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3 各国の状況について

第二部 −私的録音及び著作権法制度・運用全般について−

4 オーストリア

その1―法務省

(1)  私的録音・録画の私的録音補償金制度について
 
1 私的録音補償金の対象品目等について
 
(ア) 額・料率の変更や私的録音補償金対象品目の決定方法
   補償金の額については、まず管理団体が額を決め、連邦商工会議所、即ち産業界の代表と協議してその両者間の合意に基づき額が決定される。
 どの媒体が対象品目であるかということは、著作権法42条において規定されている。

2 共通目的事業について
   オーストリアでは次の二つの観点から共通目的事業は必要であるとされてきた。
1  著作権は、社会的、文化的側面と繋がっているため、作詞家作曲家一人一人を見て個々人に分配するというより、使用された著作物全体をとらえて権利者全体に分配していくといったような側面があり、例えば今後の創作活動を促進していくため、といった共通目的のために使われる。
2  オーストリアでは補償金制度を導入しても、外国、特にアメリカに多くの額を送金しなければならなくなってしまうため、こうした状況を少しでも緩和するため、法的に大半の部分を共通目的事業に利用することにしている。

3 支払義務者について
   補償金の支払いについては製造・輸入業者が責任義務を負うこととしている。
 また、卸売、小売業者には保証人としての義務がある。これは、主な輸入先にハンガリーやポーランドが加わった状況の下、輸入業者が偽会社で責任を負えないといったケースに対応するため、卸売、小売業者を押さえられるよう支払い義務を負わせることとしたものである。

4 報酬返還請求権制度について
   返還要件には2点ある。
1  記録媒体が消費者にわたる前に輸出される場合、権利者のライセンス契約があればその同意を受けていることになるので返還される。
2  技術的保護手段が適用されている場合は権利者との合意ができているとみなされるので、契約書を証拠として提出すれば管理団体から返還を受けることができる。

その2−AUSTRO MECHANA

(1)  私的録音補償金制度について
 
1 私的録音補償金の対象製品について
徴収総額及びその推移
  表1 オーストリアの補償金管理団体AUSTRO MECHANAの徴収額
  (単位:ユーロ)
 
種類 補償金単価 単位 2002年度 2003年度 2004年度
HD内蔵Jukebox(MP3プレイヤー内蔵HD) 9.00 1.5GBまで     57,000
12.00 1.5GB超〜5GB
15.00 5GB超〜10GB
18.00 10GB超〜15GB
22.50 15GB超〜20GB
30.00 20GB超〜40GB
Digital Audio Player(mp3)(メモリーカード) 1.88 64MBまで 154,000 174,000 362,000
3.23 128MB
6.00 256MB
6.75 512MB
9.00 1GB超〜1.5GB
カセットテープ 0.18 60分 491,000 331,000 391,000
AUDIO CD-R/RW 0.27 60分 553,000 543,000 320,000
MINI DISC 0.27 60分     112,000
DATA CD-R/RW 0.255 60分 6,354,000 10,291,000 7,851,000
録音補償金合計 7,552,000 11,339,000 9,093,000
   2004年度録音補償金合計額を円に換算すると13億2,757万円(1ユーロ146円、2006年6月30日現在)となり、同年度のSARAHの出荷ベースによる収入額20億4,088万円対比65.0パーセントである。

2 私的録音補償金の額の決定について
   オーストリアの補償金の規定には、支払わなかったときの制裁用のものと正規の料率との二種類を定めている。きちんと監査を受けた上で支払っていく製造業者に適用する料率と、会社の中には支払いを拒否したり、正しく報告しない会社があり、そうした会社に適用する料率とがある。

3 私的録音補償金の徴収手続について
   補償金の徴収は、オーストリアでは唯一Austro Mechanaが一括して行っている。

4 私的録音補償金の分配について
   権利者への分配で最も難しいのは、権利者間の取り分率の決定であり、常に厳しい交渉の結果決められる。
 austro mechanaが全体の分を徴収して権利者団体に分配する。そして各権利者団体が独自のルール、独自の率で各権利者に分配する。
 なお、オーストリアの権利者が補償金の分配を受けようとするときは、いずれかの団体に属さなければならない。

5 共通目的事業について
   共通目的事業のうち社会的目的のものについては著作者に対する年金に使われており、作詞家、作曲家が60歳になったときから年金を受け取れるようになる。
 また、文化的目的のものについては若いアーティストを育てるような事業に対して支払われている。

6 報酬返還請求権制度について
   実際に製造業者等に返還されるのは、補償金収入のうち1パーセントにも満たない。

(2)  DRMと私的録音補償金の関係
   技術的保護手段で保護されている著作物も増えてくるとは考えているが、技術的保護手段で保護されていない著作物も市場に残るわけで、そういったものがブランクメディアで複製された場合どうするかを解決しなければならない。

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