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資料8

文化庁・文化審議会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会
−写真分野ヒアリング資料−

有限責任中間法人 日本写真著作権協会
2007年5月16日

<はじめに>

  写真という著作物の分野は、文芸、美術などとは、異なった著作権法との関わりを持つ。これは、写真が技術の進歩によって生み出され、また、その進歩によって変化してゆくという、他の分野とはやや異なる特質を持っているからである。写真分野の経緯を概観しておくことは、特に激しい技術進化のある現在において、今後を考える参考になるであろう。
そのため、検討課題の前に、写真分野の経緯を概観しておく。

<写真分野における著作権の経緯>

  先ず始めに、旧著作権法の下では、写真の著作権は公表後10年であった。これは様々な要因があったのであろうが、概略すると次の理由に要約されると思われる。
 まず、写真が表現と言うよりも、技術の成果物として捉えられていた、ということが挙げられる。また、写真は複製を前提としており、プリント、印刷などの手段により、大量の複製が可能である。このことから、人の手によって描かれ、唯一無二である原作に、強いオリジナリティを持つ絵画などと比すると、写真は創造性が低いと見なされていたために、10年で保護期間がうち切られたのだと思われる。
 次にその内容が、常に情報を多く含み、その情報価値によって利用されることが少なくなかったために、早い時期にパブリックドメインとすることが望まれた、ということが考えられる。これは言語よりも、より多くの情報を伝えるために有効な手段として、利用を促進するために、公益的な見地から、積極的に短い保護期間としたのではないだろうか。
 最後に、写真は署名されることが少なく、権利者がわかりにくい状況であったことが挙げられる。このために、権利者がわかりにくく、また、その権利者の所在などが明らかではない場合も多かったために、公表時起算とせざるを得なかった、ということである。
 このような理由を考えると、現代の様々な問題と共通する部分が多く含まれていることを理解されるのではないだろうか。また、旧著作権法においては、写真館などで撮影された肖像写真は、その注文者に著作権が存在するという規定が設けられていたことを付記しておく。
 この後、2回の延長を経て、現著作権法においては公表後50年の保護期間を持つに至り、さらに平成8年(1996)の法改正で死後起算となるに至った。依頼された肖像写真の著作権も、現著作権法になった時点で撮影者に戻ってきている。現在は他の著作物と同様に、死後50年の著作権保護期間である。
 しかし、このような経緯の中で、写真の著作権は大きな問題を残してしまった。それは生存している写真家の著作権の保護期間が、満了しているという現実である。しかも、それが公表時起算であるために、利用者、権利者双方に大きな混乱を招き、特に写真家にとっては、経済的損失のみならず、精神的にも多大な損害を与えている。この問題を解消すべく、写真家団体は継続的な運動をおこなっていたが、既に切れてしまった著作権を復活させることは利用者側の混乱、損失も多く、現在、運動は休止している。ちなみに数多く存在する写真家団体のうち、社団法人日本写真家協会のみでも、現在の会員約1,700名のうち、昭和31年には業を開始していたと思われる昭和11年(1936)以前生まれの写真家は235名、14パーセント弱存在する。これに該当する写真家が、著作権の保護期間が満了している作品を持っていると考えられている。
(参考資料添付: 自民党・著作権WGヒアリング資料2003年12月3日

このような経緯の上で、検討課題4項の整理を行い、意見を述べる。

<保護期間のあり方について>

  まず、この第3項目が大きな原則論についてであり、その原則論をいかに円滑に運用するか、という点が、第1項、第2項、第4項であると考えられる。このことから、第3項目について述べ、その他の項目の現状について列挙する。

急速な情報化社会の発展と、それを実現する爆発的な技術進歩、また、その結果として成し遂げられる、情報の国際化がある。また、デジタル技術の浸透の中で、著作物自体の類別が、非常に曖昧になってきている。更に、情報の拡散は、これまでとは比較にならない速度と規模で行われるようになった。このような時代背景において、また、今後の方向性に対して、必要な措置は次の方向であると考えられる。
著作物分野ごとの著作権法上の差異を可能な限り最小にし、また、国際的な著作権の扱いを平準化することが、至急望まれる。写真分野の経緯からもわかるとおり、著作権と技術進歩は、非常に密接に関連しており、著作物間、国際間で差異を設けることは、将来的な問題の原因となる可能性が高い。このような観点から、日本においては、早急に保護期間を死後70年とすることが急務である。また、それに伴い、世界において唯一、我が国のみに残る戦時加算特例を、無効化する手段を講じることは、冒頭で述べた国際的な平準化のためにも必須である。

<基本原則を円滑に運用するための方策>

  写真分野において、利用の促進を図るために、次のような対策を行っている。

 写真家、美術家、デザイナーに著作権者IDを付与し、権利者データベースを運用している。
 著作権者IDを、一般の個人にむけて、発行している。
 今年度、経団連ポータルサイトと連動し、コンテンツデータベース(JPCA―グラフィカ)を稼働させる。これにより、権利者と利用者を直接結ぶことによって、流通を促進する。ただし、このデータベースは、流通の橋渡しをするものであって、集中管理ではない。画像分野は、画像という性質上、集中管理には馴染まない部分が多い。
 死後の散逸と、過去の著作物の流通、保存を図るために、写真保存センターの設立を推進している。ここではネガを保存し、またその収蔵物をデータベース化して、流通促進する。将来的にはJPCA―グラフィカと連動し、画像に関する利用環境の整備を行う。写真保存センターは、今年度予算において、調査中の事業である。
(参考資料: JPCA―グラフィカTop(PDF:122KB))

以上


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