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著作権分科会 私的録音録画小委員会(第11回)議事録・配付資料

1. 日時
平成19年9月5日(水曜日)10時〜12時

2. 場所
フロラシオン青山 はごろも

3. 出席者
(委員)
石井、井田、大寺、大渕、華頂、亀井、河村、小泉、河野、椎名、津田、筒井、土肥、中山、野村、生野、松田、森田の各委員
(文化庁)
吉田審議官、山下著作権課長、亀岡国際課長、川瀬著作物流通推進室長ほか
(オブザーバー出席者)
野方(日本音楽作家団体協議会顧問)

4. 議事次第
(1) 制度の枠組みについて
(2) その他

5. 資料
資料1   私的録音録画小委員会における議論の整理メモ(2)

参考資料1   私的録音録画に関する制度設計について
(※(第6回)議事録・配付資料へリンク)
参考資料2 現行制度の概要について
(※(第10回)議事録・配付資料へリンク)
参考資料3 検討の進め方
(※(第6回)議事録・配付資料へリンク)

6. 議事内容
【中山主査】
 それでは、時間でございますので、ただいまから文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の第11回を開催いたします。本日は御多忙中お集まり頂きまして、まことにありがとうございます。
 いつもの例ですけれども、議事に入ります前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開とするには及ばないと考えられますので、既に傍聴者の方々には御入場して頂いているところでございます。こういうことでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【中山主査】
 ありがとうございます。
 それでは、本日の議事は公開ということにいたしまして、傍聴者の方々にはそのまま傍聴をお願いいたします。
 なお、本日は、小六委員が欠席されておりますけれども、小六委員の申し出によりまして、日本音楽作家団体協議会顧問、野方英樹氏がオブザーバーとして出席されております。
 それでは、議事に入ります。
 まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【木村課長補佐】
 恐れ入ります。それでは、配付資料の確認をお願いいたします。議事次第用紙の1枚ものの下半分のほうに本日の配付資料を示させてもらっております。
 資料1といたしまして、私的録音録画小委員会における議論の整理メモ(2)でございます。その他に参考資料の1から参考資料の3はこれまで配付したものと一緒の資料でございます。
 漏れ等ございませんでしょうか。
 ありがとうございます。

【中山主査】
 よろしいでしょうか。
 本日は資料2の「私的録音録画小委員会における議論の整理メモ(2)」についての議論を行いたいと思います。
 まず事務局から、今後の議論の進め方と資料の説明をお願いいたします。

【川瀬室長】
 それでは、資料の1を御覧頂けますでしょうか。
 その前に今後の議論の進め方でございますけれども、前回、御日程をお示ししましたとおり、本日を含めまして、10月12日に文化審議会の著作権分科会が開催を予定されておりまして、そこに中間整理という形で報告をし、説明をさせて頂いて、意見募集をしたいと事務局としては考えております。今日、御議論頂いたものにつきましては、前回議論して頂いたものとあわせまして、13日には中間整理案ということで提出をさせて頂きまして、更に議論を深めて頂きたいと思っております。
 26日はその議論を踏まえた上での更に再整理したものを出します。なお、意見募集の際には、それぞれの実態、諸外国の実態、私的録音録画の実態もあったほうが分かりやすいので、そういうものも含めた整理案を提出したいと思っています。
 資料1でございますけれども、今回は仮に補償の必要性があるとした場合の制度のあり方について、整理をさせて頂きました。
 まず、対象機器・記録媒体の範囲でございます。以後の項目につきましては、まず現行制度の問題点ということで問題点を整理した上で、3ページの2ですけれども、見直しの要点ということで、項目ごとに現行制度の問題点を整理した上で、見直しの要点ということで整理をさせて頂くという形で全て通しております。
 1の対象機器・記録媒体の範囲でございますけれども、まず現行制度の問題点ですが、現行制度における対象機器の範囲につきましては、いわゆる分離型の専用機器が現行法では対象としているということです。具体的には法律でデジタル方式の録音または録画の機能を有する機器ということにしまして、括弧書きでいわゆるプロ用の機器と、留守番電話等の本来の機能に附属する機能として録音録画の機能を有するものを対象機器から除外をして、いわゆる機能に着目して用途を推定するという方法を採用しているわけでございます。ただ、平成10年の政令改正で、主として録音ないしは録画の用に供するという規定を入れましたけれども、これはあくまでも法律の趣旨を確認的に規定したものでございます。
 2ページの一番最初のまるですけれども、現行法では主たる機能が録音録画機能のものは、主たる用途も録音録画であるということから、録音録画機能しかない機器とか、附属機能は幾つかあるけれども、主たる機能は録音録画機能であるという機器を対象にしているということになるわけでございます。
 一方、現状では様々な機器が出ているわけですが、アからイについては、現行制度のもとでは対象にならないと整理されるわけです。アにつきましては、録音録画機能を有する機器のうち記録媒体を内蔵した一体型の機器と言われるものです。また、イは、録音録画機能を含めて複数の機能がある機器で、どの機能が主要な機器といえないもの、現在のパソコンが例ですが、こういうものも対象外であるということです。それから最後に、録音録画機能を附属機能として組み込んだ機器、例えば紹介しました留守番電話とか、携帯電話とか、録音機能付きカーナビゲーションというようなものは対象外であるということになるわけです。
 機器の現状につきましては、平成4年、現行法が制定した当時とは大きく変わっているわけでございますから、そういうような実態を踏まえまして、どのような考え方に基づいて対象機器を整理するかについては、十分検討する必要があるというのは現行法上の問題点でございます。
 対象記録媒体についても同じような問題があるわけでございまして、3ページを見て頂きますと、記録媒体につきましても、基本的には録音録画が主たる用途の記録媒体が対象ということになっているわけでございます。現行制度上は、例えば専用記録媒体が政令指定の対象になっていない機械でも使えるというようなこととか、これから普及するであろう新しい記録媒体について、用途を仕分けできるかというような問題があるという意見があるわけでございます。
 見直しの要点としましては、基本的な考え方、実はAとBがそのまま様々な問題点のいわゆる意見の総意になっているわけでございます。aとしまして、著作物の録音録画が行われる可能性がある機器は原則として対象にすべきであるという考え方でして、分離型専用機器は時代とともに減少の傾向にあるわけですが――この「用途」というのは間違いでございまして、「機能」に変えて頂けますでしょうか。一方、他の機能を有しながらも、録音録画機能を有し、かつ実際に録音録画に用いられている機器が増加しているわけでございます。こういった機器につきまして補償金額については差を設けることはあり得ても、対象には加えるべきだという考え方があるわけです。こういう御主張をされる方は、平成4年当時は専用機器以外はなかったわけでして、専用機器をカバーすれば、私的録音録画についてはほとんどカバーできたというような現状があって、現在はそれ以外の機器も普及しているわけでして、そことのバランスというものを考えると、できるだけ対象範囲を広げたほうがいいのではないかという考え方です。
 一方、現行制度の考え方をそのまま踏襲すべきであるという考え方もございます。そもそも、もともと補償金制度は包括的な制度でして、録音録画の可能性が高いという機器から補償金を徴収するという制度設計になっているわけでございますけれども、その可能性が高くない機器等からも補償金を徴収するということになりますと、録音録画をしない人からの補償金を徴収する可能性も現在より高くなるわけでございまして、そういった制度上の問題点が拡大をするということになるので適切ではないという考え方に基づくわけです。
 機器の類型ごとの考え方ですが、分離型の専用機器と専用記録媒体、現行法が対象としているものですが、これは現行法の対象でありまして、原則としては特に対象から除外するという理由はなく、従来どおり対象にすべきだということでおおむね了解を得たと考えております。ただし、著作権保護技術の内容とか、当該技術の契約の組み合わせのあり方によっては、そういったシステムに使われる機器が対象外になるということがあり得ることについては異論がなかったのではないかなと思います。これは整理メモの(1)で整理したことをそのまま分かりやすいように記載したところです。
 それから、bとしまして、録音録画機能が附属機能でない機器のうち記録媒体を内蔵したいわゆる一体型のものでございますけれども、これは私的録音録画を主たる用途としている機器である限りは、特に区別する必要がないのではないかということで、おおむねの了解を得たと考えております。ただ、最近の携帯オーディオレコーダーの中には、幾つかの附属機能かどうかは別にしまして、録音録画機能以外にもそういった機能がついているものがあるわけでございますけれども、主たる用途と言えるものについては対象機器に加えて差し支えないと考えられるという意見がありました。
 それから、録音録画機能を含めて複数の機能がある機器で、どの機能が主要な機能といえないもの、現在のパソコンですが、これは先述したような立場の違いによって、対象にすべきかどうかについては考え方に差がありまして、意見の一致には行ってないわけです。パソコンの場合には、複数の機能がありますが、附属機能かどうかというよりも、利用者の選択によって何が主たる用途か、従たる用途かが決まるというような特殊性があるわけですが、いわゆる専用機と言われるものとは違うということで、こういう意見の対立があるわけです。
 ただ、仮に今のパソコンを除外した場合についてですが、補償金の対象とならない録音録画が拡大するということになるわけですが、30条の範囲の見直しによって、パソコンを用いた違法複製物や違法サイトからの録音録画が除外される、更には適法配信からの録音録画が除外されるということ、それからパソコンの場合については、音楽CDを録音しまして、当該機器を経由して、例えば携帯オーディオレコーダーに更に録音されるということも多いわけでございまして、最後の機器のところで補償金の支払があれば、事実上補償されてある程度カバーできるのではないかという意見もありました。
 更にパソコンにつきましては、製造業者はハードウェアを提供しているだけでございまして、様々な機能についてはソフトウェアが実現をしているわけですが、それはメーカーが販売時点でインストールしているものもあれば、後から利用者が任意でインストールしたものもございますので、そういう全てについて製造業者が責任を負うというのはおかしいのではないかという指摘をする意見がございました。
 dとしまして、録音録画機能を附属機能として組み込んだ機器でして、留守番電話のようなものが対象にならないことについては異論がございませんでした。ただ、携帯電話とか、録音機能付きのカーナビゲーションについては、前述しましたような立場の違いによって考え方の差があり、意見の一致には行っておりません。ただ、こういった中でも、例えば録画機能付きテレビのようなものについては、購入者のほとんどがテレビの視聴と放送番組の録画の2つの目的を持って購入するという実態があるわけですから、これらのものについては対象に加えてもいいのではないかという意見もありました。
 それから、専用記録媒体以外の記録媒体につきましては、もともと記録媒体は録音録画に限らず、文書とか写真などの静止画等、様々な情報が記録できるわけですから、録音録画機能というのは、その記録機能の一部であるものが多いわけです。この記録媒体の取り扱いにつきましても、現行法では専用記録媒体に限定しているわけですが、先述しました立場の違いによって、何を対象にすべきかについては考え方の差があり、意見の一致は見ておりません。
 (2)としまして、対象機器・記録媒体の決定方法ですが、現行制度の問題点については、2年前の著作権分科会報告書で指摘がございました。それがアとイでございまして、現行制度の指定までは時間がかかり過ぎて、権利者の補償に欠ける。それから、技術を指定する現行制度は分かりにくくて、制度への理解を妨げる一因となっているという御指摘です。
 また、現行制度につきましては、いわゆる分離型の専用機器と専用記録媒体によって録音するという方法しかなかったわけですが、それを前提として制度設計がされているわけです。したがって、これは政令で主たる用途の要件があるわけですが、ある程度客観的な要件でございました。すなわち主たる機能が録音機能であれば、その主たる用途は録音ないしは録画であるということでございますので、そうなっていたわけでございますが、政令上このような要件を定めたとしても、運用上、特に問題はなかったわけですが、対象機器の範囲につきましては、立場の違いによりまして範囲は決まっておりませんが、仮に専用機器でなく、それ以外の機能を有する機器等にも拡大するという場合には、現行政令指定方式で問題が生じないかについては十分検討しなければならないということでございます。また、その記録装置を内蔵した一体型の機器についても、現行の政令指定方式で問題はないかという検証が必要であろうということが現行法上の問題点です。
 見直しの要点としては、政令指定方式の見直しということで、政令指定方式そのものは法的安定性、対象機器の特定の明確性等の点で優れた制度でございますので、それを否定するという必要はないと思っております。ただし、文化審議会著作権分科会の指摘も踏まえまして、対象機器の現状等も踏まえた上で、次のような整理を行いました。
 アにつきましては、機器の現状に照らしてみると、複数機能を有する機械が増えているわけでございますから、対象機器を決めるに当たりましては、柔軟に対応できる仕組みが必要と考えられる。また、イですが指定方式を政令以外の方法にすると、利害関係者の意見が反映されずに一方的な指定が行われるという危惧があるわけでございますけれども、利害関係者の意見が反映されるような仕組みを作ることで、そのような危惧がなくなるのではないかということでございます。
 その点を踏まえまして、次のような見直し策があるという提案がございまして、基本的な方向性はおおむね了承されたのではないかと考えております。法令に定める基準に照らしまして、公的な評価機関の審議を経て、文化庁が定めるということで、もちろん基準自体は法令で定めるわけでございまして、一般的な基準、例えば後で御説明しますけれども、技術の基準ないしは用途の基準ということになるわけでございますけれども、その具体的な対象については評価機関で議論をされるということについて、そういった実態とか機器等の仕組みについても反映した上で判断できるのではないか。また、評価機関は権利者、製造業者、消費者、学識経験者で構成されることにすれば、対象範囲が議論され、透明性が確保されるということになるのではないか。なお、制度設計上の問題ではありますが、評価機関でもあらゆる機器について、発売の都度審議することは不可能ですので、対象となるかどうか紛らわしいもの等が具体的な審査の対象になるような制度設計が必要ではないかと考えられます。
 特定の方法ですが、現在も技術による特定をしているわけですが、これは重要な1つの方法であるということで異論はなかったと考えています。ただ、現行制度は分離型の専用機器を前提に構築された考え方でして、磁気的、光学的方法等によりまして、磁気テープ、光磁気ディスク、光ディスク等の記録媒体に固定するということを前提にして制度ができているわけでございまして、例えば仮に一体型の機器について対象にするとした場合に、その一体型の機器にどのような記録の技術が行われているかということで特定する必要があるのかどうか、またそういう方法が可能なのかどうか、更なる検討が必要であるという意見がございました。
 また、今後は用途の基準というのが重要になると思いますが、録音録画機能が主たる用途かどうかという判断が非常に難しくなってきております。できるだけ紛れがないような詳細な要件を法令で規定することや、上記の方法のように最終的には関係者の合意で判断するような仕組みが必要と考えられるという意見がございました。
 補償金の支払義務者でございますけれども、現行法は機器の利用者が支払義務者ということで、機器の製造業者等が協力義務者ということになっているわけです。これも2年前の文化審議会の報告書では、いわゆる購入時一括払い方式というのが特例方式として定められているわけですけれども、実際に著作物の私的録音録画を行わない者も機器や記録媒体を購入する際負担することとなるとした上で、この問題を解消するための返還制度もそもそも返還額が少額であり実効性のある制度とすることが難しいということで、補償金の返還制度に対する問題点について指摘をしているわけです。
 仮に返還制度を実効性のある制度とすることがそもそも難しいということであれば、返還制度を必要としない他の制度を模索せざるを得ないわけです。
 返還制度は、補償金の支払義務者を利用者としていることとの関係で設けられたものですから、返還制度の問題を解消するとすれば、補償金の支払義務者を誰にするのかということと直結する問題として制度設計を行う必要があるということでございます。
 見直しの要点としましては、支払義務者につきましては、世界の各国の制度と同様に製造業者等とすべきであるという意見がある一方で、録音録画を実際に行う利用者を支払義務者とする現行制度の考え方を維持、踏襲すべきであるという意見があるわけです。
 支払義務者の考え方について法律的に整理をすると、アからエのようになります。アは、協力義務の内容を現状に照らして考えますと、機器の価格に補償金を上乗せして、購入者から徴収してまとめて補償金協会に払うということでありますので、製造業者等は補償金管理協会に補償金の支払義務を負っているということと同じではないか。そうすると、協力義務と支払義務の内容が、法的に見れば補償金管理協会に補償金を支払うという点で同じであるとすれば、支払義務の問題は製造業者側の問題ではなく、むしろ利用者に支払義務を課すべきかどうかという問題になるわけです。
 我が国では購入者一括払いの制度が特例制度とされていますけれども、事実上利用者から直接徴収できないわけですので、利用者の支払義務というのは形式的・理念的なものにすぎないのではないかということになります。外国についても本来は利用者が補償金を支払うべきであるという点で、それを否定している国はないわけです。
 なお、補償金は事実上利用者が負担をしますので、返還制度がない制度とすると現行制度より不公平ではないかというような意見がございます。この点につきましては、製造業者が支払義務者である場合については、私的録音録画行為があったときに初めて金銭債務が発生するという現行法の制度設計とは異なりますので、利用者サイドから見ると、補償金支払済みの機器等を購入、すなわち私的録音録画の適法にできる権利付きの機器等を購入したことと同じことになりまして、仮に購入者が私的録音録画を行わなかったとしても、その権利を行使しなかっただけだということになりまして、必ずしも不公平にはならないと考えられます。
 法的な整理としては以上ですが、先述しましたように、支払義務者の問題は返還制度を実効性のあるものと見るかどうか、また、対象機器等の範囲をどうするかによって結論が異なることになりますので、他の制度との仕組みを検討する過程の中で更に検討を進める必要があるのではないかと考えられます。
 補償金の決定方法につきましては、現行制度における補償金の決定手続に大きな問題はないと思われますが、著作権保護技術によって録音録画が一定の制限を受けるということがありますので、その影響度をどのように補償金に反映させるかという問題があります。また、補償金制度は認可申請前に関係者が協議をしまして、合意またはほぼ合意された金額が申請されるという慣行があるわけですけれども、関係者の意見が制度上反映される仕組みが必要だという御指摘があります。
 見直しの要点としましては、著作権保護技術の影響度を補償金に反映できるようにすべきであるということについては異論がなかったと思っております。また、どのような具体的な仕組みにするかについては、具体的な制度設計を待つ必要があるわけですが、いずれにしましても、権利者、製造業者、消費者等の関係者の意見が十分反映できるような仕組みが必要だということです。
 またその際、契約に基づく私的録音録画や、プレイスシフト、タイムシフトなどの要素は補償金の金額の決定に当たって反映させるべきであるとすることについても、おおむね異論はなかったのではないかなと思っております。
 また、補償金の決定プロセスについては、事前協議そのものがなくなることはあり得ず、認可申請に当たっても、関係者の協議を十分経た案が提案されることは今後もそうでないかと思っております。
 それから、補償金管理協会ですけれども、問題点としましては、現行制度は録音と録画を切り離した形で制度設計をしていますけれども、例えば実態面から見ますと、録音と録画が同時といいますか、1つの機器でできるようなものも販売されているということですから、別々に2つの団体から補償金を請求するという可能性が生じているわけです。また、更に、補償金管理協会でも共通目的事業を実施しておりますが、それぞれの協会が独自に事業をしているわけでして、合理的、効率的な事業が実施できるかという問題点もございます。
 この点を踏まえまして、様々な点から補償金管理協会は1つにするということで異論はなかったと思っております。
 また、共通目的事業のあり方につきましては、著作権分科会報告書から共通目的事業の内容が十分知られていない、また、権利者のみならず、広く社会全体が利益を受けるような事業への支出も見られるというような御指摘がございました。
 見直しの要点としましては、共通目的事業自身の価値といいますか、存続については廃止する必要はないということで、おおむね了解されたと思っております。また、事業内容については、法律によって事業の内容が法定されているわけですが、それを更に限定する必要はないということで、おおむね了解されたと理解をしています。
 また、著作権分科会の、権利者のみならず、広く社会全体が利益を受けるような事業への支出も見られるという指摘ですが、特に振興普及事業についてはそういう面があるのかもしれませんが、一般に1つの事業について複数の目的や効果を有するのは当然でありますから、当該事業が法律の範囲内の事業かどうかについては総合的に判断する必要があるのではないか。また、振興普及事業については、そもそも我が国の文化の振興に資するという事業として位置づけられているわけですから、私的録音録画をされる可能性が高い一部の権利者のためだけに事業が実施されるというのは、かえって共通目的事業の制定趣旨をゆがめるのではないかというような御指摘がございました。
 また、共通目的事業の用途につきましては、社会的関心が高いと思われますから、事業内容の公開を義務づける等の措置が必要と考えられるということです。また、事業の実施に当たっては、権利者、製造業者、消費者等の幅広い意見が反映できる仕組み作りが更に重要となるということです。
 共通目的事業の支出割合については、現行制度では2割となっておりまして、おおむね適正な割合ということでしたが、正確な分配ができないという理由で、この割合を引き上げるべきだという意見もありました。
 補償金制度の広報のあり方ですが、補償金制度の広報が不十分であるから、補償金制度の認知度が低くて、これが補償金制度を分かりにくくしている大きな原因であるとの指摘があるわけです。
 見直しの要点としましては、補償金管理協会の役割というものが広報上大きいわけですから、その補償金管理協会に補償金制度の広報義務を課して、その位置づけを明らかにする必要があるということで、おおむね了解を得たと考えられます。
 ただ、補償金管理協会だけが広報事業をするということではなくて、関係の団体等も積極的に協力する必要があるという意見がございました。また、補償金がどのように徴収・分配されているかという内容を消費者に知らせることがより重要であるという意見もございました。
 他方、広報に大きな予算を割くよりは、他の有意義な事業を優先すべきである等から、広報事業の義務化に反対する意見もございました。
 以上のとおりでございます。

【中山主査】
 ありがとうございました。
 それでは、整理メモの(2)について議論をしたいと思いますけれども、論点が7つございますので、まず最初に1番目の対象機器・記録媒体の範囲について、1ページですけれども、この問題について議論をしていきたいと思います。御意見がございましたらお願いいたします。これはかなりメインの議論になりますので、ぜひ御意見を頂戴したいと思います。
 どうぞ、河野委員。

【河野委員】
 ありがとうございます。
 1番の議題であればよろしいんですよね。

【中山主査】
 はい。

【河野委員】
 3ページ目の見直しの要点のところのbについて、意見を述べさせて頂きたいと思います。今回の整理メモ(2)というのは、前回議論をさせて頂いた整理メモ(1)の前提に基づいてお話がまとめられているのだと理解をしておりますけれども、現行制度の考え方をそのまま踏襲すべきであるというところなんですが、これは多分考え方を原則維持すべきということだと思います。前回、話をさせて頂いている整理メモ(1)にある前提条件のところのうち、補償の要否のところ、すなわち利用の態様であるとか、著作権保護技術ということが勘案されて、今後対象が決定されていくべきだということをただし書きか何かで入れて頂ければありがたいと思います。
 以上です。

【中山主査】
 この点は室長、いかがですか。

【川瀬室長】
 主査と御相談しまして、訂正すべきところは訂正したいと思います。

【中山主査】
 他に何か御意見ございましたら。
 どうぞ、亀井委員。

【亀井委員】
 ありがとうございます。
 まさに対象について書いて頂いている4ページからの機器の類型ごとの考え方の中で、1つはbのところのまるの1つ目で、おおむねの了承を得たという述語で書かれております。この対象の議論というのは、参考資料1の議論をいたしましたときに、その参考資料1の3ページ目の表がいかなるものかというような多少の議論がございましたが、この表の意味するところがそもそも理解ができずに、議論にならないのではないかというような意見も申し上げた記憶がございます。議事録も全て読み返してみましたが、ここでおおむね了承を得たという議事の状況ではなかったのではないかというのが私の理解でございます。
 そういう議論というのを今ここでもう一回尽くせということかもしれませんが、これが直ちに区別する必要がないので対象とすべきと考えると言い切れるかどうかというところは疑義がございます。とりわけJEITAといたしましては、aのところでまるのただし書きにある部分に関わってきますけれども、録画に関しては2011年を迎えて、技術的保護手段によって守られるものであるから対象とする必要はないというような意見でございますので、ここを了承したということはございません。少数意見としてとどめて頂くのか、いずれにしろ、何らか中間整理においてはきちんと書き込んで頂ければと思います。

【中山主査】
 この点は。

【川瀬室長】
 もともとこの中間整理は前半部分と後半部分がありまして、前半部分について補償が必要だという合意がまだ得られていないということで、そこは両論を併記しております。あくまでも後半部分については、補償の必要性があるということが前提でございます。補償の要否の点については前半部分の議論で、これは後半部分に優先する議論だと私どもは認識していますので、あくまでも後半部分については仮にということです。私どもの認識としては、そういう了解を得ているのではないかと思いますけれども、必要があれば、例えば「なお」とかということで訂正はしたいと思います。
 お聞きしたいのは、私ども事務局で表を出して、分かりにくいという御指摘があったのは承知していますけれども、議論が尽くされていないということなのか、それとも具体的にこういう問題点があるので、対象に含めるべきではないかとか、更に議論をするべきだということなんでしょうか。そこら辺を御確認させて頂きたいのですけれども。

【中山主査】
 その点、亀井委員、どうですか。

【亀井委員】
 私は議論が尽くせていないのではないかと認識をしております。実際に携帯オーディオレコーダーなるものがいかなる態様の機器のことを指しているかということも、実はあまり定義が明らかではないかもしれません。頭にあるものというのは特定の商品名が浮かぶかもしれませんけれども、それにしてもいろいろな形があり、ここでは内蔵したものということですから、媒体が脱着できるものは入らないのかもしれませんし、そういうものは一体どうなるのかという議論もあるのではないか。そういう議論が尽くせていないのではないかと思います。入れろという意味ではありませんけれども。

【川瀬室長】
 分かりました。それでは、主査と御相談させて頂きまして、必要に応じて追加なりをさせて頂きたいと思います。

【中山主査】
 他に。
 どうぞ、華頂委員。

【華頂委員】
 この対象機器のところなんですけれども、パソコンが例外的に扱われているなという印象があります。資料の4ページから5ページにかけてパソコンのことが記載されているんですけれども、その中に、製造業者はハードウェアを提供しているにすぎず、録音録画機能などはソフトウェアが実現しているとありますけれども、テレビパソコンと称される機器は、そのようなソフトウェアをインストールした上で、テレビの視聴と同時に録音録画機能を売りものにして販売しているし、消費者もまさにその機能を求めて購入して、実際に使用しているのではないかなと思うんです。
 それで、たまたま昨日の新聞を見ていましたら、各紙にパソコンの秋冬商戦の記事が載っていまして、おしなべてデジタル放送のチューナーを搭載し、それから、次世代DVDを、場合によってはブルーレイとHD DVD両方搭載しています。また、CM削除などの簡易編集ができる専用ソフトも内蔵して、録音録画の編集が簡単にできるというようなことを宣伝しています。問題提起なんですけれども、パソコンを本当にこうやって例外的に扱って良いものなのかなと思うんですが、いかがでしょうか。

【中山主査】
 室長、どうぞ。

【川瀬室長】
 パソコンはそもそも私どもとしては平成4年にはなかった新たな形態だと思っております。それはなぜかといいますと、平成4年の現行法の条文を見てもらったら分かりますように、録音録画機能が附属機能であるものは除いているわけですけれども、それ以外のものは全て対象にすることになっているわけです。それはなぜかといいますと、平成4年当時は附属機能というのは、誰が見ても附属機能というものがほとんどでして、その代表的な法律上例示していますのが留守番電話というものなわけでした。一方、パソコンの場合にはだんだん進化してきまして、機能として何が主か、何が従かということは付けられなくて、いわば全て主要な機能であると言わざるをえません。ただ利用者が何を選択するかによって、その人にとっては主たる用途として録音録画機能の人もいるし、ある人の選択では、文書を作成することが主たる用途の機能ということになるわけでございます。ただ、いずれにしましてもパソコンというのは、一般論としては録音録画の可能性が高い機器といえるかどうかというのは問題だと私どもは理解をしているわけでございます。
 そうすると、現行法の今までの整理では、パソコンというものは対象には入らないのではないかということになります。ただ、今後の話として対象にすべきかどうかということについては、もちろんこの場で議論をされるわけでございます。したがって、もし仮に対象にするということであれば、新たな理論的な構築も必要だと。その際に、これも委員の御指摘があったパソコンの場合のソフトウェアの考え方をどうするのかというのは、私どもとしても大きな問題だと受けとめまして、華頂委員が御指摘のとおり、あらかじめソフトウェアがインストールされていて、ハードかソフトかということを分離して考える必要がないというケースもあると思いますけれども、この整理メモにも書いていますように、例えば後で利用者が自らの意思でアプリケーションソフトを買ってきてインストールしたというようなことまで製造業者が責任を負うかどうかという問題点はあるのではないかということで、こういうような整理をさせて頂いているわけでございます。それをどうするかというのは今後の問題でございます。
 なお、制度のあり方の問題については、先ほど亀井委員も御指摘されましたように、そう深くは議論しておりませんので、このまとめもそういう細かい点に踏み込んで問題点を整理し、かつ了承を得られたところは了承を得られた、異論があるところは異論があったという細かい議論をしておりませんので、一般論として書いているわけでございまして、確かに部分的に見れば、こういうケースはどうなるのか、ああいうケースはどうなるのかという御疑問はあると思いますけれども、現実にそこまで議論に至っていませんので、今までの議論を踏まえて整理をさせて頂いた次第でございます。

【中山主査】
 よろしいでしょうか。一応5ページの一番上には、パソコンについては意見の一致に至っていないということが記載してございますので。
 どうぞ、津田委員。

【津田委員】
 個人的な話と今の一般論の話でパソコンの話をさせて頂ければ、僕個人は自宅で今、ソニーのテレビ録画できるパソコンを2台使っていますけれども、実際にそれでテレビ録画をしたことはないです。二、三回はありますけれども、ほとんどないですね。その理由は、普通に量販店とかに行ってパソコンを買うときに、動画編集とかマルチメディア機能が強いパソコンということで買ってはいますけれども、実際に録画するのはDVDレコーダーを持っているということもあるので、必要性として感じてないので、ほとんど利用していないというのが個人的な話としてあって、あともう一つ、一般論として大きいのは、基本的に量販店とか、いわゆる店頭で売られているパソコン、NEC、ソニー、富士通とか、シェアが高いところのパソコンというのは、ほとんど今はテレビ録画できる機能が標準機能として装備されているという状況があるんですよね。テレビ録画しない人が今テレビ機能がないパソコンを購入しようと思ったら、DELLとか、そういった通販とか直販のようなパソコンを買わなければ、それこそ恐らく六、七割ぐらいのデスクトップには標準機能として装備されているような状況があるので、華頂委員のほうから消費者はそれ目的で買っているのではないのかという御指摘があったんですが、恐らくテレビをパソコンで録画する目的ではなくても、今、お店に実際に行って買おうと思ったら、付いてきてしまっているというのが現状なのではないのかなというのを、一般論として指摘させて頂ければと思います。

【中山主査】
 ありがとうございます。
 他に御意見。どうぞ、井田委員。

【井田委員】
 パソコンから別の話題でもよろしいですか。

【中山主査】
 はい。

【井田委員】
 4ページの機器等の類型ごとの考え方で分離型云々のところですけれども、ただし書きのところにシステムに使われる機器が対象外になるとありますけれども、あえて外しているのかどうか分かりませんが、機器・媒体と、媒体も含めて頂けたらと思います。
 それから、ここの部分、おおむね了承を得たということになっているんですけれども、私どももずっとお話しさせてもらっていますが、抜本的な見直しが求められているという前提で、現行制度の対象についても、複製の用途や目的、著作権保護技術とか、そういう観点で見直すべきだということをずっと主張させて頂いております。こちらのほうには保護技術とか契約の組み合わせ云々ということで入れて頂いているんですけれども、先ほどのメモ(1)のほうと重なるかもしれませんけれども、この部分にも用途・目的・ソース等も含めた観点で入れて頂けたらなと考えておりますので、よろしく御検討お願いします。

【川瀬室長】
 機器になっているのは事務的ミスでございまして、機器等というか、記録媒体も含めたということにさせて頂きます。これは意図して書いているわけではございません。後者の部分については、これもまた主査と御相談させて頂いて、修正については必要に応じて考えたいと思います。

【中山主査】
 では、椎名委員、どうぞ。

【椎名委員】
 3ページの基本的な考え方のaとbのうちのaなんですが、ここで実際に録音録画に用いられている機器については、原則として対象にすべきであるという考え方を言っている部分の中で、下から3行目の補償金額において差を付けることはあり得てもというところの前に、利用の態様に応じてというのを入れて頂けたらと思います。というのは、その後で補償金額の決定等に著作権保護技術であるとか、利用のされ方を勘案して補償金額を決めていくということが述べられているんですが、ここで利用の態様に応じてというのは、録音録画に関与する機器は原則として対象にしたときに、録音録画に関与する割合を調査する必要があるということを申し上げたと思います。その割合に応じて補償金額において差を付けることと書いて頂けたらと思うんですが、いかがでしょう。

【中山主査】
 はい、室長。

【川瀬室長】
 趣旨は良く理解できますので、主査と御相談させて頂きまして、必要に応じて修正させて頂きたいと思います。

【中山主査】
 他に御意見ございますでしょうか。
 どうぞ、森田委員。

【森田委員】
 先ほどのパソコンに関する議論との関係で、4ページのBの「機器等の類型ごとの考え方」というところに書かれていることの意味内容なのですが、仮に最終的に法律にする場合に、ここに述べられているa、b、cのようなレベルで法律に規定を置くということなのか、それともこれはAで述べた基本的考え方というのがどういうものかということを示すために、それを当てはめるとこういうことになるのではないかということを例示しているということであって、具体的にどれが当たるかどうかというのは、次の対象機器の決定方法の問題といいますか、どこでどのような基準に従って決めるかという問題であって、パソコンは含まれるとか含まれないというようなことは法律には書かないということなのか。つまり、Bに書いてあることの意味合いですが、おおむね了承を得たとか得ないというのは、しかしそれは法律が改正されてもその段階ではまだ決まっていることではなくて、最終的には次の決定機関が法令で定める基準に照らして判断した結果として決まることではないのでしょうか。そちらの問題との仕分けの問題があると思います。したがって、Bの部分は、私が読んだところでは、基本的な考え方を敷衍するために書かれていることでありますが、この点についても議論をしたので、中間整理としてはそれがここに位置づけられていると理解すべきなのではないかと思います。
 そう思いましたのは、例えば、先ほどの録画機能付きのパソコンについてどうなるかというのは、ほとんどのユーザーがそのようなパソコンを買っても、録画機能が自動的に付いているだけで使っていないというのが実態であれば、そういう結論になるでしょうけれども、仮にほとんどのユーザーがそれを利用して録画をしているという実態が出てきた場合には、これを対象機器に含めないといけないということもあり得ると思いますので、それがどちらかということを法律に書くというのは適当でない。むしろそれは対象機器の基準と決定方法をどのように定めるかという問題であって、利用実態によっては対象機器に入ることもあるかもしれないけれども、現状を踏まえる限りにおいては、含めることについてこの委員会では消極的な意見が多かったとか、少なかったという整理をすべき事柄ではないかと思いました。Bのところの考え方がどういうものなのかという点について、文面上どうはっきりさせるかは次の問題かもしれませんけれども、そのように理解してよいかどうかについて、確認させていただきたいと思います。

【中山主査】
 室長、どうぞ。

【川瀬室長】
 森田委員の御指摘どおりでございまして、仮に法律で書くとすれば、現行の30条の2項のような書き方しかございませんので、例えばパソコンを定義して除くとか、そういうことではございませんで、後で出てきますけれども、特定するための要件、用途とか、技術は今の議論では違いますけれども、機能とか用途とか、そういった要件で絞っているということになると思います。ただ、この場では議論を分かりやすくするために、一般論としてこういうものについてどうかということでございまして、御指摘のとおり、パソコンと称するものであれば全て対象外なんだということではございませんで、仮に例えば用途の要件というものを重く用いるとすれば、パソコンであっても主たる用途の要件にかなうものであれば対象になると、理論的な整理としてはそういうことになるんだと思います。そこは仮に法律改正ということになれば、法制上、当然議論をすることになるわけですけれども、審議会のレベルでは一般論として、一般の国民の方にも分かりやすいように、こういう類型であれば一般論として入れるのかどうかという議論をして頂くほうが分かりやすいということで、こういう整理をしているわけでございます。

【中山主査】
 よろしいでしょうか。
 他に御意見ございませんでしょうか。
 よろしければ、次の論点に移りたいと思います。次は6ページですけれども、(2)対象機器・記録媒体の決定方法についてというテーマでございます。この点について、御意見があれば承りたいと思います。
 どうぞ、椎名委員。

【椎名委員】
 これは質問なんですけれども、今の前のところで、対象機器・記録媒体の範囲について、その決め方ということでaとbがあったと思うんですが、その範囲の決め方と対象機器・記録媒体の決定方法についてというのは、今さらの質問で恐縮なんですけれども、この違いを教えて頂けますか。

【川瀬室長】
 当然、関連することであると思っております。対象範囲について、先ほど言いましたように、一般論として大体こういうものを対象にするんだということになれば、それに合わせた指定の方法があるわけです。例えば一般論として一体型の機器を対象にするというコンセンサスが仮にできたとすれば、今の現行法の指定はここにも書いていますが、例えば専用機器と専用記録媒体を用いて録音録画するというようなことを前提にして、法律上の構造がそういうふうになっているわけですが、果たしてそういうような現行法のやり方でいいのかどうかというような問題点が出てくるわけです。それとは別に、一般論として言えば、先ほど私が言いましたように、今は技術といいますか、機能に着目して、それを技術で特定しているわけですけれども、今のようなやり方でいいのかどうかというのがありますので、一般論として決定方法についてどういう要素を入れるのかどうかという問題があると同時に、対象機器等の範囲で、あるコンセンサスが得られれば、それとの関連で決定方法についてどうするかという、この2つの問題点があるんだと思います。先ほどから何度も言っていますように、この委員会ではそこまで議論をしておりませんので、深くそういうところまで入り込んで整理はしておりませんけれども、今御指摘のとおり、当然両者の関係は関連をしていると私どもは理解をしているということでございます。

【中山主査】
 どうぞ。

【椎名委員】
 そうすると、(1)のほうで、仮にaで可能性のある機器は原則として対象に加えるべきであると書かれた場合は、現行制度による政令指定の問題とか、こういうものはある意味関係なくなってしまうような気もしているんですが、そこら辺はどうでしょう。

【川瀬室長】
 仮にそういうふうなことになるとすれば、これは思いつきですけれども、法令で指定する場合には、例外的なものを抜いて、一般的に録音録画機能を有する機器は対象だということで、例外として対象としないものだけを抜くという感じになると思います。あとは全て対象、つまり技術による特定とかも関係ないということになるんだと思うのですが、それは私が言いましたように、対象機器をどうするかによって方法としては様々な方法があると思いますので、そこはこうだからこうなんだと断定できないけれども、今御指摘のような方法も考えられないことはないということだと思います。

【中山主査】
 よろしいですか。
 他に何かございましたら。
 どうぞ、河野委員。

【河野委員】
 ありがとうございます。
 書き方の解釈の問題で、ちょっと微妙なのかもしれないんですが、7ページ目の一番下のまるのところから、8ページ目の四角の囲みのところに関してです。次のような見直し法策があると提案され、基本的方向性はおおむね了承されたということで、法令で定める基準に照らして、公的な評価機関の審議を経て、文化庁が定めるということになっております。基本的な方向性ということをどう解釈するかなんですけれども、基本的方向性ということではおおむね了承されたということなのかもしれないんですが、この議論をした際に、法令で定める基準というものが一体どういうものになって、それを受けて評価機関というものがどういうふうに決めていくのかという、まさに先ほどからお話が出ております対象機器にするもの、しないものの基準であるとか、どういう手続でそれをしていくかということが分からないと、なかなか議論がしづらいですよねというようなお話があったように記憶をしておりまして、その際に、できるだけ評価機関というものは基準に照らして粛々淡々と、これは当たる、当たらないとやっていけたほうがいいのではないかという意見を申し上げたように記憶をしております。
 繰り返しになってしまうんですけれども、法令で定める基準というのが一体どういうもので、それに従ってどういう手続がなされるかということがもう少し個別具体にならないと、何を了承したのだろうというところにいま一つ自信が持てませんので、ここについては、こういう案について引き続き検討していくというようなニュアンスのほうがよろしいのではないかと考えます。

【中山主査】
 どうぞ、室長。

【川瀬室長】
 表現が不適当ということであれば、これも主査と御相談させてもらいまして、必要に応じて手直しをしたいと思います。

【中山主査】
 ただ、この文章はプロセスだけで、法令で定める基準は、当然また別な議論になってくるわけです。法令で定める基準はもちろん大事なので、違うところで議論するはずですけれども、ここの文章はこれではまずいですか。

【河野委員】
 主査の御指摘は、四角囲みのところの下に続くポツ3つのところですか。

【中山主査】
 四角囲みです。

【河野委員】
 四角囲みのところの、要は法令で定めて評価機関で何かをしていくという方向性自体はそういう話だったのではないかということですね。

【中山主査】
 はい。

【河野委員】
 実際に法令で定める基準、あるいは評価機関の手続いかんによっては、このやり方がいいとはいえないということの態度を留保させて頂ければ、それは問題ないです。

【中山主査】
 そういう意味ですか。

【河野委員】
 はい。

【中山主査】
 分かりました。
 他に何か御意見ございますか。
 どうぞ、津田委員。

【津田委員】
 この8ページのところの評価委員、公的な評価機関というところで、質問というか、権利者、製造業者、消費者、学識経験者で構成されというと、おそらく公的な評価機関というのが、今、私的録音録画小委員会に近い評価機関ができるのかなという気がしているんですけど、例えばここでの議論とか、特に対象機器に関して言えば、先ほどのパソコンを含めるのか含めないのかというところでも、かなり真っ二つに割れてしまう状況というのは多分見受けられていますし、それは、そういった公的な評価機関ができても、おそらくこれは対象範囲に入るだろう、入らないだろうというのが委員の間で真っ二つに割れることも十分想定されると思うんですけれども、そこで割れてしまって、両者の折り合いがつかない場合というのはどうなるのかなというのが見えにくいんですが、そこはいかがですか。

【中山主査】
 室長。

【川瀬室長】
 ここにも書いていますように、例えばある機器とか記録媒体が発売されれば、全て評価機関で評価するというのは、これは事実上、困難ですので、先ほど来御指摘があった、法令で基準を定めるわけですけれども、その基準に該当するものは当然対象になるということになって、基本的には、紛らわしいものについて、評価機関に検討がゆだねられるということになるのだと思います。
 現行制度においても、政令で定められておりまして、明らかに基準としては明確になっていますけれども、それでも対象になるかどうかというのはもめるわけでございまして、水面下でもめて、裁判で決着をするという考え方もあると思いますし、現にそういう制度を採っている国もございますけれども、我が国の場合、今まで私的録音・録画補償金制度が関係者のコンセンサスで成立してきたということもございますので、そういった紛らわしいものについては、そういった公的な機関で透明性のあるプロセスによって議論されればいいのではないかなと思います。そこで合意が成立すれば、それにこしたことはございませんし、そこで問題点が指摘され、かつ合意の形成が難しいということであれば、基本的には対象外になるということになるわけですけれども、私どもが意図しているのは、そういった、平成4年当時でも紛れもあったわけでございますけれども、これから機器等の進歩によって、法令で基準を幾ら詳細に定めても、やはり対象になるかどうかが紛らわしいものが出てくるのではないかと。
 そういったものについて、それはそれで対象になるかどうか、例えば裁判に任せるという手もありますけれども、こういった制度を作って、透明な決定プロセスによって議論してもらったほうが、一般国民の方々にとっては分かりやすいのではないかと思って、こういう制度設計はどうだろうかという御提案をしているわけです。

【中山主査】
 よろしいですか。
 どうぞ、津田委員。

【津田委員】
 今のお話を伺っていると、極論を言ってしまうと、例えば消費者とか製造業者にとってみたら、録画に使うのか、録音に使うのか、それとも他の目的で使うのかあいまいな機器に補償金をかけるかかけないのかというところで、そこの公的な評価機関で、いや、これは入らないだろうということをずっと最後まで強弁していって割れることになると対象外になるというのは、戦術的にそういうのが使えるのかなというのを個人的に今思ったんですが、どれほど公的な評価機関が意思決定というか、それが尊重されるのかなというのが、聞いていてまだ分からなかったところがあるので、そこを教えて頂けないでしょうか。

【中山主査】
 室長。

【川瀬室長】
 具体的にどういう評価機関の位置づけになるかというのは、まだそこまで全然議論もされていませんから、こういう具体的な機関だということではありませんけれども、例えば私どもで申し上げられるのは、今こういった行政改革の時代でございますが、新たな公的な機関を設けて、そこを法的に位置づけるというのはなかなか難しいことでして、仮に想定されるとすれば、文化審議会の著作権分科会の一機関、例えばいろいろと議論がございました文化審議会の著作権分科会の使用料部会というのがある。これは政令で部会としてきちっと位置づけられている機関でございまして、例えばそういう第2の部会といいますか、そういう位置づけということも制度的にはあり得るということです。
 そうすると、やはりそこは諮問機関ということになりまして、文化庁長官が判断する前提として、そこで議論を経て行うということで、当然、そこの議論というのは尊重されることになりますので、そこで合意が得られなければ、そういった対象にはならないという仕組みになるのだと思います。
 そういう機関が機能するかどうかということですけれども、私どもとしては、現在においても、今の現行制度においても紛らわしい機器というものはございまして、そういうものはどのように処理されているかというと、メーカーの担当の方と補償金管理協会の方が、例えばメーカーから御説明を受けて、それで話し合いによって解決をしているという実態がございまして、そういう機関ができて、そういったところに紛らわしい案件が諮問されたとしても、それについてノーとしか言わずにまとまらないということではなくて、話し合いをしながら、合意できるところは合意してという長い間の実績がありますから、そういったことで解決できるのではないかと。
 ただ、問題点としては、今までそういったところは水面下で行われていましたので、なかなか透明性がないという御指摘もありますから、それでは、今回、こういう評価機関ということで、透明性のある分かりやすい機関を活用すればどうかということです。

【中山主査】
 よろしいですか。
 他に。どうぞ、井田委員。

【井田委員】
 今のことに関連してなんですけれども、以前もお話しさせてもらいましたけれども、先ほど津田委員が御懸念されたとおり、こういう評価機関で、もし議論を最初からやったとしたら、おそらく議論が合わないと。ここで2年間やってもなかなか合わないということがそこでまた起こるだろうと思います。
 そういう意味で言いましても、先ほど川瀬室長からの御説明を伺っていますと、そうではなくて、基本的には、今の政令の指定と同じように、きっちりと法令基準がある程度決まっていて、それで紛らわしいことに関しては、今でもやっている説明と検討というのを公開の場といいますか、評価機関でやるんだということであれば、よりいいのかなと思います。
 すなわち、先ほど言いました、基準がはっきりしないままでやると、評価機関としての形はあっても全然機能しないだろうと思いますので、もし、ここで評価機関というのを入れていくとすれば、どちらかというと、関係者の協議がなくても、自動的に決まっていくというぐらいに法律等で判断基準が示されているという前提で入れるべきだと考えています。
 先ほど川瀬室長が説明されたのは、それと同じような説明だったと思います。もし、それでいいのであれば、ここに書いてある内容で、「法令で一般的な基準を定めるが」と書いてありますけれども、まずそれが前提であり、そこでなかなか決まらないものについては、こういう評価機関もあるんだというニュアンスに書きかえて頂けたら、より趣旨がはっきりするのではないかなと考えます。

【中山主査】
 それでは、土肥委員。

【土肥委員】
 私も確認をさせて頂きたいところがあるんですけれども、現行の制度であれば、技術が施行令で定められておりまして、その技術によって特定されるところの機器及び媒体が補償金の対象になる。今度の場合は、法令で定める基準によれば、その基準に該当すれば、全てそれは録音・録画補償金の対象となる機器及び媒体になるけれども、したがって、公的評価機関は、法令に該当すれば全て対象とするけれども、例えば用途とか、機器媒体の性能容量あるいは技術的な著作権保護手段がかけられている割合とか、そういったものを踏まえて、極論すれば、私的録音・録画補償金制度がゼロになるということもあり得べしと、そういう仕組みで考えたんですけれども、そういう理解でよろしいのかどうかという確認なんですが。

【中山主査】
 室長、どうぞ。

【川瀬室長】
 先生御指摘のとおりです。ここで言う評価機関は、あくまでも対象範囲を定めるということでして、今、土肥先生からいただきました御指摘の点については、これは前半部分で議論しましたとおり、著作権保護技術の内容や利用形態によって、補償金の額を変えることもあるということですので、今回、提案をしておりますのは、著作権の保護技術の影響度というものについて、法令できちっと位置づけて、補償金に反映できるようにするということにしております。この影響度が反映されれば、場合によっては補償金ゼロということもあり得るということです。今の御議論は対象機器等の範囲を決めるときにどうするかというときの、その位置づけはまだ具体的には決まっていませんけれども、最終的には公の評価機関で議論して、そこで決めて頂くというのがいいのではないかなと思っております。

【中山主査】
 椎名委員、どうぞ。

【椎名委員】
 評価機関で結論が出ないのではないかという意見も、今津田委員からあったんですけれども、基本的に、法令でどういうふうに書かれたとしても、法令で定める範囲の中で、何を対象にしていくかということを絞り込んでいくという意味であると考えたときに、1ポツのところにある利用実態等を考慮してというところが重要なパラメーターになるのではないかと思います。私的録音・録画に使用される機器であって、実態調査等を踏まえて、どの程度関与しているのかという客観的なデータをもとに、この4者が話し合っていくことによって、一定の結論が得られるということをかいているのではないかと思いました。
 あと、これまでの議論の中で、この公的な評価機関によって決める内容が、ここでは具体的な対象機器と定義されているんですけど、そのあとの補償金額の決定というあたりも、そういう評価機関で話されるんだろうなと、実はおぼろげにイメージをしていました。この整理だと、補償金額の決定というのは、関係者が集まって、というふうにだけ書いてあって、その公的な機関とはまた別なところで議論されるようにも書かれているんですが、そういう意味でしょうか。それとも、まだそこまで議論が行っていないという意味なんでしょうか。

【中山主査】
 室長、どうぞ。

【川瀬室長】
 私が申し上げたのは、対象機器を定めるというプロセスと、補償金の額をどうするかというのを決定するプロセスは、これは別だと思っております。ただ、そのプロセスの中で、評価機関をどちらにも関与させるというオプションは当然あるんだと思っています。
 だから、その辺りのところは、まだ具体的に検討されていませんので、今のところはすごくあいまいになっていますが、制度の選択肢としては様々なケースがあって、前回といいますか、この前、この件で御議論したときは、今の使用料部会での議論で十分ではないかという議論もございましたし、必ず評価機関を絡ませないとだめだということが決まっているわけでもありません。前々回の議論でも、今の実態を考えると、使用料規程が関係者の合意もなく強行申請されるということもないわけでして、事前に十分時間をかけて、関係者が話し合った金額が申請されている実態もあるので、文化審議会著作権分科会の使用料部会で、大所高所から、ある意味ではネガティブチェックをして頂ければ、それで金額の適正化というのが図れるのではないかという御意見もあったようですから、今、椎名委員が御指摘の点は、1つのオプションとしてはあると思いますけれども、考え方としては別だと御理解頂ければと思います。

【椎名委員】
 やはり、対象機器の問題と補償金額は、ここに来ると結構密接に関係してくると思うんですね。その対象範囲でこの金額であったらどうか、とか、あるいは別な範囲でこの金額であったらどうか、というような形で、この両者が非常に密接に関係してくることであろうということが1つ。
 それから、対象とされた機器・媒体について、さっき言った録音・録画に関与する割合であるとか、あるいは、どういうソースから録音録画されることが多いのか?などということに関する実態調査とか、著作権保護技術の関係であるとか、そういったデータが補償金額の決定に関与してくると思うので、そういう点から見ても、この2つのプロセスが密接に関係してくるのではないかと思っています。ここは意見を言う場ではないかもしれませんが、この2つのプロセスは一緒にしたほうがいいと思っています。

【中山主査】
 分かりました。
 野方さん。

【野方オブザーバー】
 ありがとうございます。
 私も補償金額の決定方法のところで申し上げようと思っていたのですけれども、今の流れで評価機関にかかわることですので、申し上げておきたいと思います。
 今、椎名委員がおっしゃったことに賛成でして、著作権保護技術の度合いが考慮されるようになるとか、あるいは、補償金額を決めるプロセスの中に関わる方として消費者の方が関わってこられるということもあるとすれば、また、さらに言えば、これから新しい機器、記録媒体、技術というのがどんどん出てくるということも考えられますので、そうしたときに、関係者間の協議というものが迅速にどれだけ進むだろうかということについては、以前も疑問があることについて意見を述べさせて頂いたところでもございます。ですので、やはりどのような機器が対象になるかということと、額というのは密接な関係があると考えておりますので、やはり補償金額の決定方法についても、評価機関が何らか関わるということがこの中に盛り込まれたらありがたいと思っております。

【中山主査】
 室長。

【川瀬室長】
 これは多分いろいろと御意見があると思います。反対に、そういう範囲の決定と補償金の額のプロセスを同じにしないほうがいいという御意見もあると思います。範囲の決定については、当然、井田委員の御指摘をまつまでもなく、これは法令で可能な限り範囲は決める必要があり、そこを飛ばしていきなり例えば文化庁長官の指定ということは、法律を作る場合にはあり得ないわけです。ただ、どこまで詳細に書くかということがありますが、私どもの意識としては、現在の機器の状況を見れば、それでも書き切れないだろうと、また、紛れが出てくるだろうと思いますので、そこをどうするかということだと思うんです。
 したがって、そこで話し合われるのは、法令の基準に照らして、これが入るかどうかということですから、ちょっと言い方はおかしいんですけれども、補償金の額が高いか安いかということは一切関係ないわけでして、反対に、そういう判断が入ることが制度設計上良くないという考え方も私はあるのだと思います。
 ですから、御指摘の点は私も十分理解はしますけれども、反対にそういうプロセスはきちっと分けたほうがいいという御意見も当然あると思いますので、その点はまだまだこの委員会で議論をして頂く機会がございますので、改めてまた議論して頂ければと思います。

【中山主査】
 よろしいでしょうか。
 では、どうぞ。生野委員。

【生野委員】
 聞き違えていたらすみません。公的な評価機関で紛らわしいものを対象とすべきなのか審議をするとしたときに、ここで合意を得られたものだけが文化庁で定めるという形になるのか、合意を得られないものについても、文化庁で判断して定めるという形なのか、どちらでしょうか。私は前者のように聞いておりましたが。

【中山主査】
 室長。

【川瀬室長】
 そこは、さっきから何度も言っていますが、具体的にどう制度設計をするかというのはまだ決まっていませんので、ここでは一般論としてそういう方向性と、プロセスということでございますので、今具体的にはどういう制度設計かというのは若干答えにくいということです。

【中山主査】
 先ほど、手を上げておられたのは石井委員ですか。

【石井委員】
 単純な質問ですけれども、今問題になっています8ページの枠囲みの中なんですが、「定める」は何を定めるのかということを明確に書いて頂くと分かりやすいと思うんです。おそらく具体的な対象機器ではないかと思うんですけれども、それでよろしいでしょうか。

【川瀬室長】
 理解をしております。主査と御相談しまして、必要に応じて修正させて頂きます。

【中山主査】
 では、生野委員、どうぞ。

【生野委員】
 先ほどの川瀬室長からのお答えに対する意見なんですが、紛らわしいものというのは、評価機関の中で対象とすべきなのかどうか、なかなか決まらないことが想定されます。最終的にどこで決めるのかというところをはっきりさせたほうが、制度としては有効に機能するのではないかと。最終的には、文化庁が定める、決定するということが有効に機能する方法ではないかと思います。

【中山主査】
 室長。

【川瀬室長】
 もちろん、文化庁長官が最後は決めることは間違いはないわけですが、その前に当然様々な議論をして頂く機関が評価機関だと考えております。
 形式的な権限は当然文化庁長官だと思っております。ただ、何度も言っていますように、基本的な基準は法令で定めますので、法令で当然該当するものについては、ひとつひとつ個別に発売されたものを評価機関で評価するという制度設計はあり得ないと思いますので、当然紛れがあるものについて、その機関で議論されるという制度設計だと思いますけれども、権限は文化庁長官だということでございます。
 ただ、その前にそういった議論の場で合意されるかどうかというのは、これは非常に重い要素でして、そこで合意されないのに、文化庁長官が指定するということは、制度上はあり得ても、実際はそういうことはないのではないかと私は推測しております。

【中山主査】
 時間の都合がございますので、次の議題に移ってよろしいでしょうか。
 それでは、9ページの(3)補償金の支払義務者について議論を頂戴したいと思います。
 華頂委員、どうぞ。

【華頂委員】
 資料の10ページの「支払義務者の考え方を法律的に整理すると次のとおりである」のウなんですけれども、そこに「外国の制度においても、本来は利用者が補償金を支払うべきであるという点を否定している国はない」と記載されているんですけれども、諸外国では製造販売業者が支払義務者とされていまして、また、日本に比べて補償金額の総額が多いところが大部分なんですけれども、そのような他国においても、補償金の原資は行き着くところ消費者が支払っているということをこのことで指し示しているのか、それとも、本音はそこにあるんだけれども、製造販売業者が払っている。どちらなんでしょうか。質問です。

【中山主査】
 室長。

【川瀬室長】
 著作権法の原則から言えば、利用者が私的録音・録画によって利益を享受しているわけですから、その人たちが補償金を支払うのは当然なわけです。そこについて、どこの国も否定していないという意味でして、ただ、具体的な制度設計をするときに、利用者の支払義務というのが、現行でも非常に形式的、理念的なものということであれば、そういうものを制度設計のときにどうするのかというのは別の問題でして、多くの外国の国は、制度設計上、製造業者等を支払義務者にするという事実があるわけです。ここで言いたかったのは、そういう国であっても、消費者に一切私的録音・録画の責任はないと考えているということではないということです。そこを否定する国はどこもないと思います。ただ、制度設計上、個々の消費者から徴収できない以上、製造業者等に負担をして頂くということと理解しているわけです。

【中山主査】
 華頂委員、どうぞ。

【華頂委員】
 ということは、価格の中がどうなっているか分かりませんけれども、建前上は、消費者の皆さんが支払っているものではなく、その原資は、直接的に製造販売業者から出ているということですね。

【川瀬室長】
 ですから、支払義務者が製造業者ということであれば、製造業者が支払義務ですから、製造業者が決められた補償金を払って頂くということですが、それは、企業である限りはコストになるわけですから、それがどのように転嫁されるかということとは別の話でして、そこを事実上という言葉を付けて表しています。
 しかし、制度設計として利用者が支払義務者の場合とメーカーの支払義務者は、そこで大きく変わってきます。だから、返還制度についても、利用者が支払義務者ということであり、利用者が私的録音・録画をするという事実が補償金の請求権を発生させるわけですので、そうすると、一回も使わなかったということであれば返還ということになるという制度の違いがあるわけです。

【華頂委員】
 要するに、諸外国にも消費者団体はきっとあると思うんですけれども、そことか一般の国民に対して、製造販売業者が、あなたたちの負担ではありませんと、私たちの負担なんですと言っているかどうかです。

【川瀬室長】
 そこまでは私はよく承知していなんですけれども……。

【華頂委員】
 でも、もし消費者の皆さんに負担して頂いて、建前上、私たちが払っていることになっているけれども、価格の中にきちっと組み込んで、行き着くところはあなたたちが払っているんですと言った場合に、諸外国の消費者団体は黙っているんですか。そういうふうに決まっているのに、構造上、実際はそうなっている。普通だったらおかしいではないかという話になりますよね。

【川瀬室長】
 ですから、私が言っていますように、事実上は、例えばメーカーの方が補償金を払っても、そのコストをどのようにして吸収するかというのは、それはメーカーによって違うかもしれませんが、利用者の私的録音・録画の対価だということであれば、それは事実上は、価格にコストが転嫁されるという御意見があるのは、これは十分理由があるんだと思います。

【華頂委員】
 要するに、諸外国の消費者団体の皆さんが、私もよく分かりませんけれども、そういうふうな問題提起をしないで、この問題について黙っているのは、建前も本音も製造業者さんが支払っているからということなのか、それとも、コストの中に入っていて、実際は消費者が払っているのか。そこら辺があいまいで分からないので、どうなっているのかなと。きっちり線を引いているのかなということを聞きたいんですけど。

【野村分科会長】
 ちょっとよろしいですか。例になるかどうか分からないんですけれども、フランスで消費者の雑誌に消費者からの質問が出ていて、多分ベルギーだと思うんですけれども、ベルギーの通販で、ベルギーのテープとか媒体を買うと、そこには補償金がかかっていないということで安く買えると。フランス国内で買うと高いということで、これはいいのかという消費者からの質問に対して、消費者の雑誌が、本来は、別途、補償金を払うべきだと答えているわけですけれども、それは、おそらく最終的に消費者が負担するという発想でいるということではないのかと思います。

【中山主査】
 亀井委員、どうぞ。

【亀井委員】
 今の野村先生のお話にありましたように、欧州の消費者団体は、この制度に対して、やはり自分たちの知らないところでそういうものがかかっているということに対して、大きなクレームを出されています。一応、意見書というものもありますので、御参考までに御提供申し上げたいと思います。

【中山主査】
 他に何か。
 どうぞ、森田委員。

【森田委員】
 今ここの部分で、純粋に文章上の問題として、「なお」以下の「本来は利用者が補償金を支払うべきである」という言葉が、法的な意味での支払義務があるというのか、法的には支払義務がないというのか、このどちらなのかが多義的であることに伴っていろんな誤解を招いているのではないかと思います。その前の部分は現行制度の説明ですね。現行制度の説明の場合には、利用者には支払義務が法的にもある。しかし、それは、実際上は理念的なものにすぎない。これに対し、外国の制度においては、法的に利用者に支払義務がない場合であっても、理論的には利用者に転嫁されるために支払うべきことになっている。したがって、「なお」の前と後では法制度が違うにもかかわらず、「なお、外国の制度においても」と両者が同じ前提に立つように書いてあることから複数の読み方が成立し、それを組み合わせていくと、様々な多義的な理解を生じ、いろいろ疑義が出てきているのではないかと思いますので、もう少しそこをはっきりさせて書くべきではないでしょうか。例えば外国において、利用者には法的には支払義務がないとされている国においても、理念的には支払義務があると考えられているとか、利用者に転嫁されているという点は否定されていないとか、もう少し明確に書く必要があって、この部分は少し舌足らずなのかなという感じが今の議論を聞いていてしましたものですから、その点を申し上げたいと思います。

【中山主査】
 どうぞ、華頂委員。

【華頂委員】
 今、亀井委員からも、参考資料を今度見せて頂くということになったんですけれども、今の議論をいろいろ聞いていますと、意外に簡単なんだなと。要するに、建前と本音だけで言っているだけで、実際は、消費者の皆さんがどこでも払っている。日本もそうだ。そしたら、返還制度の実効性ということもあるので、建前と本音だけで言っているのであれば、製造販売元が日本で支払義務者になっても何の問題もないのではないかなと思いますけど。

【中山主査】
 亀井委員、どうぞ。

【亀井委員】
 華頂委員の御意見に対する反論ということではございませんで、今ここでまとめられている9ページの丸の3つ目でございますが、返還制度が実効性のある制度にすることがそもそも困難であるとすればという前提で始まっております。さかのぼりますと、昨年1月の分科会報告書で、返還額は少額であり、実効性のある制度とすることが難しいとあるんですが、もともと補償金額が小さいということがありますので、その点だけが果たして実効性のある制度であることが難しいことの理由なのか、多少疑問があるところでございますが、実効性のある制度とすることが本当にできないのかどうかという議論に全く触れずに、返還制度を制度上の欠陥だということであれば、支払義務者を変えればいいんだということにつながっていくという論理が、少し飛躍があるのではないかと。少なくとも、最後の11ページのまとめの「法的な整理は、以上のとおりであるが」というところでは、返還制度を実効性あるものとするための検討というものをしなくていいのかという点を入れるべきではないかと思います。
 それから、今の法的に整理ということで、ア、イ、ウの途中までのところは、こういう森田先生の御意見があったということは承知しておりますが、協力義務も金銭債務であるから同じなんだと断じられているんですが、もともと利用者負担の原則で出発しているところを、利用者と権利者の距離が遠いので、その間をつなぐ、橋渡しをする、協力をしなさいという義務が置かれたという理解をしておりますので、そこは金銭債務では同じだと言われればそうなんですけれども、協力義務という重みというのはかなり違うのではないかと思います。
 ましてや、利用者負担の原則に近づけるための制度として平成4年に設計されたものだと思うんですが、それが形式的だからということで、またそこは遠くへ離していいんだという議論へ戻るのかというところが非常に私個人として疑問がございます。
 それから、10ページの下の私的録音・録画権利つきの機器を買ったということだけれども、これを行使しないだけで、必ずしも不公平にはならないというところが書かれてございますが、このところはやはり少し論理の飛躍があるのではないかと。どうして不公平にならないのかという説明が足りていないのではないかと思います。
 そもそも返還請求権者と考えますと、これは個人だけではなくて法人もあるわけだと思うんですが、そういう人は、そもそも私的録音・録画権利つきの機器を買う必要もないわけでございまして、そういう人たちが負担するものをどう考えるのかと。そこは、今、返還制度によって返還請求しないという自由はあるかと思いますけれども、返還制度を使おうと思えば使えるというところがあるわけですけれども、それがなくなるということで、果たして不公平がないのかと。そもそも権利つきではないものをよこせと言われたときに、販売者は非常に困るだろうという気がいたしております。
 以上です。

【中山主査】
 ありがとうございます。
 他に。どうぞ、生野委員。

【生野委員】
 現実的に、返還制度が機能していないというのは、これまでの実態から明らかだと思いますし、これは改善して云々ということは潜在的に無理がある、努力の範囲の話ではないと思っています。
 この返還制度は、利用者負担とセットの話なので、利用者負担と決まった段階で制度として設けられたと思うんですが、制度を作るときも本当に返還制度が機能するのかどうなのか、実効性を有するのかどうかという議論は多分あったと思うんですが、極めて難しい制度だと思うんです。そこら辺はどうだったんでしょうか。

【中山主査】
 どうぞ、室長。

【川瀬室長】
 現行法を作成するときには、当然、様々な考え方に基づいて作ったわけですが、これは法制度としてできているわけですから、私どもとしては、こういう制度が一番正しいんだということで作った制度でございますから、当然、返還制度についても、運用上の問題が大変なことは分かっていましたけれども、実務上、様々な工夫をすることによってクリアできるのではないかと考えているたわけです。
 現に、今までの返還制度の実績も、私の聞いているところ1件とか2件しかございませんので、おおむね適正にやられているのではないかと思っています。
 ただ、そういう返還制度についての御指摘がございましたので、改めて法律的に整理をするということにしておりまして、11ページの一番上を見て頂いたら分かりますように、法律的な整理はさせて頂きましたけれども、特にここを見ていたら分かりますように、返還制度が実効性がないと断じているわけでもございませんし、それから、対象機器の範囲をどうするかということによっても大きく左右されるわけですし、その対象機器をどうするかということも全く決まっていませんので、ここの点については様々な議論を踏まえた上で、更に検討としているわけでございまして、どちらがいいということについては、この委員会でも決まったわけではありませんので、言及していないということです。

【中山主査】
 他に。どうぞ、井田委員。

【井田委員】
 文章の中にもありますけれども、返還制度が実効性がないと、それは明らかだと今言われておりますけれども、本当にそうなんでしょうか。実際、今まで実績はあまり出ていないということはありますけれども、知られていないとか、少額であるとか、色んなことが相まって実績としては出ていないのかもしれません。
 例えば記憶媒体のお客様の中で、ある程度ビジネスユース等に使用される方もあるかと思うんですけれども、基本的には私的録音・録画は関係ない方だと思いますが、そういう事業者の方々が購入主体であった場合には、私的録音・録画をしないということを説明するのは比較的簡単だろうと考えますし、ある程度まとまった形で返還するという可能性もあると思います。ただし、それらがあまり知られていない、実際には、知られていなくて実施されていないということがあるんですけれども、そういう方々の権利を守るために返還請求制度というものがあるはずなので、そういう実効性が期待できる以上は、その権利を剥奪してしまうというのは、やはり問題があるのではないかなと考えています。
 そういう意味で、消費者の方々の中でもビジネス目的で購入される方々もたくさんおられるわけですから、そういう方々の権利を剥奪するということに対しては反対だと考えています。
 それから、もう1点一緒に言わせて頂きます。
 10ページのイのところに、下に、「利用者に支払義務を課すべきかどうかの問題ということになる」と書かれているんですけれども、果たしてそうなんでしょうかということなんですね。この文章を読みますと、まるで製造業者等を支払義務者にすれば、利用者が支払義務を逃れると読めるわけですけれども、前からちょっと言わせて頂いていますが、事実上、利用者が支払いを行うということには変わりないということを再三申し上げておりまして、これは複数の委員の方からも御指摘されていることだと認識しています。
 事実上、利用者が支払うことに変わりはないということをユーザーの方々にも分かりやすく伝えないと誤解を生みかねませんので、この部分は修正して頂きたいなと考えます。

【中山主査】
 室長、そこはどうでしょうか。

【川瀬室長】
 誤解を招く表現ということであれば、主査と御相談して修正をさせて頂きます。ただ、法的な整理という面では、学識経験者委員に整理をして頂きまして、それに対して、利害関係者はともかくとして、他の学識経験者委員からその考え方はおかしいという御指摘もないわけですから、全体的な表現をどうするかというのは、更に検討させて頂きますけれども、その辺は私どもとしても十分留意しながらやりたいと思います。
 改めて申し上げますけれども、この文章につきましては、どちらかに決めているわけではございませんので、あくまでも2年前の法制問題小委員会の指摘を踏まえて、返還制度が実効性が困難であるという御指摘があって、もし、それをそのまま受け取って制度を再考するのであればということから出発しているわけで、今、井田委員がおっしゃったような御意見については、当然、尊重すべきですし、この委員会で、いや、制度上の工夫をすれば問題ないんだとか、そもそも、こういう制度はこういうことも目的にしているから、やはり必要なんだということであれば、それはそれで結構といいますか、特に、必ず変更しなきゃならんということではないと認識しております。

【中山主査】
 松田委員、どうぞ。

【松田委員】
 井田委員の意見に対する質問なんですけど、製造業者に補償金の金銭債務があるという制度を採った場合でも、利用者、消費者が何らかの関連的な支払義務があって、利用者が私的使用をしない場合には、返還する制度をその場合でも担保すべきだとお考えだという意見でしょうか。

【井田委員】
 もう一度お願いします。

【松田委員】
 支払債務は、これは立法ですからまだ分かりませんが、製造業者とメーカーが負担するという制度を採った場合でも、消費者、利用者が私的利用しない場合には返還請求ができるという制度を担保すべきかという、そういう意見なのかと。それは私自身としては難しいのではないかなと思っているわけですけれども。

【井田委員】
 その点、私はあまり法律が専門ではないんですけれども、私の感覚で言いますと、前からちょっと申し上げていますけれども、製造業者に支払義務者を移すということは、逆に言うと、返還請求権を剥奪すると、取るということで、逆に言うと、消費者の方から権利を取ってしまうと考えています。

【松田委員】
 その理解であれば、私も実は同じです。私は、製造業者等が補償金支払義務を著作権法上、定められるとすれば、利用者の返還請求権はなくなるんだという前提で私は考えておりました。

【中山主査】
 補足ですか。

【井田委員】
 そういう意味で言いましても、もともとあった、ここの書き方で言いますと、いかにも利用者に支払義務を課すべきかどうかの問題で、逆に言うと、消費者が何か助かる、負担が減るイメージで書かれているんですが、実は、そうではなくて、返還請求権もなくなるという意味で、消費者の方らから見れば、今の制度よりも権利的に言うとより少なくなると考えます。本来だったら、実質的には負担しているのに、使っていないからという主張もできなくなるということだと思います。

【中山主査】
 森田委員、どうぞ。

【森田委員】
 イの部分の文章は、私が申し上げたことだと思いますが、イの部分に書かれていることは、私個人の意見であるとか、政策的にどうすればよいのかということを述べたものではなくて、現行の法制度がどうなっているかということを単に客観的に叙述しただけのものでありますので、誰が考えてもこうなるはずだという性格のものであります。
 つまり、ここでの主眼は、現行制度上、メーカー等が協力義務を負っているというのは、法的に見れば、金銭の支払義務を負っているということであって、この点は変更するかどうかということが今問題となっているわけではなくて、メーカー等が現行制度で支払義務を負っているのであれば、今後も同じように負っていくということになる。
 そうすると、変更する点というのは、利用者の法律上の支払義務というのをなくすのか、それとも、法律上も利用者は支払義務を負い続けるかであって、そういう形でここでは問題が設定されているということです。まず、問題設定をそういうふうに整理した上で、それでは、利用者の支払義務をなくすべきかどうかが次に問題となるわけですが、この点はご指摘のとおり、利用者に法的支払義務はないということは返還制度の存続と結びついています。したがって、イの部分の文章というのは、意見というよりも、現行制度がそうなっているということについては、これは誰が見ても法的に見ればそういうことになるのではないかという事柄ですので、今のような理解が正しいとすれば、ここの内容を修正するということはあり得ないことです。そうではなくて、むしろ内容が分かりにくいというのであれば、そこをもう少しはっきり書けばよい。
 例えば、最後の部分は、「利用者に法的に支払義務を課すべきかどうかの問題になる」と書いたほうが、法的な支払義務を問題にしていることが分かりやすいということであればそのように修文するということはありうるでしょう。要するに、この文章は、私の理解では、現行制度がどうなっているかということと、今何を問題にしているのかということについての客観的な叙述であります。

【中山主査】
 どうぞ、椎名委員。

【椎名委員】
 返還制度が機能しないこと、あるいは機能させなければいけないところを回避しているのではないか、というようなメーカーさんの御主張がずっとあるんですが、これはさっき津田委員も御指摘になったことですけれども、そもそも、私的録音・録画機能を搭載していないパソコンを下さいと言って、実際に買えるんでしょうか。今の商品構成としては、かつてマルチメディアパソコンとかいって、CDリッピングができたり、映像をコピーできたりすることを宣伝して色んな商品が出てきた結果、今はそれがほぼ標準化して、CDリッピングなんて機能は、もはやOSの基本的な機能として付いている、そういった機能があたかも無償であるように無造作にバンドルされているわけですね。量販店に行って、そういう機能のないパソコンを私は欲しいんですけれど、と言ったときに、おそらくそんなものは買えないわけです。会社で使うためにそういう機能を持っていないパソコンを買おうと思ったって、おそらくCDの複製機能の付いていないパソコンをBTOとかで探すのは大変な作業になるのではないかと思います。
 そもそも、メーカーがそういう売り方をしているというところにも多少の責任はあり、そこのところを抜きにしておっしゃるのは、少しおかしいのではないかなと思いました。

【中山主査】
 では、河村委員。

【河村委員】
 個別具体的なことについてではないので、恐縮ですが、今の消費者が支払義務かどうかということで、消費者ではない方々が色んなことをおっしゃっているので、私が何も言わないのもどうかなと思いまして。とても具体的なことで言えば、返還請求権というのがあったとしても、その金額を取り戻すために多大な労力をかけて、時間をかけて、しかも使わないということが立証できなければいけないとなれば、それは権利があるんでしょうと言われても、それほどありがたいものでもはいと現実的には思います。この問題全体のことで、消費として申し上げたいことは、著作権者の方に権利がある一方で、消費者にも、基本的にな権利があるはずだとうことです。
 さっき評価機関のことも話題になり、意見が割れたらとかいうことがありましたが、その委員を誰が決めるのか、そのメンバー構成をどうするのかというところでかなり大きく決まってくると思います。
 今となって思えば、これまで何カ月かしてきた議論の末、前回に出された文書を見ましたら、補償の必要があるかどうかとか、損害に関するところというのは、大変本質的な、大事なところだと思うんですが、その議論については、学者委員の方がまとめられた、法律的にはこういう考え方ができるとか成り立つということでまとめられていますね。私はいろいろな省庁で委員、経済産業省ですとか総務省ですとか、出ておりますけれども、いろいろと対立する場面、利害が対立する場面、消費者と事業者の利害が対立する場面なんかでも、法理論的な考え方というよりは、どうあるべきかというのが定まれば、極論で言えば、どうあるべきかを話した後で、それを法律的にサポートすることは技術的にかなり柔軟にできるということを経験しています。事務局の方が作られているレールというのは、ある立場に立って法的な理論づけをすると、こうできるという一例であると私は思っています。
 ですから、これは法律的にとてもきれいですね、とても理論的ですねとおっしゃいますけれども、全く別の立場に立った理論づけだって可能なのではないかと、私は専門家ではないですけれども、思っております。
 そういう意味から言いますと、著作権の問題を議論しているわけですが、消費者にも非常に基本的な権利があると思っています。細かく法律に定められているかどうかはともかく、事業者の方、利益を得ようとして経済活動する方の一方的な考え方に立って、交渉力において弱く、情報力において弱い、そういう立場の一人一人の消費者が、そこで不利益を被らない権利があるはずです。私が一人純粋な消費者としてここに座っていて、何を申し上げても、理論付けができなければ意見としてとりあげてもいただけないという風に感じています。

【中山主査】
 松田委員。

【松田委員】
 今の河村委員の意見を聞きまして、消費者の立場でどういう請求ができるかを構成してみなきゃいけないんだと思いました。
 先ほど井田委員の前提の点で発言いたしましたけれども、実は結論的には、私、井田委員と違う意見を持っています。前提は同じです。製造業者に請求権が定められれば、消費者からの返還請求はなくなると思っています。しかし、その先の考え方は、これから法律を作る場合は、消費者に対する請求権があるという法律構成は止めて、製造業者に債務を負ってもらうことはやむを得ないと考えています。著作権法上、このように定めるべきではないかと思います。
 そうすると、購入者からの返還請求権はなくなります。そこで、消費者の権利を1つ奪うようなことになるんだということは井田委員と同じ意見です。
 それなのに、何で製造メーカーに債務を、請求権を著作権法上、定めるという意見になるのかという、これは今、河村委員が言われたように、時間と請求権の労力の関係です。実際上、私は機能していないと思います。
 消費者に請求権を定めるのであれば、私的利用しない人に対しては、何らかの回復措置を定めないのでは、憲法違反になると私は思っています。だから、現行法上、そうしているんだろうと私は思っています。
 それでは、新しい制度にした場合、例えば今言った製造メーカーに債務を負わせるという制度にした場合に、消費者はどういう立場にあるのかと考えるべきではないかと思います。というのは、どの方法を採ったとしても、物を買ったときに、最終的に消費者に転嫁されるに決まっているではないですか。それを消費者としてはどういう立場で物を言えるのかを考えるべきだと思っています。
 1つ事務局は、それは公的評価機関を定めると言っているわけです。でも、そう定めても、最終的決定権は、今の議論で分かったように、文化庁長官の行政処分か、告示でやるほかないんです。告示で定める場合、行政処分として争えないかも知れません。行政処分でやるのであれば、行政不服審査の可能性がありますが、そのときに消費者は当事者になりません。これが実はこの問題に内在した問題ではないかなと私は思っています。実質的に負担するのは消費者なんだけれども、行政処分になったときには、消費者は当事者にならない。これは実は、この問題に限らず、かなり社会的に大きく動いている今の状況で、消費者がどういう権利を持つか、消費者がどういう立場で、何らかの不服を申し立てられるかということをどう担保するかという大きな問題と関連しているんだろうと思います。その視点で、ぜひ河村委員のほうで消費者の実質的権利を確立するための法律的構成を考えて頂きたいなと思います。前述の返還要請を云々するよりも、消費者にとって重要な問題だと思います。

【中山主査】
 時間が来てしまいましたけれども、まだ議題はたくさん残っていますので、若干延長してもよろしいでしょうか。
 では、今の点、よろしいでしょうか。
 では、津田委員、どうぞ。

【津田委員】
 では、僕も消費者的な立場から1点言わせて頂くと、今、返還制度が有効に機能していないという問題も、ここの委員会でやられている議論の延長線でいくと、例えばiPodみたいな高い機器、仮にパソコンに課金するという形になってくると、当然単価も高くなっていますから、それの上限価格をどうにかするのかという議論は別としても、補償金を1回払う金額もおそらく高くなっていく可能性は十分あると思うんですね。そうなったら例えば送料とかそういったものを含めても十分返還制度が機能していく余地があるので、それは考えたほうがいいのかなというのが1点ありつつ、結局、一番消費者的に納得できない部分というのは、録音録画になんか使わないのに機器を買ったときにそれを払わせているというのが、特にパソコンなどは一番表面化しやすい問題だと思うんですが、そのときにそれを納得するための方策というのが2つあって、1つは、わかりやすく、できるだけ低コスト、色々な取引コストを低くして返還制度が具体的に可能になるということが1つ納得できることだと思うんですね。もう1つは、返還制度はないというか使わないかわりに1回の上限価格みたいなのが、例えば数十円とか100円とか、そこのレベルぐらいまで補償金の金額が低くなれば、実際には使わないけどこの金額だったらいいのかなと納得できるラインもおそらく出てくるのではないのか。自分が録音録画に使わない機器を買ったときに補償金を払うということに納得させる2つの方法というのが、返還制度を機能させるか、それか本当に金額が、これならしようがないかなと納得できるポイント、それはもちろん消費者によっても変わってくると思いますけれども、僕は数十円のレベルであれば、ほとんどの消費者は、何となく違和感を抱えつつも、この程度だったらいいかと納得できるのではないかと思っています。
 以上です。

【中山主査】
 ありがとうございます。土肥委員、どうぞ。

【土肥委員】
 私も、今、津田委員がおっしゃったように、制度を維持するコストを考えて構築する必要があるんだろうと思います。返済請求権の仕組みを機能するような形で制度を構築するとすれば、当然、社会的なコストがかかるわけですし、機能するようになってくると、実際、返還請求をされた方がその機器を再度譲渡された後、譲り受けの方が私的録音されたらまたそこのところを支払うようなちゃんとした仕組みを作っていかないといけない。そういうことがないと全体の機能的な、社会的な仕組みは成立しないと思いますので、そういう全体的なコストを考えていくと、思い切るということが選択肢として十分あるのではないか。私も消費者の1人でありますので、消費者という観点から立っても、製造業者に支払義務を法的に負わせるということは、消費者一人一人が社会の中でコストを減ずるという意味でも意味を持つのではないかと思っております。

【中山主査】
 椎名委員、どうぞ。

【椎名委員】
 津田委員に質問なんですけれども、今おっしゃったように、例えば補償金の単価がある程度上限が決められて安かったような場合に、返還制度がないことを許容し得る状況というのが仮にあるとするならば、例えば対象機器に関する定義といいますか、汎用機等で私的録音録画に供される割合がどうたらこうたらという、そういう部分の可能性についてもある程度許容できてしまうと考えてもいいですか。

【津田委員】
 それは仮定の話に仮定を重ねるというので難しいところもあると思うんですけれども、個人的な考えでいえば、1回の金額が低ければ、おそらく汎用機器みたいなものも対象に含めて払うのも納得できる消費者の割合は増えていくと思います。ただ、それは間違いなく条件があって、現状の厳しいDRMみたいなものは全部制限を取っ払った形で、私的複製の枠の中で消費者が家庭内できちんとコピーできることが担保された条件が確保されていれば、十分に安い金額であれば補償金を払うという、そっちのほうが理屈としては消費者は受け入れやすいのではないかと個人的には思っています。
 以上です。

【中山主査】
 よろしいでしょうか。
 それでは、司会の不手際で議論すべき点が残ってしまいましたけれども、(4)、(5)、(6)、(7)、これは11ページから13ページまででございますけれども、これらについて何か意見がございましたらお伺いしたいと思います。また、後から御意見がございましたらメール等で事務局に連絡を頂ければと思います。
 河野委員、どうぞ。

【河野委員】
 11ページ、補償金額の決定方法のところですけれども、見直しの要点の上の「まる」2つ、ここで出てきている著作権保護技術の影響度ですとか、契約に基づく私的録音録画、あるいはプレイスシフト、タイムシフトなどの利用形態、これらの要素は補償金の額だけではなくて補償金の対象となるべき機器・媒体を考えるに当たっても考慮すべき点だと考えておりますので、若干、冗長になるかもしれませんが、前段出てきておりました対象機器等の決定方法の考え方のところにも、これを入れ込んで頂ければと希望します。

【中山主査】
 他に何か。椎名委員、どうぞ。

【椎名委員】
 先ほども申し上げたんですが、対象機器の決定のところと補償金額の決定のところは非常に密接に結びついてくるというのは、今津田委員に質問させて頂いた点からも、ある種、そういう部分もあり得るということが明らかになったと思うので、やはり対象機器の決定と補償金額の決定というのは、何らか連携するような形が望ましいのではないかと思いました。

【中山主査】
 津田委員、どうぞ。

【津田委員】
 誤解のないように僕が言っておきたいのは、消費者的に、30条というのはすごく重要だと思っているんですよ。30条で、家庭内でのコピーというのが自由にある程度それが保証されているという前提があった条件であれば補償金を払うか、要するに厳しいDRMでコピーを制限されて補償金を払わないという選択なのか、それとも補償金は払うけれども自由にコピーできる環境が認められるのかという、その2択だったら、僕は消費者にとっては後者のほうがいいと思っているという状況があって、その意味でいうと前回の議論でもある30条の範囲の縮小みたいな議論の方向で話が進んでいくのであれば、やっぱり補償金も受け入れられないよという話になりかねないので、そこはちょっと都合のいいように使われると困るかなという気がします。

【中山主査】
 他に御意見ございましたら。土肥委員、どうぞ。

【土肥委員】
 13ページの一番下の「まる」のなお書きのところなんですが、私はよくわからなかったので単純にお尋ねするんですけれども、「引き上げるべきである」というのは、2割を3割、4割にするという趣旨ですか。

【川瀬室長】
 御指摘のとおりでございます。複数の委員からそういう意見がございましたので、意見があったということで付記させて頂いています。

【土肥委員】
 権利者への正確な分配ができないからということですか。

【川瀬室長】
 はい。それであれば、分配制度が確保できないのであれば、思い切って共通目的事業の割合を上げて、文化の振興に使ったほうがいいのではないかという御意見でございます。

【中山主査】
 河村委員、どうぞ。

【河村委員】
 津田委員ともう1人消費者として出ている者として、先ほどの津田委員の発言は非常に重要なことで、消費者の意見としてそれが議事録に載ってしまうのであれば、わたしも一言申し上げたいと思います消費者は私的録音録画を自由にできるために補償金を払うのであれば抵抗感が少ないということをおっしゃったんですけれども、私が一貫して申し上げているのは、私的録音録画はもちろんできるべきだと思っていますが、それは補償金があるからであるというおっしゃり方は、まさに椎名委員、小六委員の思うつぼでございまして、そうではなくて私が何度も申し上げているのは、実際に損害があるとは思えない場合も含め、私的録音録画をするのに補償金を払わなければいけないのはなぜなのかという疑問があるのです。補償金を払うから録音録画一般ができるとなってしまったら、もう説明不要なんですね。そういうところを私は消費者委員として申し上げておきたいと思いました。

【中山主査】
 他に何かございましたら。生野委員、どうぞ。

【生野委員】
 14ページの2見直しの要点の最初の「まる」のところで、「管理協会に補償金制度の広報義務を課し」とあるんですが、ここで言う広報義務というのは一般的な努力義務なのか、どこまでやったら義務を履行したというところは、なかなかはかることは難しいと思うんですが、これは一般的な努力義務と理解してよろしいでしょうか。

【川瀬室長】
 そこはまだ決まってはいませんが、書き方としては例えば、広報に努めなければならないという努力義務規定もありましょうし、もう少し強めの義務もあると思いますけれども、そこはこれからといいますか、まだ議論が深まっていないということだと思います。

【中山主査】
 津田委員、どうぞ。

【津田委員】
 河村委員の先ほどの意見に答えるわけではないんですけれども、ずっと2年間ぐらいこの議論に参加してきて、補償金の議論で思うことが、では例えば極論として補償金をなくしましょうという議論になって、仮になくなったとしたら、僕はこの委員会でいろいろな権利者の方の話を伺っていると、結果どうなるかというと、ビジネスの動向として、DRMとかコピーガードとかプロテクション、要するに技術でどんどんコピーで制限していくというものが強化する流れにならざるを得ないと思っているんですね。おそらくそういうふうな状況になっていって、DRM、DRMという形で、30条とは全く関係ないところでずっとコピーが、コンテンツが非常に制限される世の中が来るだろうなというのは予想できることだと僕は感じていて、それであれば、DRMでコピー制限というのが非常に厳しい世の中になるぐらいであれば、例えば補償金が消費者でも納得できるかなというぐらいの少額の形でのある種の折り合いがつけられる金額を払えるのであれば、そのかわりにDRMを厳しくすることは、30条の範囲でちゃんとコピーできるようにしてくれという形に、その2択であれば僕は後者のほうが将来的に消費者にとっても、権利者、コンテンツビジネス全般をとらえても得があるのではないのかなと。そういう言い方で言っているので、別にそれは、補償金そのものの意味とかに関しては僕も疑問もありますけれども、そこの折り合いをつける意味でのこういう話し合いは当然しているわけでしょうし、そういう趣旨で申し上げたということを御理解頂ければと思います。

【中山主査】
 よろしいでしょうか。この小委員会は平成4年に作られた補償金制度というものがさんざん議論した挙げ句作られたわけですけれども、それが技術の発展によってどういうふうに変わってきたか、その変わってきたことに対応するにはどうしたらいいかということを議論する小委員会でして、30条そのものは法制小委員会のほうでやることになっておりますので、河村委員は御不満かもしれませんけれども、技術がどう変わったからどうなのかというのがこの小委員会に課せられた一番の課題ではないかと思っております。
 先ほど申し上げたように、あと2回議論する場がございますので、そこでまた御意見を頂戴したいと思いますけれども、この次は事務局のほうから整理した案が出てくると思いますので、その前にぜひメール等で事務局に御意見を頂戴できればと思います。
 時間を超過いたしましてまことに申しわけございませんけれども、本日の討議はこのくらいにしたいと思います。
 次回の小委員会の内容を含めまして、事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【川瀬室長】
 ただいま主査から御発言がございましたように、次回は前回と今回の議論を踏まえた上で、中間整理メモを中間整理案ということで、修正すべきところは修正し、内容の追記するところは追記したものを提出させて頂いて、更に議論をして頂きたいと思っております。
 なお、次回は9月13日(木曜日)、2時から4時まで、都市センターホテルで開催を予定しております。
 以上でございます。

【中山主査】
 それでは本日はこれをもちまして、文化審議会著作権分科会の第11回私的録音録画小委員会を終わらせて頂きます。本日は長時間の御議論ありがとうございました。

─了─

(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室)


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