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第1章 教員のICT活用指導力の基準の具体化・明確化の必要性

 第1章においては、教員のICT活用指導力の現状を紹介した上で、その基準の具体化・明確化の必要性について説明する。さらに、具体化・明確化した基準の普及・活用の必要性に触れるとともに、検討の流れ及び本報告書の構成について紹介する。

1. コンピュータ等を使って指導できる教員の状況

(1) コンピュータ等を使って指導できる教員の現状
 文部科学省では、全国の公立学校における教育の情報化の実態等の状況を把握し、教育行政における基礎資料とするため、毎年3月に「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」を行っており、その中で「コンピュータ等を使って教科指導等ができる教員の割合」に関する調査を実施している。
 平成13年3月から平成18年3月までの調査結果を図1−1に示す。
(図1−1)コンピュータ等を使って指導できる教員の状況

  e-Japan戦略が策定された平成13年3月時点では、「コンピュータ等を使って教科指導等ができる教員の割合」は、全国平均で40.9パーセントの割合であったが、毎年、約7〜8パーセントの伸びを示しており、平成18年3月時点では全国平均で76.8パーセントまで向上している。
 この結果については、e-Japan戦略において掲げられた「概ね全て(100パーセント)の教員がコンピュータを使って指導できる」という目標には到達できなかったことから、厳しい評価を受けざるを得ないものの、この5年間における推移を見ると、国や地方公共団体、教育現場の教員が、それぞれ努力を重ねてきたことも事実である。

(2) e-Japan戦略に掲げられたICT環境の状況
  e-Japan戦略の目標の達成状況についても図1−2に示す。高速インターネット接続については約89.1パーセントであり、概ね100パーセントの目標に到達しつつあると評価することができるが、校内LANについては50.6パーセントに留まっており、大きな課題を残す結果となっている。教員のICT活用指導力を向上し、教育の情報化を推進するためには、地方公共団体等において、更にICT環境の整備の充実が求められており、これらを含めて、「IT新改革戦略」に引き継がれた。
(図1−2)学校におけるICT環境の状況

2. 教員のICT活用指導力の基準の具体化・明確化の必要性

(1) 実態調査におけるICT活用指導力の基準
  e-Japan戦略の目標の達成状況を評価する過程において、「コンピュータ等を使って教科指導等ができる」という基準があいまいであるという指摘が出された。
 現行の「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」においては、現在、表1−1のような設問で、コンピュータ等を使って教科指導等ができるかどうかを評価することとしており、その結果を「できる」「できない」という2者択一で回答することとしている。
 しかしながら、多くの指摘のとおり、この設問では、何らかの手段で少しでもコンピュータ等を活用した授業等ができれば「できる」という回答になること、過去に1度でもコンピュータを活用した授業を行えば、現在実際に行っているかどうかにかかわらず「できる」という回答になることなど、あいまいさを含んでいる。(参照:表1−1)

4. 教員のコンピュータ活用等の実態
(2) 教員の実態
2コンピュータ等を使って教科指導等ができる教員数

 「コンピュータ等を使って教科指導等ができる教員」とは、何らかの手段で少しでも(過去も含めて)コンピュータ等を活用した授業等ができる教員のことである(実際に行っているかどうかは問わない)。

 なお、コンピュータの授業での活用例としては、以下のようなものがあるが、これに限定されない。
  • 理解が難しい内容を視覚的にイメージ化するような教育用コンテンツを部分的に提示することができる。
  • 児童生徒がインターネット上の情報やデジタルカメラの画像などをプレゼンテーションソフトなどを使ってまとめ、発表するような授業をすることができる。
  • 授業の一部で児童生徒がドリル型コンテンツなどを使って学習するような授業をすることができる。
  • 電子メールやグループウェアなどを使って交流・共同学習を行うような授業をすることができる。
  • 授業の導入やまとめなどで、動画などの教育用コンテンツやインターネット上の素材を提示することができる。
  • 実物提示装置やスキャナなどを使って教科書上の絵・グラフや学習素材などを提示することができる。
  • プレゼンテーションソフトなどで教材を作成・提示することができる。
  • 電子黒板などで教科書や教材を提示し、書き込みしながら授業を行うことができる。
  • 児童生徒がインターネットなどを使って課題に対応した情報を収集、整理するような授業をすることができる。
  • テレビ会議システムなどを使って学校間での交流学習を行うような授業をすることができる。
  • 校内ネットワークなどを使って、児童生徒の学習成果を共有・相互評価させることができる。
「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」より
(表1−1)これまでの調査におけるコンピュータ等を使って指導できる基準

 授業用のコンピュータの整備が進む中で、概ね全ての教員が「コンピュータ等を使って教科指導等ができる」ようになるという量的な評価に加えて、ICT活用指導力の基準を具体化・明確化し、到達目標を明らかにするという「質的な評価」が求められてきている。

(2) IT新改革戦略における目標
 これらの状況を踏まえ、平成18年1月に策定された我が国の新たなICT戦略である「IT新改革戦略」においては、表1−2に示すとおり、全ての教員のICT活用指導力を向上させることが目標として掲げられている。
 さらにその実現方策として、2006年度までに教員のICT活用指導力の基準の具体化・明確化を行う必要があるとしている。(参照:表1−2)

「IT新改革戦略」(平成18年1月IT戦略本部決定)【抜粋】

2  今後のIT政策の重点
2. IT基盤の整備
(3) 人材育成・教育
次世代を見据えた人的基盤づくり
―全ての教員へのIT機器の整備、IT活用による学力向上―現状と課題

<目標>
2. 教員のIT指導力の評価等により教員のIT活用能力を向上させる。

<実現に向けた方策>
3. 2006年度までに教員のIT指導力の評価の基準の具体化・明確化を行い、それに基づき、ITを活用した教育に関する指導的教員の配置や、教員のIT活用能力に関する評価をその処遇へ反映すること等を促進することにより、全ての教員のIT活用能力を向上させる。
(表1−2)「IT新改革戦略」における目標

(3) 重点計画−2006
 こうした新たな目標が掲げられたことを受けて、平成18年7月に策定された「重点計画−2006」において、文部科学省は、概ね全ての公立学校教員がコンピュータ等のICTを活用して指導することができるよう、2006年度中に、教員のICT活用指導力の基準の具体化を図り、到達目標を明確にすることとした。
 本検討会は、このような背景を踏まえて設置された。

3. 教員のICT活用指導力の基準の普及・活用の必要性

 しかしながら、教員のICT活用指導力の向上を図るためには、教員のICT活用指導力の基準を具体化・明確化するだけでは十分ではなく、その基準が広く活用される必要がある。すなわち、具体化・明確化された基準が、教育現場の各教員の自己評価などに活用されるとともに、教育委員会や学校における研修会などで活用されることが重要である。
 そこで、検討会では、教員のICT活用指導力の基準の普及・活用方策についても検討を行った。

4. 検討の流れ及び報告書の構成

 検討会では、まず、諸外国におけるICT活用指導力の基準について調査を行った。この概要を第2章で紹介する。
 国内においても、これまでに関連する調査研究等が行われ、具体的な「指導場面」等の蓄積があることから、それらを参照しつつ、我が国における「教員のICT活用指導力の基準」の枠組みや構成等の在り方について議論を進めた。これらの議論の概要、議論の結果として策定された大項目、チェック項目、チェック項目を活用するための指導項目例を第3章で紹介する。
 さらに、ICT活用指導力の基準の普及・活用方策について検討を行った。その内容を第4章で紹介する。
 最後に、今後の課題等について、第5章でとりまとめている。

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