第1節 デジタルコンテンツ流通促進法制について

個人・団体名 意見
インディゴ株式会社  該当箇所では、デジタルコンテンツ全般についてJASRAC(ジャスラック)のような、権利者による登録を前提とした「一任型の著作権管理方式」が俎上に上がっているが、Web上でのコンテンツ流通が「リアルタイムに複数のコンテンツの重ね合わせ」を行う「マッシュアップ」という新しい利用概念/形態にシフトしている状況を鑑みると、これら「マッシュアップ」サービスからの著作権問い合わせに「一任型の著作権管理方式」を具現化した「集権型」のデータベースにて対応するには、当該システムの運用負荷/コストを鑑みると現実的ではないと考える。
 それ故、83ページに記載のクリエイティブ・コモンズのように、コンテンツに「メタ情報」として技術的に埋め込まれた権利者の意思表示により、「分散型」で著作権管理を行う方が現実的であると考える。
  • Web上でのマッシュアップを想定した分散型の著作権管理/ライセンス体系の検討/整備が不可欠
  • 上記を想定した(特に、利活用の促進を円滑に進める観点から)、適正な技術仕様の検討/整備が不可欠
  • 上記を満たす著作権管理体系として、Web上での二次利用を視野に入れた国際的な取組である「クリエィティブ・コモンズ」の適用検討を提起したい
社団法人 日本書籍出版協会  主として書籍・雑誌・新聞等の出版物によって流通してきた文字・活字コンテンツは、あらゆるコンテンツの源泉であるといえます。最初に出版物として発行された文芸作品やコミック等が、その後、アニメや映画等の原作として二次利用、三次利用され、活用されることが急速に増加していますが、まず、著作物を最初に世に送り出す出版物が優れたものであってこそ、良質なコンテンツが派生し、デジタル化され利用される可能性が高まるといえます。このことは、知的財産推進計画の見直しに当たっても申し上げておりますが、文字・活字コンテンツの権利保護があってこそ、良質なデジタルコンテンツが生み出されていくことを十分に認識すべきであります。
 まして、デジタルコンテンツの流通促進を図るために、その源泉である文字・活字コンテンツをはじめとする創作者の持つ許諾権を制限するようなことのないように留意していただきますよう強く要望いたします。その意味で、提案されているような安易な強制許諾制度の導入等や、著作者人格権の特に同一性保持権の要件の見直し等については、原創作者の権利や利益を損なうことがないよう、慎重な検討が行われることを希望いたします。
日本放送協会  現在、放送番組の二次利用をより円滑に行う方策が各方面で議論されています。NHKとしても放送番組の二次利用に積極的に努めており、ルール作りのための協議も権利者団体等と積極的に行っているところです。
 しかし、過去の放送番組を二次利用する際の著作権制度上の課題もいくつか残されています。例えば、権利者の所在が不明の場合について、現行の裁定制度では手続きに要する期間が長く実際の二次利用に支障を来たす恐れがあったり、また、実演家が不明の場合にはそもそも裁定制度がないなどの問題があります。過去の放送番組の円滑な利用のために、引き続きこれら諸課題への対応を総合的に検討すべきであると考えます。
日本民主主義著作者総連合  民著総連は、コンテンツ流通促進法制の新設には賛成する。知識労働者の経済的地位向上のために、創作物の流通効率を最大化するシステムが必要だと考えるからである。
 しかし、デジタルコンテンツに限定するべきではないと考える。われわれが望む特別法モデルとしては、中間まとめ5ページに示されたウ案が近い。
 もちろん、経済財政諮問会議が提案するような、デジタルとアナログで区分した制度も検討に値するだろうし、インターネット上にある創作物の「利用実態等の調査や検討課題の整理」をすることも確かに大切である。だが、そうでないモデルも十分に検討していただきたい。
 民著総連の希望するシステムは、登録と同時に商用に適合的な新しい権利が発生し、同時に、著作権法の保護下から外れるということ、そして権利期間を設けて更新を行うようにし、登録及び更新には費用を必要とするが、更新を続ける限りにおいて権利が守られるというものである。
 また、フェアユースの要件を満たした二次利用に関しては、必ず許諾を与えなくてはならないとする(ただし、二次創作で得られた利益は一定程度還元する)であるとか、登録後更新されなかった著作物については商業的採算が合わなくなったものと見做してパブリックドメインとし、使用と利用を行いやすいようにすることも希望している。
 われわれは三大綱領において法人著作制度撤廃を掲げているが、法人著作制度に代わるものとしてこのシステムを提案している。
 何年かに一度巡って来る登録更新の度に、創作者本人に権利の確認をするという条件をつければ、たとえ弱い立場にいる知識労働者であっても、不利な条件で結んだ契約を何年かに一度見直すことが可能になる。創作者本人が次第に著名になり交渉力が増加していれば、より有利に契約を結びなおすことが可能である。
 すなわち、特別法に基づく登録は、一定年毎にすべての権利が創作者本人に復帰するものとし、再確認をとらなくてはならないものとする。交渉相手たる法人がさらに継続して著作権の譲渡なり使用許諾なりを得ようとする場合には、改めて創作者本人と契約交渉をしなければならないのである。これによって、零細な創作者保護にもつながるのである。
 さらに、中間まとめ10ページからの「(2) 著作権契約に関する課題」における権利管理について、民著総連から提案がある。
 現状は、「a 権利の集中管理による取組」に列挙された団体が集中管理が行っているという。しかし、それでは不十分であると考える。著作物の登録窓口の一元化が必要である。ただし応諾する場所は一つとするが、著作権管理のサービスや運用をする窓口は複数あるものとする。
 これは、著作権管理窓口業務とデータベース業務を分離することを意味している。
 すなわち、ある著作権がどの団体で管理されているのか統一的なデータベースで把握することで利用者の利便性を向上させつつ、著作権管理団体におけるサービスの多様化を図ることで著作権者の細かな需要に応えようというものなのである。
 データベースとしては一つにし、利用したい者がひとつの窓口に問い合わせれば、著作権者と必ず連絡が取れるようにする。こうすることによって利用の問い合わせを確実なものとなる。そして同時に、競争も起こりうるということである。
 この際、民主的創作者の利益を守るために必要なのは、データベースが一つになっていること、そしてその管理が中立的に行われているということである。
 データベース事業はあくまで登録と利用申請に対する応諾義務を持つだけであり、データベースに登録される際にその権利が常に信託されているとは限らないものとする。
 権利情報のみの管理の場合は相手を教えるだけになり、創作者当人が交渉に当たるものとする。一方で、著作権管理窓口が利用応諾交渉を肩代わりすることもありえる。
 ここで窓口業務と言っているのは、あるコンテンツを作成する際に、権利のクリアを行うであるとか、利用のための手続きを代行してくれたりする業務のことである。そのための交渉力は高いが料金が高いであるとか、ある業界についてはある特定の団体の交渉力が高い等々、多様性はあって良いだろうし、分野や目的毎に複数存在することがありえる。
 登録用の窓口業務と言うこともありうるだろう。どのように登録を行えば、例えば権利の束の分け方や信託と交渉のどちらにすればよいか等を創作者本人にアドバイスし、どう登録すれば収益を上げることができるかということをコンサルティングする事業も考えられる。
 こうすることによって、創作過程で生じる著作権上の諸問題、例えば映画撮影時に映りこんでしまった他者の創作物に関しての悩み等が解消されるようになり、民主的創作者が安心して創作できるようになるのである。
 著作権の侵害を恐れる萎縮がなくなるばかりでなく、創作活動に集中したいと希求する創作者も、自らの手で自らの作品を管理したいと思う創作者も、共に自身の要望に沿って主体的な選択が出来るようになり、経済的地位も改善されると考えられる。
 付言すると、創作者が創作活動の過程において不意に訴追の対象となる事由は著作権問題だけではない。中間まとめ9ページにも示されているように、著作権以外の権利関係に関する課題もある。民著総連も組合員を通じて啓蒙活動に励みたいとは考えているが、肖像権、プライバシーの権利、寺社や美術品の所有者との調整など様々な権利について、免責事項やガイドラインを設けるよう、あわせてお願いしたい次第である。
社団法人日本民間放送連盟  放送番組の二次利用は各放送事業者にとって経営上の重点目標であり、現状でも海外番販やビデオグラム化など様々な形態で実現している。それにも関わらず「放送コンテンツが死蔵されている」といった誤った認識のもとで「デジタルコンテンツ流通促進法制」が検討されるべきではない。そのうえで、さらなる放送番組の流通を促進するためには、著作権法制度の議論とは別に、各権利者のビジネス上の採算や戦略等に関する十分な検討が必要である。
 なお、著作権法上の課題については、本中間まとめで検討を委ねられている「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」で実施されたヒアリングにおいて、当連盟は、1著作隣接権の裁定制度の創設(放送権のみ許諾を得ている実演家から、放送以外への番組の利用許諾を改めて得る場合、当時出演した実演家の消息が不明となっていることがあるため、著作権者不明の場合と同様に著作隣接権に裁定制度を創設すること)、2裁定制度の運用方法の改善(例えば裁定制度の利用を前提として、不明な著作権者を捜すため、著作権情報センターのホームページへ当該著作物を含む広告を掲載することについて、著作権侵害としないよう何らか制限規定を創設すること)、3映画の著作物への共有著作権の行使と同様の扱いの導入(放送番組など多数の関係権利者が存在する場合、例えば、他のすべての権利者が許諾をしているにも関わらず、ただ1人の権利者が合理的な理由なく利用を拒絶するような状況においては、コンテンツ流通が阻害されることとなるため、共有著作権の場合と同様にそれぞれの権利者が“正当な理由がない限り同意を拒むことができない”よう規定すること)を要望しており、今後の同小委員会の検討に反映されることを希望する。
社団法人 日本レコード協会  「デジタルコンテンツ流通促進法制」を検討するに当たっては、著作権法の目的(著作物並びに実演、レコード等の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図ることにより文化の発展に寄与すること)が損なわれることのないよう、特に次の点に留意すべきである。
  • (1)コンテンツの流通促進は、権利の切り下げによるのではなく、権利者自らが行うビジネスの活性化の促進及び権利の集中管理事業の充実により達成すべきである。
  • (2)権利が報酬請求権に切り下げられた場合は、利用者は交渉を成立させなくても利用を継続することができるため、権利者が利用者と対等に使用料を協議することができなくなり、許諾権があることにより得られる利益を大きく下回る使用料とならざるを得ない。このように、権利の切り下げは、権利者が本来享受できる正当な利益を得ることを困難とし、かえってコンテンツの再生産を阻害し、日本のコンテンツ制作能力を低下させるおそれがあることに留意すべきである。
独立行政法人情報通信研究機構 知識創成コミュニケーション研究センター 自然言語グループ  インターネット上のあるいはインターネットを介したコンテンツの二次利用は、検索をはじめ言葉に関連する様々な情報処理技術の研究開発を行う上で、必要不可欠となってきている。しかし、現行の著作権法では二次利用に関する扱いが明文化されておらず、合法的に利用可能かどうかについての判断は個々の研究開発者や二次利用者の解釈に委ねられている。そのため、研究開発者や二次利用者の法的地位は不安定なものとなっており、そのことが大規模な研究開発を進める上での障壁となっている。したがって、研究開発におけるコンテンツの二次利用に対する法制の整備を期待する。法制が整備されることにより、コンテンツの流通が促進されるだけでなく、著作権違反者の検出など著作権者を保護するための技術の発展も期待できるものと考える。
社団法人 日本音楽著作権協会  デジタルコンテンツの流通促進に向けた方策は、特別法や新たな制度を導入するのではなく、現行制度下での具体的な問題を洗い出し、関係者間の努力によって解決すべきである。
 本来、著作物の利用に関するルールは、利用者と権利者との契約により形成されるべきものであり、「登録制度」や「フェアユース」などの制度によるべきものではない。また、国際化が進んだ社会で、安易に著作権を制限しようとすれば、ベルヌ条約をはじめとする国際条約に適合しなくなるおそれもある。
 昨今のコンテンツ流通促進を主張する議論には、コンテンツ・著作物の内容を充実させることよりも単に安易な流通を望んでいるものが多い。しかしながら、デジタル化・ネットワーク化の発達によりコンテンツの流通が益々盛んになっていく時代であるからこそ、コンテンツを構成する著作物の内容の充実がより重視されるべきであり、その適正な保護と円滑で公正な利用が実現しなければ、文化芸術の発展やコンテンツビジネスの隆盛は期待できない。そのためには、長年にわたって文化芸術発展の基盤として機能してきた著作権制度を充実・強化することが重要である。
 現在、当協会を含む創作者団体17団体では、過去の放送番組の二次利用等デジタル・ネットワークにおけるコンテンツの流通において課題とされている権利処理の円滑化に向けた取組として、作品情報や権利者情報のデータベースの整備とそれぞれの分野の団体のデータベースを包括したポータルサイトの構築に向けた準備を進めている。
 コンテンツビジネスの発展は、創作者や関係権利者も望んでいるものである。しかし、それは、安易な法改正や権利制限によるのではなく、利用者と権利者双方の真摯な努力によって実現すべきである。
日本知的財産協会  デジタル化・ネットワーク化の進展に即したコンテンツ振興戦略を策定するうえで、コンテンツの流通促進は重要なテーマであり、何らかの施策が講じられなければならない。かかる観点から、「デジタルコンテンツ」に着目した特別法は施策の一つになりえるが、提示されている案は、現段階ではいずれも実現可能性を欠いており、更なる検討が必要であると考える。
 なお、現行著作権法は、デジタル化・ネットワーク化の進展に対応しきれているとは言い難く、コンテンツの創造や流通、利用を阻害するおそれさえもある。従って、「デジタル化・ネットワーク化の下における著作権制度の在り方について、より総合的に検討を行っていくことが適当」(p.10)とする検討結果に賛同する。
日本ユニシス株式会社
  • 意見内容
     今後の検討の進め方については、「総合的に検討を行っていくことが適当とする」意見に賛成いたします。
  • 意見提出の理由
     最近のソーシャルコミュニティ、ブログ等インターネットの私的利用の変化や、Web2.0に見られる広域な参加型のビジネスを含めた利用の拡張については、総合的な検討が必要と考えます。

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