ここからサイトの主なメニューです

第2章 キャリア教育の推進のための方策

 本会議では、第1章で述べた高等学校の現状と課題を踏まえ、特に普通科におけるキャリア教育の推進のための方策について具体的な検討を行った。次に、今後実施が望まれる方策について提言するものである。なお、各提言番号の後の括弧書きについては、国や教育委員会等、提言の主な対象と考えられるものについて記した。

1  キャリア教育の学校教育への位置付け
提言1(学校)
  学校教育目標等にキャリア教育の推進を位置付けること
 各学校においてキャリア教育を推進するためには、校長のリーダーシップの下、学校教育目標や教育方針等、学校経営方針にキャリア教育を明確に位置付けることが大切である。そして、すべての教職員の理解の下、学校の教育活動全体を通じてキャリア教育を進めることが重要である。また、学校・地域・家庭が一体となって進めることも必要である。

提言2(学校)
  組織的、体系的なキャリア教育の指導計画の作成
 キャリア教育においては、キャリア(注1)が子どもたちの発達段階やその発達課題の達成と深くかかわりながら段階を追って発達していくことを踏まえ、子どもたちの全人的な成長・発達を促す視点に立った取組を積極的に進めることが大切である。このことから各発達段階に応じたキャリア教育を積極的に推進することが重要である。
 現行の高等学校の学習指導要領においても、キャリア教育に関連する事項は、関係教科・科目、特別活動、総合的な学習の時間などに位置付けられているが、キャリア教育を組織的、体系的に推進する観点から、進路指導としての「特別活動」や、自らの在り方生き方の指導としての「総合的な学習の時間」と、教科・科目等と関連付け、学校のすべての教育活動を通じた組織的、体系的なキャリア教育を実践することが必要である。このため、各学校においては、組織的、体系的なキャリア教育がなされるよう、各教科等の指導計画の作成にあたって配慮することが大切である。
 また、指導計画の作成に当たっては、小・中学校との接続を見通したものとなること、就職・進学等、生徒の進路の状況に応じたものとなること等に留意しなければならない。
(注1) キャリア:「個々人が生涯にわたって遂行する様々な立場や役割の連鎖及びその過程における自己と働くこととの関係付けや価値付けの累積」(平成16年1月キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議)

提言3(国)
  キャリア教育の位置付けの明確化に向けての検討
 いわゆるニート、フリーターの課題が指摘される中、進学・就職を問わず、社会的自立、職業的自立に向けたキャリア教育の推進が求められている。「提言2」で述べたように、キャリア教育は、学校のすべての教育活動を通じて行われるものであるが、今後、一層の充実を図るためには、その中核となる時間を教育課程に明確に位置付けることが求められる。例えば、高等学校の総合学科の原則履修科目とされている「産業社会と人間」は、就業体験や企業見学などの体験活動、社会人や地域の人々の講話、調査研究、発表、討論などを通して、産業社会の実際について学習することを通して、自らの在り方生き方、将来の進路について、なぜ、何のために学ぶのか、そのためにはどの科目を選ぶべきかなどについて生徒に考えさせることを目指した科目である。総合学科では、この科目の履修を通して、生徒の学習に対する姿勢や態度、目的意識や進路意識の向上に大きくつながっており、極めて有効なものとなっている。また、総合的な学習の時間では、学習活動の例示として「自己の在り方生き方や進路について考察する学習活動」が取り上げられており、この活動を通じて成果を上げている学校もある。
 このことから、キャリア教育の充実を図るため、普通科における「産業社会と人間」又はそれに類するものを教科科目として設定すること、あるいは総合的な学習の時間においてキャリア教育の位置付けを明確化することなどが考えられるが、現在行われている学習指導要領の見直しにおいて、キャリア教育の推進のための手だてを十分検討することを求めたい。

提言4(国・教育委員会・学校)
  キャリア教育の適切な評価及び生徒の評価方法の検討
 キャリア教育の計画及び実践を、その目標を達成し、さらにより効果的な実践に発展させていくためには、適切な評価を行うことが重要である。このためキャリア教育についても、PDCAサイクル(注2)による評価を導入することを求めたい。
 生徒の学習活動の様子やその成果等から、指導計画や指導方法等が妥当なものであったかどうかを評価し、改善につなげていくことが大切である。たとえば、生徒一人一人のキャリア発達の状況を的確にとらえるとともに、生徒自身が自己理解を深めることも重要である。そのための具体的な方法として、自己評価カードやポートフォリオ(注3)等を用いることが有効であることなど、キャリア発達の評価方法等について、各学校、各都道府県教育委員会及び国等において、検討することを求めたい。
(注2) PDCAサイクル:P(Plan:計画)、D(Do:遂行・行動)、C(Check:評価)、A(Action:反映・補正行動)のサイクル(循環)
(注3) ポートフォリオ:児童生徒の学習成果を継続的に蓄積したもの

前のページへ 次のページへ


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ