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著作権分科会私的録音録画小委員会(第1回)議事録

1. 日時
  平成18年4月6日(木曜日)10時30分〜13時

2. 場所
  経済産業省別館10階 1014会議室

3. 出席者
 
委員: 荒巻、井田、大渕、華頂、亀井、小泉、河野、小六、佐野、椎名、津田、土肥、苗村、中山、生野、松田、森、森田
文化庁: 加茂川文化庁次長、辰野文化庁長官官房審議官、甲野文化庁著作権課長、秋葉国際課長、川瀬著作物流通推進室長、千代国際課国際著作権専門官、木村著作物流通推進室長補佐ほか関係者

4. 議事次第
 
1. 開会
2. 議事
(1)  私的録音録画小委員会主査の選任等について
(2)  文化庁次長あいさつ
(3)  私的録音録画小委員会審議予定について
(4)  私的録音録画補償金制度の見直しについて
3. 閉会

5. 資料
 
資料1   文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会委員名簿
資料2   文化審議会著作権分科会の議事の公開について
(平成18年3月1日文化審議会著作権分科会決定)
資料3   小委員会の設置について
(平成18年3月1日文化審議会著作権分科会決定)
資料4   私的録音録画小委員会審議予定(案)
資料5   文化審議会著作権分科会(平成18年3月1日)における意見概要
資料6   私的録音録画補償金制度の見直しについて
資料7   文化審議会著作権分科報告書(平成18年1月)抜粋
資料8   私的使用のための複製に関する制度の概要
資料9   私的録音録画補償金制度の創設経緯

参考資料1   文化審議会関係法令等
参考資料2   文化審議会著作権分科会委員・専門委員名簿
参考資料3   文化審議会著作権分科会各小委員会委員名簿

6. 議事内容
 

【甲野著作権課長】 それでは時間がまいりましたので、ただいまから文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の第1回を開催いたします。本日はご多忙の中、ご出席をいただきましてありがとうございます。私は著作権課長の甲野でございます。
 本日は私的録音録画小委員会の最初の会議でございますので、後ほど主査を選出していただくこととなりますが、それまでの間、私が進行させていただきますので、ご了承お願いをいたします。
 初めに、今回文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の委員にご就任された委員の方々を、お座りの順にご紹介させていただきます。
 荒巻優之委員でございます。井田倫明委員でございます。大渕哲也委員でございます。華頂尚隆委員でございます。亀井正博委員でございます。小泉直樹委員でございます。河野智子委員でございます。小六禮次郎委員でございます。佐野真理子委員でございます。椎名和夫委員でございます。津田大介委員でございます。土肥一史委員でございます。苗村憲司委員でございます。中山信弘委員でございます。生野秀年委員でございます。松田政行委員でございます。森忠久委員でございます。森田宏樹委員でございます。
 なお、分科会長の野村豊弘委員も出席をいただけることになっておりますが、本日はご欠席でございます。
 続きまして、文化庁関係者を紹介させていただきます。加茂川幸夫文化庁次長でございます。辰野裕一文化庁長官官房審議官でございます。秋葉正嗣国際課長でございます。川瀬真著作権課著作物流通推進室長でございます。木村哲規著作権課長補佐でございます。千代光一国際著作権課専門官でございます。なお、白鳥綱重著作権調査官は本日都合により急遽欠席をさせていただいております。
 それでは、議事に入らせていただきます。まず、事務局より配付資料の確認をさせていただきます。

【木村著作権課長補佐】 それでは恐れいりますが、配付資料の確認をさせていただきます。本日の配付資料ですが、配付資料の中に議事次第の用紙、1枚物でございますが、この中に一覧を示させてもらっております。資料が9点、参考資料が3点でございます。各々確認させていただきたいと思います。
 まず資料の1が、この小委員会委員の名簿でございます。資料の2、議事の公開について、資料の3、小委員会の設置について、資料4、審議予定の案でございます。資料の5、分科会における意見の概要、資料の6、私的録音録画補償金制度の見直しについて、資料の7、分科会報告書の抜粋です。資料の8、私的使用のための複製に関する制度の概要でございます。資料の9、私的録音録画補償金制度の創設経緯の資料でございます。そのほか、参考資料といたしまして3点配付させてもらっております。
 漏れ等ございませんでしょうか。ありがとうございます。

【甲野著作権課長】 次に、本小委員会の主査の選出をお願いしたいと思います。選任方法につきましては、文化審議会著作権分科会運営規則の規定によりまして、分科会に属する委員の中から互選により選任することとなっておりますが、事務局としては、中山委員に主査をお願いしてはどうかと思いますが、いかがでございましょうか。

【一同】 〔異議なしの声あり〕

【甲野著作権課長】 ご異議がないようでございますので、中山委員を主査として選出することでご了承ということでお願いをいたします。
 それでは、中山委員には大変恐縮でございますが、主査席のほうにお移り願います。
 では、これからの進行につきましては、中山主査のほうからよろしくお願いいたします。

【中山主査】 ご指名でございますので、主査を務めさせていただきます。この小委員会は昨年度から非常に重たい課題を背負っております。後からご説明があると思いますけれども、私的録音録画についての抜本的な見直し、及び補償金制度に関してもその廃止や骨組みの見直し、さらには他の措置の導入を視野に入れて抜本的な検討を行なうという、こういうものが前回の、昨年度の審議会の答申であります。
 これを元にこれから議論していただくわけですけれども、この問題は非常に大きな問題で、場合によっては著作権法の将来を占うといっても過言ではないほど重大な問題だろうと思います。
 短期的に見ますと、いろいろ利害関係等々ある方も思いますけれども、将来に向かっていかにあるべきか、文化の発展にとってどのような制度が好ましいかという点を中心に議論をしていただきたいと思います。これはやっぱりデジタル時代において非常に重大な問題でありますので、あまりちまちました議論ではなくて、文化の発展にとって、つまり著作物の利用流通を促進し、なおかつ権利者にしかるべき利益が還流する、そのシステムはいかにあるべきかという大局的な観点に立って議論をしていただければと思います。
 それでは、まず文化審議会著作権分科会運営規則の規定に基づきまして、主査の代理を指名させていただきます。代理といたしましては、大渕委員にお願いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 次に議事内容に入ります前に、本小委員会の会議の公開の取り扱いについて、事務局よりご説明をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 それでは恐れいりますが、本日配付資料の2をご覧いただけますでしょうか。本小委員会の会議の公開の取り扱いについて、説明させていただきます。
 この資料の2でございますが、今年の3月1日に開催されました文化審議会著作権分科会で決定された事項でございます。議事の公開につきまして、概要を説明させていただきます。
 会議の公開につきまして、1番のところですが、会議は公開とするが、次に書いてあります(1)から(3)の案件を審議する場合を除くというふうになっております。(1)でございますが、小委員会の場合においては「主査」の場合ですけれども、主査の選任、その他人事にかかる案件、(2)といたしまして、使用料部会の調査審議事項にかかる案件、(3)上記のほか、公開することにより公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼす恐れがあると認める案件、その他正当な理由があると認める案件というような場合には非公開で、このような場合を除きまして会議は公開とさせてもらっております。
 2番でございますが、会議の日時、場所、議事につきましては、原則としまして会議開催時の1週間前の日までに文化庁ホームページに掲載いたします。
 会議の傍聴でございますが、会議の傍聴を認める者につきましては、ここに書いてあります(1)から(3)まで、報道関係傍聴者、委員関係者、各府省関係者、一般傍聴者となっております。
 続いて4と5でございますが、議事進行の妨げとなる行為は禁止いたします。また、傍聴者が会議の進行を妨げていると判断した場合には退場を命ずるなど、必要な措置をとることができますとなっております。
 6番でございますが、議事録の公開でございます。議事録は原則として発言者名を付して公開いたします。ただし、公開することにより、公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼす恐れがあると認める時、その他正当な理由があると認める時は議事録の全部または一部を非公開とすることができるとなっております。
 7でございますが、前項6番により議事録の全部または一部を非公開とするような場合には、非公開とした部分について議事要旨を作成し、これを公開するということになっております。
 最後に会議資料の公開でございます。会議資料は公開としております。ただし、公開することにより公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼす恐れがあると認める時、その他正当な理由があると認める時は、会議資料の全部または一部を非公開とすることができると、このようになっております。以上でございます。

【中山主査】 ただ今のご説明のとおり、議事の公開の方針に基づきまして、議事の内容の公開を一層進めるという観点から、今期も原則として一般に公開した形で開催するということで、分科会においても決定されておりますので、よろしくお願いいたします。
 本日のここまでは人事にかかる案件ということで、分科会決定に基づき非公開といたしましたけれども、これ以降のことにつきましては公開によって行ないたいと思いますけれども、よろしゅうございますか。

【一同】 〔異議なしの声あり〕

【中山主査】 それでは、本日これ以降は公開といたします。傍聴者の方々には入場をお願いいたします。
 それでは開催に先立ちまして、加茂川文化庁次長よりご挨拶を頂戴したいと思います。

【加茂川文化庁次長】 失礼をいたします。第1回目の本小委員会の開会でございますので、文化庁を代表して御礼とお願いのご挨拶をさせていただきたいと思っております。
 まず、最初に各委員の皆様方におかれましては、大変お忙しいにもかかわりませず、この委員会の委員をお引き受けいただきましたことを御礼を申し上げたいと思っております。
 本委員会の設置につきましては、著作権分科会が本年3月に決定をしていただいて、こういう開催の運びとなったわけでございますが、背景としましては、中山主査がご挨拶にもございましたように、昨年ハードディスク内蔵型の録音機器の補償金制度の対象にすべきかどうかという議論を集中的、積極的にいたしました際に、この私的補償金制度そのもののあり方についても改めて議論をすべきではないか。即ち、さまざまな問題点、社会状況の変化等を踏まえて、制度の抜本的見直し、運用の改善について検討すべきであるという、いわば宿題をいただいたわけでございます。大変難しい問題でありますけれども、これを集中的にご審議いただく場として、本小委員会が開かれたものと理解をしているわけであります。
 課題としては、大変大きいわけでございますが、各方面の方々、専門分野の方々のお知恵を拝借して、この問題に関するいわば権利者、権利の保護とその流通、円滑な流通の促進、両方の課題に適切に応え得る最良の方策、回答を私どもは見出したいと思っておりますので、皆様方の積極的なご発言、審議への参加をお願いいたしたいと思っております。
 大変調整には手間もかかるでありますしょうし、いろいろな工夫が必要だと思っておりますが、主査のご指導を得ながら、事務局としては最大限のフォローをしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

【中山主査】 はい、ありがとうございました。引き続きまして、本小委員会の設置の趣旨や所掌事務及び今後の審議予定等につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 それでは、ご説明をさせていただきます。資料の3及び4をご覧いただきたいと思います。
 資料3は今年の3月1日に著作権分科会で決定をいただました小委員会の設置でございます。著作権分科会のもとには法制問題小委員会等、私的録音録画小委員会、国際小委員会の3つを置くというふうに決定をいただいたところでございます。
 それぞれの審議事項につきましては、2にあるとおりでございます。法制問題小委員会につきましては著作権法制のあり方、私的録音録画小委員会におきましては私的録音録画に関する制度のあり方を議論していただくということでございます。議論の視点といたしましては、先ほど中山主査、または文化庁次長からも話がありましたとおり、抜本的な形で制度について検討するということでございまして、この私的録音録画に関する制度のあり方をご議論いただくということでございます。なお、法制にも絡むわけでございますけれども、基本的には私的録音録画の法制をどうするかは、この録音録画小委員会のほうで検討いただきまして、またかなりの方々には法制問題小委員会の委員とも重なっておりますので、必要に応じて調整を図っていただくということでご議論をしていただければ、大変ありがたいと思っております。
 そして、この委員会の審議予定についてでございますが、4をお開けいただければと思います。現時点におきまして抜本的にということでございまして、具体的な筋書きといいますか、そういうものがあるわけではございませんので、審議予定とありますけれども、大変漠然としたものになっております。本日は4月6日、第1回目でございますけれども、「検討の進め方」について、あるいは「各委員から自由にご発言をいただく」という形でお進めをいただきたいと思っております。そして5月17日以降は課題をある程度整理しながら検討を進めていくという形にしていただければと思っておりまして、できれば月1回程度のペースというような形で検討していくということになるのではないかと思うわけでございます。また、大きな課題があるということになりました時には、課題ごとにワーキングチームを設置いただきたいと考えるわけでございますけれども、そうしたところで適宜検討していただくということになろうかと思います。そして8月の下旬頃には著作権分科会が開催予定でございますので、審議の経過を報告いただくということもしていただきますし、また著作権分科会の報告書が年末に出されますけれども、そこでも審議の経過を報告していただくなど、適宜親委員会であります分科会のほうに状況をご報告いただくという形で運営をしていただければと思っているところでございます。そして平成19年中には結論をということでスケジュールを定めさせていただいておりますので、来年の秋、9月頃までには報告書案、これをまとめていただきまして、著作権分科会に報告をいただき、意見募集をした後、最終的には来年末までには著作権分科会報告書、この中に結論を盛り込む。そのような形で議論が進めるということを念頭に置いてご議論いただければと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。

【中山主査】 ありがとうございました。ただいまの審議予定(案)につきまして、何かご意見があれば伺いたいと思います。私的録音録画問題の内容、それ自体については後から集中的に議論いたしますけれども、この審議予定(案)につきまして、何かご意見、ご質問ございましたらお願いいたします。この予定(案)はこれでよろしゅうございましょうか。
 それでは、今後の検討課題の審議に入ってまいりたいと思います。私的録音録画補償金制度の見直しにつきまして、昨年度の議論、検討課題、今後の検討の進め方に関しまして、事務局から説明をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 それでは、ご説明をいたします。今年の3月1日に著作権分科会が開催されまして、全体の討議がスタートしたわけでございますが、そこにおきまして資料5をお開けいただきたいのですが、私的録音録画にかかる意見も出されましたので、その概要をおつけいたしました。
 まず、現行制度自体がクリエーター、メーカー、ユーザーの絶妙なバランスをとった制度であるというご発言、デジタル化ネットワークの中で文化振興という視野をしっかり持って議論していただきたいという意見がございました。
 また、現在の動向を見ていると、ユーザーの利益に比重が置かれている。知的財産立国を標榜するということであれば、クリエーターの利益も重く見ていただかないと文化の再生産につながらないのではないか。クリエーターの顔も見ながら議論していただきたい。そのような議論があったところでございます。
 そのような議論を踏まえまして、今後見直しをどのような形で進めていくか。論点の整理とまでは申しませんけれども、状況につきましてご説明をさせていただきたいと思います。資料6をご覧いただければと思います。また、適宜資料7、8等も参考にいたしますので、お手元に出していただければ幸いでございます。
 補償金制度の見直しにつきましては、昨年度、ハードディスク内蔵型機器の追加指定、パソコン内蔵・外付けのハードディスクドライブ、データ用CD-R等汎用機器の取り扱いについて、政令の個別指定方式について検討いただいたところでございました。
 これらにつきましては、23につきましてはなかなか難しいものである。また、1につきましては、基本的には指定はしないけれども、今後抜本的に検討をする中で適切に検討ということでございました。
 そのようなことから、抜本的な検討をしなければならないということで、本委員会でご議論いただくわけでございますけれども、今後の検討の方向につきまして報告書で掲げたところにつきましては、この資料6の1ページ目の下のほうのパラグラフのところをご覧下さい。
 「また、上記の結論を踏まえ」とございますが、括弧書きで引用してありますように、「私的録音・録画についての抜本的な見直し及び補償金に関しても、その廃止や骨組みの見直し、さらには他の措置の導入も視野に入れ、抜本的な検討を行なうべきである」と、このように書かれているところでございます。
 そして、その見直しにつきましては、平成19年度中には一定の具体的結論を得るよう、迅速に行なう必要がある」というふうにされたところでございました。
 また、検討に当たって留意すべき点を掲げられているところでございます。これをアとイと分けて書かせていただいておりますけれども、まずアについてですが、国際条約、それから国際動向との関係に留意を払って、権利者の利益が不当に害されると認められることのないよう留意する必要がある。これが1点目としてございますが、またイとしましては、ユーザーにとって利用しづらいものとならず、かつ納得のいく価格構造になるよう留意する必要がある。また、プライバシーにも十分留意しなければならない。このようなことが留意点として掲げられたところでございます。
 また、さらに消費者の理解向上のための広報等の強化、共通目的事業の再検討など、運用上の課題につきましても指摘がなされたわけでございます。
 本小委員会におきましては、議論は昨年度のこの検討、これを十分踏まえた形で検討いただくということが必要であるということでございますので、ここで紹介をさせていただいた次第でございます。
 それからこの小委員会におきまして検討、これに留意すべき点につきまして書かせていただいておりますけれども、これについてもご説明を申し上げたいと思います。
 留意すべき点といたしましては、まず私的録音録画をめぐる実情の変化というものがあろうかと思います。資料の9をご覧いただきたいと思います。
 この資料の9は私的録音録画補償金制度の創設の経緯を示しているものでございます。1つ1つの説明は省略をさせていただきますけれども、著作権法第30条制定に関わる議論、それから第5小委員会、第10小委員会というようなところの議論を経まして、現在の補償金制度が導入された経緯が書いてあります。
 そして最終的に導入を決めたものが第10小委員会、著作権審議会の第10小委員会でございましたけれども、その結論部分は3ページ目にございますので、これをご覧いただきたいと思います。アンダーラインが引いてあるわけでございますけれども、私的録音録画を総体として、量的な側面からも、質的な側面からも、著作権者の利益を害している状態であるというような判断が当時なされているわけでございます。
 そして国際的動向についてでございますけれども、先進諸国の体制としては、私的録音録画について何らかの補償的な措置を講ずることが大きな流れとなってきている。だからベルヌ条約の関係規定に示された国際基準との関係において、何らかの対応策が必要であることを示しているというような結論でございますが、そうしたことから現在の制度が導入されたわけでございます。
 現在留意しなければならないのは、ここで示されていたような録音・録画の実態でございますけれども、それが現在どうなっているのか。導入する時には非常に権利を侵害しているような実態であるということでありましたけれども、もし仮に現状がそれほどでないのであれば、果たしてそういうような制度的なものは維持すべきなのかということが議論になってくるわけでございます。そうした実情の変化というものによく留意をしなければならないという点があろうかと思います。
 実際に利用の実態でございますけれども、ビジネスモデルも変化をしております。これがどうなっているかも重要な観点かと思います。
 また、当時あまり普及をしていなかった技術的保護手段、これが広まっているところでございます。複製の実情あるいはビジネスモデルの変化とも関連をいたしますけれども、その普及状況にも留意をする必要があろうかと思います。
 また、さまざまな経緯を経て、実際に私的録音録画補償金制度が発足したわけでございますけれども、発足以降現在に至るまで実際にさまざまな機能を果たしているわけでございます。そうした機能を、これから先どういうふうに考えていったらいいのかという観点もやはり必要ではないかと思いますので、そこも留意すべき点があろうかと思います。
 また、さらに諸外国の制度の導入の状況、国際条約や国際動向という形でも論点がありましたけれども、こうした状況についても留意をする必要があろうかと思います。その後どういうような国々で導入をされ、また近年どういう見直しがなされているのか。それにつきましても、必要だということでございます。
 このような留意すべき点を考えながらご議論をいただくということになろうかと思います。そうしますと、今後検討はどういうことをポイントとして検討しなければならないのか。それを書かせていただいたものが、3の今後の検討事項でございます。
 まず1番目といたしましてはさまざまな留意点があるかとは思いますけれども、そうした点を踏まえて、今後わが国において、私的録音録画に関しまして何らかの制度的な対応をとることが必要なのか、どうなのか。これを改めて検証する必要があるのではないか。これが1点目でございます。
 そして第2点目といたしまして、仮に何らかの制度的な対応を行なう場合には、私的録音録画補償金による対応、あるいはその他の手段による対応があると思いますけれども、昨年、法制問題小委員会で私的録音録画補償金制度につきましてはさまざまな問題点も指摘されたところでございます。そういうような指摘を踏まえまして、具体的にどういうふうに考えていくかということが議論になってくるかと思います。
 昨年、どのような問題点が指摘されたかにつきましては資料7がございますので、これをご参照いただければと思います。50ページ以下のところに問題点は書いてございます。(2)のアの指摘された制度上の問題点というところ以下でございます。
 指摘された制度上の問題点といたしましては、実際に録音録画を行なわない者も負担をするということになっていて、返還金制度も機能していないということが指摘をされました。
 また、汎用機器があるわけでございますが、それらには補償金はかけられないけれども、実際にはそこで多数の複製がされている。ここのところをどう考えるかというような問題もございました。
 また、分配がなかなか難しい。配分を受けることができない権利者が生ずるということも、問題点として指摘をさました。
 また、二重徴収についても議論があったところでございまして、当たるとする意見、当たらないとする意見、双方があったわけでございます。
 そして指摘された運用上の問題点として、制度が消費者に知られていない。先ほどの繰り返しになりますが、制度的な返還金制度が機能していない。共通目的事業が十分知られていない。こうした点が指摘されました。
 また、現在の補償金制度の前提となる状況の変化、これも指摘をされたところでございます。これは私的録音録画が零細であって、捕捉が困難であるということを前提に現在の補償金制度が導入されているけれども、DRM等の技術の進展により実情の捕捉可能となりつつある。したがって、現在の制度を正当化する根拠が失われたのではないか、そういう議論でございました。
 こうしたような議論が現在の補償金制度において指摘をされているということを踏まえて、補償金制度による対応というものはどういうふうにするべきなのか。あるいはDRMということで捕捉が可能ということであれば、そちらの対応ということも可能かと思いますけれども、それが具体的に可能なのかどうか。可能であるとすれば、それはどのような制度であるのか。これらを12という形で分けましたけれども、ご議論をいただくということが中心になるのではないかと思うわけでございます。
 そして先ほど、ワーキングチームをというようなこともスケジュールの中に書いてありましたけれども、18人のメンバーの方々にこれからご議論をいただくに当たりまして、毎回多くの方々が集まるのは困難ということであれば、例えば運営上の工夫といたしまして、12それぞれにワーキングチームを作って、臨機応変に機動的に運営をしていくということも可能ではないかと思いますけれども、そのような形でご議論を進めてはどうかということも提案といいますか、ご説明の中でさせていただいたわけでございます。説明といたしましては以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。前期の法制問題小委員会の議論、それから検討課題、今後の検討の進め方についての説明を受けたわけでございますけれども、本日は第1回目の会合でございますので、検討事項なども含めまして、すべての問題について自由なご発言を頂戴したいと思います。60分程度時間をとってございますので、どなたでも結構でございますので、ご発言がございましたらお願いいたします。
 はい、どうぞ生野委員。

【生野委員】 検討の進め方に関してなのですが、この小委員会で検討することに関連して、法制問題小委員会で「私的使用目的の複製の見直し」に関する検討がテーマとして挙げられていると思うのですが、ここで検討する事項というと、当然、30条1項との関係を抜きに考えられない。この辺のやりとりといいますか、どういう形で検討されるのか、教えていただきたいのですが。

【甲野著作権課長】 ここは私的録音録画ということでございますので、録音録画に関してご議論いただければと思っております。また、私的複製の範囲についてということが今後検討すべき事項として、分科会が決められたものの中にありますけれども、そこは例えば30条の中でベルヌ条約に書いてあるような限定を加えるのがどうかというような、複写その他全般を含めて、関する私的複製についてがテーマでございましたので、そうしたものにつきましては法制問題小委員会で検討していただくということになろうかと思います。
 ただ、両者は非常に重なりますので、こちらでの議論は適宜法制問題小委員会のほうにも反映した形で、これから先連携をとって議論していただければと思っております。
 いずれにいたしましても、こちらのほうは私的録音録画ということで集中してご議論いただいてということでいかがと思っております。

【中山主査】 よろしゅうございますか。ほかに、亀井委員。

【亀井委員】 今の甲野課長のご説明の確認でございますが、先ほどの昨年度の法制問題小委の報告にもございましたけれども、技術的な手段によって、この制度の前提が変わってきているという認識がございますけれども、30条1項2号にございます技術的手段を回避した場合に私的複製を適用したいということと、それから補償金のこの制度自身の30条2項の問題というのは、やはりかなり密接に関わるものだというふうに認識を私どもしております。
 そうして考えました時に、今のご説明で、ここでは私的録音録画のことをという、それは私的録音録画という切り口で見た30条の問題というふうなとらえ方をしても構わないということですか。その理解でよろしいですか。

【甲野著作権課長】 ここは私的録音録画、複写等ではなくて、録音録画の部分でございますので、それについてここでは集中してご議論いただければというふうに思います。

【中山主査】 ほかにご意見ございましたら。どうぞ。

【河野委員】 電子情報技術産業協会の河野でございます。今のご確認された項目を受けてということで、そうであるのであれば、制度導入当時からの状況の変化の中で一番大きいと思いますのは、やはり技術の進展している点だと思います。技術が進展していることによって、私的な領域において利用が拡大しているという側面ももちろんございますし、一方では技術を使って利用が非常に、ひょっとしたらそもそも著作権法が当初想定していた範囲よりもコントロールがされすぎていることがあるかもしれないという問題もあるかと思います。このようなところについては、海外諸国でも課題が提起されているところでございまして、その両方をにらんだ時に、そもそも30条が想定していた範囲と現在技術を使ってコントロールされている範囲がどういう関係にあって、具体的には私的な領域で行なわれる技術的保護手段がかかっている複製というのは、法的にどういう位置づけになるのだろうかというところを、ぜひ議論をさせていただきたいと思っております。
 その上で、それと補償措置との関係ということが議論できれば、冒頭主査のほうからありましたように、コンテンツ流通が促進されて、かつ新たな創造サイクルにつながっていくためにどういうふうにしていけばいいのかということが、前向きに議論できるかと思います。

【中山主査】 これは当然法制小委のほうとダブるのはやむを得ないですね。そこら辺もにらんで、録音録画を中心に、そちらをにらみつつ議論するということにならざるを得ないと思いますけれども。
 ほかにご意見ございましたら。進め方以外に内容についてでも結構でございます。
 あまり重大すぎてなかなか発言が慎重になっているのかもしれませんけれども、初回でございますので、どうぞ何か意見ございましたらご自由にお願いいたします。

【椎名委員】 意見というほどの意見になっていないかもしれないのですが、昨年まで法制問題小委員会でポイントだったのはi-Podというところに焦点が集中しまして、i-Podを課金するのはどうかというふうなことで議論が展開されたかと思います。
 しかしながら、それが見送りになって、この小委員会ができたということで、この小委員会の使命というのはどういうところにあるかというところを自分なりに整理して考えてみれば、この制度の問題点というのは何もユーザーさん、メーカーさん側から見た問題点だけではなく、権利者側からの問題点というのもございまして、必ずしも制度が私的録音が行なわれている実態に伴っている制度ではなかったということが、最終的にi-Podというところに焦点が当たってしまい、それへの課金の妥当性がどうかというところの議論になってしまったと思うわけです。
 この整理にも書いてありますとおり、私的録音が行なわれていることが権利者にどのような影響を与えているかということを総合的に判断して、制度の設計をし直す案になればいいなというふうに思っております。ちょっと雑感という感じなのでが、すみません。

【中山主査】 はい、ありがとうございます。ほかにご意見ございましたら。どうぞ、佐野委員。

【佐野委員】 意見は次回から申し上げます。進め方の中の1つとして、今いろいろな技術の進展についてお話がありましたが、どのような形でいま技術が発展しているのか、またどんな使い方をされているのかなど、いろいろあるようですので、ぜひ共通認識を持った上で議論をしていきたいと思いますので、ヒアリングを最初のうちに何件かできたらいいなと思います。

【中山主査】 その点はいかがでしょうか。

【甲野著作権課長】 委員全員に共通する知識といいますか、認識といいますか、それが必要かと思いますので、その辺をよく考えてアレンジをしたいと思います。

【中山主査】 ヒアリングの後、資料がありましたら、それを各委員にお配りしていただければと思います。ほかに何かございますか。
 今日は意見が多すぎて、予定時間に終わらないのではないかと思って危惧をしていたのですけれども、何もないわけですか。どうぞ。

【甲野著作権課長】 ちょっとよろしゅうございましょうか。事務局のほうからこういうことを申し上げるのもいかがとは思いますけれども、せっかく今回は全員の方がご出席でございますので、まだいろいろ去年の議論を外から眺められた方もいらっしゃると思いますし、またいろいろな形での当事者としてのこれまでのご経験とか、お考えをお持ちかと思いますので、それぞれの方から少しずつなりとも何か思っていることですとか、期待ですとかをおっしゃっていただいたほうがいいのではないでしょうか。われわれもまたそれを踏まえて準備もさせていただきたいと思うのですが、いかがでございましょう。

【中山主査】 そうですね。次回の準備をするためにも何も意見がないというのではあれですので、もしなければパスでも結構ですので、じゃあ荒巻さんのほうから一言もしありましたら。

【荒巻委員】 荒巻でございます。私は、放送事業者の一員、ひとりでございます。私どもがお話できる話は、特に私的録画に関わるものでございますけれども、考えます時に、当然のことながら視聴者、ユーザーの方の利便性、それと放送番組は、よくいわれておりますように、非常に多くの権利の集合体でございますので、クリエーターの方への利益還元、ここのバランス、これが本制度との関係において、制度の見直しの上でも一番いい形でバランスがとられていくというような方向で議論を進めていただければ、というふうに考えております。

【中山主査】 はい。じゃあ井田さん。

【井田委員】 記録メディア工業会の井田と申します。メーカーサイドなのですけれども、メーカーとしても、当然コンテンツあっての機器・メディアということでございまして、コンテンツ、著作権者というものは非常に大事という考え方にはまったく同感で一緒でございます。
 ただ、この制度ができ上がった当時、最もバランスがとれているというふうに先ほどありましたけれども、当時はそうだったと思うのですが、その後、いろいろ技術が進んで、私どももいかに著作権を保護するかということで大変沢山の人と資金を投入しながら、さまざまなそういう技術を開発してきているわけですけれども、そういう技術を使いながら、最もユーザーにとっても、そして著作権者、権利者の方々にとっても合理性のある形を新たに見出せないかなという、そういう具合にできたらと考えております。以上です。

【大渕委員】 東京大学の大渕でございます。研究者としての立場からいいますと、中山先生が先ほどおっしゃっていましたけれども、煎じ詰めていいますと、結局権利者の保護と自由利用の促進という、2 つの相反するものについてどこでバランスをとっていくかという非常に難しい作業でありまして、知的財産法のいろいろな論点の議論で最後に行き着くところなのですが、このような非常に難しい応用問題ということがこの委員会で検討すべき内容ではないかと思っております。この両者のバランスを考えていく上で、いろいろな方々のご意見等を伺うということを通じて、どういう形でバランスをとっていくのが一番よいのかという点を検討することになろうかと思います。
 そして、そのような難しい論点であればあるほど、議論の前提として資料をきちんと備えていくということが非常に重要であると思われます。その観点から、先ほど出ておりましたように、技術の進展状況等、現状がどうなっているのか、当時からどのようなことがあったのかという技術面、ないしは、ビジネスモデルという経営的なものなども含めての実態がどうなっているのかということを共通認識として持つということが、極めて重要だと思います。それと同時に、論点としては私的録音録画なのですが、ほかの論点、つまり私的録音の問題ですとか、技術的保護手段の問題その他非常に難しい問題と密接に絡み合っておりますので、法制問題小委員会とのデマケーションはまた別途考えるにしても、それらを視野に入れず解決することはできないと思います。
 また、やはり日本国という一国の新しい制度を考えるに当たっては、抽象的に考えるというのも1つのアプローチの仕方だと思いますが、各国でも、いろいろな形でこの問題に対処していこうとして、理論を考え、かつそれを実践して、さらにその結果を見ながら調整するなどしていると思いますので、そのような観点から、主要国でどのような形でこれを対処しようとしているのか、実際それがうまくいっているのかどうか、運用上どのような工夫をしているのかなどについての資料を出していただくと、議論が抽象論にとどまらずに、現実的にどのような形で行うのが一番よい結果をもたらすのかというところにつながってくるかと思います。
 事務局にあまり多大なご負担をおかけするつもりはないのですが、前向きにこれらの点について資料を整えていただければ、この委員会での議論も非常に実りのあるものになると思います。意見というよりも希望表明になってしまいましたが、以上です。

【華頂委員】 日本映画製作者連盟の華頂といいます。よろしくお願いします。
 権利者、ソフト、それから機器のハード、両方のバランスをとっていくに当たっては、やはり究極のコピーコントロールが構築されることが非常に望ましいと思いますけれども、実際、権利団体でそれが可能なのかどうか。これはやはりヒアリングを通して、われわれも今の現状を把握しつつ、去年からずっといわれております単語が「二重徴収」とか「二重課金」という問題なのですけれども、そこら辺をヒアリングを踏まえた上で、その意味を明確にしていければ、ある1つの答えが見つかると思うのですが、以上です。

【亀井委員】 電子情報技術産業協会の亀井でございます。先ほどご質問させていただきましたように、いま大渕先生からもありましたように、この問題は私的複製あるいは私的録音録画そのものの30条1項のあり方の変化といいましょうか。そういうところに非常に関わる問題だというふうに理解をしております。非常に今回の機会は、委員の先生方からご指摘があったように、変わりつつある中でどうバランスをとっていくかという議論で、非常に難しいという認識をしております。
 必ずしもIT、技術というものが文化振興と二項対立にあるわけではなくて、むしろ技術も文化の1つだというふうに考えておりますし、技術を使って利用者、ユーザーがいかにバランスをとっていただくかということだというふうに思っておりますので、前提となる部分というもの変化、実態をきちっと共有をさせていただいた上で議論をさせていただきたいと思います。

【小泉委員】 慶應大学の小泉でございます。私は昨年度の法制小委員会にも参加させていただきまして、私の考えは今日配られた資料の7の50ページ、51ページ辺りの検討結果にだいたい反映していただいておりますので、満足しております。
 この制度は、平成4年に導入された時点ではかなりバランスのとれた制度だったと思うのですが、十数年たちまして、いわゆるDRMによる個別的な課金が可能になってきているので、このままどんぶりで取るのは社会的にもう簡単には受け入れられないのではないか、旧来の制度をそのまま横滑りで内蔵型にも適用するのは様子を見たほうがいいのではないかと考えた次第です。そその考えは変わっておりません。その点で、今年度、来年度と2年間じっくり様子を見るということは、大変結構なことだと思っております。じっくり考えたいと思っております。
 私の意見は、現行の制度にはそれなりの利点があり、今回問題となっております新たな対象に拡大すべきではありませんが、既存の対象には従来どおり課金し続けてよろしいというものです。制度の全廃論ではございません。
 この二年間の検討において、かりに、現行制度にかわる素晴らしい課金のアイデアが紹介されたとしましても、その採否は、法律とか政令で決めるというのでなくて、マーケットに任せればよいのではないかなというのが私の立場であります。
 それから諸先生からヒアリングの話が出ておりますけれども、昨年ちょっと一つ心残りでしたのは、新たな課金対象の候補であった有名なサ−ビスが、具体的にどのようなDRMが施された形で行われているのか、うかがう機会がなかったことです。今年は、それらの方々にも明示的な形でヒアリング等していただければ、実りある議論ができるのではないかなと思っております。以上です。

【河野委員】 電子技術情報産業協会の河野と申します。先ほどお話をさせていただいておりますので、皆様の繰り返しになってしまうのですけれども、制度導入当時と違っているというのは、多分もう1つくらいあるのかなと思っておりまして、昔はコンテンツと記録機が非常にダイレクトに結びついていた。即ち、お客様がお買い求めくださったCDを、その中からお気に入りの局をMDに集めてといったような、非常にコンテンツと記録機の流れが結びついていた。そういう状況の中で、この制度は非常に意味を持っていたのだろうというふうに理解をしています。
 昨今、端末機器、端末という言葉に非常に顕著に現れているように、流通形態も非常に多様化しておりますし、ビジネスモデルも多様化してきております。そういった中で、その中に組み込まれている私的録音録画というものがいったいどういう位置づけになっているのかということについて、ここにいる委員の皆様が共通認識を持って議論するということが、建設的な議論をするためには非常に意味があるのではないかというふうに思っておりますので、先ほど事務局のほうから??ランディング??というお話が少しございましたが、でき得れば、しばらく共通認識を持つために、小委という形で議論をしていくのがよろしいのではないだろうかというふうに感想を持ちました。以上です。

【小六委員】 日本音楽作家団体協議会の小六でございます。こんな肩書がついておりますが、私自身は作曲家でございまして、クリエーターというものの代表なのかどうかはっきりわかりませんが、そちらの立場からということです。
 意見概要に書いてあります、私の言いたいことはこれとまったく同じで、知的財産立国を標榜するなら、クリエーターの利益のほうも見ていただきたい。この一言に尽きる。もちろん、それを実現するためにどのようにしていくかというお話だと考えておりますが、この数年、この制度をずっと見てまいりまして、感じることは、私たちも使用者であり利用者であり両方の立場を持っているということです。
 ですから、絶対コピーしちゃいけないとか、あるいは、権利確保のためには全て逐一課金してくれというようなことを、考えてはいません。なぜならば、それをすると不便になる。私たちそのものが不便になってしまうからです。
 私たちが革新的技術を大いに利用して、なおかつ新しい文化を創造していこうと思っていることは間違いないのです。ただ、その時に、先ほどどなたかおっしゃいましたが、この問題が相反するというふうなとらえ方をしていくのは、僕は間違いではないかと思います。私の立場でも、この問題を利用者と著作権者ですか。相反するという形を持っちゃうと、どちらかが利益を得なければいけないという立場になってしまいます。両方とも利益を得たいと思うような形で考えられたらばと思うのが、アナログ人間の私でございます。
 それでいろいろな制度を考える時に、リアルエンドの問題で非常に個別に課金できるとか、すべて細かく全部データをとって、それによって何かができるであろうということは、そのようにできるかもしれないとは思っておりますがしかし、私は自分でやっていることから考えますと、究極的にそのようなことがすべて100パーセントできる世の中には絶対ならないという考え方も持っています。
 そうしますと私の思えることは、言い換えてみますとデジタル的どんぶりといいますか。そのようなものが著作権の中には必要なのではないかということです。それを実現化させるにはいったいどうしたらいいかというのが問題であり、このような中で細かく考えていきつつも、なおかつ大きなところから考えて、両者の利益を1つにするというふうな方向に進んでいければいいのかなと、このように考えております。

【佐野委員】 主婦連合会の佐野です。報告書の一番最後、今日配付された資料7の55ページにありますが、消費者への理解に努めるというふうに書かれています。
 ここに書かれているように、消費者はほとんど知らないまま課徴金を払ってきました。それで今、この抜本的見直しの中で、やはり機器を買うだけで、つまり機器に対して課徴金を払うというのは、今これだけ契約社会であるのに理解できない。やはり配信サービスなりそのサービス、または複製する時に、そのサービスの対価を払うというほうが分かりやすい。私たち消費者にとっては利用するごとに払っていくというほうが理解できると考えています。
 それで先ほど申しましたように、いったい今、どういうふうな技術の進展があるのか、どのような形で課徴金制度ではない方法で権利のある方々に分配できるかというところをきちんとこれから2年間かけて検討していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【椎名委員】 芸団協の椎名でございます。クリエーターという言葉はあまり好きではないのですが、一応僕はギタリストでございまして、かつ私的録音のヘビーユーザーでもございます。そういう立場から、何か去年1年のハードな日々を思い返すと、このなごやかさは何なのだろうと思うのですけれども、ひょっとしてこういう形のテンションの中でいろいろなことを話していくと、意外にいい結論が出るかなと、今ちょっと思っています。
 DRMの検討というところでも、現行制度に対するDRMというふうなことでさまざまプレゼンが行なわれたわけですけれども、中身の話にまではちょっとなってないと思うのですね。「こんなものもある、あんなものもある」みたいな感じで終わっちゃっていると思うし、その中身も僕らも見てみたいと思います。
 やっぱり、どこかしら現行制度とそういうものがオーバーラップして動いていくようなことなのではないかと、おぼろげに思っているのですけれども、そういう中身の話をぜひですね。互いに背負った教条のようなものがあって、その教条に従って議論し合うというものではなくて、きちんと中身を作り出すようにしたい。せっかく2年というスパンがありますから、これはちょっと本腰を入れてやるのだろうなということで、できるだけ気分をリセットしておきたいなというふうにいま思っています。
 それとさっき外国の話が出たのですが、実は、サーラとサーブで外国実態調査をやるようです。そういったものもきっと持ち込めるのだろうなというふうに思っています。以上です。

【津田委員】 どうも津田と申します。僕は普段雑誌や新聞などにITと音楽が組み合わさった時にどういった問題が生じるか、そういったことを解説する記事を書いています。
 今回こういった場に呼ばれることになりまして、私としては物書きという立場でも語ろうと思いますが一方で僕は一消費者でもあるので、そういうネットに詳しい消費者がこういった問題に対してどういうことを思っているのかという、2つの立場で議論に参加させていただければなと思っています。
 1つ、今回消費者の立場でこの問題に対して全体的に思うことでいうと、まず消費者にとっては音楽CDですとか、音楽であればCD、映画でありましたらDVDを購入した時点で、それに対して聞く権利、視聴できる権利とを買った感覚になっていると思います。
 当然、買った音楽というのはどのように楽しんでもいいというのが消費者の感覚でしょうし、当然その買った音楽であれば家でも聞きたいし、車のカーステレオでも聞きたいし、当然i-Podに転送して聞きたいというのが当然な欲求になっていると思います。最初にお金を払った時点で、コピーして聞く、自分のために聞くために買っているというのが、多分当たり前の感覚としてはあると思います。ただ、現実としては今はコンテンツに何らかの技術的保護手段がかけられてきてますし、そういったものが技術が進化している時に全体的な潮流になっている時に、それは録音補償金制度に限らないのですけれども、そうした消費者の聞きたい欲求を制限する方向に業界が流れすぎてしまうと、逆に消費者の感覚からすると自由に聞けない、自由に視聴できない映画というのは、別にそんなもの買わなくていいやという感覚になってしまうのではないかと僕は思ってまして、それで結果的に売り上げが落ちてしまうのは、コンテンツ業界にとっては実はよくないことではないのかなというのが、こういったこの制度とか議論において感じている全体的なことですね。
 あと、もう一方思うのは、補償金問題に関していうと、補償金制度そのものはコピーを制限するものではないですから、消費者からみた時に聞きたい欲求を制限するものではない。逆にそういう意味でいうと、制度が作られた趣旨とは反するかもしれないのですけれども、一定の安価な料金、補償金みたいな形で支払うことで、消費者の聞きたい、視聴したいという欲求に対してある種の担保が与えられるのであれば、もしかしたらこの私的録音補償金制度みたいなものも、実は消費者にとっても利益があるものになっていくのではないかなというふうに個人的には思ってまして、それがすべての回答だとは全然思わないのですけれども、そういった視点の議論というものがあってもいいのかなというふうに個人的には思っています。以上です。

【土肥委員】 土肥でございます。昨年以来この委員会におりまして、改めて報告書を拝見していますと、確かに少数意見であったな、と認識しているところであります。。
 それで、この資料6の辺りのことを拝見しても、報告書でまとまっていることを前提に蒸し返しをしないようにという最初の話もありましたので、どういうふうにこの1年間発言していいのかなと思っております。先ほど来から技術的制限手段、DRMというものがあるのだ。これによってアクセスやコピーを完全にコントロールできる、こういう指摘があったと思うわけでありますけれども、そもそも著作物をマーケットに置く時に、そういうカギをかけておかなければならないのかどうかというのが、著作権法のどこに書いてあるかという問題があるのだろうと思います。
 その義務がマーケットに置く時にあるということになるのか、あるいはやっぱりそれはそうではない、自転車をカギをかけずに置いておいたら、それを取ったほうが悪いのか、取られたほうが悪いのか。こういう話になるのだろうと思うのです。
 しかも実態としては、今のCDというのはそういうものはかかっていないわけでありますから、現実論から考えて、今から先にマーケットに出てくるコンテンツについてDRMがかけられる、そういう可能性はあるのかもしれませんけれども、今まである、これだけのソフトに対してコンテンツについて、今から先DRMがかけられるのだから、これについては保護の視野の外に置いてもいいはずはないはずであります。
 補償金請求権というものについて、消費者の観点から、利用者の観点から意見が出ているわけでありますけれども、私の大学にちょっと変わった制度が過去にありまして、一橋大学の場合かなり広くはないのですけれども、端から端まで結構あるのですね。それでボランティアで学生が放置していった自転車を管理して、校内は誰でも乗っていい。その代わり、その管理に関しては学生の費用で、恐らく学生課辺りの費用で担保して、パンクをすればそれを直す。あるいはそういうマークをつけて管理をしているのだと思うのですけれども、そういう自転車を誰でも利用できる。間接的にいえば全ての学生はコストの負担をしていると思うのですが、自転車に乗れない学生も当然いるわけでありますし、乗れる学生だってちょうどお尻にできものができている時は乗れないわけであります。
 それをそういう制度が便利なのか、あるいはカギをどこかににいちいち借りに行って、その許諾を得て、そして自転車のカギを開けて自転車に乗るのが便利なのか、これはよく考えてみられたほうがいいのではないかなと思うわけであります。
 補償金請求権制度というものについて、DRMとの関係でかなりこの制度が時代遅れのようにいわれ、利用者、消費者の利益に反するようなことがいわれるけれども、果たしてそうなのかなというのが、私が昨年来申し上げてきたところでございます。以上です。

【苗村委員】 苗村です。先ほど資料5でクリエーター、メーカー、ユーザーの絶妙なバランスをとった制度だという表現がありました。この補償金制度がよいものか悪いものかは別として、間違いなくクリエーター、メーカー、ユーザーの利益、意見というものを重視する必要があることは言うまでもないわけですし、さらにレコード製作者、それから放送事業者の意見も考慮した上で、バランスのとれた制度がどれなのだろうということを議論する必要があると思います。
 ちょっとそれを深く見てみますと、この中で特にクリエーターとユーザーが本来の利害関係当事者なのだろうと思いますが、一口にクリエーターあるいはユーザーといっても、多分いろいろある。先ほどヘビーユーザーという言葉が出ましたが、ここにおられる委員の方々は皆さん音楽並びにテレビ放送のユーザーであることは間違いないわけですが、ヘビーユーザーとそうでない方がいらっしゃる。クリエーターの中でも、その創作活動をもっぱらやって、それだけで生活を支えている人とそうでない人もいらっしゃる。その違いが、かなり大きなポイントであるように思います。
 私自身はもともと技術が専門ですので、どちらかといえばDRMで非常に低コストで、また完璧に近いものが作られて、それによってクリエートした人とユーザーの間で適正な対価が払われる仕掛けができるのは理想だと思いますが、残念ながら、現状、まだ先数年を見ても、そのような段階には至っていない、そういう状況です。
 そのために私的録音録画補償金をもし現状のまま継続するとすれば、それはある意味では相互補助制度のようなもの、いま土肥先生がおっしゃったこととも関係するのですが、これは決してユーザーがクリエーターを補助するとか、逆ではなくて、ほとんど使わないユーザー、或いはほとんどクリエートをしない方と、大量にクリエートをする、或いは大量に使うユーザーとの間で支払いをする。そういう制度なのだろうなと思っています。
 そういう意味で、クリエーター対ユーザーというよりも、大規模クリエーター、大規模ユーザー対小規模ユーザー、小規模クリエーターの間でどちらを選ぶかというのが、本来の論点ではないか。どうも従来、そういう議論は全然していないで、もっぱらクリエーターのためか、ユーザーのためかという議論をしていたような気がしますので、今度はその議論も加えていただきたいと思います。
 もう1つだけ申し上げますが、この審議会はほかの小委員会、ほかの審議会の委員会と同じように公開されてますが、多分今日傍聴に来られた方を含めて、この議論の内容を理解されている方が広く議論を広めていただいたほうがいいのではないか、という感じがいたします。この委員会の場では、当然先ほどお話のあった、ヒアリングを含めていろいろな立場の方のご意見を伺うわけですが、多分それ以外に沢山の方がこのことに関しては当事者といいますか。利害関係者ですので、いろいろな場で議論していただいた結果を多分正式のルート、あるいはその他の形でこの委員会のメンバーの皆さんも参考にされることによって、将来あまり判断を間違ったといわれないような方向ができるのではないかというふうに思います。

【生野委員】 日本レコード協会の生野です。昨年の法制問題小委員会のいろいろな議論を聞いておりまして、私的録音録画問題を技術プラス契約で解決するという、将来的なあり方については、ほとんど皆さん違いはなかったのかなと思っています。ただ、それに至るまでのプロセスをどうするのか、どう解決するのかという方法論の部分で考え方の違いがあった。
 いかにもDRMがいま普及していて、これで解決できるというような話も出たように感じたのですが、実態的には、DRMが機能しているのは音楽配信の部分だけで、これはレコード全体の売り上げの1 割にも満たないような状況であり、売り上げのほとんどを占めているCDというパッケージに関しては、まったく機能していない。では、近い将来、これが何かしらの技術できちんとコントロールできるかというと、なかなか見えない状況で、近い将来においてどこまで可能なのかというところの共通認識が少し違って議論されていたのかなと。先ほど共通認識を得るために云々という話がありましたけれども、ぜひそこら辺はお願いしたいと思っております。
 それと細かいことですけれども、DRMという言葉の使い方なのですが、ある方は課金技術を伴う権利管理機能という、音楽配信で使われているような技術で用いられており、これに対して、パッケージはSCMSという技術があるわけですが、パッケージに使われている技術はDRMなのか。そこら辺の認識がちょっと違っているのではないかと感じましたので、DRMといわれる場合、皆さんどういうことを対象にいわれているのか、ここら辺の定義をはっきりさせたほうがいいのかなと思っている次第です。以上です。

【松田委員】 まず、昨年私が出した意見を−−たいと申し上げます。私は現行のDRM、その当時ですが、その資料における権利処理がおおよそ1割−−−という、そういう報告があったと思います。当時の議論で、6年前のCDの売り上げが6年間で半減しているというデータもあったと思います。
 では、今どういうところの音源が内蔵型、ハードディスク内蔵型機器の中に入っているのかということを考えれば、予想するにかたくないわけです。もちろん、ちゃんと買ったCDから私的複製をしている。これはあると思います。それから、友だちから借りたCDから入っているかもしれません。それから、先ほどのDRMでも広い意味のDRMでカッティングをされているところから入っているものがあるかもしれない。これはしかし、音楽の音源からいうと、1割しかない。あとは違法サイトがあるわけです。違法サイトはなかなか−−できないという−−があります。
 こういう現状の時に、私はハードディスク内蔵型の録音機器を制限しないでいいのだろうかというふうに考えます。それはどうしてかというと、従前の指定されているメディアとの公平であります。これを指定しなければ、私はその公平を害するし、なおかつ現行法定されている法律にも基本的に反するだろうと思います。政令指定が具体的にされなければ、法的効力はありませんから。しかしながら、著作権法が用意した制度には反するのだろうというふうに考えています。したがって、基本的には指定すべきだという立場に立ちます。
 しかしながら、私はこれに加えまして、こういう意見を持っています。DRMがこれから先どんどんどんどん広がっていくのだというご意見があったと思います。そしてほとんどDRMになって処理できるのだから、今の現行制度はいらないのだ、過渡的なのだからというふうにいわれました。なるほど、それであるならばそれに期待したいなというふうに思いました。
 しかしながら、いま言いますように、審議の時には音源の売り上げの1割がDRMで処理されたところでしかなかったわけですから、それはちょっと今やめちゃうというのは具合悪いのではないかなというふうに思います。
 それで3年とは言わずに5年くらいのスパンで、DRMが8割くらいまで権利処理されているのかどうかということまで見定めて、そうしたら今の制度がなくなってもいいのではないかなと、こういう意見を持っております。
 その過渡的な段階においては、オール・オア・ナシングではなくて、配分をどうするのかということをもう1度見直したらいいのではないですかということも含めて意見を述べました。しかし、この意見は制度を維持しながらも、なおかつ若干こういう調査だとか、新しいとか−−−コストのかかるという制度であることの欠陥を持っていることも承知しております。こういう意見をも述べたのも??事実です??。
 加えまして、一言だけ。著作権法がどっちに向かうのだろうかという。第1回目ですから何を言ってもいいわけですから。確かに著作権法って私的な権利にしておいて、権利行使するかしないかで事を決めると、これはある意味では公平なのですね。なぜかというと、権利者が権利行使するのもしないのも自由なのだから、権利行使した人については利益があって、権利行使しない人にとってはそれも1つの権利者の立場ですから、ある意味で公平なわけです。
 ところが、どうも著作権法の著作物の利用が私的な権利だけで構成できるのだろうかという問題を、私は常に感じております。??この制度??もある時期ではそういうことだったのだろうと思います。
 そうすると著作権法って文化発展に寄与してくれて、自らの作品を市場に置き、それをある意味ではさらけ出さなければならないアーティストたちのための何らかの権利の保障制度なのではないかというふうに考えられるのではないかと思います。私権で定めるのではなくて、制度を定めておいて、そして創作者、著作者の実質的な権利を守るための制度、これを提供するというものではないのだろうかというふうに考えています。
 それから、今度の内蔵型が指定されなかったことによって、いま何が起こっているかというと、従前指定されている人のアンバランスが生じています。これはもう顕著だと思います。これをどうするのかということを問題提起しないで、内蔵型だけ指定しなかったという結論を維持するのはいかがなものかと思います。 そうすると、どっちかですよね。全部指定しないという方向を考えなければならないかもしれない。これは制度の存続の問題の以前に、現行法の執行としてどうするかということを考えなければ本来いけないはずで、その論点もあると思います。それくらいにしておきましょうか。

【森委員】 民放連の森と申します。昨年度の議論にも私、関わっておりましたので、何が問題点になっていたのかというのもおぼろげながら記憶しておるものでございますが、昨年度の議論でこの委員の先生方にございましたのは、DRMが将来立派なものができるので、それによって誰がどういうコンテンツをどのくらい利用できるかということが明らかになるであろうから、より合理的な使用料金を取ることができるような制度ができるはずだから、それに期待したらいいのではないかという議論が昨年度からあったように私も記憶しておりますが、今日の議論の中でも何人かの委員の出たように、確かにデジタル化という技術は、そういうことをやろうと思えば今やできます。
 できますけれども、それによってシステム、コストはどんどん値上がるということも、また事実だと思います。したがって、私はこのシステムを考える時には、やはりそのシステムのもつコスト効果といいますか。そういうことも同時に議論した上でどうすべきかということを検討すべきではないかというふうに思います。
 そういう意味で、現行のこの、先ほどどなたかが「デジタルどんぶり」という言葉を使っておりましたけれども、案外そういったバランスのとれた1つの−−としてかなりもう定着しつつあるのではないか。したがって、そういったことをやっぱりベースにものを考えたほうが、より現実的な今後の答えが出てくるのではないかなというふうに、いま考えているところでございます。以上でございます。

【森田委員】 森田でございます。私も昨年度の法制小委に加わっておりましたが、昨年度の議論といいますのは、現行制度の基本的な骨組みは維持した上で、追加指定をするかどうかという形で検討がなされまして、その結果、もっぱら現行制度にはどういう問題点があるかという点に議論が集中したわけであります。しかし、私的録音録画補償制度というのは、それに問題があるから単に廃止してしまえばよいということではなくて、もし廃止するのであれば、それに代わる新たな制度をどういうものとして構築すべきかという点を検討することが必要になります。現行制度に替わるもう1つの対案が示されずに、現行制度の問題点ばかりを論じているというのは、本来あまりフェアな議論ではないような気がいたしておりましたが、昨年度は議論の土俵の設定そのものが追加指定の可否ということでありましたので、現行制度を前提にした議論にならざるを得なかったわけであります。本年度はそのような制約が取っ払われまして、抜本的な視点から考え直すということでありますので、広い視野に立って検討することができるよい機会になったのだろうと思います。
 その上で、先ほどから色々とご意見が出ておりますけれども、私的録音録画補償制度ができた当時と現在とで前提状況が大きく変わったのはDRM等の技術の進展があるというわけですが、これまでは、DRMを前提としたさまざまな個別課金制度というものが抽象的に語られるだけであって、それが具体的にどういうものになるかというイメージがまだそれほど固まっていない、つまり、現行制度に代わるものとして、現行制度と比較する対象というものがまだ具体的なイメージとして形成されていないように思います。この点が問題だろうと思います。
 DRMというのは技術の問題であることは確かでありますけれども、それに尽きるものではありませんで、DRM等の技術を前提とした個別課金というのはある意味で社会的な制度だと思います。仮に現行制度を廃止して、そちらのほうにシフトしていくとすれば、そこでいう個別課金制度というのはいったいどういうものになるのか。それを前提とした場合には、著作権法30条1項も含めまして、著作権法全体の法体系がどういうものになるのかという点をさらに詰めて検討しておく必要があると思います。そこで描かれるような新たな制度がよいのか、それとも現行の制度の中で工夫してやっていくのがよいのか。最終的には、ユーザーを含めたさまざまな立場の方がこの点についての判断をされて、こちらがよいという決断を下すことになるのだと思いますが、そのような決断の前提となるDRMを前提とした個別課金制度の中身がいまだ十分に詰められていないことが問題であると思います。
 検討期間は今期を含めて2年あるわけですが、2年というのはすぐに経ってしまいますので、DRMを基本とした制度というのがいったいどういうものになるのかという前提問題についてまずは集中的に詰めて検討していく必要があるのではないかと思います。この点については、DRMを前提とした個別課金というのは、ビジネスモデルの問題なので、それがどのようなものになるのかはマーケットの選択にゆだねておけば足りるという方もおられますが、私は必ずしも適切でないと思っておりまして、それが社会的な制度である側面がある以上、どういうものが望ましいのかということは検討すべき課題であり、さまざまな立場の方が参集されているこの場で議論するにふさわしい問題だと思いますので、その点についてまず集中的に議論すべきではないかと私は考えております。以上でございます。

【中山主査】 どうもありがとうございました。いろいろな意見を頂戴いたしまして、次回以降の参考にしたいと思います。著作物の範囲というのは極めて広いので、中には日記とか、あるいはある種のプログラムのように人に見せたくないとか、あるいは利用流通なんか予定していないものもありますけれども、大半の著作物はやはり利用されて意味があるわけで、利用されて初めて対価も権利者に還元するということですので、いかに利用を流通させて、そして対価をいかに還元させるか。その点については、多分コンセンサスはあるのだと思うのですけれども、問題は先ほどからいろいろ出ておりますとおり、技術の状態がどうなのか。保護手段の技術はいったいどういう状態にあって、将来どうなっていくか。あるいは一番大事なのはトランザクションコストがどのくらい下がるのか。あるいは社会全体のコストはどうなっていくかという点が重要だと思いますので、それは次回以降、いろいろな資料あるいはヒアリング等々を通じて共通認識を持って議論をしていただければと思います。
 ほかに何かまだちょっと時間がございますので、ご意見がございましたら頂戴したいと思いますけれども。
 よろしいでしょうか。それでは今日は幸いにも全員の意見を聞くことができましたので、それをもとに事務局のほうで次回の資料等を用意していただければと思います。
 本日はちょっと時間前でございますけれども、議論はこの程度にしたいと思います。次回は分科会での議論の内容を踏まえて、この小委員会の検討事項を整理するとともに、具体的な審議を開始をしたいと考えております。
 これで文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の第1回会合を終わりにいたしたいと思います。ありがとうございました。
 事務局から何か連絡事項がございましたら、お願いいたします。

【木村著作権課課長補佐】 恐れいります。次回の会議についてでございますが、すでにご案内しておりますけれども、5月の17日水曜日でございます。10時半より、この経済産業省別館の1020会議室、同じ場所になります。こちらで開催予定でございます。よろしくお願いいたします。
 また、本日は昼食のほうをご用意しておりますので、お時間のある委員におかれましては、そのまま席でお待ち願います。本日はどうもありがとうございました。

−了−

(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室)

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