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第2章 国立大学等施設を取り巻く状況と今後の課題



 現行5か年計画が策定された後、国立大学等が法人化したことをはじめ、国立大学等施設を取り巻く様々な状況が変化している。今後、国立大学等施設においては、教育研究の多様化に対して、その動向を踏まえ、多角的な視点をもって整備を進める必要がある。
 以下に国立大学等の施設整備を進めるにあたり踏まえるべき、国立大学等の全体を取り巻く状況について示す。なお、これに関係する各種審議会答申等については、関連部分を巻末参考資料に掲載している。

1.   国立大学等の法人化
   平成16年度の国立大学等の法人化後、国立大学等は、中期計画に基づき事業を行うことになり、国は当該期間にわたる大学全体の施設整備方針を示すことが求められている。
 このため、国立大学等の法人化後の施設に関する国と国立大学等の役割及び中期計画期間中に国として重点的・計画的に行うべき施設整備の在り方、さらに、これらの整備の前提となる、施設マネジメント(注6)等の国立大学等に求められる施設に関する取組は、本協力者会議報告「知の拠点−国立大学施設の充実について(平成15年7月)」に示したところである。
 同報告において、国立大学等の法人化の趣旨を踏まえ、国と国立大学等は、それぞれの役割分担の下、施設整備、管理運営を適切に行うべきである旨を示すとともに、施設整備には国費が投入されることから適切な評価に基づく事業の採択を行うなど、国民への説明責任を果たすことが重要である旨、あわせて指摘している。
注6    施設マネジメント…キャンパス全体について総合的かつ長期的視点から教育研究活動に対応した適切な施設を確保・活用することを目的とした、企画・計画、整備、管理の全般にわたる業務(今後の国立大学等の施設管理に関する調査研究協力者会議「『知の拠点』を目指した大学の施設マネジメント」平成14年5月)。

2.   老朽化への対応
   国立大学等施設の老朽化への対応が緊急に必要であるとの指摘が各種審議会答申等でなされており、第3期科学技術基本計画(平成18年3月28日閣議決定)においては、「国立大学法人等の施設の老朽化が深刻化しており、機能的な観点から新たな教育研究ニーズに対応できないだけでなく、耐震性や基幹設備の老朽化など安全性の観点からも問題があるため、国は、老朽施設の再生を最重要課題として位置付け、長期的な視点に立ち計画的な整備に向けて特段の予算措置を講じる」よう指摘されている。

3.   地震防災等の対策
   兵庫県南部地震では、特に、旧耐震基準により設計された昭和56年以前の建築物に、大きな被害が生じている例が少なからずあり、また、構造体に大きな被害がなくても、外壁仕上げ材の脱落や設備機器の転倒が生じている。これらを受け、平成7年10月には、安全性の確保や災害応急対策活動の確保のため、既存建築物の耐震改修を促進する「建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成7年10月27日法律第123号)」が制定された。同法律では、耐震性の劣る一定規模以上の学校や病院等の所有者は、耐震改修を行うように努めなければならないとされている。さらに、平成17年11月7日の同法律の一部改正により、住宅及び学校や病院等多数の者が利用する建築物の耐震化率を平成27年までに少なくとも9割にすることが目標とされた。

4.   教育研究の基本的方向
 
(1) 人材養成機能の充実・強化
   人々の知的活動・創造力が最大の資源である我が国にとって、世界一流の優れた人材の養成と科学技術の振興は不可欠である。
 高等教育を含めた教育は、個人の人格の形成の上でも、社会・経済・文化の発展・振興や国際競争力の確保等の国家戦略の上でも、極めて重要である。特に、高等教育は、先見性・創造性・独創性に富み卓越した人材を輩出することも大きな責務であり、その基盤を担う国立大学等施設は、特に人材養成機能の充実・強化に対する取組について配慮する必要がある。

(2) 科学技術・学術研究の推進
   各国立大学等においては、今後の学術研究の推進に当たり、それぞれの個性を活かした取組の推進を図ることにとどまらず、新たな学問分野の創出などにより高い水準の学術研究の実現を目指し、法人の枠を超えた連携の強化などによる新たな知の創造に向けた機動的・戦略的な研究体制の構築にも取り組むことが必要である。教育研究基盤となる施設の整備については、これらを支援するための取組について配慮する必要がある。

(3) 最先端医学・医療への対応
   大学病院は、医師等の養成のための教育機関、新しい医療技術の研究・開発を行う研究機関、高度な医療を提供する中核的医療機関として、重要な役割を担っている。大学病院は、常に最先端医学・医療への対応を求められており、国立大学附属病院の再開発整備においては、変化し続ける医学・医療の要請に配慮する必要がある。

5.   システム改革への取組
   国立大学等は法人化後、各国立大学等の目標、理念に基づく個性が一層強く求められることから、施設の充実に関しても様々な自主的・自律的な取組として、施設マネジメントや新たな整備手法(多様な財源の活用、学外施設の利用等)の推進が必要である。

6.   今後の課題
   「第1章 2.国立大学等施設の現状」のとおり、多くの課題を有する施設の現状、近年の厳しい財政状況を勘案すると、前述の国立大学等施設を取り巻く状況から生じる施設に対するニーズに十分応えられないことが想起される。このことは、独創的・先端的な学術研究の推進や創造性豊かな人材養成などの発展基盤を確立することはおろか、今後の国立大学等における諸活動に、将来となっては取り戻せない影響を及ぼすことが懸念される。
 国は、そのような事態が発生しないよう、世界水準の教育研究成果の確保を目指し、重点的・計画的な整備を推進するため、緊急に対応が必要な課題を明確にする必要がある。


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