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資料2

三重県における学校評価の取組

三重県教育委員会経営企画分野
教育改革室長 山口 千代己

1  学校自己評価システムの構築
(1) 学校評価の導入にあたっての背景
 平成7年度からオール県庁での行政改革、10年度からの行政システム改革
1 生活者(サービスの受け手)起点の行政へ
2 予算主義から成果主義への転換・・・説明責任
3 事務事業評価システムの導入 <平成8年度> P-D-S サイクルの導入
4 三重県教育振興ビジョンの策定<平成11年3月>
 地域住民や保護者の意向を反映させた学校づくり
 具体的な目標を明示・・・評価指標としての機能を有する指針

(2) 学校自己評価手法構築に関するワーキンググループの設置 <平成12年1月>
1 従来の評価活動に対する認識
 抽象的な教育方針、教育目標を掲げ、反省会は情緒的、一時的なものになる傾向。
 教育活動を具体的客観的に測る指標等がなく、児童生徒、保護者のニーズ把握が不十分。継続的な改善に反映させるシステムとして、有効に機能しているとは言えない。
2 学校評価システムの目指すところ
 各学校が、主体的・計画的に自らの教育活動を評価し、その結果を日常の教育活動の改善に反映させるとともに、信頼される学校づくりを推進するために、学校評価システムを導入する。
3 学校評価の位置づけ・・・学校評価の取組は、手段であり、目的ではない。

(3) 学校自己評価の進め方
1 児童生徒や地域の状況に即した具体的な評価項目や指標、到達目標へ数値目標を導入。
2 生徒や保護者、地域住民の声を積極的に取り入れて、達成状況を評価する。アンケートの活用等。
3 評価結果を改善活動につなげる。
4 推進の視点
 明瞭性
 学校の主体性の尊重
 改善に対する実効性の確保

(4) 学校自己評価の導入
1 簡易な方法による試行:「まずは、拙くてもいいので、やってみよう!」(平成12年度から)
【最低限の約束事】
 評価項目は、各校の主体性を尊重。評価指標の設定。中間評価の実施。年度末へ向けての改善。
2 全管理職を対象に学校マネジメント研修の実施(平成12年度から)
 目標管理による組織経営の考え方の浸透。
3 「学校自己評価実施の手引き」の作成(平成13年4月)
4 学校自己評価の実施と公表を「県立学校の管理運営に関する規則」へ明記。(平成13年4月1日施行)
5 県立学校の自己評価の取組をホームページで一括公表(平成14年度から)
 学校自己評価における実践取組項目の充実・・本来の教育活動へシフト 【資料1】
 保護者や地域住民等への積極的な情報発信により、学校の取組に対する意見や評価を受け、自己評価活動そのものに対するPDCAサイクルを充実する。

2  学校自己評価システムから学校経営品質へ <平成15年度>
(1) 学校自己評価の取組成果と課題
1 個々の教育活動の成果を確認し、改善活動に結びつけるという点では一定の成果を上げてきた。
2 評価項目が、必ずしも、教育目標の実現に向けて学校全体の最適を考える視点に結びついていない。
3 学校を組織体として捉え、教育活動の方向性や注力の軽重について、教職員間で共有されていない。

(2) 三重県型「学校経営品質」の開発 (平成15年度)
1 日本経営品質賞の考え方を、学校経営になじむ形で導入。
 顧客本位(学習者本位)の経営や、継続的な自己改善の推進等の基本的な考え方と、8つのカテゴリーを用いて診断する手法を大切にする。
 「目指す学校像」を明確にし、学校全体でその実現に取り組む組織経営の仕組みを整える。
 「目指す学校像」を共有したうえで、学校組織の現状を正しく把握し、そのギャップを埋めるための課題や方法を自ら考え、自ら実行しながら継続的な改善を進める。
 取組の推進にあたっては、「対話」と自らの「気づき」を重視し、組織力の向上を目指す。
2 学校自己評価システムの取組を充実、発展する。
 「目指す学校像」の実現に向けて、具体化した個々の教育活動の充実を図る仕組みとして、学校自己評価システムで培ってきたPDCAサイクルを活用する。

(3) 学校への導入と展開の流れ
1 平成15年度
 県立学校5校で試行・・・対話の機会が増し、学校の強みと弱みが明らかになり、意識改革が始まった。
2 平成16年度
 全県立学校で実施・・・「管理運営に関する規則」に学校経営の改革方針の説明と公表を明記。
 小中学校63校(17市町村)のモデル校での導入。
 各種研修の実施・・・市町村等教育委員会教育長、学校管理職、推進者、一般教職員等を対象とした各種研修会の開催。学校への出前研修の実施(128回)。実践報告会の開催。 等
3 平成17年度
 学校経営品質の取組の充実と、小中学校における実施校の拡大(年度末現在、県内全体の約60パーセントの学校で導入)
 各種研修会の継続と発展。出前研修は171回。(うち義務教育諸学校131回)
 自主的な勉強会である学校経営品質研究会への支援。
 県立学校教頭会、小中学校教頭会(市町教育委員会)2地域
 ロゴマークの制定。学校経営品質Q&A集の作成 等
 「Will −学校経営品質なんでも通信−」を全ての教職員へ発信。【資料2】
 教職員、事務局職員を財団法人社会経済生産本部内 経営品質協議会の「アセッサー認定研修」へ派遣。(70名)
4 平成18年度
 これまでの各種研修会、出前研修に加え、リーフレット、事例集の作成・配付、実践事例報告会の地域別、県全体会開催、市町教育委員会職員への重点的な研修などを実施し、すべての県内小中県立学校が学校経営品質に取り組めるよう事業を推進する。

【学校経営品質の展開スケジュール】
3  学校経営品質の概要
(1) 学校経営品質の4つの基本理念
 学校経営品質の基本的な価値観、態度、信念、行動基準となる考え方として、次の4つを示している。
1 学習者本位
2 独自能力
3 教職員重視
4 社会との調和

(2) 学校経営品質の全体像
1 学校経営の改革方針(学校経営品質の2大ツール その1)
 「目指す学校像」(基本理念)を明らかにしたうえで、その実現に向けた取組方針・計画を学校内外に提示し、具体的な取組を進めるためのツール。
 校長が、年度当初、保護者、学校評議員等の意見を反映しながら、教職員との対話を通して策定。
 策定のねらい
「目指す学校像」の明確化 組織が一体となってその機能を発揮するには、目指す姿の共有が必要。校長のリーダーシップのもと、全教職員が一体となって学校経営を推進する体制を整える。
具体的な教育活動の促進 目指す学校像から、重点目標、そして具体的な行動計画へと、一貫性をもって具体化を図りながら、今何をすべきかを明らかにし、実践的な活動を推進する。
 取組方
Plan)計画を立てる
 
「目指す学校像 学校が教育活動を通じて実現しようとする姿を明示」
「現状と課題 生徒、保護者や地域のニーズや学校を取り巻く環境を踏まえて記述」
「重点目標 3〜5年後の到達イメージを明示した具体的な重点目標を記述」
「具体的行動計画 重点目標を実現するために本年度実施する具体的行動計画について、可能な限り数値目標を入れて記述」
Do)教育活動の実践と(Check)その評価
 
計画にもとづいて教育活動を実践し、その成果を予め設定した評価指標に照らして、個々の行動計画の達成度や有効性を評価する。
 (学校経営全体の評価を行う学校経営品質アセスメントとは趣旨、内容を異にする。)
Action)改善活動
 
評価を受け、強みはさらに伸ばし、未達な点はその原因を究明し、改善策を次期計画へ活かす。

 三重県教育委員会では、「改革方針」と「評価表」を、各校別に毎年ホームページで公表している。参考として、県立四日市北高校(現:北星高校)の平成17年度の「改革方針」と「評価表」をあげる。 【資料3】
《参照:http://www.pref.mie.jp/KYOIKU/HP/kyo_so/syuyou/kaikakuhousin/kyotu/keihin2005kaitei.htm(※三重県教育委員会ホームページへリンク)

2 学校経営品質アセスメント(学校経営品質の2大ツール その2)
 「目指す学校像」に照らし、今の学校経営が適切かどうかを診断し、改善課題に「気づく」ためのツール。
 策定のねらい
学校経営の状況(経営品質)を適切な基準により診断することで、現在の取組方や組織の状況が、「目指す学校像」の実現に適ったものであるのか、「価値を提供する相手方」の視点から見て好ましい状況にあるのか、どの部分が適切で、どこを改善しなければならないか等に、自らが気づく。
 取組方
学校プロフィールと8つのカテゴリー(「日本経営品質賞アセスメント基準」の8つの観点項目をもとに作成)により、学校経営の診断を行う。【図2】
括弧内の数字は各カテゴリーの配点で、評点合計は1,000点。評点ガイドラインをもとに各カテゴリーにおける得点を算出し、6段階で組織の成熟度をみる。

学校プロフィールにより、学校の「目指す学校像」や価値提供の相手方、学校を取り巻く環境等について再確認し、教職員間で共通認識する。これは、アセスメント時の座標軸ともなる。【資料4】(PDF:114KB)
簡易アセスメントシートにより、学校経営の改革方針に基づいて展開される個々の教育活動や学校経営全体の在り様をセルフアセスメントし、学校経営の強みと弱みを明らかにする。【資料5】(PDF:118KB)
アセスメントにおいては、一人ひとりがアセスメントシートに基づいて行う評価(個別評価)、個別評価を持ち寄りグループでより適切なものへと深める評価(合議評価)、合議評価の結果を教職員全体で共有する(結果報告)のステップを活用する。
(3) 学校経営品質の取組に対する意見
《出前研修等による受講者の理解度・参考度アンケート結果》
 平成16年度(受講者数 2,109人) 理解度 56.5パーセント 参考度 61.7パーセント
 平成17年度(受講者数 2,173人) 理解度 61.0パーセント 参考度 66.0パーセント
 なお、平成18年度は参加者の理解度にバラツキがみられるため、基礎、発展などの階層別研修も適宜開催している。

〈肯定的な意見〉
1 学校における組織経営の強みと弱みが明らかになり、課題とそれに対する具体の改善策が見えてくる。
2 すべての教職員が参加することで、学校経営に対する責任感が教職員の間に生まれる。
3 対話の重視により、教職員間のコミュニケーションが促進される。
4 自分たち、学校の論理だけでなく、現状はこれでよいのかと問い直す機会となる。
5 「やっと学校現場にも経営品質が導入されるようになったか。」という声が、保護者、特に民間企業の人からも多く出されるようになってきた。
〈否定的な意見〉
1 横文字が多く、言葉が難解。また、「経営」「品質」は、教育に馴染まない。企業の手法ではないか。
2 多忙な日々の中で、この取組を進めるには時間の確保が問題である。
3 一般教職員も学校全体のことを考える必要があるのか。自分の仕事をきちんとすればよい。
4 教育は教師と子どもの触れあいが基本である。余計なことに時間を使いたくない。

4  学校経営品質の年間スケジュール(例)
 各学校の実態に応じて、評価に関してだけでも時期や方法などが異なることが予想される。そこで、一例を資料として挙げる。【資料6】(PDF:132KB)

5  今後に向けて
(1) 学校経営品質の定着
 個々の教育活動の充実を図る学校経営の改革方針と、教育活動の基盤となる学校組織の現状や体制を診断する学校経営品質アセスメントを2大ツールとする学校経営品質を活用し、学校の自己評価手法を充実する。

(2) やらされ感の払拭と実践的な改善活動の積み上げ
 成功事例の広報や、その実績をデータベース化するとともに、情報交換を積極的に行い、志のある教職員の取組意欲を喚起していく必要がある。

(3) 学校経営品質と外部評価等の関係
 一部の学校では、民間企業人、大学教員などの有識者を学校評議員として委嘱し、外部評価を受け、その提言に基づき改善活動を進めている。今後、学校評議員だけでなく、学校経営品質の取組で養成してきた認定アセッサーの利活用も含め、外部評価や第3者評価のあり方について、その方針を策定していく。

(4) 児童生徒への教育
 学校経営品質の取組が教職員だけでなく、児童生徒に学年、ホームルームの各目標を年度始めに決めさせ、自分がその目標に到達するため手段としてPDCAサイクルの考え方が有効であると取り組む学校が現れた。学校経営品質の考え方を児童生徒の発達段階に応じて、教育内容にどのように組み込んでいけるかを検討する。
(以上)


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