私的使用目的の複製の見直しに関する国際条約及び諸外国の立法例

○ベルヌ条約(抄)

第9条  〔複製権〕
  • (1)文学的及び美術的著作物の著作者でこの条約によつて保護されるものは、それらの著物の複製(その方法及び形式のいかんを問わない。)を許諾する排他的権利を享有する。
  • (2)特別の場合について(1)の著作物の複製を認める権能は、同盟国の立法に留保される。
    ただし、そのような複製が当該著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件とする。
  • (3)録音及び録画は、この条約の適用上、複製とみなす。

○フランス著作権法(抄)

【『外国著作権法令集(30)-フランス編-』(社団法人著作権情報センター,2001年)[大山幸房 訳]10頁,31頁】

第122の5条  著作物が公表された場合には、著作者は、次の各号に掲げることを禁止することができない。
  • (2) 複写する者の私的使用に厳密に当てられる複写又は複製であって、集団的使用を意図されないもの。ただし、原著作物が創作された目的と同一の目的のために使用されることを意図される美術の著作物の複写及び第122の6の1条第3項に規定する条件において作成される保全コピー以外のソフトウェアの複写並びに電子データベースの複写又は複製を除く。
第211の3条  この章において創設される権利の受益者は、次の各号に掲げることを禁止することができない。
  • (2) 複製を行う者の私的使用に厳密に当てられる複製であって、集団的使用を意図されないもの

○ドイツ著作権法(抄)

【渡邉修 訳「2003年版 ドイツ著作権法(上)」『知財ぷりずむ』(2005年7月)Vol.3 ナンバー34 31〜32頁】

第53条  私的使用及びその他の自己使用のための複製
1  自然人が私的使用のために任意の媒体へ著作物を少数複製する行為は、それが直接的にも間接的にも営利目的を持たず、かつ複製するために明らかに違法に作成されたひな形を利用するのではない限りは、許される。複製権者は、複製が無償で行われる限りにおいて、又は任意の写真製版方式若しくは類似の効果を持つその他の方式を用いて紙若しくは類似の媒体に複製する限りにおいて、他者に複製物を作成することもできる。
2  次の目的のために、著作物の少数の複製物を作成し、又は作成させることは許される。
  • 一 自らの学術的使用のため。但し、複製がこの目的上必要であり、かつその範囲に限る。
  • 二 自らの記録集に収録するため。但し、複製がこの目的のために必要であり、複製のひな形として自己の著作物の複製物を利用する場合であって、かつその範囲に限る。
  • 三 時事問題につき、情報を得るため。但し、放送された著作物の場合
  • 四 その他の自己使用のため。
    • a) 発行された著作物のわずかな部分又は新聞若しくは雑誌において発行された個々の寄稿物に関する場合
    • b) 少なくとも二年間は品切れとなっている著作物に関する場合
 このことが第一文第二号に適用されるのは、さらに以下のときに限る。
  • 一 任意の写真製版方式又は類似の効果を持つその他の方式を用いて紙又は類似の媒体に複製するとき。
  • 二 もっぱらアナログの利用が行われるとき。
  • 三 記録集が直接的にも間接的にも経済的又は営利目的を追求していないとき。
 このことが第一文第三号及び第四号に適用されるのは、さらに第二文第一号又は第二号の要件のうちのひとつが存するときに限る。
3  ある著作物のわずかな部分、わずかな量の著作物又は新聞若しくは雑誌において発行され、若しくは公衆に利用可能にされた個々の寄稿物の複製物を、次の場合に、自己使用のために作成し、又は作成させることは、その複製がこの目的のために必要であり、かつその範囲に限り、許される。
  • 一 学校の授業、非営利の教育施設及び継続教育施設並びに職業訓練施設において、ひとクラスに必要な数
  • 二 国家試験のために、並びに学校、大学、非営利の教育施設及び継続教育施設並びに職業訓練施設における試験のために、必要な数
4  次のものの複製は、それが手書きによるものでない限りは、権利者の同意を得た場合、第二項第二号の要件が満たされる場合、又は少なくとも二年間、品切れになっている著作物については自己使用の場合、にのみ許される。
  • a) 音楽の著作物の図版による記録物
  • b) 図書又は雑誌、但し、実質上全部の複製である場合
5  第一項、第二項第二号から第四号及び第三項第二号は、データベースの著作物であって、その要素が、電子的手段により個別にアクセスされるものには適用しない。第二項第一号及び第三項第一号は、学術的使用又は授業における使用が営利目的で行われるのではないという条件で、そのようなデータベースの著作物に適用される。
6  複製物は、頒布してはならず、公衆への伝達に利用することもできない。但し、適法に作成された新聞及び品切れの著作物の複製物、並びに毀損し、又は失われたわずかの部分が複製物で代替されているような著作物の複製物を貸し出すことは許される。
7  著作物の公の口述、演奏・上演又は上映を録画媒体又は録音媒体へ収録すること、美術の著作物の設計図及び構想を作品に仕上げること、並びに建築の著作物の模造は、常に権利者の同意を得た場合に許される。

○アメリカ著作権法(抄)

【『外国著作権法令集(29)-アメリカ編-』(社団法人著作権情報センター,2000年)[山本隆司・増田雅子 共訳]25頁】

第107条  排他的権利の制限:フェア・ユース
 第106条および第106A条の規定にかかわらず、批評、解説、ニュース報道、教授(教室における使用のために複数のコピーを作成する行為を含む)、研究または調査等を目的とする著作権のある著作物のフェア・ユース(コピーまたはレコードへの複製その他第106条に定める手段による使用を含む)は、著作権の侵害とならない。著作物の使用がフェア・ユースとなるか否かを判断する場合に考慮すべき要素は、以下のものを含む。
  • (1) 使用の目的および性質(使用が商業性を有するかまたは非営利的教育目的かを含む)
  • (2) 著作権のある著作物の性質。
  • (3) 著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性。
  • (4) 著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する使用の影響。
 上記の全ての要素を考慮してフェア・ユースが認定された場合、著作物が未発行であるという事実自体は、かかる認定を妨げない。