ここからサイトの主なメニューです

2 スペイン

(1) 補償金制度導入の経緯
   1879年法では、私的使用目的であっても著作権者の許諾なく著作物を録音録画する行為は著作権侵害とされていたが、1981年に権利者の団体と政府による私的録音の実態調査が行われ、私的録音行為が著作者等の利益に大きな影響を与えていることが判明。1987年に著作権法(1879年法)を改正し、私的録音録画補償金制度を導入した。
 その後、2001年のEU理事会指令を受け、2006年、技術的保護手段の使用度合い等に応じて補償金額を決定することを内容とした著作権法の改正が行われ、同年6月に施行された。
(2) 制度の概要
   スペイン著作権法では、録音録画による私的複製について補償金を受けることができるのは著作権者、レコード製作者、ビデオ製作者、実演家とされ、機器または記録媒体の製造業者または輸入業者が徴収団体に補償金を支払わなければならないことが定められている。
(3) 補償金額の決定方法
   1987年法では補償金の対象機器・記録媒体はアナログ・デジタルの区別はなく、法律で一定額の補償金を明記。2006年の改正により、デジタル録音録画機器・記録媒体の場合は、製造業者等と徴収団体との交渉を経て、文化省と産業観光商務省が補償金額を承認する方法を導入した。改正法では、交渉当事者と政府が補償金額を決定する際に、7項目にわたる基準を考慮に入れて決定する旨が規定されている。
 なお、この方法は2年に1度政府が見直しを行い、場合によっては見直し期間を短縮することができる。
(4) 対象品目
 
機器… アナログオーディオレコーダー、MP3プレーヤー、CDRレコーダー、Minidiscプレーヤー、アナログビデオ、デジタルビデオ
媒体… アナログカセット、Audio cd-r/rw、メモリーMP3、Minidisc、DAT及びVideoテープ、CD−R/RW DATA、DVDプラスR/RW(VideoとDATA)
iPodなどのメモリー内蔵型オーディオレコーダーは課金対象とされていないが、現在行われている関係者間の協議を経て、課金対象とする場合は、文化省と産業観光商務省が承認することとなる。
(5) 支払義務者
   補償金の支払義務者は製造業者または輸入業者とされ、対象製品の流通業者、卸売・小売業者は、製造業者等とともに補償金支払いの連帯責任を負う。
(6) 補償金の返還請求
   機器等を私的複製のために一切使わない人を把握することは困難であるため、補償金の返還請求制度を有していない。
(7) 補償金免除制度
   2006年改正法では、パソコンのハードディスクについては、補償金の支払いを免除する規定が設けられた。このため、関係者間の協議では、パソコンのハードディスクは無条件で対象から除外されている。
(8) 補償金の徴収・分配
   徴収団体のSGAEが徴収し、政府決定の分配率に基づき傘下の団体に分配。私的録音補償金は50パーセントを著作者団体、25パーセントを音楽実演家団体、25パーセントをレコード製作者団体に分配。私的録画補償金は視聴覚著作者団体、ビデオ製作者団体、視聴覚実演家団体にそれぞれ33.33パーセントを分配。SGAEは団体間の分配基準を文化省に報告する。
 2005年の徴収額:52,369,584ユーロ(Audio 21,930,967 Video 30,438,617)
(9) 共通目的事業
   新進作家や実演家の養成および奨励のために、徴収額の最低20パーセント以上を支出することが義務付けられている。管理団体が共通目的事業をそれぞれ実施し、その内容は毎年文化省に報告。
かっこ10 補償金制度とDRMについて
   2001年のEU理事会指令を順守するため、2006年に、技術的保護手段の使用度合い等に応じて補償金を決定する仕組みを設けた。今後、メモリー内蔵型オーディオレコーダーなどを補償金の対象とするかどうかを含め、政府が補償金と技術的保護手段との関係をどう整理するかが注目される。

前のページへ 次のページへ


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ