第2節 海賊版の拡大防止のための措置について

(1)海賊版の譲渡のための告知行為の防止策について

個人・団体名 意見
社団法人 日本映画製作者連盟  インターネット上で海賊版の譲渡の告知を行う行為を、著作権侵害行為とみなすことに賛成です。映画の海賊版DVD等がインターネットオークションなどに出品されることがまれでなく、それを防止するためには、出品者の情報開示請求をするなどの対策を取れるようにしていただく必要があります。
 なお、海賊版の譲渡のみならず、DVD等の譲渡が頒布権・譲渡権侵害となる場合についても、その譲渡の告知を行う行為を著作権侵害行為とみなすようにすべきであると考えます。なぜなら、そのような場合にも、当該譲渡を抑止する必要があり、また当該譲渡を行う旨の発信者情報開示請求を行えるようにする必要があるからです。
社団法人日本映像ソフト協会  「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会中間まとめ」(以下「本中間まとめ」と言います。)「第2節 1 海賊版譲渡のための告知行為の防止策について」に関し、以下のとおり意見を申し述べます。
 「本中間まとめ」11頁では、「海賊版を販売するために譲渡告知行為を行うことについて、権利侵害を構成するようにすることが適当である。」と提言していますが、当協会はこの提言に賛成いたします。
 海賊版は、一旦頒布されますとこれを回収して廃棄することが困難であり、頒布される前に防止することが必要です。
 特に、インターネットオークション等で海賊版の頒布が行われる場合には、広範囲に多数頒布されるおそれがあり、これを未然に防ぐ必要性が大きいと考えます。
 したがいまして、海賊版の頒布の前段階の譲渡告知行為を権利侵害と構成するよう要望いたします。
社団法人日本広告業協会  「インターネットは他の媒体と異なり、匿名性が極めて強い媒体である。」
 「海賊版をインターネットオークションで販売することが、海賊版蔓延を助長している。」
 「そのような問題行為を排除するためには、インターネット上で海賊版の譲渡告知行為を行なっている者も規制対象にすべきである。」
 今回の著作権法の改正において、以上の諸要素が現在明確化している課題だとするならば、当協会はあくまで顕在化している課題の解決を目的とする法改正を行なうべきであると考えます。
 インターネットオークションでの海賊版販売を規制することにつきましては、当協会を含めた広告業界として何の異論もありません。しかしながら、昨今の広告業における取り扱い領域の飛躍的拡大に伴って、広告業が関与するコミュニケーション活動の一端が、形式的に上述の規制対象になり得ることも可能性としては否定できません。
 したがって、善良なる事業者と悪質なる事業者を峻別するための文言は明瞭なるものを選定願いたく存じます。たとえば、「中間まとめ」16頁にあるように「『情を知って』などの一定の要件の下で著作権等を侵害する行為とみなす」では不十分であり、「海賊版と知って告知に関与した者」のような要件であれば、正当な広告事業者は除外可能と考えますので、どうかご検討願います。
 なお、そもそも「中間まとめ」における海賊版の定義にも疑問があります。
 11頁には、「著作権等の権利を侵害する物品(以下「海賊版」という)」とありますが、音楽・映画・放送番組・ゲームソフト等を違法複製した物品等のことを海賊版と表現するのが一般的と存じます。「中間まとめ」の定義では、権利侵害したものすべてが海賊版とも読めてしまい、「著作権法で許容される引用の範囲を逸脱した学術論文等までをも海賊版に含む」などということになりかねません。
 上述の「海賊版と知って告知に関与した者」との例示は、こうした一般的海賊版の定義に基づく提案であって「中間まとめ」の定義の上に立つものではありません。ゆえに「海賊版」に関する妥当な定義を併せてお願いする次第です。
社団法人日本民間放送連盟  インターネットオークションなどにおける、放送番組の違法複製物の販売については、放送事業者としても対応に苦慮しているところであり、“海賊版を販売するために譲渡告知行為を行うことについて、著作権侵害を構成するようにすることが適当”とした中間まとめの主旨に賛同するとともに、早急に法改正が実現することを要望する。
社団法人 日本レコード協会
  • (1)著作権等の権利を侵害する物品(「海賊版」)の譲渡のための告知行為を権利侵害とみなすことに加え、例えば私的複製物を公衆に譲渡するための告知行為のように、譲渡行為が違法となる(著作権法第49条第1項第1号参照)場合における告知行為も違法とすべきである。なぜなら、私的複製物については公衆への譲渡行為があった時点で初めて違法となり告知行為の段階では無許諾複製物とはいえないため、私的複製物の譲渡のための告知行為がオークションサイト等で行われてもプロバイダに対して発信者情報の開示を請求することができず、また出品者からもいまだ「私的複製物」であることの抗弁を許すこととなるからである。
  • (2)「情を知って」行われる譲渡告知行為のみを違法とする法制を採用する場合、「情を知って」の判断基準時は、告知行為の開始時点ではなく、個々の告知行為時点とすべきである。告知行為の開始時点では著作権等侵害物品とは認識していなかったが、その後、情を知るに至ったケースを実効的に取り締るためには、著作権法第113条第1項第2号と同様の規整とするのが適切である。
社団法人 日本音楽著作権協会  「権利を侵害する行為によって作成された物または同様の輸入物品の販売のためにインターネットを活用して譲渡告知行為を行うことについて、「情を知って」などの一定の要件の下で著作権等を侵害する行為とみなすこととすることが適当である」(16ページ)との結論を支持する。
 さらに、海賊版の流通を未然に防ぐ見地からは、インターネット以外のチラシやカタログなどを利用した一般的な広告手法による譲渡告知行為についても、興味を持つ人の間での伝播効果は高いと考えられ、対策を講ずる必要がある。「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)(仮称)」構想において主導的役割を果たそうとする政府の方針を踏まえ、早急に検討を進めるべきである。
日本知的財産協会  著作権等を侵害している物品(海賊版)の流通の拡大は、当協会としても憂慮すべき事態であり、流通拡大防止のための措置を検討することは喫緊の課題である。その一環として、海賊版の譲渡のための告知行為を権利侵害と構成すべきと結論付けている点には、権利の実効性を期する意味から、特に異論はない。但し、規定ぶりによっては、広告行為全般に萎縮効果を生じるおそれがあるため、「情を知って」等の一定の要件を課す等、その検討には慎重を期していただきたい。また、インターネットという媒体に限定した手当てとすべきかどうかについても、更なる慎重な検討が必要であると考える。
日本ユニシス株式会社
  • 意見内容
     本節にて取り上げられている海賊版の譲渡のための告知行為の防止策についての今後の進め方については、司法救済ワーキングチームにおいての検討にて取扱われる事に同意します。
  • 意見提出の理由
     本節にてまとめられている譲渡告知行為と実際の販売行為の行為類型1〜5において、現行法にて対応が難しいとされるものについては、(3)の検討結果にて述べられているように、その事由を立証する事そのものが難しい面があり、実践的でないとしているが、これに加え、不当な頒布を行おうとする者の行為は益々巧妙になる事が予測され、また、対応を余儀なくされる側としてもDRM等の技術をさらに高める対応をする事になる。その結果ここで紹介されている行為類型にもさらに巧妙な形態が発生する事が考えられ、解決策とならない事が予測される。従って、実践的な対応を含めた検討は、司法救済ワーキングチームにて取扱いが適当と判断される。

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