1.日本映画制作者連盟

●該当ページおよび項目名

概要版5ページ「2−3.補償の必要性について(第3節関係)(1)権利者が被る経済的不利益」について

●意見

 現在、申し上げるまでもなく、政府においては知的財産立国の実現を国家目標の一つとして掲げられておりますが、その中でも映画は極めて重要な地位を占めるところであり、今後、政策の大きな方向性として、映画のクリエイターに適正に利益が還元され、もって良質な作品が作り出されていく正のサイクルを生み出さなければならないものと存じます。
 「映画」は、映画製作者が多額の製作資金を投入して製作するものですが、その投下資本は、必ずしも回収が約束されていないリスクマネーです。「映画」は、このリスクマネーを原資に企画、撮影、編集などの製作段階を経てひとつの原版(オリジナルネガフィルム)という形に収束して完成します。
 「映画」のビジネスは、たったひとつのこの完成原版をマルチユースすることにより、投下資本の回収を目指してスタートしますが、その根幹は全てにおいて複製となります。
 まず、劇場での公開となりますが、これも、完成原版から上映スクリーン数分のプリントを複製し各劇場に頒布して始まります。
 次に、DVD等のパッケージ商品の発売ですが、言うまでも無く完成原版から複製して製造販売します。
 そして、テレビ放送ですが、これも、完成原版からテレビオンエア用の媒体に複製してテレビ局に納品し放送することになります。適法配信も同様です。
 このように、「映画」のビジネスは映画製作者が完成原版を主体的にコピーコントロールしながらマルチユースすることで成り立っており、複製行為により海賊版が作成される場合はもちろん、家庭内で複製物が保存・視聴される場合であっても、資本回収のウインドウと衝突することになるため、映画製作者は、基本的に第三者による複製について映画ビジネスの根幹を揺るがす行為であるとの認識を持っています。
 また、仮に、どのような態様によっても第三者により複製行為が行われる場合には、その対価をいただくことが映画製作者にとって生命線であると考えています。
 映画製作者は、下記のとおり基本的に第三者による複製には賛成しかねるため、私的録音録画補償金制度の運用を第一義的に考えることはありません。

 上記の複製禁止措置については、社会的にもコンセンサスがとれているため不都合が生じることはなく、当然、私的録音録画補償金制度の運用はありません。
 このような状況の中で、唯一、私的複製が可能なのは無料地上波放送からの録画です。無料地上波放送の録画に関しては、保存・視聴のほかに、タイムシフティングという視聴形態が含まれるため、映画製作者としては、短絡的に複製禁止と主張することが社会通念上馴染まないと考え、私的録音録画補償金制度の運用を前提に甘受しております。

●該当ページおよび項目名

概要版5ページ「2−3.補償の必要性について(第3節関係)(2)著作権保護技術と権利者が被る経済的不利益の関係」及び6ページ「2−3.補償の必要性について(第3節関係)(3)補償の必要性の有無」について

●意見

 映画製作者が考える著作権保護技術の定義は、ユーザーの視聴のみを許容し、その後の私的複製を禁止するものです。実際に、著作権保護技術により、DVD等のパッケージ商品も購入後繰り返し視聴は可能ですが、複製はできませんまた、適法配信においても視聴のみを許容し、その後の私的複製はできません。
 映画製作者としては、地上デジタル放送における著作権保護技術に関しても本来は純粋なタイムシフティング視聴のみを担保するものでなければならないと考えています。即ち、ハードディスクドライブ等の記録媒体に「映画」を一時固定した後、別の時間に1回視聴すると複製物が消えるという技術こそが放送からの録画におけるあるべき著作権保護技術であるとの理解です。このような純粋なタイムシフティング視聴のためには、一時固定物を複数個認める必要はないはずです。
 ところが、今般の総務省の「第4次中間答申」に盛り込まれた地上デジタル放送における著作権保護技術では、コピーワンス(1回1個)からダビング10(9回10個)まで私的録画を可能とする複製回数の緩和の方針が打ち出されました。しかし、ダビング10(9回10個)のもとでは、録画後の「映画」が保存・視聴されるケースが頻発することは明らかであり、映画製作者が賛成できるものではありません。
 地上デジタル放送からの私的録画に関して、総務省「情報通信審議会 情報通信政策部会 デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」の席上、映画製作者側は、視聴者の利便性とタイムシフティング視聴を勘案した上で、コピートゥワイス(1回2個)と主張しました。今般のダビング10(9回10個)は、映画製作者として容認できる範囲をはるかに超えるものであり、デジタルからデジタルへの複製であって保存・視聴されるものについては私的録音録画補償金制度による金銭的な補償の為されることが必要不可欠であると認識しています。

●該当ページおよび項目名

概要版8ページ「2−5.補償金制度のあり方について(仮に補償の必要性があるとした場合)(第5節関係)(1)補償金対象機器・記録媒体の範囲の見直し1基本的考え方2見直しの要点」と概要版9ページ「(2)対象機器・記録媒体の決定方法の見直し」について

●意見

 まず現行法の下での指定につきまして、平成19年10月現在、私的録画補償金の対象機器及び記録媒体は、DVCR、D−VHS、MVDISC、DVD−RW、DVD−RAMとこれらの機器に用いられるテープ、ディスクとなっておりますが、平成12年7月にMVDISC、DVD−RW、DVD−RAMが追加指定されたのを最後に対象機器及び記録媒体の範囲は広がっておりません。デジタル技術の開発はドッグイヤーと称され急速に進捗しているため、これらの機器及び記録媒体が早晩レガシー化することは自明の理です。例えば、現行のDVDは、徐々に製造を縮小し、次世代DVDと呼ばれるブルーレイディスクやHD−DVDに移行している現実があります。映画製作者としては、特に、録画の用に供される専用機器、記録媒体であるブルーレイディスクとHD−DVDを直ちに私的録画補償金の対象機器及び記録媒体とすることを要望します。
 次に、新たな補償金制度のあり方における対象機器等の範囲の見直しにつきましては、以下のとおり、要望します。

 なお、今後の指定方式としては、時代の変化に機動的かつ迅速に対応して対象機器等の指定を行い、補償金制度が空洞化しないようにする必要があります。そのため従前の政令指定方式を改めて、「法令で定める基準に照らして、公的な『評価機関』の審議を経て文化庁長官が定める」こととする見直し方策に賛成です。

●該当ページおよび項目名

概要版3ページ「2−2.著作権法第30条の適用範囲の見直しについて(第2節関係)(1)権利者に著しい経済的不利益を生じさせ、著作物等の通常の利用を妨げる利用形態1基本的考え方2違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画」について

●意見

 違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画については、第30条の適用除外とすることが適当であると考えます。
 映画の違法ファイルがファイル交換その他によって多数流通しており、映画業界としては、それを阻止することが必須です。そのためには、私的録音録画であっても、違法録音録画物や違法サイトからの録音録画については、第30条の適用除外としていただく必要があります。
 これに対して、1海賊版の作成や著作物等の送信可能化又は自動公衆送信の違法性を追求すれば十分である、2違法・適法の区別が難しい多様な情報が流通しているインターネットの状況を考えればダウンロードまで違法とするのは行き過ぎであり、インターネット利用を萎縮させる、3ダウンロードを違法にすると、架空請求を誘発するおそれがある、という意見があります。
 しかし、1については、海外から送信される場合や、送信元が秘匿されるP2Pソフトウエアが利用される場合など、送信可能化又は自動公衆送信の違法性を追求するだけでは十分な対策を取れないことが多々あり、ダウンロード側を違法とする現実の必要があります。
 次に、上記2については、30条の適用除外となる場合を違法サイトと承知した上で録音録画する場合や明らかな違法録音録画物からの録音録画に限定するなどの一定の条件を課することで、十分解決可能であると思われます。
 上記3については、架空請求の恐れがあるからといって被害者である著作権者の保護を躊躇するのは全く筋違いであります。

次のページへ