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学校の組織運営の在り方を踏まえた教職調整額の見直し等に関する検討会議(第1回)議事要旨・配付資料

1.日時

平成20年5月29日(木曜日)10時〜12時

2.場所

文部科学省東館5階第1会議室

3.議題

  1. 座長の選出等
  2. 討議
  3. その他

5.議事要旨

概要

  • (1)金森初等中等教育局長より挨拶が行われた。
  • (2)事務局より配付資料の確認が行われた。
  • (3)委員の互選により、座長に小川委員が選出された。
  • (4)その後、自由討議となった。その概要は以下のとおり。

    【委員】

     これから何カ月かにわたって議論を進めていくわけですが、その議論を進める上での論点の整理や、さらにこういう論点が必要ではないかというご意見もあるかと思います。今後の審議の方向性にもかかわることですので、まず、全体的にいろいろ出していただいて、論点と検討すべき課題というのを確認できる機会にできればと思っていますので、どうぞご自由に各委員のほうから質問、ご意見等を出していただければと思います。

    【委員】

     国立学校や私立学校の教員については、もう既に基本的に時間外勤務手当が支給されていると聞きました。私立はそうだろうと理解できるのですが、国立大学の附属学校における勤務時間の管理とか、自己申告制の有無とか、そういうものはどういう状況なのでしょうか。

    【事務局】

     国立に関しましては、国立大学が平成16年度に法人化されたときに、基本的に非公務員、職員はすべて公務員ではないという形になりましたので、労務管理等についても民間と同じ形ということで制度改正がなされまして、そのときから労働基準法が基本的に全面的に適用されております。ですから、民間企業、あるいは私立学校と同じような形に制度上はなっております。
     それで、附属学校の状況につきましては、かつて何校かにお聞きした範囲では、制度上は労働基準法が適用されて時間外勤務手当という形になっておりますが、実際としては公立との人事交流もありますので、公立学校教員との均衡も考慮した上で、4パーセントの教職調整額的な定額の手当的なものを出して、それで残業時間はそれ以下の時間に抑える対応をしているところが多いと聞いております。
     勤務時間管理についても、非常に厳しい形での勤務時間管理というような形ではなくて、制度改正前のものと同様な状況にあるところがまだあるようです。しかし、制度上はすべて民間企業と同じような形の対応になるということになっております。

    【委員】

     実は私学の場合には労働基準法適用で、労使交渉でという話で厳格な勤務時間管理とか教員評価が実施されているのではないかという先入観があるが、私もそういう先入観で、この問題についてデータが欲しいということで調べてみたところ、意外と私学の多くというのは教員評価をやっていないし、厳格な時間管理もやっていなくて、公立の教職調整額と似たような運用をやっているようなところも結構あるんだということが調べてみて初めてわかりました。

    【委員】

     私が知っている範囲では、私学でも厳格な時間管理はしていないですね。

    【委員】

     私も私学が時間外勤務手当を事実上教職調整額的に支給しているというのは伺ったことがあります。今回のもともとの話というのは、メリハリをつけるべきだという結論のほうが先にあって、それでメリハリがついていない教職調整額を見直さざるを得ないという話になってきたというのが大枠です。しかし、仮に民間、つまり、私立学校で労働基準法を適用して、教職調整額を使っていなくても、一律的な支給であれば、そもそも教員という分野はそういう特殊なものなのだというほうが論理として出てくるかもしれません。ですから、私立学校における給与についてどの程度、いわゆるメリハリをつけているかどうかもあわせてわかりませんと議論が進みません。教員の職務の特殊性というもの、要は公共部門、民間部門を通じて同じあって、かつ、ほかの労働者と違うというのがはっきりすれば、これは論拠のあるものになりますし、そうでないと世間の流れでメリハリをつけろという論理をある程度受け入れざるを得ないと思います。仮に時間外勤務手当を適用しても、事実上教職調整額のように一律的に丸めて出さざるを得ないようなのが教員職務の一般情勢であるならば、制度改正はできますけれども、変えてもメリハリはつきませんよということに事実上なる。つけたければつけられますが、常識的に言えば、つかないのが教員の世界の情勢であるとなってしまう。
     そうなりますと、メリハリをつけるという話に対応したことになるのかならないのか。メリハリを制度上はつけられますからいいですというふうに言って、メリハリをつけろという論理に一応こたえたというふうに言うべきなのか。それで、実態はあまりメリハリつけないということで折り合いをつけるというのが筋になるのか。それとも、そもそも実態も大して調べないうちにメリハリをつけるなんていう結論だけ言ったこと自体がやっぱり無理だったというふうにもう1回押し返すのか。それとも、模範的使用者として公共部門のほうが先行してメリハリをつけるという方向に行くのか。色々なことにもつながるので、民間の私立学校の状態というのは大変興味があるので、ぜひ調べていただければと思います。

    【委員】

     私立学校の場合に、教育課程でさえ、文部科学省からはなかなか指導ができない。あるいは地方教育委員会についても、知事部局のほうの権限になっていますから、なかなか指導の手が加えられないという状況がある。今回、若干地教行法の改正で少しは変わったようには見えますけれども、これはよほどのことでない限り、そこに手を加えることは難しいと思います。おそらく私立学校の調査、特に労基法との関係で、基本的には行われているんだろうと思いますが、実情の調査というのは文部科学省でやれることなのかどうかという疑問があります。この辺のところは、私としては教育課程の問題も含めてなかなか難しい問題なんだろうというふうに思いますし、やるとすると、これは文科省じゃなくて、厚生労働省であるとか、そういったところの資料になってくるのかなと思います。
     現実問題としては、私立学校というのは、特に義務教育の私立学校というのは公立以上に、ある意味では一生懸命やらなければお客さんが集まらないわけです。そうなれば、勤務態様というのは相当厳しい。それに見合うだけの給与が出ているかというと、必ずしもそうはいっていないだろうと思いますので、この辺のところは、確かに調査をしていただくことも大事でしょうが、それをどういうふうに活用するのかということをある程度見通しを持った上でやっておかないと、やったはいいけれども、難しい問題が残ってしまうような感じがする。私立学校についてはそれこそ私立の経営者と労働者の問題ですし、民間企業の状況をすぐに公立に参考にするというのがなかなかできませんので、むしろ公立学校についてどうするかという問題に絞って議論すべきではないか。私立の状況は参考資料として出すぐらいはいいかもしれませんけれども、あまり深入りできないのではないかと思います。調査を行ったところで、その結果が私どもの議論に使えるというようなものにはなりにくいのではないだろうかという感じがします。

    【委員】

     それに関連して2つほどあるんですが、1つは、10年ほど前に私学と公教育との関係で、教育も一つのサービスだということで、私学の経営に見習うようにというような、そういう風潮がありました。顧客を大事にするという民間企業と同じように、子どもたちを顧客のように大切に扱い大事にするべきだと考えられた。そのことが過大に解されることによって、教員の負担がどんどん増えてしまうというような問題があった。そういう問題があり、一概に公私の比較というのはできないところがあるので、この検討会議でもそれらの点について注意しなければいけないと思います。もう一つ、学校という一くくりの中でこういう検討をしていっていいか。
     学校は、小学校でも低学年と高学年と違いますし、小学校と中学校と高等学校では厳然と勤務の形態も違います。教育の内容も違います。それを「学校に勤務する教員」ということで、一括りにしてはいけないのではないかと考えます。どこかで個々の事例に合ったところへ行き届くような方向を見出さないといけないと思います。例えば、小学校のこういう場合にはとか、あるいは高等学校の部活動ではというような事例に合った方向を検討していくべきだと思います。

    【委員】

     今、私学の調査に関連して意見が幾つか出てきましたけれども、一応、公立の教職調整額を仮に廃止して、時間外勤務手当にした際に実際に運用が可能かどうかという問題を考えていく際、私学の事例はヒントになるかと思いますので、それはそれとしてやっていただいて、そのデータが出てきた段階で、それをどのように見て活用するかというのは、そのときにまた議論できればと思います。

    【委員】

     あまりここで私学のことを深入りしないほうがいいと思いますけれども、ふだんの時間外で部活動を一生懸命指導しても、全国大会等で結果が出れば、私学の先生は非常に報われることもあるようです。そういう日常の勤務条件以外の要素というのが私学にはあるということも前提として考えていかないといけないと思います。

    【委員】

     私は公立のことしかわかりませんが、多分、私学も似たような状況ではないかと思いますが、今の公立で学習指導要領に基づく教育内容と標準法に基づく教職員配置を前提に、しかも、部活動まで指導するとすれば、勤務時間内でおさまることは不可能です。時間外勤務を前提とした学校経営をせざるを得ないという状況にあると思います。教職調整額4パーセントというのは、実質はね返り分を入れれば約6パーセント、時間外勤務手当の時間数に直せば約8時間近くになると思いますけれども、とてもそれではおさまりません。予算の範囲内で時間外勤務命令を出すしかないと思いますので、もし時間外勤務手当を導入するとなれば、財源として莫大な額が必要になると思います。結果的に、時間外勤務手当を適用していても打ち切りをせざるを得ないということになると思いますので、そうなると、どの職員に対しても同じ時間数しか時間外勤務命令を出せないのではないかと思います。

    【委員】

     教員の業績をきちんと評価して、本俸または時間外の勤務で差をつけるということもあるかもしれませんが、とにかく給与にメリハリをつけるということは大前提だと思います。本当に一生懸命やっている教員と、それほどでもない教員というのは厳然としているわけですから、しかも、仕事が集中している教員もいますし、そうでない教員もいますし、やはりメリハリをつけるという方向性は大前提だという上で議論していったほうがいいと思います。

    【委員】

     今までの教職調整額というのは、本人の自発性を尊重するものだから、個人プレーを自発的に皆さん自由にやってください、あるいはやるべきであるという考えだったと思います。その場合、チームのつくり方について一つある議論は、チームプレーをするときに差をつけると、かえってやらない人はますますやらなくなるというチームプレーを阻害しうる問題があります。メリハリをつけることを個人技の延長として、チームプレーではなく、むしろ正当に個人技を評価するという方向でも論拠づけられると思います。
     ですから、チームプレーであり、かつ差をつけるというのは、どういうロジックなのかというのをきちんと説明しないと、かえって差をつけることによって、ますますやる気のない、サボっている教員は、どうせ評価してもらえないと思ってしまい、落ちこぼれが落ちこぼれていくことを加速度的に促すことを招きかねない。差をつけるということ、あるいは適正に負担や能力や実績を評価することにより、後継者養成をしなくなるとか、ほかの人に伝えなくなるとかという、むしろチームプレーを阻害する恐れが一部であるわけです。
     いや、そうではなく、差をつけるということによって、チームプレーに貢献したという個人の能力を評価するという、ある意味で矛盾したことを評価しなければいけない。役所でも会社でもそうですが、チームプレーを個人で評価していくわけですから、そこがうまくいかないと、むしろ個人技をそのまま、「あの人はすごいよね。金もらっているからたくさんやって当然だ。こっちはどうせ金をもらわないのだから、もっと手を抜いてやる」というふうになるかもしれない。ますます雰囲気が悪くならないようにするロジックをうまく立てていただければなと思います。

    【事務局】

     おっしゃることは非常によくわかります。今、この問題に限らず、教員の評価、人事評価とその処遇等をつなぎ合わせていくべきだというのが非常に強くなってきて、これは公務員一般にそうですけれども、査定昇給の制度を入れて昇給に速度の差をつけることや、勤勉手当で業績の評価を反映させていくとか、メリハリをつける方向というのは非常に強いですし、評価制度とそれを結びつけようという考え方も非常に強くなってきております。ただ、成果主義的な考え方を導入することが、かえって学校の同僚性というものを壊すのではないかという危惧の念を表明される方々も多いのも確かです。
     それをどうバランスとるかという話だろうと思っておりますが、誰が見ても頑張っている人と誰が見ても頑張っていない人がいる。そこをはっきりさせることは、かえってチームワークをよくすることになるだろうと思うのですけれども、ほとんど差がつかない人の間にあえて差をつけようとすると、それがまたかえって同僚性を壊すというようなことになるだろうと思いますので、これは教員評価の在り方の問題ともかかわってくる問題だと思います。いたずらに過度の成果主義をあえて差のつかないところにつけるような形で導入しようとすると、それはおそらく失敗するだろうなという気持ちはいつも持っております。

    【委員】

     今、提案があったロジックをどう組み立てるかという話は、今後とも議論していく必要があるかと思いますが、基本的には組織目標というものを明確に打ち出した上で、その組織目標に則して、目標達成に向けて各個人がどう貢献したかという、その辺のところがポイントかと思います。従来、学校としての組織目標というのは極めて曖昧模糊として、やはり個々人の仕事に重点が置かれていたというのが従来の学校経営の実態だったので、それを学校組織の目標にもう少し統合して、組織として力を発揮することが要請されていると思います。また今後議論していきたいと思います。

    【委員】

     人事考課制度をして業績評価をきちんとしている、またはそれにプラスして、それを昇給等に反映している。どこの都道府県がやっていて、どういうふうにやっているかという、そういう資料は文部科学省でもしお持ちでしたら、次回にでもいただけるとありがたいと思います。

    【委員】

     資料等々については、おそらく今後検討する際に、さきほどの私学の話もそうですし、あと勤務実態調査のフォローアップ、再分析もやっております。評価の実際の運用というのは各都道府県、政令市でどういうところまでやっているかというのは、おそらくこの議論をしていく際には不可欠な資料かと思いますので、整理していただいて、次回以降に必要に応じて出していただければと思います。

    【委員】

     正面から話をすれば、おそらく時間外勤務手当という形にならざるを得ないだろうという感じはします。しかし、現実問題、小学校にずっと勤務して、校長を10年ぐらいやっていると、このごろの傾向として、低学年、特に1年生と高学年の5・6年生の担任希望が非常に少ないのですね。もちろんこれは希望をとって、最終的には校長が任命してやるわけですが、校長も入口と出口については相当考えて、個人の能力もそうですし、チームワークもこれならとれるという形で学年配置をしていきます。3・4年生がいい加減でいいわけではなくて、本当は3・4年生の一番エネルギーがあるときにきちっとした力のある教員をつけたいのだが、現実問題として学校にはそれだけの平均的にそろったレベルがないものですから、結局、入口と出口のところにウエイトをかけざるを得ないという現実があります。
     学校の校種によっても違うし、同じ学校と言っても、小学校の低学年と高学年でも違いがある。高学年になると、どの行事もすべて高学年の5・6年生が取り仕切っていかなければならない。担任も当然それをやっていくとなると、それは勤務時間の中で、子どもたちの計画から最終的な実施に至るまで全部見ていかなければなりませんから、確かに子どもと向き合う時間を生み出して、勤務時間内で済ませるようにすることが望ましいのだけれども、現実問題としては無理です。もしかすると低学年は可能かもしれない。これは親の苦情があるから1年生は持ちたくないというところがあるのですけれども、5・6年生の場合には勤務時間の中で処理をするということがまず無理だという状況があります。
     では、勤務時間を超して学校に残って仕事がやれるような状況かと言ったら、やはり母親、女性が7割いる小学校ですから、そういうところになると、家へ持って帰らざるを得ない。そういうことが評価されないとすると、今度は校長として、5・6年生の担任を張りつけるということが非常に厳しくなってくるということなのです。ですから、勤務時間だけで評定していくという考え方は、基本としてそうならざるを得ないと思いながら、しかし、もう少し学校の校種であるとか、学年であるとか、そういった視点で学年手当というふうな言い方がいいのか、必ず1年生、6年生を持った教員がすばらしい教員かというと、必ずしもそうではないかもしれませんけれども、何かそういう勤務時間以外のところで評価できるようなシステムが構築できないだろうか。その辺の論点をちょっとどこかに入れていただいて、今後、吟味をしていければありがたいと思っています。

    【委員】

     メリハリのある給与体系にするというのは、これは多分、現場でも受け入れられると思います、一般論として。ただ、仮に時間外勤務手当にすると、頑張る教員を処遇すると言っておきながら、その基準が勤務時間の長さで評価するという、そこが問題だと思います。学級経営をきちんとやって、てきぱきと仕事して早く帰った人は時間外勤務手当が少なくて、学級経営もいいかげんで、だらだらと残業やっている人が多くもらうというのは、これは現場でとても受け入れられることではないと思います。給料のほうに反映させるというのは、やはり人事評価で評価すべきだというふうに思います。
     今、教職調整額というのは非常にすぐれた制度だと思いますけれども、それは小学校の先生が子どもを抱えていて、保育所に子どもを引き取りに行くために勤務時間が終わって、すぐ帰る人もいます。でもその人は自宅に持ち帰って仕事をしているわけですから、教職調整額はそういう部分も評価されているわけですので、今、非常に忙しい現場でも何とかおさまっているのではないかと思います。

    【委員】

     どうしても今回のテーマが学校における勤務ということに焦点化して、そこにおける給与をどうするかということになっているのですが、もう少し広い立場で、教員も一人の人間として、どう社会の中に生きていくかということを考えていかなければならないと思います。教育という活動は、もちろん学校における勤務だけに目が行きがちですけれども、教員が教員たるべく自身を高めていく、研修とか、そういった部分を評価しなければいけないので、特に学校における教員がどう育っていくかということを考えていったときに、一人の人間としてどう豊かに生きていくか、そして、それをさらに自分の教育活動の中でそれを高めていく、そういうところへ教員が向いていかないと、実際に良い教育はできてこないです。以前のある会議でも言ったのですが、何かぎゅうぎゅうと教員に対して厳しくするのではなくて、ここで検討することが教育界に何か明るい希望をもたらすような、そういう教育に対する、教員のやる気を促すような、そういう方向性というものを絶えず持っていかないといけないと思います。今教員に対する社会の評価について、不祥事等があると「またか」というところがどうしてもあるので、頑張る先生を支援する、それからもっともっと頑張らなければいけないという現職の先生に対するエールになること、さらにそういう教育界なら自分も教員になってみようというような、そういうものが次の世代の者に対するメッセージにもなるような、そういうところへも考え方としてはなければいけないという思いをしています。

    【事務局】

     確かにこの会議は教職調整額のところにまず焦点を当ててご議論いただくということですが、結局そこからいろいろなところへ話が広がっていかざるを得ない。この勤務時間の問題を考えるときに、教職員や教職員以外の人材の配置の問題は当然考慮すべき要素に入ってくると思っています。
     一昨年の勤務実態調査で、小・中学校において勤務日において教員1人当たり月平均34時間残業しているというデータが出ましたが、その実態をそのままにした上で時間外勤務手当にすることができるかというと、1人に34時間分出すというのは、これは財政的にパンクするという問題があります。それよりも、34時間という実態をそのままにしておいていいのかという問題がまず先にありまして、子どもと向き合う時間を拡充するというスローガンのもとで、実際には子どもと向き合う時間というよりも、教員が本来の仕事に専念できる環境づくりをするにはどうしたらいいかと、こういう議論をしなければいけないわけでございます。
     そのために教職員の定数改善もしなければいけないということで、まず一つは、これは勤務実態を改善するというよりも先に学習指導要領で授業時数が増えますし、指導内容が増えると。これに対応するための教員定数の改善は何をおいても先にやらなければいけない。
     それとまた、もう一つ別に、主幹教諭の配置を進めるということや、事務の共同実施の体制を進めるということで、一般の教員の事務的な業務の軽減を図っていこうという方向性がそこにあるわけですが、もう一つの柱として、学校支援地域本部の整備を進めていこうということを考えていまして、その中で、地域人材、地域の方々に学校の教育活動に入ってきていただこうと考えております。それは学校支援ボランティアというような形で、無償で手伝っていただく、協力していただくということも進めていこうと。あるいは例えば教員養成課程で学ぶ大学生に入ってきてもらうというようなことも非常に有効な方策だと思います。
     それから、従来から一定の謝金を払うことを前提にして、地域の方々に入ってきていただくという、これを進めている事業もあるわけです。運動部についても、文化部についても、部活動に外部の人材を導入するための呼び水的な予算というのがあるわけですけれども、こういうものをもっと拡充していくというようなことが一つ考えられるのではないかと思います。あるいは特別支援教育についても、あるいは外国人の指導というようなことについても、あるいはICTなどについても支援的なスタッフを学校に配置していくということがこれから注目されているわけです。あとは学校司書などについても、今は司書教諭の配置をとにかく進めていくというのが大きな方針ですけれども、やはり学校司書として、非常勤であっても専任の司書を学校に置いていくという方向が必要ではないかと、こういう方向性もあると思うんですけれども。こういう教員以外のスタッフの充実、これが一つ大きな課題になっていると考えています。
     その場合、そもそも日本の教員が授業以外の仕事をたくさん抱えているという実態があって、それは教員と教員以外の職員がどういう割合で配置されているかという、その教職員の構成の比率を見ますと、8割ぐらいが教員で、教員以外は2割ぐらいしかいないというのが日本の小中学校ですけれども、それに対して欧米の場合は、4割以上は教員以外のスタッフが配置されている。ということは、逆に言うと、日本の教員は欧米の専門スタッフ、教員以外のスタッフがやっている仕事まで教員が抱え込んでいるという、そういう実態があるのではないかと思います。
     一つの大きな方向性として、教員の定数改善も必要だけれども、それ以上に教員以外のスタッフの充実ということが大きな政策課題になってくるのではないかと考えていまして、そういう取り組みを、地域人材に入ってきていただくこととか、専門的な教員以外のスタッフの充実を図るというようなことを通じて、教員が本来の仕事である授業というところにもっとエネルギーをかけられるようにしていくべきなのではないかと思います。そういう方向で学校の在り方そのものを見直していく。その中で勤務時間についても適正化を図っていきたいと思います。
     もちろん、人的な措置以外の負担軽減策というのも考えなきゃいけないということで、調査文書を減らすとか、それから校務のICT化を進める。まだ学校の職員室というのは1人1台のパソコンの配備もできていないという状態です。一般のオフィスに比べた場合に非常に遅れている実態があるので、少なくとも教職員一人一人が1台ずつのパソコンを、私物としてではなくて、学校の備品として配備されて、それがネットワークでつながっていて、一々会議をしなくてもメールのやりとりで連絡ができるというようなことが当然できなければいけないと思います。それが全然できていないのが今の学校の現場だということで、まずそういったことを進めることによって、会議の時間なども含めて、事務的な業務の時間を減らすことができるのではないか。あるいは外部人材に入っていただくことによって、部活指導などについても軽減が図られるのではないかと思います。あるいは生徒指導についても専門スタッフ、これからスクールソーシャルワーカーの配置なども進めていくという方向性が出ていますが、生徒指導、あるいは家庭訪問といった仕事についても軽減が図られるのではないか。それからさまざまな人材、例えば大学生とか、あるいは教員OBだとか、そういう人たちに学校へ入ってきてもらうことによって、授業準備だとか、成績処理だとかという仕事についてもチームワークの中で軽減策を講じることができるのではないかと思います。そういうもろもろの手だてをとるということも含めて考えないと、勤務時間の問題だけを考えるわけにいかないのだろうと考えています。
     私どもは定数改善を求めていこうとしていますし、給与改善も求めていこうとしているのですが、それを要求するに当たっては、それ以外にできることは全部やるということを示さなければいけないと思っています。その中に今申し上げたようなことが全部入ってくるのではないかと思っています。そういう全体の構造の中で、この教職調整額の在り方についてもご議論いただく必要があるだろうと思っております。

    【委員】

     教員の時間外勤務は非常に多いわけですけれども、しかし、結構教員はやりがいを感じながらやっていると思います。それはなぜかというと、仕事の中身がルーチンワークじゃなくて、まさに自発性・創造性に基づく部分が大きいので、明日の授業、明日の学級経営をどうするかと、みな一人ずつ考えているわけです。自分で考えてやっているからやりがいを感じているし、時間外勤務もそれほど苦痛を感じないでやっているわけです。これを仮に時間外勤務手当という側面から縛っていくとなると、その自発性・創造性が損なわれていくのではないか。そこを一番心配しております。
     そうすると、今やっていることは必要だからやっているわけですから、時間外勤務手当という面から縛っていくと、では、何をやらなくていいのかという話になってしまいますから、今よりも手抜きをせざるを得ないという話になってしまいます。そこが一番学校経営していく上では心配をしているところです。だから、やるのであれば、財源を確保して、ある程度まで、34時間まではとても無理だと思いますけれども、今支給されている部分以上に時間外勤務手当が支給されなければ、何のための改革なのかわからなくなります。新たな火種を持ち込むだけで、メリットがないと思います。
     ただ、今、教員給与のうち、一般行政職と比べて高い2.76パーセントについて削減されることが決まっているわけですので、そうなると、教員の給与の優位性がなくなるとすると、果たして労基法上の問題は出てこないのか。これだけ残業をやっているのに教職調整額もなくなると、直ちに、今度は明らかに時間外勤務手当の不払い問題が起こると思いますけれども、そういうことを考えると、まずは、教職調整額はすぐれた制度だと思いますから、その支給率を上げていくことを目指すのがいいのではないかと思います。もしそれがだめならば、時間外勤務手当の導入ということも検討せざるを得ないと思います。どちらにしても、これは労基法上の問題が出てくるのではないかと思います。一番いいのは、実際に時間外勤務手当を導入するということになると財源が莫大に必要になりますから、それと比べれば、教職調整額の率を上げるほうが現場も納得しやすいし、財源も少なくて済むだろうと思います。

    【委員】

     実際、その選択肢というのは可能ですか。教職調整額を今の4パーセントから少しアップするということは。

    【事務局】

     実際問題としては難しい面があるのではないかと思います。
     要するに一律の処遇であるということで、一律の処遇を高めるということは、まず、今の政府全体としての改革の方向からして難しいと考えます。これは資料3にもございますように、必ずメリハリという言葉が出てきまして、もともと2.76パーセント、一律優遇を下げるというところから話がスタートしています。
     一律の処遇を下げるというところからスタートしている議論の中で一律の処遇を上げるということをすることは、難しい面があるのではないかということです。

    【委員】

     教職調整額はすぐれた制度だと思うのですけれども、欠点は、時間外勤務をやっていない者にも支給されてしまうことが欠点だと思います。だからその部分を修正した上で、実際に時間外勤務をやっている人について、ある程度一律に上げるということはできないものなのでしょうか。

    【事務局】

     東京都はやっております。今、4パーセントを基準として、条例で定めるところにより、支給しなければならないというのが給特法の条文ですけれども、その「基準として」という言葉をどこまで厳格に考えるかということなのですけれども、減額することについて例えば客観的に明らかに教員としての職務に従事していないなどの相当の理由があれば、減額はできると解釈して、例えば、長期研修中の教員については減額するということは、これは東京都でやっております。ここまでは一律支給の前提はあるけれども、特定の理由、相当の理由がある場合に、それを下げるということは可能だろうと思いますけれども、それは限られたケースになるとは思いますけれども、下げることは、理由があればできるだろうと考えています。

    【委員】

     実際、病気休暇者や休職者に出ることはやはりおかしいと思います。その辺は支給しなくてもいいと思いますけれども。

    【委員】

     仮に教職調整額で果たされていた効果というのを見ると、簡単に言えば、自発性を中心とする専門性というものの機能と、それから時間外勤務手当の代替措置的なものとなると、2つある。時間外勤務手当の代替措置的なるものは時間外勤務手当を創設すれば確保されるけれども、前者の機能は依然として必要ですから、それだけでは教職調整額は廃止できないという議論になりますよね。
     そうすると、自発性をどう評価するのかと言って、本俸の評価が自発性まで評価できるのであればできますが、逆に言うと、その評価は査定評価ができないと、やっぱり教職調整額は廃止できない。だから時間外勤務手当に相当する教職調整額4パーセントのうち何パーセントか知りませんが、その部分は削減できますけれども、そこは削減できても、残りの教職調整額は残らざるを得ないのではないかという気がするんです。事の論理的な必然として。少なくとも自発的なものは、本俸のほうで見ていけるのであれば、それは見ていけるでしょうということになりますが、逆に言うと、これが導入されない限り無理で、例えば持ち帰りがあるとか、いろいろな話があったときに、全部時間外勤務だけで、今までの教職調整額で見られていた自発性が代替されているとは、とても現場で通らないですし、論理的にも通らないと思うんですね。そういう意味では教職調整額を時間外勤務手当だけで全廃することは、多分できないですよね。
     そうすると、切り分けて、時間外勤務手当はそのまま1パーセントとか、何パーセントか知りませんけれども、それくらいはとりあえず時間外だということにはなりますが、自発性のほうは残らざるを得ないのではないかという気がするのですね。その場合、もし減らすのが足りないのであれば、別に本俸から減らすことは、私はそれほど問題だとは思わないのです。むしろ本俸の俸給表、給料表が低いほうが、教員は優遇されていないというふうなアピールができて、そのほうがよっぽどいいのではないかと個人的には思っていますけれども。
     それはさておいて、実際、教職調整額は今のところはね返りがありますから、事実上本俸なんですね。給料本体であるということなので、名目上の違いだけなのですね。人事院がなぜそれを教職調整額にして本俸に入れていないかというと、時間外勤務手当を出さないということと混同されるから一応仕分けているというのが、確か人事院の説明なのです。削れと言われれば、論理的には本俸のほうは削れるけれども、教職調整額の自発性の確保のほうが別途措置されない限り、ちょっとそれは難しいような気がします。

    【委員】

     私の考えは、1つは、最終的には教員の勤務の内容をきちんと整理するということです。それがどこまで作業が進むかということにかかわってくるのですが、勤務の内容を整理された上で勤務時間を明確にするということです。その場合に、個人としての教員の立場、役割と、学校というのは組織ですので、組織としての教員の立場、役割ということをきちんと明確にしなければならないと思います。よく感じるのは、例えば、何か事件が起こったときに、責任の所在が非常に曖昧であるために教育界のもろさが前面に出てくることがあります。それは個人としての役割だけが強調されて、評価も個人としての評価に行く。教員の資質について、教員が育つというのは、先輩に学ぶとか、やはり組織の中で教員が育っていくというようなことも大切にしなければいけない。組織としての立場、役割というものをどう評価するか。それは役割に応じての評価というようなことも考えられると思います。
     それから、教員の資質・能力の向上というのが求められているので、例えば、この方向を一つ裏づけるものとして、教員自身の時間を確保するというか、学ぶ時間ということも必要だと思います。教員があまりにも勤務だけに追われてしまって、教育の資質の向上が図られない状況にあることは改善しなければいけない。勤務を整理し、そして時間をある程度確保することによって、国民が求める教育、あるいは教育の質の向上も図られるのではないかという切り込み方もあるのではないかと思っています。

    【委員】

     頑張っている教員はたくさんいるわけですね。しかし、現実的には教員の頑張り度合いは一律ではないわけですから、一律の処遇は変えていかないといけないと思います。それが大前提。もう一つ、やはり希望を与えていく、教員に希望を与えていくような制度改正、表面だけではなくて、実質的に頑張っている教員が、やはり頑張って報われると思えるような制度改正にしていかなければならないと思います。今回の話し合いの中で、頑張っている教員が希望を持てるような形にしていくことは非常に大切だと思います。

    【委員】

     多分、この議論はいつまで行っても一長一短で、あまり前進が期待できないと思います。全く発想を転換しなければだめなのではないかという感じがしております。というのは、夏休みというもの、長期休業の扱いをどのように考えたらいいのかという問題が一つあります。私が教員になりたてのころは、子どもが好きだから教員になるということと、夏休み中に自由に時間が使えるということが魅力だったのです。ところが、今は夏休みが全く使えない状況です。学校も校内研修をしなければいけない。今度の学習指導要領の改訂による授業時数の増への対応で、例えば1週間授業しますよとか、あるいは免許の更新制の問題だとか、様々なものが夏季休業中に全部目白押しに入ってきております。夏休みの魅力がなくなってしまった。
     教員の給与というのを、例えば年俸制にすることが可能なのか。そして、夏休み期間中のうち、20日間はもう学校を休みにしてしまおう。そして、1年間の年俸給与の中から20日間の給与は除いてしまう。そうしておいて、あとはその20日間の間に校長が命じて、これは勤務時間としてやるよということであれば、それは校長が勤務を命じると。例えば、集団宿泊活動だとか、あるいは自然体験活動だとか、そういうものがこれから夏休みに入ってきます。それは行ってもらわなければ困るわけですから、地域行事であったとしても、先生が参加すれば、それは校長の命令でやると。あるいは免許の更新制の問題でも、6日間、5日間という期間は自費でやりますよとか、ぎりぎり職専免ですよとかいうことが出ている。ますます教員としては多忙感が増してきて、それは夏休みの20日間の中で行っていいですよ。そのかわりそれは勤務時間として一応校長が認めますよとか、そういう措置をするとか、そういうことをやりたくない人は、20日間は丸々海外旅行であろうと、自宅で何かするという、そういう形をとる。
     何か発想を転換して、全体として、国としては、メリハリがあって、そして教員が意欲を持てるし、国民もそのことについて納得するように、今までは「先生は夏休みがあるからいいわよね」と国民から言われていたけれども、現実は夏休みがあっても、ちっとも夏休みになっていないわけで、5日間連続して休暇をとりなさいと言っても、とれるような状況ではないというのも現実問題としてあります。一方でとっている先生もいるわけです。そうすると、夏休みに関する不公平感というのか、働く教員は出ずっぱりで出る。休んでいる教員は夏休みになったら、ずっと海外旅行に行っている。そういうことに対して、その辺をきちっとメリハリをつけて校長が命じるものと命じないもので分けていく。
     その辺が、教員の給与体系を年俸制という考え方、月給で出すにしても、20日間分を除いてしまうというような考え方ができるのかどうかということと、そういうことがこの検討会議で検討する余地があるのか、もしも可能であれば、メリハリのある給与体系ということからすると、一番校長が命じるのがはっきり見えるのは、夏休み中は子どもがいないわけですから、この辺は検討してみる必要がある。常識で考えている夏休みを見直す。長期休業中の勤務の給与の在り方について見直すことによって全体の支出を下げるというふうなこと、あるいは頑張っている教員にきちんとした給与を出すということになると思う。
     それを思ったのは、かつてアメリカでは、3カ月の夏休み期間中無給なので、教員はアルバイトしようと何しようと自由で、職務を完全に離れているという。その期間中、例えば、NASA(ナサ)のNSFの研修会に参加する。その場合だと、NASA(ナサ)のほうでちゃんと1カ月分の給与を保証して研修を受けることができる。それは相当レベルの高い教員ではないと受けられない。試験があって、それに受かれば、1カ月分の給与がちゃんと保証されます。これはうまい制度だなと私は思ったんですね。今それが行われているかどうかわかりませんけれども、年俸という考え方を教員にだけ適用することができるのかどうかというあたりは検討していただきたいと思います。

    【委員】

     今日出ていなかった議論として、今後少しやる必要があるのは、給与アップとか、教職員増というふうなものを進めていくためには、今の教職調整額制度を維持したままでロジックを組み立てるというのは難しいとなれば、時間管理ないしは勤務時間外の管理をきちっとするということを一つの「てこ」にして、給与アップとか、教職員増を図る。そういう意味では教職調整額を廃止するとしても、ただ、時間外勤務手当に移行したとしても、私学においても労働基準法のもとでもそれほど厳格にやられているわけではないようなので、やはり教職の特殊性ということを少し踏まえながら、時間外勤務手当のもとでも、少しそうした特殊性というものを踏まえた、緩やかな時間外管理の工夫ということも一つの検討方策としてあっていいのではないかと思いますので、今後議論していく際、その辺も少し検討していただければと思います。

  • (5)その後、関係団体よりヒアリングを行うことが決定し、閉会となった。

(初等中等教育局財務課)