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(5)その他

1包括利用許諾に係る使用料のあり方について

ア 現状
 音楽の著作物の放送や演奏,通信カラオケ,インタラクティブ送信等の分野では,管理事業者が管理している全部の著作物の利用を認める包括許諾契約が一般的である。

 旧仲介業務法の時代は,利用者は,音楽の著作物に関する唯一の仲介業務団体である社団法人日本音楽著作権協会と包括許諾契約を交わし事業を行っていたが,管理事業法施行後,音楽の著作物を管理する管理事業者が新たに参入したことを受け,複数の管理事業者と同一の利用方法について契約を結ばなければならなくなってきている。なお,管理事業法では包括的利用許諾契約に関し,特別の規定をおいていない。

イ 意見募集の内容
 新規参入の管理事業者から利用許諾契約の締結を求められる結果,旧仲介業務法の時代よりも管理事業者に支払う音楽著作物の使用料額の総額が増加するおそれがあるので,関係者間で使用料額を調整する仕組が必要である,包括的利用許諾契約の存在が参入障壁になって,新規の管理事業者が参入しにくくなるなどの点から,包括利用許諾契約のあり方の見直しを求める意見があった。

ウ 検討の結果
 旧仲介業務法の時代であっても,社団法人日本音楽著作権協会が包括許諾を与えられるのは同協会が管理している作品だけであり,同協会の管理作品以外の作品を利用する場合には別途著作権者から許諾を得る必要があるという点では,現在と変わりはない。
 しかしながら,このような分野の包括的利用許諾契約については,管理事業法の施行前から実施されており,使用料規程の制定の際の関係利用者団体との協議に当たっては,新規参入の管理事業者の存在を考慮せずに,協議が行われてきたことも事実である。
 したがって,この問題は法制度の問題ではないと考えられるが,指定管理事業者においては,利用者における管理作品の利用実績の推移等を把握した上で,例えば,管理作品の利用比率の低下に合わせて,使用料額の再考を行うなどの配慮が必要であろう。また,利用者側においては,このような客観的データの収集に努め,必要であれば,管理事業法上の協議・裁定制度を活用するなどして,問題の解決に努める必要があると考える。
 なお,この問題について,管理事業者間で使用料額の調整を行うことを求める意見もあるが,そのような調整は,独占禁止法の問題があると考えられるので,適当ではないと考える。

2その他
 その他の問題についても,意見募集において様々な意見のあったところであるが,現時点においては特に制度改正を必要とする事項はなかった。

4 まとめ

 管理事業法は,施行から4年を経過したところであるが,新規の管理事業者も参入し,同一分野において複数の管理事業者が存在する状況も生まれ,著作権者等の選択の幅が拡大し,また潜在的な競争環境が旧仲介業務法時代からの管理事業者にも影響し,管理手数料の引下げ等のサービスの向上や経営面での改善が見られるとの前向きの評価がある。
 他方で,意見募集の結果からは,同一分野に管理事業者が複数存在することによる許諾手続きの複雑化,信頼度の低い新規参入事業者の存在などの旧仲介業務法に基づく秩序の変更に伴う戸惑い等もあると思われ,特に利用者側からは規制の強化を求める意見が多く見られた。
 これは,管理事業法が施行から4年しかたっておらず,管理事業者の実績や事業者間の競争の効果がまだ現れておらず,利用者側から見て信頼度が高い管理事業者とそうでない管理事業者の峻別等がはっきりしないことや,管理事業法に基づく新しい利用秩序がまだ定着していないことから,旧仲介業務法に基づく利用秩序との比較でしか現状を評価できないことなどが原因と考えられる。  以上の点を踏まえ,管理事業法附則第7条に基づく,同法の見直しに当たり,以下のとおり提言をする。
 管理事業法に対する意見募集の結果を踏まえ,検討事項を整理し,検討した結果,直ちに管理事業法を改正し対応すべき事項はない。ただし,非一任型の管理事業の規制,管理事業者の役員の兼職,管理事業者の守秘義務,管理著作物等の情報提供,管理権限の開示義務及びインターネット公示については,管理業務の実態をよく調査するとともに,ある程度の期間を経た段階で,改めて制度改正について検討する必要がある。

 法改正事項はないものの,特に利用者側の意見から,現行法の厳格な運用が求められており,これに応えて文化庁は管理事業者への指導監督を的確に実施していくことが必要である。具体的には,定期報告徴収及び定期立入検査,管理事業者向けの講習会など現在実施している施策については,内容の充実を図った上で今後も継続していくことが重要である。また,相当期間にわたり管理委託契約約款や使用料規程の未提出の管理事業者及び事業の実態がないと思われる管理事業者については,業務の実態をよく調査した上で,廃業届の提出を求めたり,必要に応じ,登録の取消処分を行うなど,適切な監督を行う必要がある。

 さらに,アで指摘した課題については,制度改正の検討とは別に,文化庁はガイドラインを策定するなどして,適切な管理事業が実施されるよう管理事業者に対する指導・助言を強化していく必要がある。

 最後に,届出事項の変更届出期間の緩和や管理委託契約約款・使用料規程のインターネット公示については,現行法の枠内で対応可能と考えられるので,文化庁はその手続の改善等に配慮すべきである。


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