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参考資料3

平成17年5月23日
日本原子力研究所
核燃料サイクル開発機構

試験研究用原子炉施設及び核燃料使用施設における重要放射性核種の選定について

1.  目的
   原子力安全委員会(以下、「原安委」という。)は、原子炉施設(軽水炉、ガス炉、重水炉及び高速炉)の廃止措置等に伴い発生する金属、コンクリート等を対象としたクリアランスレベルについて調査審議を進め、平成11年3月に「主な原子炉施設におけるクリアランスレベルについて」(以下、「クリアランスレベル報告書」という。)、平成13年7月に「重水炉、高速炉等におけるクリアランスレベルについて」及び「原子炉施設におけるクリアランスレベル検認のあり方について」(以下、「検認報告書」という。)をとりまとめた。さらに、核燃料使用施設のうち、専ら照射済燃料及び材料を取り扱う施設を対象として、平成15年4月に「核燃料使用施設(照射済燃料及び材料を取り扱う施設)におけるクリアランスレベルについて」(以下、「核燃料使用施設クリアランスレベル報告書」という。)をとりまとめた。これらの報告書の内容を踏まえ、クリアランスレベルの値としてIAEA安全指針RS-G-1.7の放射能濃度値を用いた場合の原子炉施設及び核燃料使用施設における重要放射性核種注1の選定について検討した。

 
注1  重要放射性核種:線量評価において相対的に重要となる放射性核種
 原子炉施設から発生する種々の対象物は、汚染経路毎の放射性核種組成が大きく異なることはないと考えられるため、線量評価の観点から影響度の大きい限られた放射性核種の濃度を制限することで、その他の放射性核種の濃度も自ずと制限されると考えられるので、原子炉施設における重要放射性核種を定めることが実際的である。
  (原安委「クリアランスレベル報告書」より)

   核燃料使用施設から発生する種々の廃棄物は、それぞれの施設において対象とした炉型の照射済試料を調査することにより、発生する廃棄物等の中に含まれると考えられる放射性核種を推定することは可能であり、その中から線量評価の観点から影響度の大きい放射性核種を選定し、選定されたそれらの核種をすべて集合化することにより、核燃料使用施設においても重要放射性核種とすることができる。
  (原安委「核燃料使用施設クリアランスレベル報告書」より)

2.  試験研究用原子炉施設(軽水炉型試験研究用原子炉施設、重水炉及び高速炉)における重要放射性核種の選定について
 
2.1  対象施設
   本検討では、試験研究用原子炉施設のうち、軽水炉として日本原子力研究所東海研究所の軽水炉型試験研究用原子炉施設「JPDR」、重水炉として同研究所の「JRR-2」、高速炉として核燃料サイクル開発機構大洗工学センターの「常陽」を対象とした。

2.2  検討方法
   試験研究用原子炉施設における重要放射性核種の抽出にあたっては、「クリアランスレベル報告書」における方法と同様の手順で検討を行った。すなわち、試験研究用原子炉施設における金属、コンクリート等に含まれる放射性核種の推定濃度を用いて、クリアランスレベルにRS-G-1.7を適用した場合の相対重要度注2を評価し、相対重要度が0.01以上(2桁の範囲に入る)となる放射性核種を重要放射性核種として抽出した。ここで、検討の対象とした試験研究用原子炉施設における対象物及び汚染経路(放射化物、汚染物)毎の推定濃度は原安委が「クリアランスレベル報告書」及び「重水炉、高速炉等におけるクリアランスレベルについて」で用いた放射能濃度値を用いた。また、評価対象核種は、これらの報告書と「検認報告書」に示された33核種とし、クリアランスレベルはRS-G-1.7の放射能濃度値を用いた(表1)。なお、高速炉「常陽」の放射化物の推定濃度については、MK-3炉心への改造後の中性子フラックス実測値を用いて再評価した値を使用した。
 
注2相対重要度: 対象物毎に最大となった放射性核種のDパーCを1として、他の放射性核種のDパーCを規格化したもの。
 
相対重要度イコール DjパーCj分のDiパーCi
  Di:核種iの放射能濃度(ベクレル毎グラム
Ci:核種iのクリアランスレベル(ベクレル毎グラム
j:DパーCが最大となる核種

2.3 検討結果
 
(1) 軽水炉型試験研究原子炉施設
   対象とした軽水炉型試験研究原子炉施設における相対重要度の評価結果を表2に示す。当該原子炉施設の対象物及び汚染経路毎に選定された放射性核種をすべて集合化することにより重要放射性核種を以下のとおり抽出した。

 
  (最大) コバルト-60、ユーロピウム-152
  (1桁目) かっこスカンジウム-46ユーロピウム-154
  (2桁目) トリチウムマンガン-54、かっこ亜鉛-65かっこ銀-110mセシウム-134、かっこタンタル-182

    かっこ内は、運転に伴って発生する廃棄物等により抽出される放射性核種であり、かつ、「クリアランスレベル報告書」に示された以下の検討により重要放射性核種の対象外とした核種を示す。
 
  1  重要放射性核種として抽出した放射性核種のうち、相対重要度が2桁目である亜鉛-65、銀-110m及びタンタル-182は、運転に伴って発生する廃棄物等(以下「運転中廃棄物」)により抽出される放射性核種であり、いずれも半減期の短いγ線放出核種である。運転中廃棄物は、廃止措置に伴って発生する廃棄物等(以下「解体廃棄物」)に比べ発生量が極めて少ないため、作業時間等の各評価パラメータの値が小さくなる。このため、運転中廃棄物の放射性核種の単位濃度当たりの線量が解体廃棄物に比べて小さくなり、クリアランスできる放射性核種の濃度が大きくなる。したがって、相対重要度は小さくなることから、重要放射性核種の対象外とした。
  2  相対重要度が1桁目になったスカンジウム-46は軽水炉型試験研究用原子炉施設の運転中廃棄物である放射化コンクリートから発生する放射性核種であり、その発生量が極めて少ないと考えられることから、同様に相対重要度は小さくなり、重要放射性核種の対象外とした。

(2) 重水炉「JRR-2」
    表3の結果から、重水炉「JRR-2」における重要放射性核種を以下のとおり抽出した。

 
  (最大) トリチウムコバルト-60、かっこバリウム-133
  (1桁目) ユーロピウム-152、
  (2桁目) ユーロピウム-154

    かっこ内のバリウム-133については、粗骨材に重晶石(BaSO4)を含む放射化された重コンクリートの場合のみ選定されるため、その材料が使用された原子炉施設においてのみ重要放射性核種として抽出されるものである。

(3) 高速炉「常陽」
    表4の結果から、高速炉「常陽」における重要放射性核種を以下のとおり抽出した。

 
  (最大) かっこ炭素-14マンガン-54、コバルト-60、ユーロピウム-152
  (1桁目) セシウム-134、ユーロピウム-154
  (2桁目) トリチウム角括弧スカンジウム-46角括弧亜鉛-65角括弧タンタル-182

    かっこ内の炭素-14については、放射化された黒鉛遮へい体の場合のみ選定されるため、その材料が使用された原子炉施設においてのみ重要放射性核種として抽出されるものである。
  角括弧内は、運転に伴って発生する廃棄物等により抽出される放射性核種であり、かつ、原安委のクリアランスレベル報告書に示された以下の検討により重要放射性核種の対象外とした核種を示す。
 
  1  重要放射性核種として抽出した放射性核種のうち、相対重要度が2桁目であるあえん-65及びタンタル-182は、運転に伴って発生する廃棄物等(以下「運転中廃棄物」)により抽出される放射性核種であり、いずれも半減期の短いγ線放出核種である。運転中廃棄物は、廃止措置に伴って発生する廃棄物等(以下「解体廃棄物」)に比べ発生量が極めて少ないため、作業時間等の各評価パラメータの値が小さくなる。このため、運転中廃棄物の放射性核種の単位濃度当たりの線量が解体廃棄物に比べて小さくなり、クリアランスできる放射性核種の濃度が大きくなる。したがって、相対重要度は小さくなることから、重要放射性核種の対象外とした。
  2   すず-46は運転中廃棄物である放射化コンクリートから発生する放射性核種であり、その発生量が極めて少ないと考えられることから、同様に相対重要度は小さくなり、重要放射性核種の対象外とした。

(4) 試験研究用原子炉施設における重要放射性核種
   以上の検討から、試験研究用原子炉施設(軽水炉型試験研究用原子炉施設、重水炉及び高速炉)において選定された重要放射性核種を以下に示す。これらの重要放射性核種は、結果的に原安委が示した主な原子炉施設(軽水炉、重水炉及び高速炉)における重要放射性核種と同じ核種となった。

 
原子炉施設における重要放射性核種

トリチウム、(炭素-14)、マンガン-54、コバルト-60、ストロンチウム-90、(バリウム-133)、セシウム-134、セシウム-137、ユーロピウム-152、ユーロピウム-154、全α核種

   なお、評価対象核種のうち、RS-G-1.7に放射能濃度値が示されていない銀-108m及びバリウム-133の濃度値については、IAEAの安全レポート(Safety Report Series ナンバー44)を参照した。
 上表のストロンチウム-90、セシウム-137及び全α核種は、軽水炉において燃料損傷を考慮した場合に重要放射性核種として抽出されたものであり、試験研究用原子炉施設でも当該事象を想定した場合、選定される放射性核種である。また、炭素-14は放射化された黒鉛遮へい体の場合のみ選定される放射性核種であり、バリウム-133は放射化された粗骨材に重晶石を含む重コンクリートの場合のみ選定される放射性核種である。
 検討のまとめとして、クリアランスレベルにRS-G-1.7を適用した場合の試験研究用原子炉施設における重要放射性核種の抽出結果及びクリアランスのための放射能濃度値を表1に示す。
 
  IAEAの安全レポート; Derivation of Activity Concentration Levels for Exclusion, Exemption and Clearance, Safety Report Series ナンバー44

3. 核燃料使用施設(照射済燃料及び材料を取り扱う施設)における重要放射性核種の選定について
 
3.1 対象施設
   本検討の対象とした施設は、核燃料使用施設のうち、専ら、照射済燃料及び材料を取り扱う施設(以下、「核燃料使用施設」という。)であり、その代表的施設は、原子炉で照射された燃料及び材料を対象として機械的強度試験、物理的、化学的及び冶金学的試験等を実施することを目的とした照射後試験施設である日本原子力研究所東海研究所ホットラボ、核燃サイクル開発機構大洗工学センター照射燃料集合体試験施設である。

3.2 検討方法
   重要放射性核種の検討にあたっては、原安委がとりまとめた「核燃料使用施設クリアランスレベル報告書」における重要放射性核種の抽出手法と同様の手順で検討を行った。核燃料使用施設で取り扱う原子炉施設等で使用されている主要な照射済試料を対象に、運転に伴い発生する廃棄物等については原子炉取り出し後0.5年が、解体に伴い発生する廃棄物等については5年が経過しているものとして、これらの照射済試料に含まれる評価対象核種(49核種)(表5)の推定濃度を用いて相対重要度を評価し、相対重要度が0.01以上(2桁の範囲に入る)となる放射性核種を抽出した。ここで照射済試料に含まれる評価対象核種の推定濃度は原安委が用いた放射能濃度値を、クリアランスレベルはRS-G-1.7の放射能濃度値を用いた。
 なお、運転に伴って発生する廃棄物等により抽出される放射性核種は、その物量が廃止措置に伴って発生する物量に比べて極めて少ないため相対的に重要度が小さくなることから、原安委の考え方と同様に対象物毎に最重要となる核種以外は対象外とした。

3.3 検討結果
   核燃料使用施設で取り扱う主要な照射済試料毎の相対重要度の評価結果(表6)から、対象の炉型及び照射済試料において選定されたそれらの核種をすべて集合化することにより重要放射性核種を以下のとおり抽出した。

 
  (最大) トリチウム炭素-14、マンガン-54、コバルト-60、亜鉛-65、ニオブ-94、ニオブ-95、ルテニウム-106、アンチモン-125、セシウム-137
  (1桁目) セシウム-134、ユーロピウム-154、かっこプルトニウム-238プルトニウム-241、かっこアメリシウム-241
  (2桁目) ストロンチウム-90、かっこプルトニウム-239かっこプルトニウム-240かっこキュリウム-244

    かっこ内のα線を放出する核種については、「核燃料使用施設クリアランスレベル報告書」と同様に「全α核種」として取り扱うものとすると、核燃料使用施設における重要放射性核種は以下の通りとなる。

 
核燃料使用施設における重要放射性核種

トリチウム炭素-14、マンガン-54、コバルト-60、亜鉛-65、ストロンチウム-90、ニオブ-94、ニオブ-95、ルテニウム-106、アンチモン-125、セシウム-134、セシウム-137、ユーロピウム-154、プルトニウム-241、全α核種

   なお、評価対象核種のうちRS-G-1.7に放射能濃度値が示されていない銀-108mの濃度値については2.3同様、IAEAの安全レポート(Safety Report Seriesナンバー44)を参照した。
 また、同様にRS-G-1.7にその放射能濃度値が示されていないすず-119m,すず-123,プロメチウム-148mの3核種については、これらの核種の半減期はいずれも1年未満であることから運転に伴う廃棄物等に対して評価対象となること、運転に伴い発生する廃棄物等に対しては最重要となる核種のみを重要核種として抽出することから、本検討ではRS-G-1.7と同じ線量換算係数を用いて評価した原安委の再評価値(「原子炉施設及び核燃料使用施設の解体等に伴って発生するもののうち放射性物質として取り扱う必要のないものの放射能濃度について」平成16年12月16日(平成17年3月17日一部改訂及び修正))を用いて相対重要度の評価を行った。その結果、これらの核種の相対重要度はいずれも4桁目以下であることから、RS-G-1.7放射能濃度値と原安委再評価値の違いを考慮しても問題とならないと考えられる。

4. クリアランス検認における検認対象核種選定にあたっての留意事項
   クリアランスレベル以下であることの検認方法については、原安委の「検認報告書」に示されており、その適用可能施設として、主な原子炉施設(軽水炉、ガス炉)及び、これ以外の原子炉(重水炉、高速炉等)が示されている。また、核燃料使用施設に対する検認方法についても、原安委は、「核燃料使用施設クリアランスレベル報告書」の中で、「検認報告書」の考え方が適用できるとの考えを示している。このため、検認方法については、原安委の「検認報告書」の考え方を、本検討対象である試験研究用原子炉施設(軽水炉、重水炉、高速炉)及び核燃料使用施設にも適用することが妥当であると考えられる。ただし、「核燃料使用施設クリアランスレベル報告書」においては、核燃料使用施設では種々の炉から発生する種々の照射済試料を扱うことを十分考慮する必要があるとしている。重要放射性核種は検認に際して重要度の高いものとして、線量評価の観点から影響度の大きい放射性核種を集合化するステップを踏んで抽出されているため、照射済燃料及び材料を取り扱う核燃料使用施設に共通して適用できると考えるが、特定の核燃料使用施設を対象に検討する場合、上記の特性に注意する必要がある。
 検認に際して、DパーCの総和が1以下であることにより判断する方法を用いる場合、重要放射性核種を検認対象核種とするが以下の留意事項がある(「クリアランスレベル報告書」)。
 
1 重要放射性核種を抽出した前提(各炉型、対象物、汚染経路に関したこと)が大きく異ならないこと、重要放射性核種以外の放射性核種の影響が十分小さいことを確認する。
2 重要放射性核種のDパーCの総和が全放射性核種のDパーCの総和の90パーセントに満たない場合、重要放射性核種以外の核種を検認対象核種として追加することも考慮。



表1
表2
表3
表4
表5
表6-(1)
表6-(2)

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