第3節 権利制限の見直しについて

(2)障害者福祉関係

個人・団体名 意見
株式会社キュー・テック  当社は映像ソフト業界のポストプロダクションとして位置し、コンテンツメーカーの立場、ユーザーの立場を常に考え、最新技術を使い様々な提案をしている会社です。
 障害者から要望のある、聴覚障害者用字幕、視覚障害者用音声ガイドに積極的に取り組み、「映像コンテンツのバリアフリー」を業界の中から提案しています。
 現在、パッケージとして主流であるDVDにおいて、上記障害者対応DVDは非常に少なく、その解決方法としてDVDの中に収録されていなくてもパソコンで再生させることで、後からバリアフリーにする方法も提案しています。(社会貢献として)
  • web-shake字幕をつけ隊!」主に聴覚障害者向け
  • web-shake映画を聴き隊!」主に視覚障害者向け
http://web-shake.jp/
(※web-shakeホームページへリンク)
 約2年間、この問題に取り組んだ立場で僭越ながら意見を送らせて頂きます。
 概要に
 「障害者のいわゆる情報アクセスの観点から、障害者が著作物を利用できる可能性をできる限り確保する方向で検討すべき。」とあり、
「ただし、健常者への流出防止策などについて考慮すべき。」
と書かれています。
 情報保障はもちろん必要なことですが、「健常者への流出防止」というのは
「障害者向けコンテンツ」と「健常者向けコンテンツ」を分けて、
「障害者向けコンテンツ」は福祉政策で行うという障害者を隔離する考え方だと思います。
 しかし、多くの障害者は市場で一般に売られている、出回っている映像に健常者と同じように普通にアクセスしたいのです。特定の施設から借りられても、それは彼らが望んでいることではありません。今回ここにご提案するweb-shakeは市場にあるDVD、又はネット上の映像に対してもバリアフリー化する技術であり、既に運用されています。この技術はPCとネットを利用することで、映像コンテンツは市場のものをバリアフリー化出来るのです。
 「著作物の複製」では無く、「市場の著作物をバリアフリー」に出来ます。
  • 既に点字図書館では視覚障害者向けに市販DVDをPCで再生時、音声ガイドが出るソフトウエアを配付しています。web-shakeのように「コンテンツ」と「字幕データ」を別々に扱うことによって、映画館でもメガネや携帯電話に字幕を出したりする技術に繋がり、将来的にはどんなメディアであってもバリアフリーに出来る可能性を秘めています。
 今回の法改正によって生じる問題点を以下に述べますと。
【予想される問題1:流出】
 残念ながら市販DVDにおけるデジタルコピーガードCSSは既に破られていて、DVDの複製はPCで簡単に出来ます。また、再圧縮によってYouTubeなどにアップすることも出来ます。聴覚障害者にとって貴重な「字幕DVD」がライブラリに加わると、その複製とネット上への流出が懸念されます。DVDの複製防止は不可能です。
【予想される問題2:市場での障害者用字幕付タイトル減と売上減】
  • 1 「障害者用字幕は障害者の支援施設で対応する」
  • 2 発売元は「障害者用字幕付けのコストは不要になる」
  • 3 字幕付DVDを購入している、またレンタルしている障害者ユーザーが少なくなる
 つまり、市場から字幕付DVDが減ることで、せっかくのマーケットを閉ざすことになるのでは無いでしょうか?
【予想される問題3:メディアの多様化にバリアフリーが追いつかない】
 放送字幕は総務省の取り組みにより、多くは補助金を使って制作されています。しかし、その補助金を使った字幕は放送局の所有物となり、その番組のDVDが発売されても字幕はほとんど収録されていません。放送局とDVDを発売する会社が違うからです。ネットにおける動画配信、ネットによるTV向け配信など、これからメディアの多様化は急速に進んでいますが、ここにバリアフリーという考え方はありません。
 今回の改正によって、限られた障害者施設でのバリアフリーが進んでも、市場のメディアの多様化に追いついていけるのでしょうか?
 結局ユーザーの不満は永遠に続くのでは無いでしょうか?
【ユニバーサルデザインの新しい考え方】(ユニバーサル・リモート・コンソール)様々な障害者、そして健常者を含めたすべてに対応することはコスト負担も大きく、難しいことです。しかし、「情報へのアクセス」であれば、それぞれの障害に合った「コンソール」を持つことで可能になります。つまり、DVD、又はネット上の映像コンテンツであればPCを“コンソール”として情報保障が実現します。
 障害者に、PCというコンソールを使わせることは決して差別ではありません。むしろ健常者への流出防止を考慮するあまり、特定施設でのアクセスで制限することの方が差別だと思います。PCの使えない方は図書館の視聴覚施設で対応出来ます。
  • ソフトウエアにより、様々な障害に応じた情報保障が可能
  • この技術により日本語を学習したい外国人向けの情報保障も可能補助金を当てにすることなく、ビジネス的要素を入れて対応させるのです。
【権利者と障害者ユーザー、そして国の政策としてのベスト選択は?】
 中間報告の中で以下の文章があります。
 「コンテンツ提供者自らが、障害者に利用しやすい形態で提供するインセンティブを阻害しないようにする必要がある」
 つまり、コンテンツ提供者自らが、障害者に利用しやすい形態で提供することが本来の望ましい考え方であり、「障害者基本法 第6条」において「障害者が差別されることなく文化活動に参加できる社会の実現に寄与するように努めるのが国民の義務」に沿った行動が求められています。
 私共は上述したweb-shakeの技術を提案し、市場コンテンツのバリアフリー化を、コンテンツ提供者自らが主体性をもって取り組むべきだと考えます。
  • 1:著作物に手を加えず、内容を改ざんしない形でのバリアフリー化も権利者の許諾を不要とする。(一般市販コンテンツでの対応はユーザーの制限をしない)
  • 2:映像ソフト業界は現在の字幕付与率を発表した上で、付与率アップの具体的目標を定める。(後付によるバリアフリー含む)
  • 3:映像コンテンツにおける「字幕のアーカイブ」「音声ガイドのアーカイブ」を指定したNPOで管理させ、メディアの多様化にも最新技術で対応出来る体制を作る。
 字幕も音声ガイドも一般市場で当たり前に付くようになれば、視聴覚障害者を含む様々な障害者、また健常者でも便利であり、市場も活性化すると思います。
 「コンテンツ」と「字幕データ」を分けることによって何ができるか、web-shake字幕の実演も含めて一度、ヒアリングしていただければ幸いです。
社団法人情報科学技術協会
  • 1)視覚障害者のために、録音図書の作成を公共図書館も著作権者の許諾無く実施できるようにすること、
  • 2)聴覚障害者のために、著作権者の許諾無く映像に字幕や手話を付けることができるようにすること、
  • 3)知的障害者や発達障害者等にも著作権者の許諾無く映像に要約した字幕を付けることや、デジタル録音図書の作成ができるようにすることの障害者団体からのいずれの要望も、障害者のいわゆる情報アクセスの観点から、障害者が著作物を利用できる可能性をできる限り確保するとういう観点から、権利制限として認めることを要望いたします。
 これらの権利制限は、障害者の基本的人権を実質的に保障することであり、日本国憲法の趣旨に則しており、諸外国でも実施されています。
全国LD親の会

 今回知的障害、発達障害等関係についても、著作権法上「何らかの対応を行う必要性は高い」とした点については評価したい。しかし、具体的な法改正についての言及がなかったことは残念である。最終報告に向けた検討では、具体的な法改正に関して提言をすべきである。
 その際には、「全国LD親の会」から2007年2月8日付けで文部科学大臣宛に提出された要望書の第11項にある、「LD児・者の情報保障を促進するために著作権法を改正すること。
 現在文化審議会著作権分科会で見直しが検討されている、著作権法第37条第3項、同第33条第2項を改正しLD児・者を含む発達障害者も適用対象とすること。」という提言を尊重すること。
 発達障害者支援法が施行され、発達障害の児童生徒が正式に特別支援教育の対象とされるなど、LD(学習障害)を含む発達障害への対応については、国全体の施策としても重点課題として取り上げられている。著作権法改正においても視覚障害、聴覚障害に準ずる形ではなく、発達障害を著作権法上で正式に位置づけるべきである。

【参考】
文部科学大臣宛要望書「全国LD親の会」2007年2月8日付
障害者福祉関係に係る権利制限に関する添付資料(著作権分科会 法制問題小委員会(第6回)議事録・配付資料4−3)
社団法人日本映像ソフト協会

 「本中間まとめ」では、聴覚障害者対策として、社会福祉法人聴力障害者情報センター等が、著作権者の許諾無く字幕付きDVDビデオを作成できるようにするために、「字幕等を挿入して複製を行う行為について」権利制限することが適当としています(38頁)。
 当協会は、聴覚障害者の方々を含め多くの皆様にビデオソフトをご視聴いただくことを望むもので、それを妨げる状況を改めていくことに賛成いたします。
 しかしながら、このような権利制限は、聴覚障害者の方々にビデオソフトを視聴していただくための障害を除去する上では無意味であり、しかも聴覚障害者の方々のニーズに合致したものといえるか疑問であり、賛成いたしかねます。
 以下、理由を申し述べます。

  • (1) 市販されていますDVDビデオは通常、複製を制御する著作権保護技術が用いられているため、複製権を制限しましても字幕等を付けて複製することができません。
  • (2) 「本中間まとめ」では、どのようにして字幕付DVDビデオを製造することを想定しているのか明らかではありませんが、著作権保護手段回避ソフトウェア等の存在を前提としているか、権利者が通常ならば適法であるとは思えない方法による複製を前提としているのであるならば、複製権制限以外の方法も検討すべきではないかと思われます。
  • (3) また、DVDビデオ等の映画の著作物については、頒布権(著作権法26条)があり、字幕付DVDビデオの貸与については著作権者の許諾を必要とします。
     複製主体に公共図書館を加えたとしても、公共図書館は貸与にあたって、著作権者に補償金を支払う義務があります(著作権法38条5項)。かつて、日本図書館協会とこの補償金の取り扱いについて協議した際、同協会からは、補償金という予算費目は無いので補償金名目の支払はできないとのご説明をいただきました。このような図書館側の事情と著作権使用料を頒布に際してお支払いただく元栓処理のビジネスモデルが合致したため、現状では、補償金を含む図書館価格で映像ソフトが図書館に供給されています。
     したがいまして、字幕付DVDビデオの貸出しについても補償金を含む価格での供給等の措置が必要となると考えます。
     以上述べたような問題があるため、「本中間まとめ」のご提案の字幕付きDVDビデオを新たに作るためには、映像著作物の著作権者から、著作権保護技術が用いられていない素材の提供を受ける必要があり、複製権を制限したとしても事実上現状と同じ不便さを強いる結果になるのではないでしょうか。
     他方、市販のDVDビデオを複製しなくても、別に字幕を用意してこれをDVDビデオの映像と同期させて視聴する方法もあります。そして、聴覚障害者の皆様は、特典映像等も含めた市販のDVDビデオ等を所有したいとのご意向もお持ちだとも聞いております。このようなご要望にお応えする方法として、字幕を市販ソフトに同期させて視聴するコンソールを用いることも考えられます。
     このような方法も含め、よりよき方法を検討する必要があるようにも思われます。
     したがいまして、複製権を制限するという方法ではなく、著作権者を含む関係者間の協力関係を構築するルールづくりが必要で、「本中間まとめ」40頁で提言されています字幕付映像資料の公衆送信や前述いたしました頒布権の問題もその中で協議する必要があると考えます。
社団法人 日本映画製作者連盟  聴覚障害者、知的障害者、発達障害者等に対する福祉の増進をはかることに、一般論として賛成します。
 当連盟は、従前より、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターによる字幕付ビデオ・DVDの作成・貸出に協力してきており、聴覚障害者の福祉の増進に成果を上げていると考えております。
 福祉の増進は、基本的には権利者の協力によって実現されるべきであり、安易に権利制限規定を拡充する方法によるべきではありません。
 また、仮に一定の範囲で権利制限規定を設けるとしても、
  • 1 複製の元となる適法なマザーを適正に取得していることが複製を認められることの前提とされるべきである(違法なソースからの複製は認められない)
  • 2 技術的な保護手段がかけられている映像コンテンツについては、それを回避等として行う複製は認められない
  • 3 字幕付ビデオ・DVDが健常者の娯楽目的での視聴に転用されないような制度を設計する必要がある
  • 4  3の目的のため、字幕付ビデオ・DVDがさらに無許諾複製されないようにする必要がある
と考えます。
 なお、「映画」に関しましては、字幕付ビデオ・DVD等を製作するために必要となるマザーテープを作成している作品につきましては、当該マザーテープを、従前からの貸出先である「社会福祉法人聴力障害者情報文化センター」以外にも、聴覚障害者の福祉増進に尽力されている公共機関・非営利団体に対し、健常者の娯楽目的に不正に転用されない適切な措置を確立していただき、かつ、その後の不正流通を防止するために技術的保護手段によるコピーガードを施していただけることを条件として、貸し出す用意があります(ただし、劇場公開中および当該権利者がDVD等のパッケージ商品を製造販売していない作品についてはマザーテープが存在せず、対応できません。また原権利者の権利処理は別途となります。)ので、お問い合わせいただきたいと考えます。
社団法人日本芸能実演家団体協議会 実演家著作隣接権センター(CPRA)  障害者が、健常者と異なることなく、文化的な作品である著作物等を享受する機会を保障することは、社会福祉政策の一環として重要なことであり、この点について、当センターとしても異論はない。コンテンツ提供者側も、障害者福祉の重要性を認識しており、既に、障害者が著作物等を享受する機会を確保するために、字幕や解説を付した映像作品や字幕放送などの提供が広く行われている。また、関係権利者団体においても、通常の著作物等の利用契約とは別に、字幕・手話を挿入したビデオ又はDVDの制作につき、事前の一括許諾契約を締結するなどの特別の例外的措置をとっており、障害者に対する字幕付きDVD等も多数制作され、障害者にも提供されているところである。障害者のための利用については今後も一層拡大されるものと思われる。こうした状況に鑑みると、著作権法上の権利の存在が、「障害者の権利に関する条約」で言われている「不当な又は差別的な障壁」となっているとは言い難いというべきである。
 このように著作者等の権利制限という方法をとらずとも、障害者に対する著作物への提供については、既に特別な配慮が行われているところであり、障害者が著作物を利用できる可能性を拡大するために、著作者等の権利制限という安直な手段を選択することが果たして適切妥当であるのか、知財立国を標榜する我が国としては慎重に検討すべき問題である。
 安易な権利制限を導入してしまうと、関係権利者の利益が不当に害される事態が生ずるばかりではなく、これまで障害者向けにコンテンツを提供してきた者のインセンティブを阻害することとなり、結果として、障害者向けに提供されていたはずのコンテンツの提供の機会を減少させるおそれがあることにも留意すべきである。
 したがって、障害者に対する配慮は、社会福祉政策全般の観点から、必要な施策を俯瞰した上で、著作権法の在り方を検討することが求められる。その上で、障害者のために権利制限がどうしても必要であるとの共通認識が得られた場合に限り、その導入を検討すべきである。その場合であっても、障害者向けの市場との関係にも配慮し、著作者等の正当な利益を不当に害することのないよう、権利制限規定の適用範囲を明確にすべきであり、著作者等に対する補償措置などについても検討すべきである。
社団法人 日本書籍出版協会

 今回、提案されている視覚障害者、聴覚障害者およびその他の知的障害者、発達障害者等に関係する権利制限規定の見直しは、これら障害者が著作物を享受することを容易にするための措置としての必要性については理解できるところです。ただし、法改正にあたっては、以下の点につき留意することが必要であると考えます。

  1. 当該使用する者が自ら複製することが不可能な場合、一定の条件を満たす第三者が録音等による形式で複製することを認める際の「一定の条件」としては、著作権法第31条1号の図書館に当たる施設に限定すること、複製の対象になる著作物は、その複製を行うことができる施設が所蔵しているものに限定することが必要であると考えます。これらの施設外から持ち込まれた資料は、それらが適法に複製されたものであるかどうかが担保できない場合もあると考えられるため、当該施設でそのような資料を元に複製することを認めることは適当でありません。また、このような複製を行うことを営利目的で行う施設については、権利制限の対象とすべきではないと考えます。
  2. 複製の方法を録音に限定せず、デイジー化を含むことは、様々な状況・程度の障害を持つ人々に対応していかなければならないという状況の下では、必要な措置であると考えます。ただし、「障害者福祉」のためであるという理由のみですべてが許されるとすべきではなく、権利者の利益を不当に害することがないように、利用のための条件を限定し、明確化する必要があります。
  3. たとえば、媒体変換については既存の技術の範囲に限定して認めるべきで、将来開発される可能性のある媒体や伝達手段までも含めて広範に権利制限することは適当ではないと考えます。著作物の伝達手段のユニバーサルデザイン化は、今後も進展していくことが予想されますが、その過程で開発される技術の中には、障害者のみならず健常者も区別なく利用できる環境を提供するものが現れる可能性があります。そのこと自体は、望ましいことであると考えますが、権利制限は専ら障害者が利用できるものに限定しておくことが必要であると考えます。
  4. 「中間まとめ」の中でも指摘されていることでありますが、本来は障害者も利用できる形態の著作物が数多く市販されるようになることが望ましいことはいうまでもありません。このような方向に対するインセンティブを阻害することがないように、録音物あるいはその他障害者にも利用可能な形態の著作物が市場で入手可能な場合には、権利制限の対象から除外することが必要であります。
  5. 対象者の範囲を、視覚障害者に限定せず、その他の様々な障害を持つ人々に広げることは、公益性を有する措置であると考えます。ただし、対象となる障害者の範囲は、公的機関等によって認定された者に限定するなどして、明確化しておく必要があると考えます。障害者と認定されることによって、社会生活上不利益を蒙ることをおそれてあえて認定を受けようとしない障害者も多いとの指摘も一方であることは承知していますが、その問題は障害者の社会参加を促し支援していく措置を充実していくことで解決していくべき問題であり、著作権法の権利制限とは別に考えるべき問題であります。
社団法人日本図書館協会

 各種の図書館が視覚障害者等々の情報障害者への,情報提供の拠点であることは世界的に見ても明確なことである。図書館は,図書館利用に障害のある人のために,資料をその人が使える形に変換して提供している。図書館が一般とは別に専用の障害者登録を行っており,対象者以外への資料提供がありえないことを理解いただいたことは大変よかった。また,資料を利用できる障害者についても,なるべく広い情報障害者を含めようとする方向は大変評価できる。
 今回,録音資料,映像資料への字幕手話挿入を中心に図書館における無許諾の製作等(権利制限)が認められようとしていることは大きな前進となる。
 今後引続き,継続的に製作できる資料の拡大について論議を進めてほしいと願うものである。
 「注27」(p.32)のDAISYの説明中,DAISYを「デジタル録音図書」としているが,daisyは音声・テキスト・画像等を同期させて利用できる,マルチメディアデジタル資料である。これにより広い情報障害者の利用が可能となる。
 自民党・特別支援教育小委員会における提言(p.33)について,この部分のDAISYは文意よりマルチメディアDAISYを指すものと思われる。特に公共図書館においてもマルチメディアDAISYの製作が可能となれば,文中のような学校に学ぶ多くの情報障害児・者への提供が促進される。
 「(2)検討結果」(p.35―)において,「1全体の方向性」で,障害者が情報にアクセスする権利について提起されていることは大変望ましい。
 「(2)検討結果 2視覚障害者関係についての対応方策」(pp.35-37)については,個々に以下のような意見である。
 a(障害者の私的複製を代わって行うための措置について)において,30条に基づく手足理論による複製と,37条の複製の目的を変更して対応することについて,前向きな措置と考える。公共図書館等においてもこれらの複製等が実情に応じて行なえることになる。
 c(第37条第3項の複製を行う主体の拡大について)では,公共図書館の専用の障害者等登録にご理解いただき,大変評価する。当然のことであるが主に公務員である公共図書館職員が法令を順守し,また日本図書館協会が定めるガイドライン等を守った上での運用が可能である。
 d(対象者の範囲について)に関しては,従来の限定的な考えから,なるべく多くの障害者を含めようとするものであり,画期的な措置と考える。条文の作成時にこの考えが実質的に後退しないよう願うものである。
 e(その他の条件について)に関して,営利業者への配慮と,だれもが使えるユニバーサル出版の促進という主旨にはまったく問題はない。ただし,同じ録音資料でも資料の一部抜粋であったり音声劇のような特殊なものについては,今回出されている障害者が使うための資料とは別のものと考える。(障害者への情報保障という観点から,資料のすべてをありのままに読んだものを必要としている。)
 なお,注30(p.36)で,国会図書館における許諾の謝絶数が出されているが,これは実際に許諾手続きを行ったものの数である。外国人著者のものや著者が複数あるもの雑誌等については,最初から許諾そのものが不可能となっている。
 「3聴覚障害者関係についての対応方策」(pp.37-41)については,以下である。

 a(現状及び対応方策)で,放送だけではなく,固定された映像資料についても権利制限が必要とする考えは大変評価できる。
 b(複製を行う主体について)に関しては,公共図書館等においても利用者を限定して登録することに何ら問題はない。プロテクトの問題等は直接著作権法上の問題ではなく,技術的な問題である。映像資料には営利を目的としたものだけではなく,様々な種類のものがある。今回権利制限をすることにより,字幕手話等の理解が促進され,しかもその技術の向上に繋がることが予想される。ぜひ権利制限に加えてほしい。プロテクト等の仕様については,技術の進歩により変化していくものであり,ガイドライン等で示すのが適当と考える
 d(その他の条件について)に関しては,視覚障害者等の録音資料の場合と同様,主旨には賛成である。ただし,聴覚障害者が本当に使い易いものでなければならず,単なるキャプションの挿入されたもの等は含まれない。
 「4 知的障害者,発達障害者等関係についての対応方策」(p.41)については,以下である。
 a(現行規定での対応可能性)でいうところの複製される資料とはマルチメディアDAISYを含むあらゆるものと考えられる。またその方がより有効である。35条の手足理論として「社会教育の教育機関」には公共図書館が含まれるべきである。また,教員や公務員の管理の下に一定期間保存が可能になる方策が望まれる。
 b(対応方策について)からは,公共図書館においても利用者の登録・提供をきちんとした上でマルチメディアDAISYを含むいろいろな資料を製作できるようにも解釈できる。今回の改正でどこまで認められるようになるか不明だが,なるべく多くの障害者用資料種別・利用対象者について考慮してほしい。もしくは,今後の継続的な改正を期待する。
日本放送協会  NHKは、聴覚障害者向け放送サービスの拡充を公共放送の重要な役割と認識し、録画番組だけでなく主要なニュース番組などの生放送にも字幕を付与して放送するなど、字幕放送の充実に積極的に取り組んでいます。また、現在、聴力障害者情報文化センターに対して、NHKが番組を複製したうえで、無償で番組を提供しています。
 今回、障害者の情報環境の改善を図るため、著作権法の制限規定を見直して権利者の許諾なく字幕等を付与することができるようにすることは適当だと考えます。ただし、以下の措置が必要です。
  •  ニュースや情報番組、あるいは医療や健康などに関する最新の情報を取り扱った番組は、時間の経過とともに内容やデータが古くなり誤解を与える可能性もあるため、複製のうえ字幕等を付与することについては、新たに複製の主体となる障害者情報提供施設が責任を有することを明確にすること。
     なお、障害者団体から要望があるように、仮に字幕を挿入した放送番組の録画物を障害者施設が自由に時差でCS放送やネットで再送信できるようにした場合、視聴者にリアルタイムの放送と混同されて誤解や混乱を招く恐れが強くあります。したがって、障害者情報提供施設が権利者の許諾なく自由に再送信できるようにすることについては、より慎重な検討が必要です。
日本民主主義著作者総連合  創作者は、受け手なくして存在し得ないと言っても過言ではない。よって、より多くの人そして多様な人々が創作物を享受出来るよう、制度を整える点につき、障碍者のアクセス拡大に前向きな本件に賛同の意を表する。
 しかし、法制問題小委員会で障碍者側から障害者権利条約との関わりについて指摘があったようだが、「中間まとめ」には権利条約のことは一瞥した限りでは、触れられていないようだ。この点につき、疑念を呈する。
 民著総連は、中間まとめ35ページの「いわゆる情報アクセスの保障、情報格差是正の観点から検討が必要とされているものであり、そのような障害に対応した形態の著作物を制作することには、基本的に高い公益性が認められると考えられる。このような観点から、障害者が著作物を利用できる可能性を確保する方向で著作権法上可能な措置について検討すべきであるとの意見や、障害者福祉の問題は、諸外国と比べて日本固有の事情があるとは考えられないことから、諸外国の例等を参考にそれと同程度の立法措置を講ずべきとの意見」に強く賛同するものである。
 また、「複製を行う主体について」(39〜40ページ)だが、字幕が付されていないものは権利者が視覚障害者の使用を想定していないからであり、視覚障害者に限っては、創作物へのアクセスを確保するために複製する必要がある。また、権利者の利益を害すこともなかろう。よって著作権保護技術を再度施す必要はないと考える。字幕を付す経済的余裕のない場合、コンテンツを流通させる前に、コピーガードしていないものを特定の団体に提供した上で、ボランティアに字幕、手話を入れてもらう等の施策も必要なのではないだろうか。
社団法人日本民間放送連盟  放送番組に手話や字幕を挿入した録画物を貸し出すことや、公衆送信することに関しては、非常時の報道番組などをはじめ、放送番組がその内容により視聴者の生命や財産に大きな影響を与えるものであることから、放送事業者としては第三者により付加される字幕等によって放送内容の正確さが結果的に損なわれるなどの問題が生じ得ることを、本来的に懸念している。
 しかしながら「障害者福祉関係」の権利制限に関しては、その目的自体には基本的に賛同するものであり、現在では、こうした非常時の報道やその他字幕付与が可能な番組の多くは、放送事業者自身によって字幕が付され、その受信も一般のテレビ受信機(デジタル放送対応のもの)により可能となっている。
 また、「聴力障害者情報文化センター」における字幕・手話を挿入したビデオやDVDの貸し出しが、希望する作品に十分対応できていないとの指摘については、その改善策について放送事業者や権利者団体と話し合いのうえ、解決を図ることも有効と考える。
 このように字幕放送等に関しては、放送事業者としても鋭意努力を続けているところであり、また聴力障害者情報文化センターの活動に関しては、放送事業者も含めた権利者との契約によって運用されているところでもあるため、権利制限について検討する場合は、こうした状況にも配慮をいただきたい。
社団法人 日本レコード協会

 視覚障害者に係る情報文化環境を向上するため、権利制限規定を新設し、または見直すことに賛成である。ただし、その範囲は権利者の利益が不当に害されない範囲とすべきであり、具体的には次のとおりである。

(視覚障害者関係)
  • ア.障害者の私的複製を第三者が代わって行うための措置について
    • 権利制限の対象を非営利かつ無報酬で行われる場合に限定する。
  • イ.著作権法第37条第3項の見直しについて
    • 複製主体の拡大について、対象施設を利用者の確認が行える体制が整っている公共施設(公共図書館等)に限定するべきである。
    • コンテンツ提供者自らが録音物の形態で市販している場合(音楽CD等として市販している場合など)については、権利制限を適用しないとすることに賛成である。
特定非営利活動法人シネマ・アクセス・パートナーズ  複製主体の拡大は待ち望まれることであるが、国立国会図書館や一般図書館のみを例示し、「利用者の確認等が整えられ、視覚障害者の福祉等に携わる施設と同等の取組が可能と認められる公共施設」と、「施設」に限定してしまうのは如何なものか。
 現行の著作権法および同法施行令では、「点字図書館その他視覚障害者の福祉を増進する目的とする施設」として、主に視聴覚障害者情報提供施設を定めているが、同法施行令第二条の二の二のように、「視覚障害者のために情報を提供する事業を行う公益法人」、つまりNPO法人を含めた「法人」も、今回の複製主体として含めていただきたい。
障害者放送協議会 【総論】
  • 1今回の中間まとめでは、障害者の情報格差是正を巡る国際情勢の動向が、部分的にではあるが反映されているように見受けられた。
  • 2しかしながら中間まとめでは、2007年9月28日に日本政府が署名した、国連障害者権利条約(以下権利条約と略記)に関する直接的言及がまったくない。このことは署名が時期的に中間まとめ公表の直前であったという事情を差し引くとしても、まことに残念なことである。最終まとめでは、権利条約ついて是非とも言及すべきである。
  • 3権利条約第三十条第三項には、「締約国は、国際法に従い、知的財産を保護する法律が、障害者が文化的な作品を享受する機会を妨げる不当な又は差別的な障壁とならないことを確保するためのすべての適当な措置をとる。(外務省・仮訳文より)」とあり、批准に向けての国内法の整備、調整の作業が行われていると聞いている。
  • 4現行著作権法が「障害者が文化的な作品を享受する機会を妨げる不当な又は差別的な障壁」となっている現状については、これまで当障害者放送協議会著作権委員会からの要望書、意見書、意見発表等を通じ、具体的な場面や事例等をあげて指摘してきたところである。最終まとめにおいては、再度検討されることを強く要望する。
  • 5現在政府部内で進んでいる権利条約批准のための国内法整備、調整等の作業の経過や成果が公表され、これに対する意見の集約結果が充分検討され、最終まとめに反映されることが必要なことと考える。
  • 6中間まとめでは諸外国の立法例が参考としてあげられ、また「諸外国との例等を参考にそれと同程度の立法措置を講ずべきとの意見があった(中間まとめ35ページ)」とのことである。最終まとめにおいては、単に「立法例」のみにとどまらずに、具体的な法の運用例や運用実態、法令の実効性を担保するための諸制度、諸施策等についても踏み込んで調査検討されるべきである。
  • 7今まで著作権法では配慮されていなかった、上肢障害、学習障害、発達障害等について検討がなされ、対応に向けての一定の方向性が示されたことは歓迎すべきことと考える。最終まとめの検討に当たっては、いわゆる限定列挙的な障害観ではなく、障害のある人の個別的、具体的ニーズに応えるという観点からなされるべきである。したがって、各々の障害の定義や範囲については、旧来の障害概念にとらわれることなく、最新の国際的動向や知見を取り入れたものとすべきである。
  • 8世界保健機関(WHO)は、2001年5月に「ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)」を採択した。我が国でも厚生労働省が、この考え方の普及や多方面での活用を目的として、日本語訳である「国際生活機能分類−国際障害分類改訂版−」を作成し公表している。
  • 9従来の身体機能の障害による生活機能の障害(社会的不利)を分類するという考え方に対し、ICFでは新たに「環境因子」という観点から、「参加」や「活動」についての評価をしている。様々な身体機能等の障害が原因で、情報や著作物へのアクセスが困難となり社会参加や活動に支障が生ずるが、録音図書、手話・字幕の挿入、マルチメディアDAISY等といった支援技術の活用でアクセスが可能となる。
  • 10しかしながら、支援技術がいかに進歩したとしても、肝心の録音図書、手話・字幕の挿入、マルチメディアDAISY等の製作に要する人的・財源的な裏付けや、著作権法上での合理的配慮等がなければ実効性あるものとはならない。このように著作権法等が障壁になっている現状は、参加や活動を妨げ社会的不利を生じさせている「環境因子」の一つであるとの見方もできる。
  • 11著作権者側からみれば確かに権利の一部制限にはなるが、これは障害のある人の情報格差解消のための合理的配慮(reasonable accommodation)であり、このことではじめて障害のある人が健常な人と同等に文化や情報を享受することが可能になるのである。こういった基本的観点から最終まとめの検討がされるべきである。
  • 12最新の通信・放送技術、情報コミュニケーション技術、支援技術等の進展が、障害のある人の情報格差解消に生かせるよう、調査や検討を深めていくべきである。
【総論の補足】
  • 一人の人が重なり合う障害を有することが多いため、単一の障害に人々を分類してしまう響きをさけるために、「まるまる障害者」を「まるまる障害」という表記、表現に極力書き改めることを提案する。
【視覚障害関係、及び図書館関係】
  • 「35〜37ページ」
    • (2)検討結果2 視覚障害者関係についての対応方策」について、
      • a 障害者の私的複製を代わって行うための措置について((1)1ア関係)
         第37条第3項に基づき録音図書の作成を行う目的について、貸出し、自動公衆送信のみに限定せず、障害者等が所有等をする著作物から録音図書を作成・譲渡することが可能となることは是非認めるべきである。
         これは障害者の現実的な切実なニーズに沿うもので、これによって障害者も自分に必要な自分用の本を手元に置き、また持ち歩き、必要な時に人の手や目をわずらわせずに自分で読むことができるようになり、読むこと学ぶことの障害が軽減される。33ページから34ページに紹介されている国のほか韓国の第30条、台湾の第53条等の海外での例を見ても、「貸出し」など、その利用方法を限定しているケースは日本以外には見当たらない。
      • b 第37条第3項の複製方法の拡大について((1)1イ(1)関係)
         複製方法を録音に限定しないことについては、知的障害者、発達障害者等の問題とともに検討されており、障害をその身体機能の障害別にとらえないという視点は大いに歓迎される。
         視覚障害者も全盲ばかりではなく、見え方見えにくさは様々である。わずかであっても視力のある者は活字で読むことを切望する。そのために拡大写本や、音声と活字が同期し、読み上げ箇所の文字がハイライトされるマルチメディア・デイジー図書は、教育現場のみならず、就労の場や生涯学習において有用なものとして求められている。
         全盲の視覚障害者であっても日本語を用いるものとして漢字の存在は大きく、どのような漢字が使われているかを知ることは、著作者の意図を正しく理解するうえに必要で、テキストデータでの提供が強く望まれている。読み上げソフトの辞書機能により使われている漢字を知り、そこから意味を正確に理解できるからである。
         デイジーのほか、専用の読みとり装置で音声や点字など必要な形で出力できるSPコードなど、技術の進歩により障害者のための著作物へのアクセス手段は様々なものが生まれている。
         34ページに掲載されている海外の例に見られるように、手段を限定せず「障害者が必要とする形態」で複製できるようにすることが望ましい。障害者が著作物を享受しにくい状態を放置せず、著作物へのアクセスを保障するために必要とされる方法で複製できるように著作権を制限することは優先的課題である。
      • c 第37条第3項の複製を行う主体の拡大について((1)1イ(2)関係)
         図書館は「図書館法」において、「社会教育法の精神に基き、図書館の設置及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教育と文化の発展に寄与することを目的と」して設置され、「図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保有して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資することを目的とする施設」である。
         しかし、資料を音声化しなければ利用できない視覚障害者は、著作権者からの許諾を逐一得なければ利用できない状態にある。
         これは「図書館法」で定められた図書館利用にあたり、本人と図書館の関係意外に、著作権者という第三者からの許可をも要求されていることになり、障害者にとっては大きな不利益となっている。福祉の施策によって視覚障害者情報提供施設があったとしても、公的な社会教育施設である図書館を使えない、あるいは使いにくくしていることに変わりはない。
         このことは「著作権法」がこの不利益の原因を、まさに作っているのであり、障壁になっているともいえる。公立図書館、国立国会図書館においては、これまでも許諾条件に沿った利用の実績があり、法律に規定されれば公務員という立場で確実に遵守されるため、是非とも複製の主体に含めるべきである。
         また、大学図書館や学校図書館においても障害を持つ学生、生徒、あるいは教職員の学習、研究を保障するために、読める形態への複製を認めることが必要である。
         一方福祉施設としての点字図書館とその周辺においては、現実のサービス量の不足によりボランティア活動が生まれている。それらがNPO法人格を得るなどして全国視覚障害者情報提供施設協会に加入している。
         録音できる施設として著作権法施行令第二条2項で規定する視聴覚障害者情報提供施設には、点字図書を7,000冊以上備えこと等の条件がある。つまり録音図書を視覚障害者に提供するためのサービスを実施していても点字図書7,000冊をそろえなければ視聴覚障害者情報提供施設としては認められない。
         厚生省令にそって視聴覚障害者情報提供施設として認可された施設は73施設であるが、全国視覚障害者情報提供施設協会には、著作権法施行令第二条6項で規定された大学と92の団体が加入し共通の製作基準、サービス基準に沿って視覚障害者への情報を提供している。これら19の団体を含め、一定の条件の下で責任を持った製作と障害者への情報提供が行なわれることが認められる施設も複製できる施設として認めるべきである。
      • d 対象者の範囲について((1)1イ(3)関係)
         公立図書館においては、視覚障害に限定しない活字を読むことが困難な人々の利用を目的に権利者の許諾を得、また日本文藝家協会の一括許諾システムを活用し、録音図書を必要としている人のために製作し貸出している。しかしこのような形で許諾を得て製作された録音資料は、点字図書館が37条によって無許諾で製作したものよりもはるかに少ない。視覚障害者は、全国各地の点字図書館が製作所蔵している録音図書を館間協力により居住する地域の公立図書館から借りることができるが、視覚障害以外の活字を読むことが困難な人は、たとえ録音図書が点字図書館で製作されていてもそれを利用することはできないのが現状である。
         機能の障害は異なっていても、読書に困難を持つ人々に等しく適切な配慮がなされ、著作物へのアクセスを妨げないようにすることは当然のことである。
         障害を負ってからの日が浅く障害受容が困難な時期や、個々人の内的な理由により敢えて障害者手帳を取得しないケースがみられる。また高齢者の場合、制度そのものを知らなかったり面倒がって取得しない例も多い。海外には存在しない手帳制度であり、福祉サービスの経費負担と関わる手帳と著作物利用とは区別されるもので、手帳の有無を対象者の範囲として著作権法に盛り込むことは避けるべきである。
         現行の37条においても「視覚障害者」と記すだけで、特に「視覚障害者」を規定する記述はない。同様に「障害等により著作物の利用が困難な者」と定めれば、複製物を製作、提供する施設は、個人の利用登録を行う際に法に則って障害の有無を確認し、流用は禁じられるのである。
      • e その他の条件について
         障害者も利用できる形の著作物が市場に出て、障害者も借りるだけでなく自ら購入できる選択肢が増えることは重要である。しかし「録音物等の形態の著作物が市販されている場合については、権利制限を適用しない」とすることに関しては、慎重な対応が求められる。
         視覚障害者のための録音図書は、活字で出されたものをそのまま音声化し、晴眼者が読むものと同じ内容を享受できるように製作されている。デイジー録音図書の出現により、活字のページ番号も知り、それによって読みたい箇所から読めるという活字に近い読書が可能になった。
         このような形で製作されたものが、活字と同価格で同時期に出版される場合においてのみ、権利制限を適用しないとすることが適当であろう。
         今日活字と同時期に同価格で発行されるデイジー録音図書は数えるほどである。多くのCDブックといわれるものは底本から一部の作品だけを朗読したものであり、活字書に比べれば非常に高価なものとなっている。中には作品自体が抜粋になっているものさえある。著者自らが朗読することもあるが、活字で出版した時にはなかった言葉が加えられるなど、異なる版の著作物となっている。
         活字で出されたそのものを読むことが必要なこともあり、このような場合は同一著者物の録音物が市販されたとは言えない。
         個々の著作物単位ではなく刊行物単位で、障害者が利用できる形態で市販されているかどうかを見る必要がある。
         また、録音物等の出版予定や出版の事実が広く知らされなければならない。インターネット上で販売されているものも若干あるが、そこで提供されている事実を知ることは難しい。点字図書館では、活字が出版されるとすぐに製作に着手することも多く、録音物等出版の事実を知らずに製作し、権利侵害行為とされてしまうことは避けたい。
【聴覚障害関係】
  • 32ページ、37ページ〜41ページ
     法制問題小委員会による「障害者のいわゆる情報アクセスの観点から、障害者が著作物を利用できる可能性をできる限り確保する方向で検討すべき」という基本的な観点から見て中間まとめには前進面とさらに解決を要望する問題点があります。
     権利制限について障害者が求めているのは、情報へのアクセスのバリアフリー化であり、それを保障すべき合理的制作方法です。それを妨げているのが著作権法であることからその権利制限を求めているのです。
     「まとめ」は要望と現状の把握に関して、現在の「社会福祉法人聴力障害者情報文化センター」を軸とした制作方法、そのシステム図について述べています。
     しかし、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターと地方に少数の聴覚障害者情報提供施設しかなかった当時と異なり、今や全国に36施設があり、しかも障害者長期計画により厚生労働省は全ての都道府県に設置することを求めているので、特定の施設に拘ることはニーズの多様化に沿わないものです。今日のバリアフリー化とは、地方分権を核として、それぞれの地方のニーズに応えられるシステムと内容が求められています。
     聴覚障害者情報提供施設や、聴覚障害者を対象とする情報保障、社会福祉を目的とする関係諸組織、独立行政法人、公共図書館、大学の図書館等の施設(筑波技術大学の附属図書館等施設、京都大学学術情報メディアセンター等)等が、それぞれ独自に、放送された物や著作物に字幕や手話を付けて、ビデオ、DVDとして障害者に貸し出し、公衆送信することに対する権利制限を求めます。
     障害者の情報へのアクセスの現状は、健常者と比べて、著作権に阻まれ、制作作業の窓口が限定され、制作の資格が問われ、貸し出し、アクセス方法が限定される等条件の厳しさがあり、さらにそれらをクリアーするための資金負担が求められる過酷な条件下にあります。この実情は国連での「障害者権利条約の制定」(2006年12月13日)、「日本政府署名」(2006年9月28日)、さらに今後に予定される批准作業からみても早急な改善が図られるべきです。また「まとめ」の資料とされている各国の状況から見ても日本が解決すべき多くの問題を抱えている事がわかります。

    • 複製の主体について
       聴覚障害者情報提供施設および障害者福祉を目的とする非営利法人で、聴覚障害者を対象とした字幕や手話などを附しているところとする。
       「聴覚障害者情報提供施設など、…関係団体」に対して、字幕、手話の付与について、情報文化センター等特定の団体との契約は条件としないことを求めます。
    • 「対象者の範囲」について
       高齢者などの増加による今日の社会状況から身体障害者福祉法に定める「障害者」だけをその範囲として決めることはできなくなっているのが現状です。
       その理由は高齢者の多くが難聴などの障害を持っているにも関わらず、わが国の障害判定が先進国では例外的に厳しく、障害者と認定されないからです。したがつて、聞こえや見ることが困難と申告した人を対象とすることを要望します。
    • その他の条件について
      • dの1について
         流出防止のためには、複製を行う主体は障害者を対象としている施設関係者等とすることで十分であり、「主体」を定めること以外に更なる条件を附することは、バリアフリー作業を困難にさせるだけであり本件趣旨に反し信頼性を欠くものとなります。
         仮に流出したとしてもそれは一般的な違法行為でありそれに対する処置は別に法的に定められています。したがって結局著作権法適用に関わらない、作業、費用負担を発生させる「技術的保護手段」などを求めないこととし、無断の複製を禁止するクレジットを明記するなど、「主体」の適切な処置、判断に任せることを要望します。
      • e、について
         公衆送信への「要望は」「障害者を対象としたCS−−放送−−」とあるが、これは放送ではなく「CS通信」であり、したがって、このCS通信は「法により」通信相手が特定されております。
         要望は、聞こえを困難と感じている人全てを対象とすることですが、現状は、自動公衆送信よりも厳格に対象が限定されており、それが守られています。
         この通信の許可を求めているものです。上記流出防止でも要望したようにさらにこれ以上の条件を附しないことを求めます。
【知的障害、発達障害、精神障害等関係、及びデイジー関係】
  • 41ページ
    • 3知的障害者、発達障害者等関係
       精神障害においても「読み・理解・判断の障害」が認められているので、ここに精神障害も加えることを提案する。具体的には「3知的障害、発達障害、精神障害等関係」となる(「まるまる障害者」ではなく「まるまる障害」という表現にした)。
  • 32ページ
    「脚注27」

     2001年12月デイジーコンソーシアム理事会において、デイジー(DAISY)の正式名称がそれまでの“Digital Audio-based Information system”から“Digital Accessible Information system”へと変更された。これはデイジー(DAISY)規格が音声を中心とするものから、必ずしも音声ファイルを必要としない多様なデイジー図書の製作を可能にする規格へと進化したことを反映している。この進化によって、デイジーは、幅広い範囲の読書に困難を持つ人たちの個別のニーズに的確に対応できるようになっている。
     「デジタル録音図書」という表記から、音声のみだけの対応であるかのような誤解を受けるおそれがある。デジタル録音図書(DTB;Digital Talking Book)については正しくは「印刷図書のマルチメディア版」と捉えるべきであり、テキストと静止画像にも対応しているということを明記しておく必要がある。さらに、テキスト部分を拡大したり、フォントや背景色を自由に設定できることから、弱視者用の拡大図書としても利用できるし、ピンディスプレイを使えば点字としても出力できる。DAISYはバリアフリーあるいはユニバーサルデザイン図書として、さまざまなタイプの読書に困難を持つ人たちに有用であるという点も明記すべきである。ちなみにDAISY規格は、Digital Talking Book(DTB)に関する仕様であり、デイジーコンソーシアムによりまとめられている。

    〈参考資料〉
    DAISY研究センター
    http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/
    (※障害保健福祉研究情報システム(DINF)ホームページへリンク)
    The International Dyslexia Association
    http://www.interdys.org/
  • 33ページ
    • 「美しい日本における特別支援教育」

      「著作物のデイジー化は、学習障害のある者にとって大いに有用なツールである」

       この「有用なツール」という点について、いくつか補足しておく。DAISYのように文字と音声情報が同期されて表示されることで、学習障害、特にディスレクシアといった読み障害のある人の障害が軽減され、特に学校教育の場面においてはDAISY化された教科書等を教材として利用することで、学習効果が上げられたという実践例等が報告されている。
      一般論として学習障害など発達障害を持つ児童生徒にとって、マルチメディア対応であるDAISY図書を教材として採用することで、いわゆる「多感覚教授法」(multisensory teaching methods)すなわち、視覚や聴覚、その他の感覚を刺激し記憶力や学習力を増進する教授法が実現できるようになる。
      特別支援教育が本格始動した今、教育現場でのDAISY化された教科書等の利用が促進され、教育効果があげられることが強く望まれる。

      〈参考資料〉
      障害者保健福祉研究情報システム・会議・セミナーの報告書
      http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/conf/index.html
      (※障害保健福祉研究情報システム(DINF)ホームページへリンク)
      Using multisensory teaching methods
      http://www.dyslexia-parent.com/mag30.html
  • 35ページ
    • 1全体の方向性

      「障害者に関する権利制限は、…(略)…基本的に高い公益性が認められる」

       ここで示されている「障害者」には、当然のことながら「知的障害者」「発達障害者支援法」でいう「発達障害者」および「精神障害者」も含まれるものと解されるが、著作権法改正に当たっては、視覚障害・聴覚障害に準ずる形での位置づけに留まることなく、発達障害や知的障害および精神障害についても正式に位置づけられるべきである。

      〈参考資料〉
      国立身体障害者リハビリテーション研究所と浦河べてるの家の当事者による実践
      (リハ協ビデオ「Enjoy DAISY」)
      モンタナ大学障害学生サービス部・渡辺美香氏の論文
      http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/ld/dss.html
      (※障害保健福祉研究情報システム(DINF)ホームページへリンク)
  • 37ページ
    • d 対象者の範囲について
       「規定の明確性を担保しつつ可能な限り範囲に含めていくよう努めることが適当」
  • 40ページ
    • c 対象者の範囲について

       「規定の明確性を担保しつつ可能な限り範囲に含めていくよう努めることが適当」

       発達障害については、「発達障害者支援法」「発達障害者支援法施行令」等の法令で定義されてはいるが、学校教育、就労支援等の場面で具体的な支援ニーズに即したものとすべきである。実際に当該者の指導・支援に携わっている専門家からの所見をもとにして、対象者とすることもできるようにすべきである。
  • 41ページ
    • a 現行規定での対応可能性

       「デイジー図書の製作の態様によっては、現行法においても許諾を得ずに複製ができる場合があると考えられる」

       原理的には現行法の規定内でも複製可能な場合があることは確かではあるが、一般にデイジー図書の製作には専門的な知識、技能を要することや、多大な製作時間を要することがあり、例えば学校教育の場面では「教育を担任する者」や「その支配下にあって補助的な立場にある者」がその製作に専念できる状況にはない。したがってこの場合「教育を担任する者」や「その支配下にあって補助的な立場にある者」以外の、一定の要件を満たす者に委託できるようにすべきである。
財団法人全日本ろうあ連盟 【総論】
  • 1 今回の中間まとめでは、障害者の情報格差是正を巡る国際情勢の動向が、部分的にではあるが反映されているように見受けられた。
  • 2 しかしながら中間まとめでは、2007年9月28日に日本政府が署名した、国連障害者権利条約(以下権利条約と略記)に関する直接的言及がまったくない。このことは署名が時期的に中間まとめ公表の直前であったという事情を差し引くとしても、まことに残念なことである。最終まとめでは、権利条約ついて是非とも言及すべきである。
  • 3 権利条約第三十条第三項には、「締約国は、国際法に従い、知的財産を保護する法律が、障害者が文化的な作品を享受する機会を妨げる不当な又は差別的な障壁とならないことを確保するためのすべての適当な措置をとる。(外務省・仮訳文より)」とあり、批准に向けての国内法の整備、調整の作業が行われていると聞いている。
  • 4 現行著作権法が「障害者が文化的な作品を享受する機会を妨げる不当な又は差別的な障壁」となっている現状については、これまで当障害者放送協議会著作権委員会からの要望書、意見書、意見発表等をつうじ、具体的な場面や事例等をあげて指摘してきたところである。最終まとめにおいては、再度検討されることを強く要望する。
  • 5 現在政府部内で進んでいる権利条約批准のための国内法整備、調整等の作業の経過や成果が公表され、これに対する意見の集約結果が充分検討され、最終まとめに反映されることが必要なことと考える。
  • 6 中間まとめでは諸外国の立法例が参考としてあげられ、また「諸外国との例等を参考にそれと同程度の立法措置を講ずべきとの意見があった(中間まとめ35ページ)」とのことである。最終まとめにおいては、単に「立法例」のみにとどまらずに、具体的な法の運用例や運用実態、法令の実効性を担保するための諸制度、諸施策等についても踏み込んで調査検討されるべきである。
  • 7 今まで著作権法では配慮されていなかった、上肢障害、学習障害、発達障害等について検討がなされ、対応に向けての一定の方向性が示されたことは歓迎すべきことと考える。最終まとめの検討に当たっては、いわゆる限定列挙的な障害観ではなく、障害のある人の個別的、具体的ニーズに応えるという観点からなされるべきである。したがって、各々の障害の定義や範囲については、旧来の障害概念にとらわれることなく、最新の国際的動向や知見を取り入れたものとすべきである。
  • 8 世界保健機関(WHO)は、2001年5月に「ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)」を採択した。我が国でも厚生労働省が、この考え方の普及や多方面での活用を目的として、日本語訳である「国際生活機能分類−国際障害分類改訂版−」を作成し公表している。
  • 9 従来の身体機能の障害による生活機能の障害(社会的不利)を分類するという考え方に対し、ICFでは新たに「環境因子」という観点を取り入れ、「参加」や「活動」についての評価をしている。様々な身体機能等の障害が原因で、情報や著作物へのアクセスが困難となり社会参加や活動に支障が生ずるが、録音図書、手話・字幕の挿入、マルチメディアDAISY等といった支援技術の活用でアクセスが可能となる。
  • 10 しかしながら、支援技術がいかに進歩したとしても、肝心の録音図書、手話・字幕の挿入、マルチメディアDAISY等の製作に要する人的・財源的な裏付けや、著作権法上での合理的配慮等がなければ実効性あるものとはならない。
     このように著作権法は、悪しき「環境因子」の一つとして、「完全参加と平等」の障壁となっている現状を直視すべきである。
  • 11 著作権者側からみれば確かに権利の一部制限にはなるが、これは障害のある人の情報格差解消のための合理的配慮(reasonable accommodation)であり、この措置で、障害のある人が健常な人と同等に文化や情報を享受することが可能になるのである。こういった基本的観点から最終まとめの検討がされるべきである。
  • 12 最新の通信・放送技術、情報コミュニケーション技術、支援技術等の進展が、障害のある人の情報格差解消に生かせるよう、調査や検討を深めていくべきである。
「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会中間まとめ」に対するパブリックコメント
  • 「聴覚障害者関係」について
     法制委員会が「障害者のいわゆる情報アクセスの観点から、障害者が著作物を利用できる可能性をできる限り確保する方向で検討すべき」という基本的な観点から見て中間まとめには前進面とさらに解決を要望する問題点があります。
     権利制限について障害者が求めているのは、情報へのアクセスのバリアフリー化であり、それを保障すべき合理的制作方法です。それを妨げているのが著作権法であることからその権利制限を求めているのです。
     「まとめは」要望と現状の把握について「現在、社会福祉法人聴力障害者情報文化センター」を軸とした制作方法、そのシステム図が評価されています。しかし、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターと地方に少数の聴覚障害者情報提供施設しかなかった当時とことなり、今や全国に36施設があり、しかもなお増加の傾向がある現在、一つの軸に拘ることはニーズの多様化に沿わないものです。今日のバリアフリー化とは、地方分権を核として、それぞれの地方のニーズに応えられるシステムが内容が求められています。
     聴覚障害者情報提供施設や聴覚障害者を対象とする情報保障、社会福祉を目的とする関係諸組織等がそれぞれ独自に、放送された物や著作物に字幕や手話を付けて、ビデオ、DVDとして障害者に貸し出し、公衆通信することに対する権利制限を求めます。
     障害者の情報へのアクセスの現状は、健常者と比べて、著作権に阻まれ、制作作業の窓口が限定され、製作の資格が問われ、貸し出し、アクセス方法が限定される等条件の厳しさがあり、さらにそれらをクリアーするための資金負担が求められる過酷な条件下にあります。この実情は国連での「障害者権利条約の制定」(2006年12月13日)、「日本政府署名」(2006年9月29日)、さらに今後に予定される批准作業からみても早急な改善が図られるべきです。また「まとめ」の資料とされている各国の状況から見ても日本が解決すべき多くの問題を抱えている事がわかります。
  • 複製の主体について
     聴覚障害者情報提供施設および障害者福祉を目的とする非営利法人とする。しかも聴覚障害者を対象とした字幕や手話などを附しており、その実績と経験の一定期間あるところとする。
     「聴覚障害者情報提供施設など、…関係団体」にたいして字幕、手話の付与について、情報文化センター等特定の団体との契約は条件としないことを求めます。
     また、単に設備を「設置する」「事業所」が障害者のためだけに字幕や手話を付与することと同一視し、「主体」とするのは本件課題とは矛盾し著作権からみても本件とは馴染みません。障害者福祉とは関係なく一般的に作品に必要な字幕作業を行う事業所は存在します。その作業が聴覚障害者のためのものであるとの判断は早計と考えます。
  • 「対象者の範囲」について
     高齢者などの増加による今日の社会状況から身体障害者福祉法に定める「障害者」だけをその範囲として決めることはできなくなっているのが現状です。
     その理由は高齢者の多くが難聴などの障害を持っているにも関わらず、わが国の障害判定が先進国では例外的に厳しいく、障害者と認定されないからです。したがって、聞こえや見ることが困難と申告した人を対象とすることを要望します。
  • その他の条件について
    • dについて
       流失防止のためには、複製を行う主体は障害者のみを対象としている施設関係者であり「主体対象を」定めること以外に更なる条件を附することは、バリアフリー作業を困難にさせるだけであり本件趣旨に反し信頼性を欠くものとなります。
       仮に流失したとしてもそれは一般的な違法行為でありそれに対する処置は別に法的に定めdbchられています。したがって結局著作権法適用に変わらない、作業、費用負担を発生させる「技術的保護手段」などを求めないこととし、無断の複製を禁止するクレジットを明記するなど、「主体の」適切な処置、判断に任せることを要望します。
    • について
       情報アクセシビリティを保障した放送、映像著作物の放送、または制作は本来著作権者の義務であり、(誰の?)販売収益を得る権利を有することを認めます。
    • eについて
       公衆通信への「要望は」「障害者を対象としたCS−−放送−−」とあるが、これは放送ではなく「CS通信」であること、したがって、このCS通信は「法により」通信相手が特定されており、その対象は、国が認める「障害者手帳」を有するものに限定されています。
       要望は障害判定の困難な高齢者の増加などによる社会状況の変化に対応して、聞こえを困難と感じている人全てを対象とすることですが、現状は、自動公衆通信よりも厳格に対象が限定されており、それが守られています。
       具体的には、障害者手帳を所持するものが地方自治体に申請し、認定を受けたものだけが通信を受信できる機器を入手し、さらに通信局に申請しスクランブル通信(?)を受信してます。この通信の許可を求めているものです。上記流出防止でも要望したようにさらにこれ以上の条件を附しないことを求めます。
社団法人 日本音楽著作権協会  障害者の著作物に接する機会を拡大しようとする本中間まとめに基本的に賛成するが、聴覚障害者の用に供するための字幕等を付した映像資料については、以下の点に配慮すべきである。
 すなわち、字幕を付した映像資料は、健常者にとっても利用価値があることから、1健常者向けに無償貸出がなされないようにすること、2貸出先での複製が行われ、無制限に頒布されることのないよう、市販されているDVD等と同様の保護技術手段を施すこと、3当該資料を公衆送信するときは、健常者が視聴できないよう、アクセス用のID管理を行うなど利用者の限定の手段が確保されるようにすることの3点について充分に配慮されるべきである。
日本知的財産協会  障害者福祉が高い公益性を有する点に鑑み、障害者(障害の種類を問わない)が健常者と同等に著作物を利用できる可能性を確保するために権利制限規定が必要であるとの考えに賛同する。
 また、本件の性質上、障害者本人に代わって、公的な社会福祉施設や公共図書館、ボランティア等が複製することについても権利制限する方向で検討すべきであると考える。
日本ユニシス株式会社
  • 意見内容
     「諸外国の例等を参考にそれと同程度…。障害者向けのマーケット…」との方向性と同意見であります。
  • 意見提出の理由
     身障者に関する権利制限については、社会福祉の観点や企業においてはCSRの観点から十分な配慮が必要と認識しており、本方向性には異存ありません。

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