がない子どもにとっても分かりやすい教科書になっていくもとになると思う。

【発表者】
 全ての先生が同じような授業をできるよう、板書の仕方や、ワークシートの作り方、発問の順番等、授業をどのように展開していくのかということを想定しながら教科書を作ってほしい。

【委員】
 現在、特別支援学校に先行して幼稚園教育要領と小・中学校の学習指導要領が改訂されているが、特別支援教育は全ての教科等の基盤となるものであるという視点で考えると、幼・小・中よりも特別支援学校部分が先行しても良い時代に来ているかと思う。それをもとに、特別支援教育の視点も含めた教科の専門性を打ち出していくということについても検討してほしい。

【発表者】
 学習指導要領について一番大きな課題は、自立活動の部分。特別支援学校学習指導要領解説の自立活動編と総則等編等を併せて使用し、そこから課題を選択して個別の指導計画を書いたりするが、実際に通常の学級にいる障害のある子どもたちにそれを使おうとしても、非常に分かりにくく、特別支援教育の勉強をしてきていない先生方が全く使えないのが現実なので、内容を見直してほしい。
(江本委員の説明について)
【委員】
 特別支援学校、特に肢体不自由特別支援学校において、保護者の立場から、一番重要であると思われる、又は困難な点等、気になるところは何か。

【発表者】
 本来、在校生全員に個別の教育支援計画が作成されて実施されていくというのが一番望ましいが、在校生が多いこともあり、なかなか進まない。現段階では保護者が関係機関を飛び回っているのが実状。
 また、障害の重い子が大変増えており、先生が障害を十分に理解した上で授業をするというところまでにとても時間がかかる。先生の専門性が上がってきても、先生が異動してしまうと、親も子も先生もまた一から始めなくてはならず、それが在校中に何回も繰り返されてしまう。

【委員】
 例えば、PT、OT、ST等、学校の中に専門職がいた方が良いという意見等もあるが、保護者としてどう考えるか。

【発表者】
 約10年前、親たちは盛んに、当時の養護・訓練についてリハビリの意味で、専門職であるPTやOTの導入の運動を随分していた。現在、PT、OT、ST等の専門家が学校全体を見回し、教員へ指導をするという形での導入は始まったが、教育職ではないPT、OT等が直接子どもを指導できないことから、保護者はリハビリの意味では、PT、OT等に自分の子どもを直接指導してもらうために医療機関へ通院しているのが現状。現在進められている専門家の導入は、リハビリという意味合いではなく、授業、生活面等で教員や親が気づかなかった部分への専門家ならではのサポートであることの理解が(全体としては)まだまだ親にも教員にも浸透していない。

山岡委員の説明について

【委員】
 説明資料に「知的障害を伴わない発達障害を中心に」という記載があるが、就学指導においてもそういった視点なのか、あるいは、これは全般にかかわることなのか。

【発表者】
 就学指導や制度の問題等、障害全般にかかわる提言と捉えていただきたい。

【委員】
 説明にあった、従来の特別支援学校、特別支援学級、通級、通常学級の各制度について、制度間の「落差」がある、とは具体的にどのように解釈すれば良いか。

【発表者】
 通常の学級だけに通うか、通級による指導を受けるかということについては、非常に落差がある。通級指導教室に通うということは、通常の学級の中を抜けて行くので、それだけでも子どもにとっては精神的なプレッシャーになるほか、からかわれたりいじめに遭ったりするケースもある。また、特別支援学級については、週に3時間から8時間程度の取り出し指導である通級指導教室とは、在籍学級も、指導時間も違うという大きな落差がある。さらに、特別支援学校についても、地元の学校ではなく、違う学校に行かなくてはならず、大きな落差がある。制度的なものと心理的なものとの両方で大きな落差があるというものである。

【委員】
 説明資料において、「将来的には計画作成と評価は担当教員以外が行う」と提言されているが、具体的にどのような要員を想定しているのか。またその理由は。

【発表者】
 現在、個別の教育支援計画は別かもしれないが、主として個別の指導計画について、担任の教員が作り、実行し、評価をしているかと思うが、民間企業ではそのようなことはあり得ない。全部自分でやって自分で評価するというのはなかなか許されない時代であり、合理性を欠く。基本的に計画の策定は、外部の方や専門の方が作ったり、あるいは実行する方と相談をしながら作る。実行する方は実行する。そして、評価については、自己評価ではなく他者評価を受け、あるいは、モニタリングを受けて、しっかりと次へつなげていくというのが本来的な姿ではないかということを提言している。

【委員】
 支援を必要としている子どもが必要な専門的支援をきちんと受けられるということに加えて、その子たちが本当にその地域の中で生きやすくなるためには、周りの子どもたち、周りの人たち、地域の人たちが、その子とどれだけ接したか、一緒に過ごしたかということがとても大きな意味を持つと思う。そういう意味で、地元の学校に在籍し一緒に過ごす時間をできる限り多く確保するというような考え方が根本にない限り、いくら特定の子どもへの専門的な教育を行ったとしても、決して住みやすい世の中にはならないのではないかと思う。

【委員】
 説明資料にある校内委員会や特別支援教育コーディネーター等の整備状況のアンケート結果について、「ありますか」「役立っていますか」という観点で記載されているが、「役立っているか」という実効性や有効性等の測定について、具体的な調査の方策というものはあるか。

【発表者】
 単に「役立っていますか」と親に聞くだけ。その理由を確認していき、それを踏まえ問題点等について注文をつけさせていただきたいと考えている。

【委員】
 説明資料において、特別支援教室を制度化し連続性のある体制に転換するということを提言しているが、個人的には、特別支援学級や通級指導教室は必ず存続してほしいと思っている。特別支援教室の制度化について、特別支援学級、通級指導教室はどういう形でイメージしているか。

【発表者】
 基本的には、現在の特別支援学級のような型、今の通級指導教室のような型、地域によっては巡回による型、等の3つ程度の組み合わせで、その地域に応じて作っていく。ワンパターンではなく、いくつかの型を組み合わせて運用していくので、現在の特別支援学級のような、全ての時間同じ場で教育を受ける教室がなくなるということを想定しているものではない。

自由討議

【委員】
 就学指導について、現時点で何が課題かを考える際には、歴史的な推移も考慮に入れることが重要。例えば、認定就学制度が平成14年にできたが、なぜ認定就学制度ができたのかということについて、歴史的な課題等を含めて、もう一度考えてみる必要がある。また、認定就学が今後どのような形に変容していくのかということについても、考慮に入れるべき。
 また、就学指導そのものや、就学相談と就学指導について、あるいは、どれだけのスパンで就学指導又は就学相談をするのか、どれだけ、又はどのように、他者・他機関と関連づけていくのか等や、科学・医療・教育・福祉等の様々な視点を今後さらに明確にしていかなくてはならず、時間をかけて集中的に論議する機会を設けていただきたい。
 就学指導については、障害者権利条約の問題等も含め、非常に関心が高いので、ぜひ第1次検討部会を開いていただきたい。

【委員】
 山岡委員より、現状の就学指導の問題点として、通常の学級から特別支援学級、特別支援学級から特別支援学校へのというように、移籍の方向が一方向しかなく元に戻ることが想定されていないという「硬直性」の問題や、6歳秋の一時点で全てを一発で決めてしまうという「一発振分方式」の問題等が挙げられたが、例えば、1年間の様子を見てその就学は適切であったかもう一度見直す等、現在の就学指導の体制の中でも、取組みの仕方、あるいは取組む人の意識によって、硬直性についてはかなり改善しているところもあり、そのような取組みの方向性は有効ではないかと思う。一発振分方式と硬直性とはある程度リンクする問題であり、法的あるいは行政的なシステムの検討も必要かということも含めて、現在の法的あるいは行政的なシステムの中で硬直的あるいは一発振分方式ではない方向に持っていくことの有効性等も検討していくことで、ある程度の現実的な方向性が出せるのではないかと考える。

【委員】
 就学指導の硬直性の問題については、就学指導が1年で終わるという発想はなく、あくまで継続的に行うことが前提とされており、それをどれだけ意識化させていくかが重要なのであって、一方向になっているという認識はしていない。必要性があって通常学級の方向にベクトルが向く子どももいるが、そのような子どもが少ないという現状があるので、硬直性があるというような見方になってくるのではないかと思う。

【委員】
 山岡委員より、特別支援教室構想を含めた連続性・柔軟性のある制度について説明があったが、予算措置の観点から考えたときに、ある一定の境目が明確にされていないと、制度として求めていくのは難しいのではないか。また、特別支援教室構想は理想的ではあるが、逆に現在の法的な制度である特別支援学校や特別支援学級に対する定数措置の部分が弱くなる可能性もあるのではないか。そのように、制度的な難しさということも踏まえて考えていく必要がある。

【委員】
 就学指導における硬直性の原因として、学校側が保護者の意向に逆らえないということが一番大きいのではないか。地域差があるかもしれないが、自分が係わっている子どもたちの中で、特別支援学級から通常学級に逆戻りする子は多い。子どものニーズを保護者がしっかり認識すれば、現在、全く硬直していないと思う。一発振分方式についても、自分が係わっている子どもたちに関しては、試行錯誤は2月まで許されており、大体迷った場合には体験入学ができ、体験入学をすると本当にそこでやれるのかどうか一番よく分かるので、特段の問題はないのではないか。むしろ、教員の専門性の保障が一番大きな論点であり、そこを押さえない限りは、適正就学どころではない。

【委員】
 ほかの子どもたちに障害の存在を知ってもらうということは確かに大切だが、障害のある子に対してきちんとした教育がなされないのに一緒に教育するのは、形を変えた放置である。例えば、聴覚過敏性のある子に、理念としては正しいとしても、音楽教室に一緒にいることが本当に優れた教育になるのか。

【委員】
 子どもの状態に合わない状態で一緒にいるべきということではなく、どのくらいの時間、どういう場面でほかの子どもたちと一緒に過ごすのかということを、できる限り、個別の指導計画においても明記した上で、一緒に過ごす時間を保障することが重要。

【委員】
 現在、多様なニーズを抱えた子どもが増加傾向にあり、学級担任の先生が、そのような子どもを抱えながら、教科書、学習指導要領を踏まえ、校内研究を中心にして、日々の授業改善の中で、ピンポイントで個に応じた指導をどのように行っていくことができるかということが、大きな課題になっている。

【委員】
 小・中学校において、障害のある子どもが潜在的にとても多いという実情があると聞いているが、最近では、肢体不自由特別支援学校においても、肢体不自由としては軽度な子で、どちらかというと知的障害が重いような子が増えてきており、特別支援学校の多様化や、子どもたちのニーズの多様化が目立ってきたという実感がある。

【委員】
 学校にいる全ての通常の学級の先生が高い専門性を持つのは現実的に恐らく無理であり、発達障害を含めた障害のある子どもに対して、学校全体で対応できるようなシステムを作ることが必要。必要に応じ、先生のほかにもボランティアや学生支援員、PT、OT、ST、心理士等が支援に入ったり、校内委員会のほか、ケース会議や学年の会議等により、チームで支援ができる体制を作っていくことで、通常の学級の中での支援はできると考える。

【委員】
 校内委員会や特別支援教育コーディネーターが整っている現状で、今後はそれをいかに活用していくかが重要。校長のリーダーシップはどのように発揮していくのかということも考えながら、特別支援教育推進体制の整備という議題についても臨んでいきたい。

【委員】
 「専門性」について、通常の学校における専門性と、特別支援学校における専門性とは、まとめ方が異なってくるので、分けて議論していただきたい。今は通常の学校における発達障害を含めた障害のある子どもに対応する専門性という議論をしていただき、その後、特別支援学校における5障害のそれぞれに特化した専門性について議論していただければ、より集中的に検討できるのではないかと思う。

【委員】
 学校の中には、通常の学級に入ってから、その後特別支援教育免許状を取得しているケースも多い。教員誰もが持たなければならない最低限の特別支援教育に関する資質、知識、技能等をどうするのか、そして、特別支援教育に携わる者であれば何を持っていなくてはいけないのか等を踏まえて、現職の先生方の問題と、これからの教員養成や教員採用はどうあるべきかという問題を考えていく必要があるかと思う。

【委員】
 学校の中での教員の理解不足、認識不足、校長の認識不足というような指摘もあるが、まず体制を整えることが大事であり、例えば、文部科学省から出された平成19年の「特別支援教育の推進について(通知)」によって、校長の責務や校内委員会、コーディネーター等を最初に位置づけるということについては成功したのではないかと思う。現在、学校において様々な問題点や課題はあったとしても、まずはある程度体制を整備し、その中で現状をどう活用するのか、あるいはどう変えていくのかという視点も必要なのではないかと感じる。

【委員】
 特別支援学級が増加していく中で、初任者が着任して、指導教官もおらず、主任の経験も浅く、誰に聞けば良いのか、あるいは誰をモデルにすれば良いのかも分からないという、厳しい問題が実際にある。また、現在、教員には対応力というものが強く求められており、模擬授業というものを活用した上で、指導技術を向上させることが大事なのではないかということが考えられているので、今後の研修の在り方としては、実践的・具体的なものがより一層求められてくるのではないかと感じている。

【委員】
 通常教育の先生方は、教科教育のプロである。教科教育をするということ自体が、子どもの成長と進歩を強く支えるものだということをもう一回見直してほしい。心理士が病院で子どもに学習指導をすることで、自閉症圏の子の過敏性がよくなり、不登校が治ったり、社会性が増したりするのを目にし、スクールカウンセラーより、学校に特別支援教育の専門性のある教師を1人配置したほうが、子どもたちの心のケアにもなるのではないかと思った。教科教育をきちんとスペシャルニードのある子に行えるということが本当の専門性だと考える。

【委員】
 教科指導を充実することで、その子の持っている良さを引き出したり、集団の中で周りの子が他者を理解していくということもできるようになると思う。基本的には自分の持っている専門性、中学校で言えば教科の専門性、小学校で言えば全科の専門性になるが、それらを高めていきながら、ただ、目は必ず全生徒一人一人に向けていくということも必要である。

【委員】
 最終的には、専門性を発揮しなくてはならない場面で、その物事に対してどれだけ真剣に向かっていくかという、そのような資質が大事だと思う。また、保護者の方も、教師の悪いところばかり見るのではなく、良いところ等について関心を持つということも大事。

【委員】
 教師が相互に認め合うこと、それぞれの力量をお互いに大事にし合うということが、これからはますます大事になってくる。大事な仕事はお互いに認識し合って進めていく等、日常生活の中での人を大切にする意識や、チームワークの向上のための努力が重要。
 教科の専門家が、それを武器にして重度重複障害の子どもに対する専門家になれるかというと、医療的ケアのケースなどはそんなに甘くはない。そのような医療的なケアの必要な子どもに対して、本当の母親のように対応している教師も特別支援教育の中にはいるという事実も、お互いに見合っていくことで分かる。

【委員】
 特別支援教育の推進体制について検討する中で、例えば、通常の学校において、障害のある子どもたちがどの程度入ることを想定して、あるいは当然いることを前提にして、学校経営・学校教育の実施を踏まえた検討を行うのかということについては、きちんと確認すべき。特別支援教育の理念は、どの教員も否定できない大切なものだが、例えば、全国学力・学習状況調査の実施等、確かな学力をつけることが教員としての専門性だということが強調されている部分もある。そういう中で、教育そのものが、理念としてこういうものをこれから打ち立てていくということを、きちんと学校に伝えていくことが前提になるかと思う。

【委員】
 教科教育によって物事を分かったり発見したりすることは、子どもたちを伸ばしていく上で大きな力になるが、そういったことを分からせるときに、障害のある子には、そのやり方が違う子がいるのではないか。それをしっかりと踏まえて対応することで、本当の教科指導の力がそこで発揮されるのであり、教員全員が完全に様々な障害特性について理解していなくても、組織として学校全体がそのような方向にいくということも、考えていかなくてはならない。

【委員】
 通常の学級の中で特別な支援を必要とする子どもがいるときに、子どもたちが自分をコントロールでき、自尊感情を失わないような個の指導と、子どもたちが安心して過ごせるような集団の指導は両輪であり、それらをきちんと行うことが重要。

【委員】
 特別支援教育に係わる教員の新たな配置については考えていないのか。また、当市では、大学と相互連携協定を結んでおり、運動会や体育祭、宿泊体験等に大学の学生にも来てもらっているが、子どもとの年齢的な距離も近く、うまくいっている。事務局からの平成21年度概算要求主要事項の概要説明において、学生支援員の活用について挙がっているが、具体的にはどのような活用の仕方をするのか。

【事務局】
 来年度の概算要求において、小中学校の特別支援教育体制の整備という観点からは、今年度に引き続き、通級による指導の教員の増員を図っていきたい。今年度171人増やしたが、来年度は352人という形で概算要求をしている。特別支援教育支援員については、小・中学校で今年度3万人分の措置がなされたが、現在約2万6千人の配置状況であり、来年度については、財政措置上は3万人を維持し、市町村の取り組みを促していきたいと考えている。
 学生支援員については、様々な都道府県、市町村で活用があると思う。このように活用しなくてはならない、ということはないが、特に教員養成系の学生が学生支援員になって、実際の指導にあたる、経験するということが重要と思っている。そういう意味で予算措置をしているが、実際どう使うかは、都道府県及び市町村にある程度委ねられている。

【委員】
 専門性のある人材の育成については、まずは教員養成時に特別支援教育を必須とするということが重要。例えば養護学校や知的障害等についての知識が全くない学生もおり、専門性以前に、教員養成の段階での啓発が必要なのではないかと思う。

【委員】
 当県でも障害のある児童生徒が、より地域で学びたいという強い希望があり、山岡委員の説明にあった「在籍は全員地元の学校とし、必要に応じて、通級指導教室、特別支援学級、特別支援学校などの特別な場で教育を受けることができる制度の構築を目指すべき」という提言について、一人一人のニーズに対応した教育を行うためには、そのような方向性が良いと思う。定数上の扱いがクリアできれば、全ての小中学校に特別支援教室を設置する方向に持っていくことができ、そして特別支援教室と特別支援学校のセンター的機能とがリンクすることで、様々な障害のある子どもへの対応が可能になるのではないか。

【委員】
 高等学校全体では、ようやく職員研修が始まったばかりではないかと思う。当府では特別支援教育課のほか、高校については高校教育課が扱い、教員の人事は教職員課が行っているが、必ずしも行政の中での連携はできてはいない。他府県の話を聞いても、生徒の状況により、高等学校における対応は様々。また、当高校にも、発達障害のある生徒を受け入れているかという一般の方からの問い合わせがくることがある。

【委員】
 特別支援学級に配属された発達障害のある児童の例だが、学級担任と合わず、結局、小学5年生の後半に登校拒否になった。自分はそのときから相談を受け、校長先生とも話したが、結局、それを打開することはできず、隣県の学校に転校することになった。その学校は、それまで障害のある子どもに係わったことはなかったので、今まで親が勉強した先生たちを学校に呼び、その本人にとってはどのような教え方が良いのか等、全教師が集まって勉強会を始めた。中学頃からその効果が出始め、校区の中学校の中で成績のトップに立ち、最終的には東京大学に入学した。このケースでは、たまたま良い先生、良い学校に巡り合い、自分の力を伸ばすことができた。専門的な分野と、障害のある児童生徒の状況をしっかりと受けとめる人間性等、教師としてあるべき基本的な資質というものがあると思う。本人が持っている能力を学校あるいは教師がむざむざとだめにしているかもしれず、親もはっきりと子どもの状況を把握しなくてはいけない。これらの問題をどのように整理していくかが重要。

【委員】
 今後、就学指導を含めて、特別支援教室構想等、制度の在り方を考えていくときに、障害種別の枠を外した特別支援学校の在り方の中でも専門性は非常に求められているのと同じように、小中学校でも特別支援教室をつくった場合、障害種別に対応した専門性をしっかりと担保できるような仕組みを作っていくことが重要。例えば、弱視の子どもと情緒障害の子どもとが一緒の学級で、本当に先生がしっかりと指導ができるのかを考えなくてはいけない。

【委員】
 特別支援教育をどのような理念で進めていくかということを各学校にしっかりと伝えていくということについては、昨年の4月の「特別支援教育の推進について(通知)」や平成17年の12月の「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)」の中でも、メッセージとして伝えているが、現在、その更なる充実が求められている。各学校ではそのような努力がなされているが、その仕組みを再度確認しつつ、当会議においてはそのメッセージを広く国民に伝えていかなくてはならない。

【委員】
 特別支援学校の専門性と小中学校の専門性については、現場で求められる総合力という視点が大事になる。教科対応についても、その子の障害理解がまずベースにあって、その上で教科に対応する力がなくてはいけないのではないか。どのような対応をすれば子どもが伸びていくのかというような対応能力が求められており、そのような視点から論議をしていかなくてはならない。特別支援学校の専門性と小中学校の専門性とを分けて論議することは良いが、その共通性も考えていかなくてはいけない。

【委員】
 就学指導については、集中して論議をしなくてはいけない、大きな課題。各教育委員会でも、就学指導というよりは就学相談という色彩を強めており、かなり柔軟な仕組みに今なりつつあると思う。しかし、制度設計上は、現在の就学指導における課題についてしっかりと答えられる仕組みにしなくてはならない。

  • (5)事務局より今後の会議の運営について説明があり、閉会した。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

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(初等中等教育局特別支援教育課)