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1 私的録音録画問題の検討にあたっての基本的視点について

(1) 現行の私的録音録画補償金制度は長い間の議論を経て、国際的な動向も考慮しながら、関係者の合意の上に設けられたものであるが時代の変化等にあわせて見直しを行うこと

私的録音録画問題の解決方策については、昭和52年から、著作権審議会第5小委員会における検討、著作権問題に関する懇談会での検討を経て、平成3年の著作権審議会第10小委員会における結論という14年もの長きにわたる議論の経緯がある。著作権審議会第10小委員会の報告書(平成3年)は、有識者、権利者、機器等の製造業者及び消費者の代表による、粘り強い話し合いから生み出されたが結実したものであり、現行の私的録音録画補償金制度はまさにこの合意に基いて立法化されたものである。また、立法化にあたっては、昭和40(1965年)に当時の西ドイツが初めて導入して以来、先進国の多くが私的録音録画問題の解決に対し類似制度を採用しているという国際的動向も考慮された。

今回の制度の見直しに当たっては、以上のような経緯を踏まえながら、制度導入時の平成4年以降の技術の発達等による事情の変化や、制度の運用状況、最近の国際的な動向を考慮しつつ、権利保護と利用の円滑化の双方の観点から、見直すべきところは見直し、維持すべきところは維持し、現在の状況に合致したものとすることを基本として検討を進めた。

(2) 文化審議会著作権分科会報告書(平成18年1月)で示された課題に留意すること

文化審議会著作権分科会報告書(平成18年1月)では、「私的録音・録画についての抜本的な見直し及び補償金制度に関してもその廃止や骨組みの見直し、更には他の措置の導入も視野に入れ、抜本的な検討を行うべきである」と提言している。

前記報告書では、現行制度に関し、次のような課題を指摘している。

 制度上の課題としては、補償金制度は、複製を行うものの正確な捕捉、対象機器・記録媒体の正確な捕捉及び分配を受ける権利者の正確な捕捉の困難性があること

 配信事業においては課金と補償金の二重取りの可能性があること

 運用上の問題点としては、制度に対する消費者の認知度が低いこと、返還制度が十分機能していないこと、共通目的事業の内容が十分知られていないこと等

 著作権保護技術等の進展により私的録音録画の実態が捕捉可能となるところから、購入者一括払いを採用している現行制度を正当化する根拠が失われつつあるとの指摘があること

 ハードディスク内蔵型録音機器等の対象追加、パソコン、データ用CD-R等の汎用機器・記録媒体の取扱い及び対象機器等の政令指定方式については、見直しの検討の中で再検討すること

 国際条約・国際動向との関連に留意しつつ、権利者の利益が不当に侵害されることがないようにすること。また将来の制度は、ユーザーにとって利用しづらいものとならず、かつ納得のいく価格構造になるよう留意すること

(3) 私的録音録画問題を巡る時代の変化等にあわせて、次のような基本的視点を踏まえる

 本小委員会としては、(1)及び(2)の基本的視点に加えて、次の三つの視点が重要と考える。

   昭和45年に現行法が制定され、権利制限規定の一つとして、「私的使用のための複製」(第30条)が定められて以来、私的領域において著作物等を録音録画し、音楽や映像等を楽しむことは社会に定着した現象となっている。私的録音録画に関する制度設計にあたっては、このような利用者のニーズを尊重し、円滑な利用が妨げられることのないように配慮すべきであること

 著作権保護技術の開発とその活用により、私的領域における著作物等の利用についても技術的に管理したり、また、利用者のプライバシーを守りつつ、契約によって一定の対価を確保することができる分野が生まれてきている。このことは、平成4年に私的録音録画補償金制度を導入した以降の新たな状況の変化であるので、私的録音録画に関する具体的な制度設計を考える場合には、著作権保護技術や配信事業等の音楽・映像ビジネスの新たな展開などとの関係を十分考慮すべきこと

 仮に補償金制度を維持するとした場合においても、その内容は、文化審議会著作権分科会における指摘、各国法制、著作権保護技術の内容等を参考にしつつ、できる限り公正かつ合理的な制度を目指すとともに、今後の利用実態の変化との関係における補償金制度の位置づけをできるだけ明確にすること

(4) 検討の手順

 検討の手順に当たっては、上記の基本的視点に立って、第30条の適用範囲の見直し、補償の必要性、仮に補償の必要性があるとした場合の補償の具体的な方法の手順で検討を進めることとした。

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