第3節 権利制限の見直しについて

(3)ネットオークション等関係

個人・団体名 意見
株式会社秋田書店  小社は、マンガを出版する出版社であり、通常の出版とともに、海外出版社へのマンガのライセンス、マンガのデジタル配信、マンガのキャラクターを利用した商品化のライセンス、他業種との映画、アニメの共同製作等もおこなっています。
 著作権法上、「美術の著作物」に分類されるマンガ、イラスト等は、今回の「中間まとめ」に言うところの「商品としての美術品等」に含まれると想定され、広くこうした「出版物」も権利制限の枠内に含まれる可能性が高いと思われますので、ネットオークション等にかかわる「権利制限の見直し」には反対いたします。
 マンガやイラストが美術品に分類されている現状に異議を唱えるものではありませんが、これらの作品の大半は出版物として流通しております。デジタル技術の進歩により、現在では個人でも容易に市販の出版物からさほど品質を落とすことなく複製行為を実現することが可能になり、結果、さまざまな形での違法行為が横行しています。
 反面、解像度を落とす、あるいは一部に改変を加えれば自由に利用できるといった思い込みが浸透し、同一性保持権の侵害も目を覆うばかりです。
 現状を鑑みるに、権利制限が緩和されれば、作品をネットオークションで売るためには中身も読ませなくてはならないと言った拡大解釈が広まるのは必至であり、たとえ表紙といえども公衆送信権の制限見直しにつながる愚行には断固反対するものです。現在でも、さまざまな場でマンガ作品がコピーされ、あるいは無断使用されて、出版各社はその対応に苦慮しております。とりわけ、侵害者の追跡が困難なインターネット上での被害は深刻です。
 日本で生まれ、アジアはもとより、ヨーロッパ、北米、南米と進出しつつあるマンガは、わが国が世界に誇る貴重な文化であり国民の財産です。いまや、テレビドラマ、映画、アニメの多くがマンガを原作として成立していますし、ハリウッドからも数多くの引き合いがきているほどです。わが国が知財立国として世界に向けて発進しようとするとき、その尖兵を担うのがマンガであることは議論の余地をはさみません。
 しかしながら、国内におけるマンガの未来は必ずしも楽観を許しません。社会からは多くの支持を得ながら新たな流通の出現と法整備の遅れのため、創造の現場は年々経済的な圧迫を深めています。このまま手をこまねいて座視すれば、世界から求められながら、肝心の日本でのマンガの衰退を招くのは火を見るより明らかです。われわれ出版社の対応にも限度があります。
 一度潰えた文化は二度と再生できません。これ以上、マンガを衰退の淵へと追いやらないためにも安易な権利制限の見直しはするべきではなく、ここに反対するものです。
株式会社角川グループホールディングス  今回のまとめには「絵画作品の中には作者不詳のものも多く、限られた期間に著作権者の許諾を得ることとするのは困難」との記載があり、その点についてはそれなりの理解をしています。しかし、美術の著作物には漫画やイラストなども含まれ、そういった作品については著作権者の特定は容易です。それに、漫画やイラストの場合、それは単に著作権侵害にとどまらず、スキャニング・掲載・送信することで購入者の目的を果たされてしまうことも少なくありません。また、逆に劣悪なスキャニングによって、作家の同一性保持権を侵害することすら考えられます。
 したがって、一概に「美術の著作物」の複製・掲載行為に権利制限を行うことには反対いたします。
株式会社講談社  今回の改訂案につきましては、著作権侵害物の流通を助長すると思われますので強く反対いたします。
 著作権者の所有する自動公衆送信権・送信可能化権は、侵害されるべきではありません。
株式会社 集英社  当該箇所における「権利制限の見直し」の対象がすべて「美術作品等」となっておりますが、この「等」に雑誌、書籍等の出版物の画像が含まれるのであれば、この「権利制限の見直し」には強く反対いたします。
 ネットオークション、ショッピングサイトにおいて「商品情報の提供は、売り主に求められる義務」であることは理解いたしますが、画像そのものが商品情報のすべてである美術作品と違い、出版物はその書名、作者名、出版社等の文字情報を掲載することで商品を特定するに充分であり、しかるに出版物のカバー画像が「美術の著作物」でもあるために、今回の権利制限の対象とされ、安易にネット上に掲載される虞があるためです。
 現在、オークションやネット古書店において、書籍等の表紙画像が著作権者に無断でスキャンされ、ネット上への掲載がなされることが蔓延しておりますが、これらの行為は明らかに著作物の複製権、公衆送信可能化権の侵害であり、また「中間まとめ」にもあるとおり「引用」とするには説得力を持ちえません。にもかかわらず、今回の「権利制限の見直し」はこれらの行為を合法化することになりかねません。
 付言すれば、本来、この見直しの契機は「税務当局が税金滞納者から差し押さえた絵画をインターネットオークションで公売する際」の美術作品画像のインターネット上への掲載における「著作権侵害」と税金滞納者からの差押物件の公売の「公益性」の比較衡量の問題であると思われます。「美術作品」に限っても、「著作権の制限」という人権の制限の不利益を、公益性の少ない一般商取引であるオークション、ショッピングサイトにまで一気に敷衍することには、慎重であるべきだと考えます。
社団法人情報科学技術協会  インターネットオークション等において美術品や写真等を出品する際の商品紹介のために行う画像掲載は、売主の義務として必要不可欠なものであり、許諾なしにできるように権利制限の対象とすることを要望いたします。正確な情報の開示と提供は、消費者保護にも必須です。売り主自らが、販売を阻害するまでの精密な画像掲載をすることは想定も出来ないことから、権利制限としても何ら問題は無いことと考えます。
社団法人日本芸能実演家団体協議会 実演家著作隣接権センター(CPRA)  取引の安全を確保するために、著作者等の権利制限が適当であると安易に位置付ける前に、いくつか留意すべき点がある。
 まず、ネットオークションでは、違法複製物が数多く取引され、その画像掲載も大きな問題になっている。違法複製物の取引は、「第2節 海賊版の拡大防止のための措置について」の「1 海賊版の譲渡のための告知行為の防止策について」でも対処されるものと思われるが、ネットオークション等における画像掲載について権利制限を認めることになると、現状においてもネットオークション等の運営者が、違法複製物を調査し、削除するなどの策を講じることは期待できないところであり、権利制限の対象とすることは到底認められるものではない。
 次に、「立法措置を行う場合には、権利制限の対象は、公売、オークションといった形式によらず、一般のショッピングサイト等も含めた制度設計とすべきと考えられる」(『中間まとめ』44頁)とされているが、事業者・消費者間の取引と消費者間の取引とでは、それぞれ事情が異なり、両者を含めて制度設計することには疑問である。
 また、ネットオークションは、取引の場所を提供するに過ぎないとの考え方もないわけではないが、『中間まとめ』でも指摘されているような、ネットオークションに画像を掲載する際に、流出を防止するための技術的保護手段を施すことや商品の情報提供に必要な限度に限って掲載することなどの必要な環境を整えていくことは、ネットオークションにおける画像掲載の著作権法上の問題を検討するか否かに係わらず、早急に対処されるべき課題である。
 なお、著作権法上の権利に関わる問題ではないが、ネットオークションなどでは、実演家等の肖像を用いた音楽CDジャケットや写真集などの商品の画像が掲載されているほか、違法に実演家等の肖像を用いた商品も数多く取引されている。実演家等の肖像の利用に係る権利については、明文の規定があるわけではなく、判例の積み重ねにおいて認められてきたものである。ネットオークション等における画像掲載に係る著作権法上の課題が、肖像の利用に係る権利にも影響することは否定できず、検討に当たって留意すべき重要な論点である。
社団法人日本雑誌協会  漫画やイラスト等は著作権法上「美術の著作物」に分類されることから、「商品としての美術品等」に漫画の単行本や画集等の出版物が含まれるケースが想定されますので、ネットオークション等に関係する「権利制限の見直し」には反対いたします。
 「権利制限の見直し」が必要だとする根拠の一つに「絵画作品の中には作者不詳のものも多く、限られた期間に著作権者の許諾を得ることとするのは困難」という点が挙げられていますが、出版物は出版社と著作者が容易に特定でき、許諾を得るための手間は大きくありません。
 何よりも、多くの漫画家やイラストレーターは自己のペンタッチを表現の命と考えています。出版物は印刷技術によってそれを最大限忠実に再現しますので、著作権者から出版を許諾していただけるわけですが、スキャニングや撮影等の方法によるデジタル化は、解像度の低い劣悪な画質になることが多く、著作者にとっては耐え難い改変となり、同一性保持権侵害となる可能性もあります。
 また、コミックマーケット(コミケ)という同人誌を中心とした著作権上問題がある漫画市場があります。漫画好きの若者たちが人気の漫画作品を無許諾でパロディーにしたり、エロチックに翻案した自作の同人誌を持ち寄り、交換したり少部数販売したりしているのですが、最近では1万部以上製作・販売する同人誌も出現しています。権利制限の対象を「公売、オークションといった形式によらず、一般のショッピングサイト等も含めた制度設計」にすることは、明らかな著作権侵害物を容認することになりかねません。
 商品情報の提供の必要性を根拠としてインターネット上で出版物の画像を複製・掲載する行為について権利制限を行うことは、日本が世界に誇る「漫画文化」の発展に多大な弊害を与えるものと考えます。
社団法人 日本書籍出版協会  インターネット上で公売を行う場合、あるいは商品の販売を行う場合に取引の対象となる商品情報を提供することが必要であることは理解いたします。但し、その対象が出版物にまで広がる場合、出版物は美術作品と異なり情報を伝えることが目的であり、複写利用者の多くは、一冊の出版物の中で、特定の部分のみを参照したいと思うことが少なくありません。そうすると、複製あるいは公衆送信によって出版物を購入したいという目的の大半は達成させられますので、状況によっては購入の代替となってしまう可能性があります。
 また、インターネット上のショッピングサイト等で販売されているものの中には、著作権者等の許諾を得ずに不法に複製されたものや、譲渡権を侵害して不法に入手されたものも含まれている可能性があります。このようなものの取引を認めることはできません。
 立法化にあたっては、インターネット上での取引の実態を十分勘案し、かつ関係する権利者の意向を尊重した上で慎重に制度設計を行うことが必要であると考えます。
日本民主主義著作者総連合  本課題について、「引用」該当性の解釈の問題とせず、立法的検討を行い、そして「売り主が取引を行う際の商品情報の提供の必要性を根拠として、譲渡権等を侵害することなく美術品等を譲渡等することができる場合には、当該美術品等を画像として複製・掲載する行為について、権利制限を行うことが適当」との結論に基本的に賛意を示したい。
 しかし、権利制限が妥当したのは「本来、著作権(譲渡権等)の及ぶ範囲ではない取引行為にまで、事実上著作権によって影響が及ぼせる結果になってしまう」(44ページ)との記述を見るに、おそらく権利濫用法理に還元できるものと思われる。
 一般条項にまで遡って考察したのであれば、さらに考えを推し進め、フェアユース導入についてまで検討していただきたい。
 そもそもネットオークションでのサムネイル表示問題が問題として浮上したのは、情報技術の進歩にともなって、著作権法が想定していなかった利用が増加しているためであろう。そうであるならば、個別条項で現状を追認していくだけでは、創作者および利用者は新しい情報技術の利用に際し、常に法的に不安定な地位に置かれることになる。よって、現在フェアユースを適用することを法律で規定するべき必要性は高まっていると言える。
 昨今、著作権や著作者人格権を根拠とした、いわゆる「別件訴訟」が多々発生している。権利の濫用を防ぐためにも、そして不意に著作権侵害として訴追の対象となるといった懸念をなくすために、いわゆるフェアユースを著作権法に導入するべきと民著総連は考えている。
社団法人 日本レコード協会  権利制限の提案は、美術および写真の原作品を公売その他により譲渡する場合の必要性に基づくものであるから、権利制限規定の適用対象も、美術および写真の原作品を譲渡する場合に限定するのが適当である。
株式会社美術著作権センター

 意見を述べるに当たって、まず基本的な考え方を述べる。
 絵画を商品とする場合、実物を見て確認することなしに画像だけでの商品取引はありえません。
 すなわち、絵画の絵肌(マチエール)、あるいは調和(バルール)、更に大きさや絵のもつ雰囲気、そして額縁の様子なども含めた、本物の絵画だけが持つ芸術性(絵画の生命)がそこには存在しており、そのことなしにカタログあるいはウエブサイト上の画像だけで絵画という商品を手に入れることはあり得ないのです。
 どのようなオークションにおいても実物の展示を行い、絵画の芸術性を確認する行為が行われているはずです。
 画家にとって、絵を描くことは仕事です。自身の完成した絵画を発表することも大切な仕事です。
 しかし、自身の作品を商品として販売する行為は芸術家たる画家の仕事ではないのです。
 画家がその生涯において完成させることが出来る作品の数はきわめて限られているのです。ですから、画廊(画商)や、デパートの美術部などが、商品として販売する場合も大切に扱ってきたのです。
 文化というものを理解する欧米のオークションにおいては、長い歴史のなかで、価値ある売り物だけを商品として扱い、世界に向かってその価値を呼びかけ、したがってそのカタログに掲載されることは、画家にとってはステイタスとさえなっております。
 インターネット上に画像を紹介するにあたり、故意に画像に細工をほどこす等、著作権法から免れる為の行為は、著作者人格権の侵害はもとより、絵画のもつ芸術性を全く無視した行為そのものといえます。
 絵画の紹介は1点づつ大きく、正確に掲載し(勿論、許諾を得たうえで)堂々と発信することが望まれるものです。
 我が国のオークションが不良債権の処理のため、あるいは税金の差し押さえ品の換価のため等の理由で行われるとしたら、ネット上に流れる画像は世界の人が見ることになるわけですから、取り返しのつかない恥を世界に向かって発信することになりはしないでしょうか。
 今般の著作権をめぐる小委員会の論議は、この著作権法の基本にある芸術の精神についての議論なしに結論に向かってゆく危険性を、危惧するものです。

  • (1)「4 まとめ」に「以上のことから、売り主が取引を行う際の商品情報の提供の必要性を根拠として、譲渡権等を侵害することなく美術品等を譲渡等することができる場合には、当該美術品等を画像として複製・掲載する行為について、権利制限を行うことが適当であると考えられる。」とありますが、

     商品情報の提供の必要性を根拠としても、絵画等の著作物を画像として複製・掲載する行為について、「権利制限を行うこと」を是認することはできません。
  • (2)同じく「4 まとめ」に「売り主が取引を行う際の商品情報の提供の必要性を根拠として、譲渡権等を侵害することなく美術品等を譲渡等することができる場合には、当該美術品等を画像として複製・掲載する行為について、権利制限を行うことが適当であると考えられる。」とありますが、
     この件も、「権利制限を行うこと」を是認することはできません。
  • (3)国、地方自治体などが税の滞納処分に係る絵画等の著作物の公売をネットオークションによって行う場合、42ページの「(1)問題の所在」に「公売財産となった絵画作品の中には作者不詳のものも多く、限られた期間に著作権者の許諾を得ることとするのは困難な模様である。」とありますが、
     たとえ公売の場合であっても、著作権法第一条の「…著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」の趣旨を踏まえると、たとえ「税への換価」の場合であっても著作者への権利を保護すべきであり、事前に許諾を受けることは当然です。
     また換価を重要視するならば、時間をかけても作者を明確にして価値を確認すると共に著作権者に許諾を得ることが重要と考えます。
     しかしながら、どうしても著作権者の許諾を得ることが困難な場合には、「補償金制度」の導入によって、その要求に応えることが考えられます。
  • (4)その他
    • ネットオークションで絵画等の著作物を複製・掲載する場合、複製された画像が再利用できないように「電子透かし」などの技術を導入することを義務つけることが必要と考えます。
    • 本小委員会のメンバーに著作権者である画家などが入っておりませんが、審議に当っては当事者の意見を聞かれることが必要と考えます。本委員会への当事者の参画、または公聴会開催などを行われることを提案いたします。
株式会社双葉社  漫画やイラスト等は著作権法上の「美術の出版物」に分類されます。「商品としての美術品等」に漫画の単行本や画集等の出版物が含まれることが想定されます。
 このことから、ネットオークション等に関係する「権利制限の見直し」には反対します。
 「権利制限の見直し」が必要だとする根拠の一つとして、「絵画作品の中には作者不詳のものも多く、限られた期間に著作権者の許諾を得ることとするのは困難」という点が上げられています。しかし、出版物に関しては出版社と著作者が容易に特定できます。また、許諾を得るための手間は困難ではありません。
 また、インターネット上で公売、あるいはショッピングサイト等で商品の販売を行う場合に商品の情報を提供する必要があることは理解できます。しかし、その対象が出版物に広がるとき、出版物がもっている情報を伝えるという性格上、複製あるいは公衆送信によってその目的は達成されます。状況しだいでは購入の代替になる可能性も考えられます。
 立法化にあたっては、取引の実態を十分にご検討いただき、関係する権利者の意向を尊重し、慎重に制度設計を行っていただくことが必要だと考えております。
株式会社小学館  漫画、絵画、イラスト集等は、著作権法上、「美術の著作物」に該当します。そこで、漫画単行本、イラストの名画集等の出版物は「商品としての美術品等」に含まれる場合もあり得ます。
 ですから、ネットオークション等に関わる「権利制限の見直し」には反対いたします。
 出版社には、第三者から出版物の作者照会の連絡が多数入りますがそんな許諾関連の要請には、適宜対応しています。出版物関連のものには「作者不詳ゆえに、許諾を得ることが困難」という指摘は当たりません。
 また、前記漫画単行本、名画集等は、作画家、イラストレーターの表現を色、画質、筆の運びなどを忠実に再現できるよう、取り組んでいます。
 具体的には、印刷技法、用紙手配を通じて達成しています。ネット上の利用デジタル化は、比較すれば再現性には劣ります。これには「著作者人格権の同一性保持権侵害を招く可能性がある」との指摘も、できると考えます。
 弊社は『ドラえもんの最終話』という違法侵害商品の摘発に取り組みました。
 新聞・テレビ報道もされ「著作権侵害」を、広く告知出来るよう努めましたがその違法商品は、未だにネット上の販売に供され続けてています。気づけばネット上の侵害排除要請をする作業を、相変わらず取り組み続けている状況です。
 この負担は甚大です。このように「著作権侵害物の流通」の防御に逆行する制度設計には、断固反対いたします。
日本知的財産協会  インターネット・オークション等の隔地者間の取引においては、現物を提示して販売を行うことができないため、売主が商品情報の提供のために当該商品の画像を掲載することは必要不可欠であるといえよう。かかる観点から、商品画像の複製・掲載を可能とする権利制限を行うということについて、特段の異論はない。
 しかし、ネットオークションに限らず、他の媒体や画廊等においても同様の問題が想定できること、取引の対象となる商品は多種多様で、美術品以外の著作物も数多く存在すること、有体物に限らずデジタルコンテンツ等の無体物も取引の対象となり得ることから、「インターネット上」における「美術品等」の譲渡等のみを対象とした権利制限を設けることの意義は小さいと考える。また、権利制限を講ずるとしても、売主に対し、商慣行から乖離した、技術的保護手段などの過度な義務を課すと、取引市場全般に萎縮効果を及ぼすおそれさえ生じる。
 以上より、権利制限が必要であるとの趣旨には賛同するものの、要件の具体化にあたっては、更なる検討が必要であると考える。
日本ユニシス株式会社
  • 意見内容
     権利制限に対する考え方並びに立法化にあたっての配慮については同意見であります。
  • 意見提出の理由
     ネットオークションをめぐるIT技術に言及するわけではありませんが、絵画等のオークション対象品の劣化した情報掲載等を要件とするにせよ、これら劣化を修復する技術等も当然進歩する事が想定され、「すかし」等判別するさらなる技術にての対応が必須となり、サービスが複雑かつコスト高になる事が予測されます。この状況を想定すると、何らかの権利制限を検討する方向性となると考えます。
ざき司平法律事務所
  • 1 「(1)問題の所在」では、ネットオークション等の出品の際、商品画像の掲載(アップロード)を行うことが、著作物の「複製」及び「自動公衆送信(送信可能化)」に該当するのではないか、との問題提起を行ったうえで、「複製」及び「引用」に該当するか否かを検討されています。
     そして、「(2)検討結果」では、美術品等の画像の複製・掲載により商品情報を提供することは、売り主、特に隔地者取引の売り主に求められる義務として必要不可欠なものであること、また、アップロードを制限すると、本来著作権の及ぶ範囲ではない取引行為にまで、事実上著作権によって影響を及ぼせる結果になってしまうことを理由に、「権利制限を行うことが適当である」((2)4まとめ)と結論づけています。
  • 2 しかしながら、美術の著作物であっても、それが出版物という形をとる場合、表題、著者名、出版社名等、文字による伝達が可能な情報さえあれば商品を特定することは可能です。
     実際、一部の私企業が行うオンラインショッピングサイトでは、コミックの表題、掲載誌、出版社名及び著者名、価格、発売年月日等で商品を特定しており、商品の画像は使用されておりません。
     よって、画像の複製・掲載が隔地者取引の売り主に求められる義務として必要不可欠なものである、との事実を前提とすることには疑問を抱かざるを得ません。また、画像のアップロードを制限しても、直ちに取引行為に影響を及ぼすものではないことは、現にそのような取引が成立している事実から明らかです。
     権利制限の是非については、「美術品等」と一括りに捉えることなく、様々な形態の著作物が存在することを念頭においたうえでご検討いただくよう、強く要請致します。
  • 3 また、出版物の場合、その価値の根源はマンガ等が印刷された紙(有体物)ではなく、紙の上に印刷された情報にあります。
     そこで、画像の選択・見せ方によっては、アップロードされた画像に接することによって、出版物の価値そのものを享受できることになり、購入に対する動機付けが失われるという問題も存在します。
  • 4 更に、個人間のネットオークションでは、万引き等、違法な手段によって入手された出版物が数多く流通しているかのように聞き及んでおります。
     そのような流通については、これを保護する理由がそもそも見当たらないのですから、権利制限の根拠として譲渡権の侵害を一律に考慮することは誤りであると思料致します。
  • 5 以上の通り、権利制限の見直しについては、著作物の形態・性質、ネットオークションの利用実態等を踏まえた議論がなされることを要請致します。

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