県費負担教職員の人事権等の在り方に関する協議会(第3回) 配付資料

1.日時

平成20年7月24日(木曜日) 13時~15時

2.場所

文部科学省3階 第3特別会議室

3.議題

  1. 広域での人事調整の論点について
  2. その他

4.配付資料

5.出席者

委員

 藤原委員、中村委員、鈴木委員、高橋委員、西条委員、伊藤委員、井出委員、安谷委員、小川委員、堀委員、新井委員、大久保委員

文部科学省

 前川大臣官房審議官(初等中等教育局担当)、常盤初等中等教育企画課長、関財務課長、堀野初等中等教育企画課長補佐

6.議事

 議事に先立ち、本日の会議は、人事に関する事柄について検討が行われることから、非公開とされた。
その後、事務局より、資料1に基づき人事調整の仕組みについて説明があり、質疑応答が行われた。

[質疑応答・意見交換]

【文部科学省】
 資料1に基づいて議論を進めたい。前回、前々回の会議で示された事例を例にして議論をしていただいたらよいのかと思う。前回のヒアリングでは、共同採用については宮城県と仙台市の例、また共同採用とは別に、勤務地を一定の地域に限定した採用をしているという例を伺った。
 まずは採用に関して、意見をいただきたい。

【委員】
 都道府県と中核市等が共同で行うというのは、「そうしたほうがいい」という提案とうけとめたが、それでいいか。
 私のところでは、試験問題は同じであるが、面接等は県と別個にやっていることから、共同採用という分類には入っていない。共同でやっていた時は県が裁量で配分を行っていた。例えば、私の市に100人という枠が決められており、その時は人事的にはきつきつだった。例えば、児童生徒の数が40人になるか41人になるかで学級数が変わるため、採用数を調整しなければならない。採用人数については中核市あるいは指定都市がそれぞれ責任を持ってやれるようにしなければならないと考える。

【文部科学省】
 今は採用枠が別だが、以前は県が枠を決めていたということか。

【委員】
 今は指定都市として100人なら100人という枠の中で、新規採用を何人にするかや、他の市町村との出入りをどのくらいにするかなどが考えられるようになり、やりやすくなった。

【委員】
 今の議論はあくまでテクニカルな話である。人事権が移譲されることによって、自らが求める人材を示せるかどうかが問題である。技術的な課題は一方であるが、それは根本的な問題ではない。独自で採用する意味を忘れてしまうと意味がない。そうしないと結局県で一括してやったほうが早いということになる。

【委員】
 入り口論になると我々の団体としては、一歩も進めなくなる。広域調整に関する具体的な議論をして、できるところがあるかどうかを考えるのがこの協議会の趣旨と理解している。

【文部科学省】
 根本的な議論はあるものの、どこに歩み寄れる接点があるのかということを前提に議論を深められればよい。

【委員】
 資料1の(2)にあるような、「広域人事異動の方針」ができるのであれば、独自に採用したとしても問題点はなくなってくるのではないか。

【委員】
 県が一括採用した場合のデメリットと中核市などが採用した場合のメリットはどうしてもぶつかる。都市圏では独自採用を推進したほうが良い教員を確保できると思うが、全国的にはどうだろうか。
 共同採用は能率的にはよいと思うが、移譲されたときの「効果」を考えると、それ相応のところまで移譲していったほうがいいのではないか。
 管理職試験とも連動してくる。管理職試験を別にやると、管理職になりやすいというところとそうでないところも出てくる。共同でやった方が効率がいい場合もあるだろうが、効率のよさを取るか、独自性を取るかは地域によっても違いがあるのではないか。

【委員】
 基本的には今の意見のように中核市まで移譲することでできればいいと考える。人事権を移譲した後にどうしたらよいかという前提で考えたいと思う。県の中には、離島の人材を確保できなくなるのではないかという意見もあった。
 人事権を移譲したとしても、独立独歩ではだめで、都道府県、指定都市、中核市の三者が集まって、広域調整を確立していけば支障はないのではないか。

【委員】
 もっともと思うが、逆に、現在のように都道府県が一元管理する中で、どう市町村と分担してやっていくかということも、言い方はだいぶ違うようだが、同じでことではないか。人事権の移譲が先にあった上でどう広域調整を図るのか、今の制度の枠組みの中でどう調整するかを考えるのか、いずれも、結局は同じことではないか。人事権を移譲した場合には、財源の問題も出てくる。

【文部科学省】
 人事権を移譲した場合には、給与負担の議論も考えないといけないが、まずは、人事における広域調整の仕組みとして、どのようなことが考えられるかというところを出発点として議論したい。
 確かに、例えば採用を共同でやることとすると、今と同じになり、何のための人事権移譲かということになる。やり方はいろいろと考えられる。共同採用をしているところでもそれぞれ方法は違うところあると思う。もっと事実を深く調べていく必要がある。

【委員】
 先ほど、広域調整の仕組みさえあれば問題ないという意見があったが、本県では、現在でも離島へき地1回を含めへき地経験を2回以上するというルールをつくり,県から市町村に対して、例えば、離島に何人くらいの欠員が出るので,これだけの数を確保してくださいということを示して調整を行っているが、実際にはなかなか人を確保できないのが現状である。そこで、確保できない職種や教科については,2回は離島に交流することとするルールを新たに定めているが,個々の教員をみれば,今年は介護があるから交流できないとか、子どもの養育あるから交流できないとか、いろいろ出てくる。 ルールをきちんとしていれば大丈夫というが、中核市に人事権が移譲すれば,「何とかもう少し人を出せないか」という場面で出してくれるだろうか。調整がうまく行かない時に、県と中核市が対等では広域交流は進まないのではないか。

【文部科学省】
 ずっと離島にいる教員もいるのか。その場合、採用の時からずっと同じ島にいることになるのか。

【委員】
 本県の人事異動の標準には特例があり,一部には地区内の離島だけを異動する人はいる。しかし,地区内にはいくつもの島があり,ずっと同じ島にいるわけではない。
 また,この特例は、採用時に離島限定として採用するわけではなく,その地区に赴任した際、自分で適性を見極め、今後もこの地区の中でやっていこうと考えた人が希望して決めることとなっている。

【文部科学省】
 離島を多く抱える県ばかりではないので、いろいろな類型を分けて考えていく必要がある。

【委員】
 確かに本県は特別かもしれない。指定都市を抱えるある県の人に、なぜ指定都市を除いても,県の採用に人が集まるのか,何か県の人事異動や採用等に工夫をしているのか聞いたことがあるが、答えはよく分からないということであった。ただ、やはり本県のように全県下を広域交流しているようなところは、県に採用されて県下全域を異動するか中核市に採用されて中核市内だけを異動するかとなれば、中核市を希望する方が多くなるのは必然であると思われる。

【文部科学省】
 離島を多く抱えるような県の場合には、資料にあるような共同採用をやったとしても難しいだろうか。

【委員】
 「共同採用」といっても、どのような形態で行うのか明らかでないことから,共同採用をやれば大丈夫とは言えない。
ところで,今,採用の話しであったが,ここで議論している人事権の移譲とは、例えば今でも指定都市には権限のない教職員定数などについてもあわせて考えるのか。

【文部科学省】
 今の段階では、給与負担関係とは一旦切り離して人事権について議論し、あとから給与負担等の議論はする。

【文部科学省】
 進行のイメージとしては第4回までは、広域人事調整の話をして、それから給与負担等の議論をし、最後に全体の議論を踏まえてどうまとめるかという進め方を考えている。給与負担等の議論をせずに人事権のことを決めるというわけではない。

【委員】
 人事権を移譲してほしいと主張している方は、教員は、その地域に居住し、腰を落ち着けて教育をしてほしいと言っているが、もっと広い地域で考えるべきではないか。また、例えば特別区の場合には、必ずしもそこの地域に定住してということばかりではないと思うがどうか。

【委員】
 定住することが大事という意味ではない。大事なのは自分達の自治体の教育については、すべて自治体が決めるということが重要であり、そこに住んでいるかいないかということではない。離島を多く抱える県の話を聞くと確かに大変だなと思うが、それは中核市等に人事権を移譲したから起きる問題ではなく、すでに今も起きている問題なのではないか。その問題をどうするかを考え、今までのノウハウをさらに積み上げていけば、移譲してもやっていけるのではないか。

【委員】
 その土地の教育を確立する、そのためにはそれを担うのはどこから来た人でもいい、という委員の考えに賛成である。その上で広域人事の仕組みができればいいのではないか。

【委員】
 少し話が拡散してしまうがお許しいただきたい。今は「教職員」として議論しているが、教員と学校事務職員というのを分けて人事権の移譲を考えるということはできないか。学校事務職の採用は県によって状況が全然違う。一般行政職の人事の中で学校事務職に回すところもあれば、学校事務職で別枠を作って採用しているところもある。ただ、市町村の学校の現実を見ると、市町村で採用した事務職員と県で採用した事務職員で二層構造になっており、連携がとれておらず非常に非効率的である。県費の場合は市町村教委事務局との連携があまりうまくいかないということも聞く。むしろ学校事務職については市町村の職員として任命し、給与をおろすのは難しいと思うが、採用などは市町村におろすという発想は考えられないだろうか。

【文部科学省】
 教員と事務職員について別々に考えたとしてもおかしくはない。

【委員】
 自分のところでは、学校事務職員は行政一般のローテーションの中で回している。新採がいきなり学校に一人で入ることもあるが、都道府県からいきなり地域に入るというのは難しいし、連携もうまくいかないので、事務職員については、市町村の職員をいったん都道府県の職員として採用し、それから配置していくということも検討している。退職金や福利厚生などいろいろな問題が絡んでくるので、すぐにできる話ではないが、そういう方法も考えている。

【文部科学省】
 事務職員については自治体によってもだいぶ違うと思うので、情報を得ながら考えていきたい。
 資料1の(2)広域人事異動の方針についてもご議論いただきたい。

【委員】
 一般の行政職の採用は、試験は共通問題で行う場合もあるが、採用は別々であり、他市町村への人事異動ということもない。先ほど言われたように、事務職員や学校栄養職員は二重構造となっている場合があるが、採用を市町村でやることによって単純化され、そのようなことも解消できるのではないか。
 教員の異動ということについては、移譲される側である中核市の問題というよりも残りの自治体の人事をどうしたらいいかという問題だと思う。地域によっても状況は違うだろうから、類型を決めて、ある県ではブロック制でやれるところもあるだろうし、それではうまくいかない地域については、もう少し細かく対応しないと行けない、そういう類型を考えなければならないのではないか。

【文部科学省】
 ブロック単位とは、教育事務所単位くらいのイメージか。

【委員】
 教育事務所のイメージもだいぶ変わってきているのではないか。市町村合併でだいぶ大きな市ができて、そこからこぼれているようなところが問題である。たとえば山間部である。4市か5市でまとまってやるような感じでできないだろうか。

【委員】
 中核市のなかでも、こういう広域調整の仕組みは必要であるという意見で一致している。ただ、その中身については、県によってだいぶ違う。そのあたりは、制度上、何らかの協議会を設置するということを規定すればよいと思う。自分の県ではこれまで、管理職登用の要件として、3市町村以上経験することとなっていたが、合併で市町村数が減ったのでこれからどうしようということになっている。県もこれまでの基準の見直しをしなければならなくなっている。
 市町村の教育長会で議論しているが、地域で骨を埋めるくらいの気持ちが必要という意見である。小さな町村からもそういう意見が出ている。以前、災害があったとき、教員が外に住んでいるから、学校に来られないということがあった。自分の県はへき地も多くなくフラットだからやりやすいとは思う。 今の実態でも教育事務所単位で異動している。
 また、子育て支援的な視点も考えなければならない。小学校は女性の先生が多い。子どもが小さいのに単身で動くというのは大変。最低限、どのくらいの人員が必要で、だからどの程度広域調整がいるとか、詰めていかなければならないのではないか。広域調整に知恵を出すなら、何のためにやるのか、ということもよく考えなければならない。

【委員】
 既にもらった資料でわからない点がある。地教行法改正により同一市町村内については当該市町村教委の意向をより反映させるというのはどういうことか。

【委員】
 同一市町村内の転任については、市町村の「内申をまって」ではなく「内申に基づき」都道府県が行うこととした。「基づき」というのは法的拘束力があるということであり、原則として市町村の意向どおりにするということになる。例外として、県の基準に沿って広域異動させる場合には、市町村の内申に基づかないこともできる。

【文部科学省】
 例えば、同一市町村には何年まで、というような基準は県が決めるが、同じ市町村内でどこの学校に何年ということは県の基準ではなく、市町村の判断となる。

【委員】
 現在でも、例えばある市町村で過員が生じた場合には他の市町村に異動させないといけないということもある。また、この教員を出したいという人もいれば、優秀な教員を外に出したくない、というのも本音としてはある。今でも広域でなければできないことというのを洗い出していくことが必要ではないか。

【委員】
 現在の仕組みの下でも既にある問題と、県と中核市との関係が変わることによって新たに生じる問題があり、これを分けて考える必要がある。今ある課題に新しい問題を積み重ねて考えたほうがよい。

【文部科学省】
 皆さんが心配しているのは、現在は、県が人事権を持っているから問題を解決できるが、これが中核市等が人事権を持った場合に、同じように問題を解決できるかということだと思う。したがって、今ある問題をまず提示して、その上で中核市が人事権を持った場合どのような問題があるか検討していくことが必要なのではないか。

【委員】
 言い方をかえると、今でも県はこれだけ苦労しているのに、中核市等に移譲するとさらに人事の制約が強まる。現行制度を前提としながら、県が中核市の要望にどこまで応えられるかということを考えるべきではないかと思う。
事務職員については、一般行政職と一緒のところもあれば、県立学校と一緒のところもある。自分の県では教育事務所間で異動するということはほとんどない。

【委員】
 指定都市になる前はいろいろ制約があった。校長や教頭になる機を逸した有能な人材を指定都市となって自ら登用できるようになった。へき地に誰かを出さなければならないということであれば、そこにこそ優秀な者を行かせるというようにしたいと思ってやっている。

【文部科学省】
 都道府県が市町村の意にかなう配慮ができていない場合もあるし、逆に市町村に人事権が来ても、都道府県が今まで配慮してくれていたからこそ解決できていた問題が、市町村ではできない、ということもあり得る。

【委員】
 中核市は、人事権を移譲してほしいと主張しているが、実際そうなると大変であり、楽ではない。でも責任を負うということで一生懸命にやる。自ら責任をもってやっていくということがこれからの方向である。

【委員】
 実際に人事権が来てからいろいろな工夫ができるようになった。人事権が移譲されたからといって、県との交流を閉ざすということはない。へき地でも特別支援学校でも交流していく。

【文部科学省】
 県が今まで細かく気を遣ってきたことをこれからは中核市がやりますからというのももっともだが、それを制度的に保障できないと県としては安心できないと思う。例えば、協議会を置くのか、個別の人事がうまくいかないときの調整をどうするか、という部分を組み込んでおかないと調整がつかないことがあるのではないか。
 次に、資料1の(3)~(5)について話を進めたい。管理職については、先ほど話があったように一般の教員とは別の扱いをするということもある。管理職は県が人事を行うということもあれば、逆に管理職の人事権だけ移譲するということもあり得るがどうか。

【委員】
 服務規程などは県と協議しながらやっている。懲戒については将来的には県の助言があれば、市町村がやってもできると思う。

【委員】
 今年度から、管理職の登用試験に、市町村の教育委員会から参加してもらって面接などをやってもらうこととしている。そういうことは人事権の移譲のあるなしに関わらずやればいいのだと思う。今年からできることは今年からやる。そう思ってやっている。だから権限は県にあるべきとか市にあるべきとか、硬直的な議論ではなく、第3の道はないのかと思う。

【委員】
 人事権の移譲は一括して行うべきで、管理職も含めてやるべきと思う。人事権をおろすというのはそういうことだと思う。管理職は学校の経営、運営の全てを行うが、それを県が持っていては基礎自治体への権限移譲にならない。

【文部科学省】
 むしろ管理職だけおろすと言うことはあるか。

【委員】
 それはあると思う。

【委員】
 管理職の人事権だけ県に残すのは現実的ではない。地域のことをよく知っているのは管理職であるべきだし、一緒に移譲すべき。
懲戒については、県内でもバラバラである。例えば、飲酒運転は一発免職であるがこれは県より厳しい。でも指定都市に入って損をしたなと思う職員はいないのではないか。

【委員】
 特別枠採用について、へき地で教育をしたい、という人はやはりいるとよいと思う。地域の学校を出て免許を取った人が優先的に採用されるような、各教育委員会や大学でそういう仕組みをつくれないものか。

【文部科学省】
 意見を伺っていて共有認識が図れてきたところもある。資料にそれを反映させて議論を深めていきたいと思う。次回もこのような議論を深めたい。

(2)その他

 次回は8月26日13時から15時、17階第1会議室にて行う。次回会議も人事権の関係であるため、非公開とする。

(3)閉会

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課

(初等中等教育局初等中等教育企画課)