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1.IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について

個人/団体 意見
個人 IPマルチキャスト放送による地上波デジタル放送の同時再送信は、レコード製作者と実演家が実施目前である集中管理で十分対応が可能であり、あえて法改正してまで権利を縮小する理由がまったく理解できないが、現在有線放送が享受する不当な既得権を改めるとの指針は極めて画期的であり、実態をよく調査して慎重に検討してほしい。
個人 「IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信」について、集中管理体制による対応をもっと吟味してもよかったのではないか。有線放送の同時再送信に関する規定を現状に則して見直すとの方向性が示されたのは画期的だが、法制度の細部検討に当たっても、引き続き、権利保護と利活用促進とのバランスに配慮する必要がある。
個人 法制問題小委員会報告書(案)に対する意見
(IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について)

1.有線放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し
平成18年2月14日付文化庁長官官房著作権課「IPマルチキャスト放送の取扱いについて」は、「放送される実演の有線放送(同時再送信)は権利制限あり(イコール実演家は無権利)」と記して文化庁の見解を示している。
この文化庁の見解によって、放送される実演の有線放送(同時再送信)について、実演家は“無権利”という認識が広く一般的になっており、このことが“IPマルチキャスト放送は、著作権法上「自動公衆送信」と位置付けられ、番組の「放送」に当たっては権利者の許諾を求める範囲が「有線放送」に比べて広くなっている。そのため、関係業界等では、「通信・放送の融合」を進めるためにも、著作権法上IPマルチキャスト放送を「有線放送」と同様の取扱いにすることを要望している”(平成18年6月7日付文化審議会著作権分科会法制問題小委員会報告書案2ページ)という状況を生み出していると考える。
著作権法第92条第1項では実演家は有線放送権を占有すると定めているが、同条第2項第1号では、放送される実演を有線放送する場合には有線放送権は適用しないと権利を制限している。しかし、これは条文の形式的な文理解釈であって、実体的意味をもつ論理解釈ではないと考える。
第92条第2項第1号の立法趣旨は、実演が放送されれば、その放送波の利用は放送事業者の権利によって処理することとなるので、その放送事業者の権利を通じて実演家の権利を実質的にカバーしてもらうことを予定して、法律上は、有線による同時再送信には実演家の権利が及ばないとしたものであり、実演の放送についての許諾が放送を受信して行う有線放送までもカバーしていると考えたわけでは必ずしもない(加戸守行・著作権法逐条講義四訂新版486ページ)。

この立法趣旨に基づいて、実演家の団体は他の著作権者四団体(日本脚本家連盟、日本シナリオ作家協会、日本文芸家協会、日本音楽著作権協会)と連名で、昭和48年から有線放送事業者と包括的な契約を結び、その権利処理システムは、著作権審議会関係小委員会等で公的に認知され評価を受けてきている
又、この包括契約の有効性、合法性については平成17年8月30日知財高裁判決(コピライトナンバー.539.3−2006。梅田康宏「判例研究/CATVによる放送の同時再送信に関する「5団体契約」の有効性および適用範囲が問題となった2つの事件」参照)でも認められている。
このように、放送の有線放送による同時再送信について、実演家は“無権利”ではなく実体的に権利を有していると考えられ、著作権法第92条の立法趣旨に基づいて契約によって権利の実体を形成してきた歴史を踏まえると、報酬請求権ではなく著作者と同様に許諾権を定めるべきではないかと考える。例えば、現行法の場合、放送の同時再送信を止めようとすれば、出演時に放送事業者に否を意思表示すればよいが、法改正によって報酬請求権になると、同時送信を止めることは基本的に出来なくなる。

なお、仮に、現行第92条2項を改正して、「放送される実演を有線放送する場合」(第92条2項1号)に実演家の有線放送権を制限して報酬請求権を認めるとすれば、“契約に別段の定めがない限り”という趣旨に立って法改正がされるべきである。例えば、第94条(放送のための固定物等による放送)に見るように、実演家に報酬請求権を付与する規定にあって、「契約に別段の定めがない限り」(第94条1項)という定めがもつ意義は重要である。
又、他の適用除外(第92条2項2号イ、ロ)も見直して、少なくとも「有線放送する場合」については報酬請求権を認めることが配慮されてよいと考える。

2.IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し
法制問題小委員会報告書(案)は、「IPマルチキャスト放送の著作権法上の位置付け」について、「IPマルチキャスト放送は、IP局内装置までは、「同一内容の送信」が行われているが、局内装置から各家庭までの送信は、各家庭からの「求めに応じ自動的に行う」ものであることから、「自動公衆送信」であると考えられる」として、「IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信する場合」、実演家に許諾権が与えられていることを確認した上で、“報酬請求権に改めることが適当”と述べている。
著作権法上の権利形成の歴史を振り返って考えた場合、権利を切り下げるという形で法改正を行ったことがあっただろうか。著作権法制史から見れば、無権利の状態から権利を付与する、あるいは報酬請求権を許諾権にするという権利強化の流れではなかったか。

実演家は著作者同様許諾権が基本であり、そうでなければ実演の利用を積極的に許諾することはできない。又、実演の利用者と報酬を取り決める場合も、許諾権が背景になければ適正な報酬を定めることはできない。
文化芸術振興基本法は、著作者等の保護及び利用について国の責務を定め(第20条)、又、知的財産基本法は、知的財産の創造、保護及び活用に関する基本理念にのっとり、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を策定し、実施する国の責務を定めており(第5条)、さらにコンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律でも同様の国の責務を定めている(第4条)。こうした国の政策の全体的流れを考えると、現在認められている許諾権を引き下げることは理解し難いと言える。
個人 地上デジタル放送の完全実施は、実演家及びレコード製作者の送信可能化権の集中管理によって対応可能であり、実際にそうした方向での取組みが権利者並びに使用者の協議のもとに着実に進められているところである。これは、さまざまな困難を乗り越えて、公共の利便性を優先的に考えた画期的な取り組みである。しかしながら、実演家及びレコード製作者の送信可能化権を縮減する方向で報告書案が取り纏まったことはこれまでの建設的な取り組みに逆行することになり、また、国際条約上の観点からも問題が多いものと推察され、非常に残念である。
公共目的と権利保護とのバランスは非常に難しい問題である。知財立国を標榜するわが国において、権利者のみが権利を縮減されるのではなく、使用者・利用者が権利者に対して十分配慮した著作権法制度の整備を検討していく必要があり、これこそが国益に適うものと思料する。
個人 IPマルチキャスト放送を難視聴地域の補完とする考え方もあるようだが、NTTなど大手通信業者は現在このような過疎地域への設備投資を予定していないため補完にならない。
今回の報告書(案)では、IPマルチキャスト放送による「放送の同時再送信」を可能にするため、現状の許諾から報酬請求権に改める内容となっている。
実際にどのような手続きで実演家・レコード製作者がIPマルチキャスト放送に、有線放送業者に報酬請求を行うかは明らかになっていない。
仮に権利者がマルチキャストに対して、全曲報告を求めた場合、放送事業者は現状サンプル調査しか行っていないため対応することは不可能に近い。
また、IPマルチキャストの特性を考えると区域外再送信のおそれがあり、放送事業者にとっては看過できない大きな問題をはらんでいる。有線放送事業者が許諾を要する同時再送信に関しては、放送局が出す同意条件で再送信区域を制限することは可能である。
しかし、IPマルチキャスト放送が、非営利かつ無料で放送の同時再送信する場合、その範囲に関して放送事業者は制限することが出来ない。
法制問題小委員会報告書(案)では、「一定の限定を加える事を考慮すべきである」と記述されているが、この制限は現在の放送環境・創作環境を維持するために絶対に必要である。
当該地域の地上波放送の地域内限定で行われるべきである事はもちろん、基本的にはいわゆる「障害対策」に限定されるのが妥当である。
上記理由から著作権法上の改定を行う事により、創作環境に深刻な影響を与える一方で、当初の地上デジタル補完を目的とするには大きく利するところは無い。加入所帯が20万に満たないIPマルチキャスト放送に対し、同時再送信について有線放送並みの扱いを認める事による国としてのメリットが見あたらず、このような著作権改正については現段階では賛成できない。
個人 有線放送の同時再送信に対して、実演家及びレコード製作者(以下著作隣接権者といいます)に一切の権利が与えられていなかったのは、当時難視聴世帯対策だったためと理解しています。しかし、現状は、事業規模やサービスの展開内容も変化してきており、最低でも、通常の放送と同様な、報酬請求権が与えられて然るべきだと考えます。そういった方向で、報告書案がまとめられていることは、非常に歓迎すべきことだと思います。

ただ、一方で、地上デジタル放送に全面的に移行するにあたって、その公共の目的ということで、現在、著作隣接権者に許諾権が与えられている送信可能化権に対して、報酬請求権へと権利の引き下げの方向で、案が作成されていますが、著作権者は、集中管理によって許諾権が守られているわけですから、著作隣接権者に対しても、現在同様な取り組みをしている最中ですので、そういった方向で権利が守られてもよかったのではないかと思います。公共の利益と権利者の保護ということはこれでも十分果たされるのではないかと考える次第です。

上記、有線放送の実態の変化ということもありますから、地上デジタル放送の同時再送信の範囲を越えた部分では、権利の引き下げということ以外での対応をお願いしたいのと、今後ますます進むであろう放送と通信の融合に関しましても、実状を見据えた上で、権利保護とのバランスを常に意識した対応をお願いする次第です。
株式会社BMG JAPAN (報告書案26〜30頁について)
まず、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信を有線放送と同様に取り扱うことは、地上デジタル放送の完全実施という公共の利益に鑑み、やむを得ないと考えますが、その範囲(同時再送信)を越えて、実演家及びレコード製作者の送信可能化権を縮小するようにならないことを、強く要望いたします。
また、有線放送による放送の同時再送信については、昨今の有線放送の実態変化(事業規模・サービス内容等)を考えますと、実演家及びレコード製作者の権利を制限する理由が見当たらず、それら権利者に報酬請求権が与えられることを強く求めます。
さらに、具体的な法案検討にあたり、米国盤レコード等の、原則として放送二次使用料の対象外でありながら送信可能化権が認められているレコードについては、許諾権から無権利に切り下げられることがなく、少なくとも報酬請求権が付与されるよう、強く要望いたします。
個人 地デジ放送の2011年の完全実施に向けて、IPマルチキャスト放送による地デジ放送の同時再送信を有線放送と同様に取り扱う事は、同意しますが、アメリカ盤レコードなどの報酬請求権がきちんと付与されることを希望します。
個人 法制問題小委員会報告書(案)に対して意見を申し上げます。

「IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信」について権利の集中管理による対応が可能であったのでは無いかと考えております。
地上デジタル放送の完全実施に伴い、実演家及びレコード製作者の送信可能化権を縮小することが無い様に要望いたします。
今後の法制度の細部検討に当たっては公共性と権利保護のバランスへのご配慮をお願いします。
ただし、一連の流れで有線放送の同時再送信に関する規定が見直しされるということには大きな期待を持っております。
個人 有線放送の同時再送信において、実演家やレコード製作者の権利に制限が加えられることは、今後の日本の音楽に与える影響に鑑み再考の余地があると考えられる。権利者は適正な対価支払いを受けられるよう、ご考慮いただきたい。
社団法人日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター(CPRA) 1.「通信・放送の融合」を巡る問題を検討するにあたっての基本的視点
情報通信技術の発展は、新たな産業構造を生み出すことによって、実演家にとって出演機会の創出をもたらし、また、視聴者にとっても実演に触れる機会の増加をもたらすことになり、広く文化の発展に資するものである。しかしながら、コンテンツの創作に関わる者の利益や権利が蔑ろにされては、情報通信技術の発展によってもたらされるべき文化の発展を広く享受することはできない。このことは、報告書(案)26頁でも述べられているように、著作権法が「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与すること」を目的としていることから、「通信・放送の融合」を巡る問題を検討するにあたっても、改めて確認されなければならない。
今回、IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等が俎上に乗せられた背景には、報告書(案)2頁で述べられているように「通信・放送の融合」や地上デジタル放送の普及が関連している。しかしながら、実演家の権利を含む著作権法上の権利が、情報通信技術の発展を妨げているかのような誤った主張が存在することも否定できず、今回の改正に当たっては、このような不当な主張に偏ることなく、上記の視点から検討することが重要である。

2.IPマルチキャスト放送の著作権法上の位置付けを巡る議論
「放送・通信の融合」を巡る具体的な問題として、今回、著作権法上、実演家の送信可能化権が及ぶこととなるIPマルチキャスト放送を、「有線放送」と同等に扱うべきかが問題にされている。
しかしながら、著作権法上、IPマルチキャスト放送を「有線放送」と同等に扱うべきかが問題となるのは、実演家の権利との関係では、1放送の同時再送信の場合と2商業用レコードを用いた送信の場合だけであって、実演家の権利との関係では、これ以外の実演の利用については、ほとんど問題とならないことに留意すべきである。すなわち、IPマルチキャスト放送を用いた送信が、「有線放送」と同等に扱われることによって、これまで実演家の許諾を必要としていた放送番組の利用も自由になるかのような主張もあるが、これは全くの誤りである。「放送の同時再送信」と「商業用レコードを用いた送信」以外の有線放送については、原則どおり、実演家の許諾権が働くのであって、これまで築き上げられてきた契約慣行・秩序に基づいた実演家の権利処理が必要とされるのである。
また、1については、放送事業者の有する有線放送権を通じて実演家の利益を確保すべきであるという立法趣旨に基づき、芸団協が他の著作権者四団体との連名で、著作権法施行時から、有線放送事業者との間で包括的な契約を結び、実質的な権利処理の手続を形成してきたこと、2については、当センターが著作権等管理事業者として一任型による集中管理体制の整備を進めているところであり、許諾権が及ぶとしても、利用者において容易に利用することが可能になることなどに鑑みると、実演家の送信可能化権が及ぶこととされるIPマルチキャスト放送を、「有線放送」と同等に扱う場合の差異は、さほど大きなものではない。このように考えてみると、IPマルチキャスト放送について、どのように法的に評価すべきかという著作権法上の位置付けの問題ではなく、これに関係する利用者と権利者との法的関係をどのように調整すべきかという実質的な中味の議論こそ重要である。

3.今後引き続き検討を行う課題について
今回公表された報告書(案)では、放送の同時再送信については、IPマルチキャスト放送も有線放送も同等の取扱いとするとの方向性が示されたが、IPマルチキャスト放送による「自主放送」部分の取扱いについては、引き続き検討を行った上で結論を得るべきであるとしている(報告書(案)27頁)。既に、当センターにおいては、上述の通り集中管理体制の整備を進めているところであり、今後検討を行う場合にあたっても、この点に留意した検討が望まれる。
なお、報告書(案)28頁おいて、映画の著作物における実演家の権利の在り方については、今回の制度改正においては、従来の取扱いを維持することが適当とされている点について付言しておきたい。この問題は、昭和45年に現行著作権法が成立して以来、実演家全体に係わる問題として取り組まれてきたものである。今回の報告書(案)の記述によって、検討の途を閉ざすような誤解を与えるべきではなく、速やかに検討の場を再開するなど対応が望まれる。
個人 地上デジタル放送への移行に当たって、津々浦々までの放送の完全実施の実現という命題については異論はございません。その為に、同時再送信について有線放送と同様に取り扱うことについては問題ないと考えます。ただ、ひとつ忘れてはならないのは、洋楽のレコードについてのフォローだと思います。放送二次使用料の対象には入っていないにも係らず、送信可能化権が付与されている洋楽レコードなどについては、何らかの措置(報酬請求権等)がとられるべきと考えております。
個人 現在の報告書案が、地上波デジタル放送の完全実施が実演家およびレコード製作者の送信可能化権を縮小する方向にあることは大変残念な事です。地上波デジタル放送の完全実施とう公共性を配慮することは理解できるので、更なるご検討を要望します。
大阪弁護士会 1 有線放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し
(1) 結論
有線放送が立法当時予定されていた零細な事業ではなく、サービス内容等も多様化し充実してきていることに照らし、放送されている実演やレコード(以下、実演等という)を同時再送信するにつき、実演家やレコード製作者(以下、実演家等という)に対し、報酬請求権を付与することは、当該趣旨との関係において、常に理論的に正当化されるか、更に慎重な検討を要するものと考える。
以下、場合を分けて検討する。
(2) 地上波放送の本来的な視聴可能区域において、当該区域で視聴可能な放送内容が、有線放送により同時再送信される場合この場合、実演家等は、当初の放送における許諾において、その利益を確保していると考えられる。けだし、実演家等が実演等の放送を許諾するにあたっては、当該放送の視聴区域全体に放送されることを前提として許諾していると解されるからである。実演家等は、当該放送が、無線という形式で行われているか又は有線という方式で行われているかにつき、特段の利害関係を有している訳ではない。また、放送事業者において、有線放送による同時再送信がなされるという事情を考慮し、当該事情のために実演等の放送許諾の対価が減額(即ち、製作費の減額)されているという社会的実態は存しない。
大阪弁護士会 報告書案は、放送が有線放送において同時再送信される際、慣行上無償で行われてきたことを指摘している。しかしながら、その問題は、難視聴対策として行われてきた有線放送による同時再送信に関し下された昭和61年7月23日(山陰ケーブルビジョン)及び昭和62年6月10日(高知ケーブルテレビ)に関する郵政大臣裁定に由来する。そして、この裁定により、現時点では有線放送が相応の営利性をもつに至ったにもかかわらず、放送事業者において対価が支払われている実演等の放送を、無償で同時再送信することとなっている。問題は、実演家等に対し支払われた許諾料について、有線放送事業者が適切な分担をすべきであるにもかかわらず、無償で同時再送信がされていることである。いずれにしろ、この場合において、有線放送による放送の同時再送信により、実演家等の権利が限縮されているという関係は生じていない。
つまり、報告書案の指摘する問題についての利害関係は、放送事業者が実演家等に支払った実演等の放送許諾の対価が、有線放送事業者から回収されるような慣行を築くことにより調整されるべきである。実演家等に対する報酬請求権の付与は、上記実体に即した利害調整を反映していないと考えられる。
(3) 地上波放送の本来の視聴可能区域外において、有線放送により同時再送信される場合
この場合は、実演家等に対し報酬請求権を付与することには、合理的な根拠があると考えられる。けだし、実演家等は、自らの実演等の放送許諾に際し、当該地上波放送が視聴可能な区域において放送されることを前提として対価を算定しているのであって、当該区域を超えて実演等が放送されることについては対価を得ていないこととなるからである。
(4) なお、有線放送事業者の権利は、放送を受信して行うものには及ばないものとされているが(法9条の2 1号)、報告書案の述べる趣旨に基づき実演家等の報酬請求権を基礎付けるのであれば、当該規定についても見直しをし、有線放送事業者の権利を及ぼす方向で検討すべきである。

2 IPマルチキャスト放送による放送を同時再送信する場合の規定の見直し
(1) 結論
IPマルチキャストによる放送により同時再送信がされる場合、実演家等に報酬請求権を付与することが、常に理論的に正当化されうるのかについては、有線放送により同時再送信される場合と同様、その理論的正当性につき、更に検討を要する。
(2) 実演家の送信可能化権の範囲 
1において述べた通り、放送事業者による放送が、IPマルチキャスト放送により同時再送信される場合、それが放送事業者の放送の本来の視聴可能区域において行われる限り、「その全部又は一部につき、電気通信事業を営む者が提供する電気通信役務」が利用されるか否かによって、実演家等は何らの影響も受けない。
このような形態によるIPマルチキャストによる放送においては、形式的に自動公衆送信に該当するからといって、そこに実演家等の送信可能化権を及ぼす必要はないと考えられる。すなわち、放送事業者の放送の同時再送信については、実演家等の送信可能化権の対象外とし、当該同時再送信が、実演等の当初の放送許諾の範囲を実質的に超えていると考えられる場合に限り、実演家等に対し報酬請求権を付与すべきである。具体的には、当初実演等の放送許諾の際に予定されている放送の視聴可能区域を超えて同時再送信される場合、実演家等に報酬請求権が付与されるべきであると考える。
(3) IPマルチキャスト放送の基本的権利内容
IPマルチキャスト放送に関する非営利かつ無料の場合の規定、権利制限規定のあり方、著作隣接権の付与、一次固定のあり方等については、原則的に有線放送の場合に準ずるものにするという方向性については、特段の問題はないように思われる。
個人 「IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について (報告書案26頁〜30頁)」
私は一音楽ユーザーとして浜田省吾、久保田利伸等有能なアーティストの曲をこよなく愛する者であります。この度、地上デジタル放送の完全実施にあたり、その必要性については充分理解しているつもりであります。しかしながら、昨今のミュージシャン、アーティストを取り巻く著作権法上の事情を鑑みるに、最も優先されるべきアーティストとレコード製作者の権利がないがしろにされている傾向が見受けられるのではないかと懸念しております。
我々ユーザーが最も欲するのは、素晴らしい才能を持ったアーティストがその才能を遺憾なく発揮し、素晴らしい作品を作り続けてくれることであります。そのために、アーティストの権利とそれを手助けするレコード製作者の権利を守り、より多くの傑作を生み出す環境を整備することが、今後の日本の音楽文化を創造する上で必要不可欠なのではないでしょうか。
よって、私はアーティストおよびレコード製作者の権利、中でも送信可能化権を必要以上に縮小することにならないよう、要望いたします。私ども一般ユーザーに、より多くの素晴らしいい作品をエンジョイする機会を作ってくださるよう、強く要望いたします。
Recording Industry Association of America RIAA takes this opportunity to submit comments on the draft report on IP multicasting. We would like to begin by noting that we strongly support retention of the present system of exclusive rights rather than modification to introduce a system of rights of remuneration. It is our strong sense that exclusive rights provide a much better platform for making market based adjustments to changing market and/or technological conditions, and that licensing issues can properly be handled through voluntary collective administration rather than by reducing rights to mere compensation.

If you determine to move forward on the present idea of replacing exclusive rights with rights of remuneration--and we hope that you will not--it is a matter of the greatest importance that Japan ensures the equal treatment of foreign and domestic phonograms. While this issue has not received very much attention during the current debates, we are concerned that modification of the legal regime with respect to IP multicasting that would take it out of the "right of making available" which is subject to national treatment, and place it within the right of communication to the public which is subject to reciprocity, may result in the denial of protection to US and some other phonograms. We urge you to carefully consider this aspect of the proposed regime change, and ensure that US phonograms enjoy protection for IP multicasting and cablecasting under any new legal regime.

Thank you for your attention to this important matter, and feel free to contact me if you have any questions.
個人 ・送信可能化権を許諾権から報酬請求権に変更することは不当に財産権を侵害するようなものである。
・ただ、有線放送の同時再送信部分について報酬請求権としたことについては妥当だと思う。
個人 本報告書(案)の内容に賛成いたします。2006年中の出来るだけ早い国会において本報告書(案)の内容に沿った形で法改正の手続きが行われることを希望します。
また、報告書(案)2.6章の検討結果に記載のとおり、IPマルチキャスト放送による自主放送の取り扱い、およびIPマルチキャスト放送事業者に対する著作隣接権の付与等について、引き続き早急に検討されることを希望します。
個人 公共の利益の為、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信を有線放送と同様に扱うことは理解できますが、少なくとも既存の放送と同じようにアーティスト及びレコード製作者に報酬請求権を与えるべきだと思います。
社団法人音楽制作者連盟 1有線放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し(P.28)
新たに報酬請求権を付与することが適切である。
賛成
2IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し(P.28)
現在与えられている許諾権を報酬請求権に改めることが適切である。
中立
同時再送信の問題は、あくまで現行法下での取り急ぎの問題として、実演家団体の弾力的な許諾等により、解決されるべきであると考えます。しかしながら、実演家団体においてJASRAC(ジャスラック)と同様な包括許諾システムが出来ていない以上、止むを得ない措置であると考えます。
将来、日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター(CPRA)による集中管理体制の確立した際には、再度見直しをするべきであると考えます。

その他、総括
そもそも現在のような「放送と通信の融合」時代において、「放送」か「自動公衆送信」かによって、実演家の許諾権の制限のあり方を変えるという法律の枠組み自体が果たして実態に即しているかという点については、法改正等も含めた議論が必要と考えられます。
そもそも「放送」において実演家の権利が制限される趣旨は「放送の公共性」と説明されていますが、そのように実演家の権利制限を正当化しうるだけの「公共性」の認められる「放送」とは、果たして、現在、電気通信役務利用放送法等により拡大しつつある行政規制上の「放送」の全部といえるのか、現状では疑問を差し挟む余地もありますし、また他方で「自動公衆送信」の中にも従来の「放送の公共性」と同様のものが認められうるものが存在するのではないかとの疑念も生じてきています。このように、行政規制上の「放送」概念の拡大に伴って、著作権法上の「放送」の取り扱いを見直すべき必要性は高まっているものといえ、そのことは差し迫った、IPマルチキャストによる地上波デジタルの同時再送信の必要性の問題とは別に、十分な議論を尽くすべきと考えられます。
個人 意見その1 IPマルチキャスト方式は有線放送であることを明示されたい(P26〜27(1)基本的な考え方)

長野県栄村では県内民間放送を視聴できない集落が沢山(民放A,Bが7−32集落、民放C,Dが31−32集落が受信不能)あり、その解消のために平成15年12月より現在に至るまで、IPマルチキャスト方式により放送の同時再送信実証実験を以下の法的解釈の下に実施している。

電気通信役務利用放送であるが、試験研究の用に供されていることと、毎秒4メガビット以下であることから、電気通信役務利用放送法施行規則第三十八条第4項に該当するため、同法第十二条にある民間放送の再送信同意を得ずに実施している。

著作権法第二条九の二項(公衆送信のうち、公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信を有線放送という)に該当することから有線放送であると認識している。

著作権法第二条九の四項では、自動公衆送信とは、公衆送信のうち公衆からの求めに応じ自動的に行うものとあるが、(放送又は有線放送に該当するものを除く。)とあり、IPマルチキャストであれIPユニキャストであれ、公衆からの求めに応じて自動的に行う「自動公衆送信」であっても、それが九の二項で定義した有線放送に該当すれば、著作権上の定義では有線放送であると認識している。

著作権法第三十八条2項(営利を目的とせず、かつ、聴衆または慣習から料金を受けない場合には有線放送することができる)により、栄村での放送は著作権並びに著作隣接権が制限されている、と認識している。

しかるに、報告書(案)では、IPマルチキャストによる放送の再送信に限って有線放送と同等の権利制限や権利を認めようとの提案であるが、「有線放送と同様の取扱いとする」という中途半端な小手先の対応をするのではなく、法第二条九の二項の定義(公衆送信のうち、公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信を有線放送という)に従って、IPマルチキャストによる放送の再送信を「有線放送である」と明示すべきである。
「著作権法上において両者を区別することはかえって適切ではない」との認識であるならば、区別そのものを無意味にする観点からも、「IPマルチキャストを有線放送とする」方がすっきりする。

意見その2 IPユニキャスト方式でも有線放送と解釈できるケースがあることを明示されたい
(P26〜27(1)基本的な考え方)

著作権法第二条九の二項では、「公衆送信のうち公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信を有線放送」と定義し、著作権法第二条九の四項では、「自動公衆送信から放送又は有線放送に該当するものを除く」とあることから、公衆からの求めに応じて自動的に行うIPユニキャスト方式であっても、「同時受信性」が確保されていれば有線放送と解釈できるはずである。

オンデマンド配信は「同時受信性」が確保されない自動公衆送信なのでこれを法の条文上で有線放送と解釈することには無理があるが、リフレクターによるIPユニキャスト通信はその通信技法に差があるとは言え、社会的、文化的にはIPマルチキャスト通信と同視できることから、著作権法上の有線放送と解釈すべきである。

現に、国会や県会などの議会中継においては、IPユニキャストによる自主放送の自動公衆送信を、著作権法上の(有線)放送と解釈して、著作権法第四十条2項(国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人において行われた公開の演説又は陳述は、前項の規定によるものを除き、報道の目的上正当と認められる場合には、新聞紙若しくは雑誌に掲載し、又は放送し、若しくは有線放送することができる。)を適用している。
既に社会的に受け入れられているIPユニキャストによる議会中継放送を、著作権法上明示的に合法として扱うためには、「IPマルチキャストは放送でありIPユニキャストは放送でない」という定義をすべきではなく、「同時受信性」が確保できるものは全て有線放送である、と明示すべきである。

意見その3 VoDによる自動公衆送信でも利用形態によってはフェアユース法理適用で放送として扱うことを明文化されたい(P26〜27(1)基本的な考え方)

国会や県会などの議会中継は同時中継だけでなく、後日VoD配信が行われるケースがあるが、議会や委員会などで発言する全ての出席者の許諾を得てVoD配信しているとは限らず、著作権法第四十条2項を適用している可能性がある。
しかるに、そこには、「放送し、若しくは有線放送することができる」とだけあり、それ以外の自動公衆送信は含まれていない。
既に社会的に受け入れられている議会中継内容のVoD配信を違法化することなく受け入れるためには、インターネットへの送信がフェアユースである場合にそれを(有線)放送とみなすフェアユース法理、すなわち、著作権法に書いてある著作権の制限される場合というのはあくまで例であり、具体的なケースでは他の諸権利との比較衡量の上、適宜拡張解釈してよい、ことを明文化すべきである。

意見その4 IPマルチキャスト放送事業者にも電気通信役務利用放送法において、有線テレビジョン放送法と同様の、難視聴地域における再送信義務を課すことに賛成(P27 (1)基本的な考え方)

難視聴解消のためのIPマルチキャスト放送を事業化するためには放送事業者の再送信同意が必要であるが、IPマルチキャストによる番組同時配信を有線放送として扱うのであるから、その同意に応じない場合には総務大臣裁定制度により難視聴解消をはかれるよう、電気通信役務利用放送法にも有線テレビジョン放送法と同様の再送信義務を追加してもらいたい。

なお蛇足ながら、難視聴解消のためのIPマルチキャスト送信は光ファイバのみを前提とすることはできない。山間部で電波が通り難い難視聴地域は放送面での条件不利地域であると同時に、家庭まで光ファイバを敷設する資本のない情報通信面での条件不利地域でもある。そういう地域でIPマルチキャスト送信を行うためには伝送路帯域を考慮する必要があり、多少の画質劣化が発生するとしても、より高効率な圧縮形式への変換を認めるべきである。他に選択肢がない場合には、HD画像をSD画像に変換しての再配信も認めるべきである。
個人 意見その5 放送番組を受信して再送信するにあたっては電波による番組受信以外にも通信回線経由も想定されてくるため、通信回線経由での番組受信とその同時再送信を自主放送扱いとすべきではない(P24脚注12)

デジタル放送はSDI信号をMPEG-2に変換して電波にて発信しているが、今後の伝送効率化を鑑みると、IPマルチキャストによる通信回線での伝送用には、より圧縮効率の良いH.264/AVC方式が有望と言われており、放送局内部でのコンテンツ伝送用にもH.264/AVC形式のエンコーダ・デコーダが導入されつつある。

IPマルチキャストによる番組再送信にあたってはSDI信号を一旦MPEG-2に圧縮したものを電波で受信し、そこで改めてH.264/AVCに圧縮することが想定されているが、SDI信号から直接H.264/AVCに圧縮してIPマルチキャストで配信する方が画質や伝送帯域の有効活用面で優れており、そのために、今後は放送局内でH.264/AVCに圧縮してそこから通信回線経由でのIPマルチキャスト配信という形態も想定されて来る。

報告書(案)ではそれを自主放送として扱い有線放送として扱っていないが、 電波で受けようと通信回線で受けようと著作権上の扱いに差を儲ける必然性はなく、通信回線経由での番組受信とその同時再送信は自主放送としてではなく有線放送である、と整理すべきである。
個人 2. IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」「6.検討結果」「2IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し」(28頁以下)について

IPマルチキャスト技術を用いた有線電気通信の送信(以下「IPマルチキャスト放送」という。)により放送を同時再送信することについて、実演家及びレコード製作者に対して現行著作権法上認められている送信可能化権を二次使用料に関する報酬請求権に改めることについて反対である。現行著作権法上認められている実演家及びレコード製作者の送信可能化権を維持したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理し、利用料率を明確に定める新たな仕組みを早急に立ち上げることで、IPマルチキャスト放送を用いた地上デジタル放送の再送信を行う上では必要十分である。それにもかかわらず、地上デジタル放送の再送信を行うために充分な審議をせずに、実演家及びレコード製作者にとって大変価値のある著作隣接権を拙速に撤廃することは、実演家及びレコード製作者に対する配慮を欠き、結果として国際競争力あるコンテンツの育成に重大な支障を及ぼすことになる。
理由は以下のとおりである。

(1) IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになる
文化審議会著作権文化法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)(以下「本報告書案」という。)では、IPマルチキャスト放送のうち、放送を同時再送信する場合に限り、IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱うよう著作権法を改正することが提案されているが、IPマルチキャスト放送については、あくまでも現行著作権法上の「自動公衆送信」としての取扱いを堅持すべきであると考える。
すなわち、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになると考えられる。他方、IPマルチキャスト放送事業は、登録制の事業であり(電気通信役務利用放送法第3条)、また、放送内容等について地上放送事業者と同等の制約が課せられていないことから(同法第15条)、様々な性質を有する新規事業者が多数参入することが想定されることに留意しなければならない。レコード製作者においては、このような多数の新規参入事業者が仮に発生した場合、市販されたCDの音源を用いた「自主放送」がレコード製作者の許諾を得ずに行われることになるのではないかと大変憂慮しているのである。また、「自主放送」が広くなされることになると、実務的に二次使用料が名目的となり、その回収が困難となることが容易に想像できる。その上、CDの音源を用いた番組のみを流す「自主放送」がCDあるいは音楽配信よりも遙かに廉価で提供され、さらにコピーによる音質の劣化がないデジタル録音が容易にできるPCと親和性のあるIPマルチキャスト方式により「番組」が提供されることになるとすれば、消費者がCD等を購入しなくなり、レコード制作事業者にとっては死活問題となる。
このようなことになれば、コンテンツ制作について萎縮作用がもたらされ、その結果、我が国がコンテンツ大国となることは困難となるものと考える。

(2)競争力のあるコンテンツ育成のためにはコンテンツの利用許諾権が必要不可欠である
実演家及びレコード製作者としては、自己の保有するコンテンツを流通させることについては、自らの戦略に従って、当該コンテンツの価値の最大化を図るべく経営努力を行っており、二次使用料を受領することのみではコンテンツの価値の最大化を図ることができないことは明らかである。自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることは著作隣接権者としての基本的な権利であって、かかる権利なくして国際競争力のあるコンテンツを育成することなど到底できない。放送及び有線放送について許諾権がないのは、放送及び有線放送の持つ高度の公共性のためのいわば「特権」であって、既存のコンテンツの流通を容易にするために近視眼的にこの「特権」を安易に流用することは、我が国における将来のコンテンツ育成に大きな禍根を残すことになる。
個人 仮に、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信、さらにはそれに続くと懸念される「自主放送」についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱い、その結果、実演家又はレコード製作者において、これらに対する許諾権が撤廃されれば、例えば、自らの戦略にとって不都合な者が自らの意思に反してコンテンツを利用してしまうこと(例えば、競業他社によるIPマルチキャスト放送によるコンテンツの希釈化や、近い将来に同放送を行う事業者が多く登場した場合における無秩序なコンテンツの配信等が容易に考えられる。)が想定され、コンテンツプロバイダーとしての事業戦略(業務提携等)に大きな支障を来すことが予測される。

(3)コンテンツの流通促進のためには著作権の集中管理制度を整備することが最善の道である
以上のとおり、国際競争力のあるコンテンツを育成するためには、コンテンツ保有者がその意思に反するコンテンツの利用を差し止めることができるように、実演家及びレコード製作者に許諾権を残すことが必要不可欠である。
他方、許諾権を残したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理し、利用料率を明確に定める新たな仕組みを早急に立ち上げることにより、IPマルチキャスト放送事業者側の不都合が生じないことは明らかである(かかる新たな集中管理制度においては、例えば、技術的保護手段(DRM)あるいは技術的制限手段の存否、及びDRMにおけるコピー可能回数等を要素とした利用料率を定めること等が考えられ、立法的措置(デジタルコンテンツ立法)も検討の余地があろう。)。

(4)競争力のあるコンテンツ育成のために国際条約の改正も含めコンテンツの利用に関する立法をすすめるべきであって、条約に形式的に反しないことをもってIPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いに関する著作権法改正することができるとする議論には問題がある
本報告書案は、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様にし、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者に現在認められている送信可能化権を撤廃し、二次使用料の請求権に改めることの主な根拠として、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(以下「実演・レコード条約」という。)第10条及び第14条に反しないことを挙げている。

しかしながら、そもそも、実演・レコード条約は今から10年前の1996年に締結されたものであり、同条約が締結された当時の状況と現在の状況とは全く異なっており、同条約はIPマルチキャスト放送の存在を前提としていない。そればかりか、そもそも、現時点において、IPマルチキャスト放送の取扱いについて明示的に合意された国際条約は存在していない。
このような状況の下、実演・レコード条約第10条及び第14条の規定に反しないことをもって、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者の送信可能化権を撤廃することは根拠が薄弱である。(5)現状の技術のみを念頭においてのIPマルチキャスト放送の著作権上の扱いの改正は、技術の進歩により将来重大な違法複製・違法送信をまねく可能性が高い。
IPマルチキャスト放送が現状セットトップボックスを経由して行われており、そこにユーザーの恣意的な改造等が入り込む余地がないことから、現状ではIPマルチキャスト放送による違法複製・違法送信の可能性はほとんどない。しかしながら、法改正により著作隣接権者の許諾なしに送信ができる状態になった場合、ユーザーに負担を強いるセットトップボックスを経由しない放送が出現し、ユーザーが保有するPCによって直接その放送を受信できるようになることは容易に想像できる。一方、PCにおいてはソフト開発の自由度の高さから、現状は(少なくとも汎用的には)存在していないストリーミング放送のハードディスクへの固定化ソフト等が開発されるであろう事も充分に考えうる。(現実に、複製ができなかった筈の市販DVDは、専用ソフトによってPCで違法複製ができるようになってから既に久しい)。そうなった場合、著作隣接権者の許諾なしに放送されたコンテンツが違法に複製されて市場に出回ってしまい、著しい著作権侵害を引き起こしてしまうものと思われる。そういった事態を回避する為にも、許諾権を残したまま集中管理制度による利便性を図る事が、コンテンツ育成の為には必須であると思われる。
以上のとおり、現在我が国が保有する優良なコンテンツを保護し、将来にわたっても国際競争力のある優良な我が国発のコンテンツを育成するためには、一方で、自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることができる権利である許諾権を堅持するとともに、他方では、コンテンツの流通の促進を図るための新たな制度(集中管理制度等)を整備すること等を行うことが、最善の方法であると思料する。
日本行政書士会連合会 著作権法を改正して、ネット配信をケーブルテレビ並みに事前の許諾なしにできるようにしようという、いわゆる放送と通信の融合に反対する人はなかろう。世界的にもその方向は模索されている。
ネットでテレビを見られる仕組みを「IPマルチキャスト放送」という。ネットの仕組みの中を放送を流すのである。ネットでテレビ放送を同時に流すのである。この方法は、ある意味では放送と捉えることさえも可能である。しかしこう捉えると、著作隣接権者の権利がすり抜けていく。ではIPマルチキャスト放送は公衆送信かというとそうでもない。なぜならテレビで流している番組を同時送信するのだから、既に権利処理は済んでおり、著作隣接権者の許諾権を考える必要がないからである。
ところが問題はここにとどまらない。IPマルチキャスト放送業者が番組を自主制作した場合はどうなるかという問題がある。そしてそれがコンテンツとして保存される場合は、あたかもHPのような様相を呈する。すなわち、保存された番組を視聴者が選択して自由に引っ張るのは、視聴者がHP画面を見るのと同じであり、これは放送と見るわけにはいかず、通信ととらえなければならないとするところに真の問題が生ずる。文化庁著作権審議会はいち早くこの問題を議論したが、問題点が山済みであり、容易に結論を得ることができない。現在大きな問題は二つある。ひとつは放送と通信の融合を図るために著作隣接権者の許諾権を報酬請求権にして問題はないかということ、もうひとつは、著作隣接権者に許諾権を与えることを日本は著作権条約によって批准しているということである。

通信機能による放送を推し進めるためには、著作隣接権者の権利を報酬請求権とすべきである。なぜなら、通信における隣接権者の保護を図ったのは、通信が現在のような放送に類似した方法で一般大衆に届けられる形を想定してではなく、データバンクのように蓄積されたところから、利用者がデータを個々に引っ張る形が一般化すれば、レコードという形でデータを固定化しているレコード業者の事業の妨げになるからである。著作隣接権者の権利といわれるが、実演家の権利は、出演の契約によって事実上処理済であることに注意しなければならない。すなわち著作隣接権者の権利保護はほとんどレコード事業者の保護の問題である。これは基本的には放送を行う通信事業者とレコード事業者の契約の問題である。
次に日本が条約によって隣接権者の許諾権を認めているという問題がある。前述のように、通信がまだ放送類似の役割を果たすことが想定されなかった時代に批准した条約は場合によっては否決することもやむをえないと考える。そしてそれが正しい方向であれば、決して孤立はしない。
長野県 報告書(案) 3(2)(12ページ)において、
「この点、IPマルチキャスト放送は、IP局内装置までは「同一内容の送信」が行われているが、局内装置から各家庭までの送信は、各家庭からの「求めに応じ自動的に行う」ものであることから、「自動公衆送信」であると考えられる。」とされているが、
著作権法第2条第9号の2に規定されている有線放送の定義については、
「九の二 有線放送 公衆送信のうち、公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信」とされており、IPマルチキャスト放送は公衆によって同一内容の送信が同時に受信されるので有線放送の定義に当てはまる。自動公衆送信の定義には(放送又は有線放送に該当するものを除く。)とされていることから、有線放送の定義に当てはまるIPマルチキャスト放送は、自動公衆送信ではないと解釈できる。

本報告書の「IPマルチキャスト放送を早急に有線放送と同様の取扱いとする。」という主旨には賛成であるが、現在の著作権法でもIPマルチキャスト放送も有線放送と定義できるのであるから、法改正を行わなくても、国の見解を示すことで足りると思われる。ついては、国は早急に見解を示していただきたい。
個人 項目名:全般

要旨:「公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線通信」であるIPマルチキャストを「有線放送」では無いとする報告書(案)は、間違いであり、罪刑法定主義にも反する。

そもそもIPマルチキャストは、現行著作権法(以後「法」という)上、放送もしくは有線放送(「以後(有線)放送」と表記する)の定義である「公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う(有線・無線)通信の送信」を満たすため、IPマルチキャストは(有線)放送として著作権法上の権利を与えられまた権利制限を受けられる。

逆に、(有線)放送には該当しない送信に、(有線)放送にしか認められない権利制限(法38条2項、39条1項、40条2項等)を適用した場合、民事上の責任を負うだけでなく、刑事罰の対象ともなる。

そこで、罪刑法定主義により、ある送信が(有線)放送に該当するかどうかについては、法律文に基づく判断が必要である。

実際、長野県栄村では、IPマルチキャストを「公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線通信の送信」である有線放送として利用し、法38条2項により、地上波放送を著作権者等の許諾のないまま有線再送信している(電気通信役務利用放送法12条の再送信同意は、同法22条の適用除外により必要ない)が、有線放送の定義を法律以上に狭めようとする今回の報告書(案)では長野県栄村の行為は違法であるばかりか刑事罰の対象ともなりえることとなり、いまさらのそのような解釈は、とうてい許されるものではない。

有線IPマルチキャストが「公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線通信の送信」を満たすかどうかについては、まず「公衆送信」であることに議論の余地はない。次に「同一の内容の送信が同時に受信される」かどうかであるが、報告書(案)2.(1)○1でも、

決められた複数のネットワーク端末に対して、同時にコンテンツ(IPパケット)を送信することをいう。IPマルチキャストは、複数の宛先を指定して1回データを送信すれば

とあるとおりであり、送信者が一回だけ送信したコンテンツ(一個のIPパケット)は、ネットワーク中で複製され、同一の内容(IPパケット)が同時に、受信者に到着する。なお、報告書(案)のこの部分には技術的間違いがあり、正しくは、

不特定の(一般には複数の)ネットワーク端末に対して、同時にコンテンツ(IPパケット)を送信することをいう。IPマルチキャストは、一個の宛先(IPマルチキャストアドレス(テレビのチャンネルに相当する))を指定して1回データを送信すれば

である(これについてはIPマルチキャストの技術規格であるRFCを引用した別の意見として提出した)が、「同一の内容の送信が同時に受信される」点に違いはない。
最後に(有線)放送であるためには「公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う」と、受信の主体が「公衆によって」であるという要件があるが、報告書(案)では、ここに混乱があり、(有線)放送を受信可能な者である公衆と、(有線)放送の実際の受信者である公衆とが混同されているようである。

例えば、放送を受信可能な者は、放送局の電波到達範囲に受信機を持つ者であるが、そのうち放送の受信者となるのは実際に受信機にアンテナを繋ぎ受信機を作動させチューナーを当該放送に合わせているものだけである。

つまり、後者は前者の不特定の部分集合であるが、前者が公衆、すなわち、特定多数、不特定多数、不特定少数であるとき、その不特定の部分集合である後者は、不特定多数、不特定少数の公衆である。

IPマルチキャストにおいても、IPマルチキャストを受信可能な者は当該マルチキャスト到達範囲に受信ホストを持つ者であるが、そのうち放送の受信者となるのは実際に受信ホストを作動させ当該マルチキャストグループに参加しているものだけである。

報告書(案)2.3(2)の「IPマルチキャスト放送の著作権法上の位置付け」には、

有線電気通信設備を用いた送信が著作権法上の有線放送と解されるには、

○1有線電気通信設備により受信者に対し一斉に送信が行われること、
○2送信された番組を受信者が実際に視聴しているかどうかに関わらず、受信者の受信装置まで常時当該番組が届いていること

が必要であると考えられる。

とあるが○2の記述は、法律のどこにも根拠がないばかりか、「受信者」の定義が著作権法と矛盾している。

「公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信される」という著作権法の放送の定義の文言に従えば、「内容」を「受信」するのは装置ではなく公衆である。

そこで、著作権法上の(有線)放送の定義に関してあえて「受信者」という言葉を使うにしても、「受信者」といえるのは「「内容」を「受信」する「公衆」」であり「送信された番組を実際に視聴していない者」は受信者ではない。
個人 そこで、○2を、著作権法で放送を定義するのに使われた用語を使い書き直すと、

○2送信された内容を受信している者には、常時当該内容が届いていること

となるが、これはあたりまえのことであり、また、送信された内容を受信している者ではなくなったものには当該内容が届く必要がないことも、あたりまえである。

また、

この点、IPマルチキャスト放送は、IP局内装置までは「同一内容の送信」が行われているが、局内装置から各家庭までの送信は、各家庭からの「求めに応じ自動的に行う」ものであることから、「自動公衆送信」であると考えられる

とあるが、この論理には、IPパケット形式、ISPの業務形態、電気通信役務利用放送の業務形態のいずれの点でも無理がある。

まず、IPマルチキャストパケットには一般のIPパケット同様に送信者のIPアドレスが含まれており、それ以外の装置を送信者と捉えるのは、IPパケットの解釈として無理がある。例えば、あるIPアドレスの送信者が権利侵害をした場合、それを中継したIP局内装置までもが権利侵害の送信をしたことになってしまう。

次に、ISPの業務形態として、一般に、ISPの個々の「IP局内装置」には少数の他の「IP局内装置」と少数の特定の顧客が接続されており「IP局内装置」を送信者と捉えるとその送信は特定少数に対するものであり、そもそも公衆送信ではなく、自動公衆送信に対する著作権法の規制は受けない。

最後に、電気通信役務利用放送の業務形態では、事業者はIPマルチキャストの送信者(電気通信役務利用者)とISP(電気通信役務提供者)の2者にわかれ、前者は後者にとっての顧客である。これは、放送法における委託放送事業者と受託放送事業者の関係にも似ているが、電気通信役務利用放送法において放送事業者と認めているのはIPマルチキャストの送信者のみである。ケーブルテレビを有線テレビジョン放送法ではなく電気通信役務利用放送法を用いて行った場合も同様で、放送事業者はヘッドエンド側であり伝送路保有者は電気通信事業者である。この時、電気通信事業者内部の装置について論じてIPマルチキャストが放送であるかどうか認定するのは、電気通信事業法関連では意味のあることかもしれないが、著作権法上は、その文化・社会に与える効果には電気通信事業者の内部構造は影響しないので、(有線)放送であるかどうかは社会的見地から見るべきで、やはり不適切である。

以上のように、IPマルチキャストは著作権法の「公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う(有線・無線)通信の送信」であり、現行法上も(有線)放送に該当する。
個人 項目名:2.2(1)○1

要旨:IPマルチキャストの様態についての技術的理解が、根本的に間違っている。

報告書案2.2(1)○1には

A)マルチキャストとは、コンピュータネットワークにおいて、決められた複数のネットワーク端末に対して、同時にコンテンツ(IPパケット)を送信することをいう。

B)IPマルチキャストは、複数の宛先を指定して1回データを送信すれば、通信経路上のルータがそのデータを受信して、次の複数のルートに自動的にコンテンツを送信する仕組みであり

C)IPマルチキャスト放送の主な特徴としては、以下の点がある。
C.1)○閉鎖的ネットワークを用いてコンテンツの配信を行う。
C.2)○放送センターからは、IP局内装置に対して全番組が常に配信される。
C.3)○最寄りのIP局内装置からは、ユーザーが選局した番組のみが配信される(リクエストに基づく送信)。

との記述があるが、すべて間違いであり、正しくは、

A)マルチキャストとは、コンピュータネットワークにおいて、不特定のネットワーク端末に対して、一個のコンテンツ(IPパケット)を送信することをいう。

B)IPマルチキャストは、一個のマルチキャストアドレスである宛先を指定して1回データを送信すれば、通信経路上のルータがそのデータを受信して、次の複数のルータに自動的にコンテンツを送信する仕組みであり

C)IPマルチキャスト放送の主な特徴としては、以下の点がある。
C.1)○一般に、開放的ネットワークを用いてコンテンツの配信を行う。閉鎖的ネットワークを用いることも可能である。
C.2)○送信者から、送信者に隣接するIP装置に対して全番組が常に配信される(リクエストに基づかない送信)。IP装置からは、ある番組を選局したユーザーがその先に居るIP装置にのみ、当該番組は中継される。
C.3)○最寄りのIP局内装置からは、ユーザーが選局した番組のみが中継される(リクエストに基づく中継)。

である。修正されたい。以下、個々の部分について解説する。

デジタル衛星放送の草分けであるDVBが合意されたのは1993年であるが、IPマルチキャストの最初の標準であるRFC1112は、その遥か以前の1989年に策定された。インターネットにかかる各種標準はもっぱらIETFにより策定されRFCとして通し番号を振られて公開されている(IPv6の標準も、そのひとつである)が、RFC1112は、現在も有効な、IPマルチキャストに関する標準である。
個人 このRFC1112やその他のRFCに従い、報告書(案)の間違いを個別に指摘する。

まず、

A)マルチキャストとは、コンピュータネットワークにおいて、決められた複数のネットワーク端末に対して、同時にコンテンツ(IPパケット)を送信することをいう。

であるが、RFC1112に、

The membership of a host group is dynamic; that is, hosts may join and leave groups at any time.There is no restriction on the location or number of members in a host group.

とか

A host group may be permanent or transient.A permanent group has a well-known, administratively assigned IP address.It is the address,not the membership of the group, that is permanent; at any time a permanent group may have any number of members, even zero.

とあるように、マルチキャストされたIPパケットが送られる先は「決められた、、、ネットワーク端末」ではなく、IPパケットが送られた瞬間にマルチキャストグループ(TVのチャンネルに相当)のメンバーであるホストに対してだけである。マルチキャストグループのアドレスは誰かに固定的に与えられる場合もあるが、それを誰が受信するかは、あるいは誰も受信しないかは、受信者側が決めることで、送信者は受信者がいるかいないかも知らない。

また、同じくRFC1112に、

IP multicasting is the transmission of an IP datagram to a "host group", a set of zero or more hosts identified by a single IP destination address.

すなわち「an IP datagram(一個のIPパケットのことである)」を「to a"host group"」に送るとの記述からも明らかなように、送信者が送るパケットは一個であり、途中の中継機器(IP局内装置を含むが、それに限定されるものではない)で複数の送信が行われる。

すなわち、報告書(案)の、

A)マルチキャストとは、コンピュータネットワークにおいて、決められた複数のネットワーク端末に対して、同時にコンテンツ(IPパケット)を送信することをいう。

は、正しくは、

A)マルチキャストとは、コンピュータネットワークにおいて、不特定のネットワーク端末に対して、一個のコンテンツ(IPパケット)を送信することをいう。

である。

次に、

B)IPマルチキャストは、複数の宛先を指定して1回データを送信すれば、通信経路上のルータがそのデータを受信して、次の複数のルータに自動的にコンテンツを送信する仕組みであり

であるが、RFC1112に、

IP multicasting is the transmission of an IP datagram to a "host group", a set of zero or more hosts identified by a single IP destination address.

とあるように、IPマルチキャストのあて先は複数ではなく一個の「a "hostgroup"」である。
個人 すなわち、

B)IPマルチキャストは、複数の宛先を指定して1回データを送信すれば、通信経路上のルータがそのデータを受信して、次の複数のルータに自動的にコンテンツを送信する仕組みであり

は、正しくは

B)IPマルチキャストは、一個のマルチキャストアドレスである宛先を指定して1回データを送信すれば、通信経路上のルータがそのデータを受信して、次の複数のルータに自動的にコンテンツを送信する仕組みであり

となる。

次に、

C.1)○閉鎖的ネットワークを用いてコンテンツの配信を行う。

であるが、RFC1112に、

For a store-and-forward network like the ARPANET or a public X.25 network, all IP host group addresses might be mapped to the well-known local address of an IP multicast router

との記述があるようにIPマルチキャストは、一般に"public"ネットワークで行われるものであり、特に「閉鎖的ネットワークを用いてコンテンツの配信を行う」ものではない。もちろん、公衆網で利用可能な全てのIP技術はそのまま閉鎖的網でも利用可能ではあり、閉鎖的網でIPマルチキャストを利用することも可能であるが、それはIPマルチキャストの「主な特徴」ではない。

実際、IPマルチキャストの初期のころから、その実験は公衆網の上で不特定多数が参加して行われてきた。

すなわち、

C.1)○閉鎖的ネットワークを用いてコンテンツの配信を行う。

は誤りであり、正しくは、

C.1)○一般に、開放的ネットワークを用いてコンテンツの配信を行う。閉鎖的ネットワークを用いることも可能である。

となる。

次に、

C.2)○放送センターからは、IP局内装置に対して全番組が常に配信される。

という認識は、前半の「放送センター」も「IP局内装置に対して全番組が常に配信される」も、どちらも間違いである。

まず前半の「放送センター」であるが、一般にIPマルチキャストには「放送センター」という概念はなく、RFC1112のLevel1の技術的要件

Level 1: support for sending but not receiving multicast IPdatagrams.

Level 1 allows a host to partake of some multicast-based services, such as resource location or status reporting, but it does not allowa host to join any host groups.An IP implementation may be upgradedfrom level 0 to level 1 very easily and with little new code.Onlysections 4, 5, and 6 of this memo are applicable to level 1 implementations.

を満たす端末なら、誰でも、各マルチキャストチャネルに番組を配信することができるし、その要件は、

An IP implementation may be upgraded from level 0 to level 1 very easily and with little new code.

とあるとおりで、今日ではほぼ全ての端末が満たしている、すなわち「閉鎖的ネットワーク」の運用者に限らず、誰もが放送センターになりうるわけである。もちろん、ISPはマルチキャストの送信者となりうるものにさらなる制約を加えることもできるが、それはIPマルチキャストの「主な特徴」ではない。
個人 後半の「IP局内装置に対して全番組が常に配信される」も間違いであり、RFC1112に

Internetwork forwarding of IP multicast datagrams is handled by"multicast routers" which may be co-resident with, or separate from,internet gateways.A host transmits an IP multicast datagram as a local network multicast which reaches all immediately-neighboring members of the destination host group.If the datagram has an IP time-to-live greater than 1, the multicast router(s) attached to the local network take responsibility for forwarding it towards all other networks that have members of the destination group.

とあるように、IPマルチキャストで番組が配信されるのは、"towards all other networks that have members of the destination group"に対してのみである。即ち、とあるマルチキャストグループに関して、局内外のIP装置の先に当該マルチキャストグループの受信者が存在しない場合、当該IP装置に当該マルチキャストグループの番組は配信されない。

すなわち、

C.2)○放送センターからは、IP局内装置に対して全番組が常に配信される。

は間違いであり、正しくは、

C.2)○送信者から、送信者に隣接するIP装置に対して全番組が常に配信される(リクエストに基づかない送信)。IP装置からは、ある番組を選局したユーザーがその先に居るIP装置にのみ、当該番組は中継される。

である。

C.3)○最寄りのIP局内装置からは、ユーザーが選局した番組のみが配信される(リクエストに基づく送信)。

も、同様であり、またIPマルチキャストの送信者のIPアドレスは、一般のIPパケットと同様に各パケットのヘッダに記録されており、それ以外のものを送信者とは言わないのは、一般のIPパケットの中継の場合と同じであり、C.3)は正しくは、

C.3)○最寄りのIP局内装置からは、ユーザーが選局した番組のみが中継される(リクエストに基づく中継)。

となる。
個人 項目名:2.2(1)○2、2.2(2)○2

要旨:電気通信役務利用放送法では登録が不要で規制がない場合も多く、また、在来型有線放送も電気通信役務利用放送として行え、その場合の規制はIPマルチキャストと同じである。

電気通信役務利用放送法について、報告書(案)2.2(1)○2には、

IPマルチキャスト放送を行う事業者は、事業の開始に当たり、同法に基づく総務大臣の登録を受けなければならない。

とあるが、間違いであり、同法22条1項が適用される場合には、同法の規定(報道の自由にかかわわる同条2項の例外を除く)は一切適用されない。すなわち、事業者としての登録は不要であり、報告書(案)にある、

ア)放送事業者の放送を再送信する場合には、当該放送事業者の同意が必要である(同法第12条)
イ)正当な理由なく業務区域内での役務提供を拒むことができない(同法第14条)
ウ)番組準則、放送番組審議機関等放送法の関連規定を遵守しなければならない(同法第15条)

という義務も負わない。

適用除外の条件は、同項の記述の他、同項より委任された電気通信役務利用放送法施行規則38条にある。

同法同条2号には、

有線テレビジョン放送法第二条第一項に規定する有線テレビジョン放送に該当する電気通信役務利用放送であって、その規模が総務省令で定める基準を超えない電気通信役務利用放送設備により行われるもの

とあるように、在来型有線放送(いわゆるCATV)は、有線テレビジョン放送の規律の下ではなく電気通信役務利用放送として行うことも可能(その際、有線テレビジョン放送法31条の規定により、有線テレビジョン放送法の規制は受けない)で、報告書(案)の2.2(2)○2は不正確である。

なお、このように有線テレビジョン放送法で規制されない在来型有線放送が著作権法上有線放送としての特別扱いを受けることは言うまでも無いが、つまり、IPマルチキャストと在来型有線放送の扱いを著作権法で異なるものとする根拠に、規正法の違いを持ち出すことはできない。

電気通信役務利用法22条3号で、同法の適用除外とされる、

その送信の技術及び役務の提供条件等からみて受信者の利益及び電気通信役務利用放送の健全な発達を阻害するおそれがないものとして総務省令で定める電気通信役務利用放

は、電気通信役務利用放送法施行規則38条4項に、

一 電気通信役務利用放送及びその受信の技術の発達のための試験研究の用に供される電気通信役務利用放送
二 一月以内の期間を限って行われる電気通信役務利用放送
三 放送番組を送信するために使用されるすべての電気通信設備(電気通信役務利用放送の業務を行おうとする者が設置するものを除く。)を電気通信事業を営む者が電気通信役務利用放送の業務を行おうとする者に専用させる場合を除き、電気通信役務利用放送の業務を行おうとする者の放送番組に係る信号の送信時に、当該信号を送出するための装置の出力端子における一の放送番組に係る信号の伝送速度が毎秒四メガビット以下である電気通信役務利用放送

とあるが、特に3号の「毎秒4メガビット以下」という条件は、光ファイバーを前提としてない全てのIPマルチキャストが満たしていると考えられる(ADSLやケーブルインターネットで、毎秒4メガビット以上の速度が安定的にでる加入者は稀であり、より多くの視聴者を獲得するためには、伝送速度は4メガビットよりはるかに小さくなる)。

実際、長野県栄村では、ADSLを用いた電気通信役務利用放送事業を行い、地上波を毎秒4メガビット以下のIPマルチキャストにより再送信しているが、この適用除外規定により、電気通信役務利用放送法上の登録も同法12条の再送信同意も不要であり、取得していない。著作権法上も有線放送として著作権法38条2項により、著作権者、著作隣接権者の再送信同意を得る必要もない。
個人 項目名:2.1(2)、2.2(1)○3

要旨:難視聴解消のためのIPマルチキャスト放送を既に行っている長野県栄村を、実態の例として加えるべきである。

長野県栄村では、電気通信役務利用放送法の適用除外の規定に基づき、同法の登録を受けずに電気通信役務利用放送を行っているが、このような放送を除外す
ることは、著作権法改正で一部大規模事業者の実態のみを反映することになり、不適切である。

まして、報告書(案)2.1(2)では、

難視聴地域における伝送路として、有線放送に加え、IPマルチキャスト技術による地上デジタル放送の再送信を有効な手段として挙げている

と、IPマルチキャストを難視聴の解消に活用しようという趣旨がみられるが、長野県栄村ではまさに難視聴の解消のためにIPマルチキャストを利用しており、他の事業者に先んじて、実態例として取り上げられるべきである。

また、この際、報告書(案)2.2(1)○3の、

これらの事業者は、CSの再送信等を中心にサービスを行っており、現在のところ、地上放送やBSの再送信は実施していない。

という記述は、長野県栄村については、

地上放送の再送信を中心にサービスを行っている

とするのが、適切である。
個人 項目名:1

要旨:国会ですら既に「自動公衆送信」を「有線放送」とみなす著作権法のフェアユース解釈を採用しており、報告書(案)はその実態に追従できていない。

報告書(案)1.には、

こうした中、文化審議会著作権分科会においても、急速に進む技術革新や新たなビジネスの登場、グローバリゼーションの進行等に対応するため、著作権に関する様々な課題について、時宜を逃さず検討を行ってきたところである。

とある、確かに文化審議会著作権分科会は時宜を逃さず検討を行ってきたかもしれないが、少なくともその結果としての時宜を逃がさない法改正には至っておらず、急速に進み今も進んでいる技術革新の結果、旧来の法解釈も報告書(案)の内容も、現在の社会には通用しない。

例えば、国会をはじめ各地の議会では、その審議をインターネットに生中継し、また過去の審議をVoD配信しているが、その際「政治上の演説又は陳述」には著作権法40条1項が適用されるため著作権法上の問題は生じない。

しかし40条1項に該当しない細かな質疑などのやりとりは、同条2項の対照であり、著作権者(多くは発言者)の許諾なしには「新聞紙若しくは雑誌に掲載し、又は放送し、若しくは有線放送すること」しか認められない。

それにもかかわらず、現実には、長年の間公然と、著作権者の許諾なしに、国会等の審議はインターネットに生中継され、またVoD配信されている。

これは、議会も含め社会全体が、このような行為を正当、合法と認めていることに他ならない。

審議の生中継は、IPユニキャストとリフレクターによる自主放送であり「公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う電気通信の送信」であることから、これを放送あるいは有線放送として、40条2項を適用するという解釈は可能である。

しかし、審議のVoD配信については、著作権法の定義をどう解釈しても「放送」や「有線放送」とならない。

そこで、議会も含めた社会は「自動公衆送信であろうがなかろうが、実質的に放送や有線放送と同様であれば(生中継)、あるいはそうでなくても同程度に社会の役にたてば(VoD)、著作権法上は放送や有線放送と同様の権利制限を享受できる」という法解釈で、著作権法を運用している。

この解釈は、いわゆる「フェアユース」法理に基づくもので、旧来の判例などでは認められていなかったが、急速に進んだ技術革新の結果に著作権法の改正が追いついていない現状では、議会に限らず社会の各所で見られ、もはや「フェアユース」を否定しては、社会が成り立たない。
個人 ところが、報告書(案)ではあいかわらず「放送」、「有線放送」、「自動公衆送信」の間の非本質的な相違にこだわるばかりか、著作権法にはない要件を持ち出して、インターネット送信を全て「放送」や「有線放送」ではないとし、そのうち、IPマルチキャストによる放送の再送信のみを、有線放送として扱おうとしており、議会を含め社会全体の著作権法の運用と大きく乖離している。

この際、「放送」、「有線放送」、「自動公衆送信」といった制度上の細かな差にはとらわれず、フェアユース法理の明文化によって、これまでの技術の進歩に著作権法の条文を整合させ、今後の進歩にも追随できるようにすべきである。

なお、フェアユースを導入すると何が権利侵害であるか裁判をしてみないとわからなくなるとの懸念もあるが、現状の複雑化した著作権法は既にその状態に達しているので、いまさら問題は増えることはないと思われる。

ただ、そのような基準で権利侵害に刑事罰を与えるのは不適切であり、厳罰化は論外で、命令違反などの例外的な場合を除いて民事に任せるべきであろう。

また、著作物の利用をめぐっての民民の話し合いの促進や、何がフェアユースかについての判断基準の確立のため、準司法的機関として「著作物利用調停センター」や「著作物利用調停事業者」のようなものを設けると、よいかもしれない。
個人 項目名:1

要旨:家族内での電子メイルによる著作物のやりとりやサーチエンジンのキャッシュにはフェアユース解釈を採用するしかないが、報告書(案)はその実態に追従できていない。

報告書(案)1.には、

こうした中、文化審議会著作権分科会においても、急速に進む技術革新や新たなビジネスの登場、グローバリゼーションの進行等に対応するため、著作権に関する様々な課題について、時宜を逃さず検討を行ってきたところである。

とある、確かに文化審議会著作権分科会は時宜を逃さず検討を行ってきたかもしれないが、少なくともその結果としての時宜を逃がさない法改正には至っておらず、急速に進み今も進んでいる技術革新の結果、旧来の法解釈も報告書(案)の内容も、現在の社会には通用しない。

例えば、ある人(A)がもつ他人の著作物(音楽、写真等)を、その妻(B)にメイルすることは、いちいち権利者の許諾を求めず、普通に行われている。ここで、Bがメールを受け取るためのメールサーバを個人で運用していればメールの送受信に伴う複製は私的複製として権利制限が適用されるが、通常の者は、メールを受け取るのに商用ISP(C)のメールサーバを利用している。このサービスは無料である場合も多いが、Cが広告収入等の営利を目的としていることに違いはない。

この時、Aが送った著作物の複製が、Bの介在なく自動的に、Cのメールサーバ上に作成される。

複製にあたってBの関与の程度はほとんどなく、Cの設定し管理するサーバーによる複製は、これまでの判例ではカラオケ法理が適用され、複製の主体者はBではなくCであり、私的複製にはならないとされがちである。

また、録画ネットに関する異議審(平成16年(モ)15793)の同様な例(この例では、Cは場所と外部接続を提供しているだけでサーバーはBが所有し、上記の例よりCの管理支配性は弱い)では、複製はBとCの「共同行為」とされ、Cの行為部分は私的複製にならないとされている。

たとえ複製行為がBによる私的複製とされたとしても、Cの所有するメールサーバーは「公衆の使用に供することを目的として設置している自動複製機器」であることは、著作権法の文面にあるとおりで否定のしようがなく、そのような私的複製に対しては権利制限されないため、権利侵害となる。

いずれの解釈の場合も、Cは著作権法119条による刑事罰が下される可能性もある。

しかし、上記のように、他人の著作物を含んだメイルを家族間でやりとりする行為は私的複製の類似行為として一般的に行われているところであり、これまでを違法とするような著作権法の解釈は、社会に受け入れられるものではないし、無理に違法としても取締りは不可能であり、順法精神を失わせるだけである。あくまで法を守ろうとするISPは国内からはいなくなり、国内の怪しげな業者と国外業者だけが残ることになる。

上記の場合、Cが通信の秘密を守る以上、AやBが著作権者に連絡しない限り著作権者に発覚するはずもないが、管理支配解釈ではそもそもAやBの行為は合法なので、わざわざの連絡もあるはずがない。

また、Cが通信の秘密を守りAのメイルの内容を調べない場合は、具体的な侵害行為については、著作権者どころかCも知ることすらない(未必の故意は認められる)。

そのため、親告罪である著作権法119条が実際に適用されることはないが、このような場合は違法だが完全に野放しで、録画ネット事件のような同種の技術を用いた行為が多少とも表ざたになったら違法と認定されしかも厳罰化では、刑罰のバランスを著しく欠くことになる。

それにもかかわらず、現実には、長年の間、著作権者の許諾なしに、著作物を含む私的メールのやりとりは、商用ISPの公然と運営するメールサーバを経由して行われている。

同様の例として、国内外のサーチエンジンは、著作権者の許諾なしにホームページを公然と複製し、公然と自動公衆送信しているが、これも、現行著作権法上の旧来の解釈では、違法といわざるをえない。

しかし、以上のような行為は、健全な社会常識に照らして公正な行為であり、合法である。そのためには、著作権法の解釈ではフェアユースを認めるとするしかなく、次回の法改正ではそれを明文化すべきであろう。

サーチエンジンのキャッシュについては「デジタル対応ワーキングチーム検討報告の概要(※文化審議会 諮問・答申へリンク)にも、
個人 (1)機器利用時・通信過程における一時的固定について複製権を及ぼすべきではない範囲について,(a)著作権法上の「複製」の定義から除外する,(b)著作権法上の「複製」であるとした上で権利制限規定を設ける,(c)「黙示の許諾」,「権利の濫用」等の解釈による司法判断に委ねる,という3つの方向性が考えられる。

とあるとおりで、(a)(b)の方向をとれば現在は「違法」であり、(c)の方向をとれば限定的にせよ「フェアユース」を認めることとなる。また、同概要には

しかし,これら〜の要件から外れる一時的固定(複製)であっても,権利を及ぼすべきではないケースもあると考えられることなどから,今後の技術動向を見極める必要があるため,現時点では緊急に立法的措置を行うべきとの結論には至らなかった。今後も慎重に検討を行い,平成19(2007)年を目途に結論を得るべきものとした。

とあるが、既に古くから行われているサーチエンジンによるキャッシュ行為に対しいまさら「今後の技術動向を見極め」ることに意味はないし、しかも技術の進歩は今後も続きそれにつれて現行著作権法のフェアユースを認めない解釈では説明のつけようがない新たな利用形態も出現するので、「今後も慎重に検討を行」うと、結局永遠に「今後の技術動向を見極め」つづけることになる。

そして、そのような利用形態はわが国ではおっぴらに開発されず、技術の進歩とその結果としての著作物を生かした新しいビジネス展開の機会を他国に奪われ、知財立国が名ばかりのものになってしまう。

ここは、フェアユースを明文化した法改正を早急に行うべきであろう。
個人 項目名:項目名について

報告書(案)では項目を挙げるのに丸付き数字が多用されているが、通常の日本語の電子メイルで利用される漢字コードであるJIS X 0208ではサポートされておらず、メーカーごとに独自のコードポイントを持つ外字であるため、無理に使うと文字化けなどの原因となる。

混乱を避けるため、今後、項目名にまる付きの数字の使用は控えてほしい。
社団法人日本ケーブルテレビ連盟 報告書(案)8ページ
有線放送の実態
下から8行目ケーブルテレビ事業者の経営状況については、インターネット接続サービスの提供(・・・)やIP電話サービスの提供(・・・)、CSの再送信に加え、最近では、VOD方式の番組配信サービスも行われるなど、ケーブルテレビ事業の拡大・充実により、堅調に推移している様子がうかがえる。(平成16年度は310社中251社(80.9パーセント)が単年度黒字)
弊連盟 意見『ケーブルテレビ事業の拡大〜うかがえる。(・・・)』を削除して頂き、次のように変更をお願いしたい。
『・・・番組配信サービスも行われ、平成16年度の有線放送事業者の経営状況は、80パーセント(251社)の単年度黒字となっている。一方、59パーセント(183社)の事業者は累損を抱えており、実際には困難な経営状況が続いていることも事実である。』

報告書(案)26ページ
6.検討結果
(1)基本的な考え方
第3パラグラフこうした事情を踏まえると、IPマルチキャスト放送事業者についても、有線放送事業者と同程度の公共性等が確保されるのであれば、政策的には有線放送事業者と同様の有利な取扱いとすることは差し支えないと考えられる。また、将来、通信・放送の融合が・・・同様の取扱いとすべきものであると考える。
弊連盟 意見基本的に、既存の有線放送事業者に新たに法律上の義務や経済的な負担が発生することがないよう担保されることを望みます。
また、報告書(案)には、「有線放送事業者と同程度の公共性等が確保されるのであれば・・・云々」とありますが、有線放送事業者に課せられている同時性・同一性・地域限定等の再送信要件及び難視聴解消等の公共的責務が、IPマルチキャスト事業者にも課せられることが担保されることが必要であると考えます。万一、担保されない場合には有線放送事業者と同様の取扱いにすべきではないと考えます。

報告書(案)
27ページ最終行〜28ページ 2行目まで
(2)具体的措置内容
1有線放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し以上のような実態の変化を踏まえると、現行著作権法上権利制限されていない著作物や放送は別として、実演及びレコードに係る権利制限については、原則として、新たに報酬請求権を付与することが適切である。
弊連盟 意見報酬請求権の付与に関しては以下のように考えております。
1基本的に報酬請求権の付与には反対です。
2万一、報酬請求権の付与がなされる場合は、地上放送とBS放送の同時再送信に限定されるべきであり、CS放送の同時再送信ついては現行通りとすべきであると考えます。
3いかなる場合も、既存の有線放送事業者に新たな経済的な負担が発生することがないよう担保されることを強く望みます。

報告書(案)30ページ
(イ)文化庁の支援著作権法の改正を踏まえた、新たな契約ルールの策定又は既存の契約ルールの見直しについては、基本的には関係団体間で行う事柄であるが、文化庁としても、関係団体間の円滑な合意形成に向け、必要に応じて支援を行う必要がある。
弊連盟 意見 契約ルールの策定又は見直しについては、現契約の存在を尊重して行われるべきであると考えます。
社団法人日本音楽事業者協会 当協会は音楽事業者を主体としたエンタテインメント産業に従事する芸能プロダクション102社によって構成されている。
巷間「実演家の権利処理が煩雑で、コンテンツの流通を阻害する要因となっている」とする識者の発言や、それに伴う報道は、実態を理解しようとしていない門外漢の発言である。
当協会加盟の音楽芸能プロダクションは実演家との契約において、実演家から独占的に権利を委任され、その権利行使の窓口となりこれまでコンテンツ利用者に対し、権利処理を行ってきており、その際付帯的に発生する法律ではカバーできない権利の運用についても長年に亘る実績がある。
また、音楽芸能プロダクションというビジネスモデルは、戦後60年経た現在、わが国固有のビジネスモデルとして、香港、台湾、韓国など近隣アジア諸国でもそのモデルが模倣されるなど、欧米諸国とは一線を画した極めてユニークかつ実務的なビジネスモデルである。
ただし、このビジネスモデルは、わが国が参考にしてきた欧米諸国の著作権や肖像権の概念にはストレートに当てはまらないことから、現在においてもその存在価値が認識されずにいるという実態が存在している。
こうした現行法下における「許諾権」を現状に則し実務的に運用してきた実績が何ら認識されることなく、今回のような権利の切り下げが行われることはまことに遺憾であり、音楽芸能プロダクションというわが国固有の産業を疲弊させることになりかねない危険を内包しているといわざるを得ない。
さらに、わが国においては世界で類を見ない音楽著作権使用者である放送局と日本音楽著作権協会との間に結ばれた、いわゆる「ブランケット契約」や貸レコードという、業態をなし崩し的に生んでしまった悪しき前例がある。
「ブランケット契約」では、実際の音楽の使用実態が明らかにならず、また貸レコードにおいては、使用料金の不明瞭な申告が行われるなど、まことに不公平な状況が作り出されてしまったことを、今一度認識する必要がある。

1.有線放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し
「IPマルチキャスト放送の著作権法上の位置付け」に関して
(報告書15、28頁)

(1) 平成18年2月14日付文化庁長官官房著作権課「IPマルチキャスト放送の取り扱いについて」は、「放送される実演の有線放送(同時再送信)は権利制限あり(イコール実演家は無権利)」と書かれている。
このことが、放送される実演の有線放送(同時再送信)について、実演家は“無権利”という認識がすでに一般的になり、結果的には“関係業界等では、「通信・放送の融合」を進めるためにも、著作権法上IPマルチキャスト放送を「有線放送」と同様の取り扱いにすることを要望している。”(報告書2頁)という状況を作り出している。
実演家は有線放送権を占有するが、放送される実演を有線放送する場合には、確かに有線放送権は適用しないと定められている(92条2項1号)。
しかし、これは条文上の形式的な文理解釈であって、実態的意味を持つ論理解釈ではない。
実演家の有線放送権の立法趣旨は、実演が放送されれば、その放送波の利用は放送事業者の権利によって処理することとなるので、その放送事業者の権利を通じて実演家の権利を実質的にカバーしてもらうことを予定して、法律上は、有線による同時再送信には実演家の権利が及ばないとしたものであり、実演の放送についての許諾が放送を受信して行う有線放送までもカバーしていると考えたわけでは必ずしもない(加戸守行著・著作権法逐条講義四訂新版486ページ)。
この立法趣旨に基づいて、実演家の団体は他の著作権者四団体と連盟で、著作権法施行の時から有線放送事業者と包括的な契約を結び、著作権審議会関係小委員会等((著作権審議会第7章委員会報告書(昭和60年9月)、ニューメディア(CATV関係)における著作権等の処理の在り方に関する調査研究協力者会議中間まとめ(昭和60年9月)、著作権審議会マルチメディア小委員会第一次報告書−マルチメディア・ソフトの素材として利用される著作物に係る権利処理を中心として−(平成5年11月)等)で公的に認知され評価を受けてきている。又、この包括契約の合法性については平成17年8月30日知財高裁判決(コピライトナンバー.539.3/2006)でも認められている。(但し、当協会としてこの契約には関与していない。)
このように、放送の有線放送による同時再送信について、実演家は決して無権利ではなく実体的に権利を有し、立法趣旨及び契約によって権利の実体を形成してきた歴史を踏まえると報酬請求権ではなく著作者と同様に許諾権を定めるべきと考える。例えば、現行法の場合、放送の同時再送信を止めようとすれば、出演時に放送事業者に否を意思表示すればよいが、法改正によって報酬請求権になると、同時再送信を止めることは基本的に出来なくなる。

(2) 現行第92条2項を改正し、「放送される実演を有線放送する場合」(第92条2項1号)に実演家の有線放送権を制限して報酬請求権を認めるとすれば、“契約に別段の定めがない限り”という趣旨に経つべきである。
同時に、他の適用除外(第92条2項2号イ、ロ)も見直し、少なくとも有線放送については報酬請求権を認めるべきであろう。

2.IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し
「IPマルチキャスト放送と有線放送の現状」に関して(報告書5、7頁)
電気通信役務利用放送事業者の登録については、従来の放送事業者と比較し、規制緩和政策を背景に参入しやすくなっているが、今後、電気通信役務利用放送事業者が増加してくる可能性を考えると、どこで何が放送されているのかが把握できず、報酬請求権では管理が出来なくなることが予想され、許諾権による(事前許諾)管理が必須であるとする所以である。
なぜならば、このような許諾権に基づく管理が必須である状況は、現実に発生しており、例えば、昭和55年10月に民放連と芸団協がリピート放送に関する協定を締結し、報酬請求権として出演者が各局と協議することになっているが、現在まで民放からはリピート放送料の支払いは無い。また前述した通り、現在問題となっている貸レコード店の過少虚偽申告による不払いや、未払いのままでの倒産などで使用料未回収の実被害が出ている。
商業用レコード二次使用料についても、全国のミニFMなどでのレコード使用の実態が現実的には把握できずに未回収となっているケースもまた発生している。また、そういった事業者は、せっかく国主導で策定した報酬請求権の意義すら理解せず、また、権利者側が使用していることを把握していても、使用者側が何を使用したか把握していないケースがほとんどである。
社団法人日本音楽事業者協会 電気通信役務放送事業者が地上波同時再送信を始めることになった場合、有線放送と同様に送信側が権利処理する可能性が高いと思われるが、有線放送の場合も、5団体処理(報告書22頁2管理団体との契約)で行われてきたが(当協会は含まれない)、結果、実演家の団体である社団法人日本芸能実演家団体協議会に実演利用の補償金は支払われているものの、出演者データ等、分配に必要なデータ提供が無いため分配出来得ないのが現状である。 そもそも5団体処理は例外的措置で、各団体が個別に契約を締結することが本来のあり方であると考える。法改正が伴う今回の条件下では、一から考え直し、各団体が個別の契約となるよう強く要望する。
当協会は、過去20年に亘り、NHK、民放各社との間で映像の二次使用の権利処理を行っていることは周知の事実であるが、放送局等から利用する番組の出演者リストや使用秒数などのデータを記載した申請書を確認し、許諾したものについては、使用料を徴収し、そのデータを元に実権利者に分配を行っている。
こういったシステムを維持するためには許諾権であることが必須条件である。

3.追記
IPマルチキャスト放送による「自主放送」(報告書27頁)については、十分な準備期間を設けた上で検討する必要があるとしている。
当協会としては、電気通信役務放送事業者が利益を生む可能性が少ない同時再送信を求めているとは考えていない。さらには、早急な課題としている(報告書27頁)地上デジタル放送の難視聴地域をカバーしているとも到底考えられない。そうしたことから、地上波放送等のVODサービスが本来の目的であることは明白であり、仮に今回の改正を承知したとしても、今後の検討で拡大解釈されることを懸念している。

現在、当協会では、新たなコンテンツ流通について、テレビキー局系の通信事業や新規参入の通信事業者との間で映像使用のルール作りに関する話し合いを行っている。地上波番組のネットへの使用についても放送局に対し、出演料をベースとした料率で具体案の提示を行っているが、現状では、放送局側の理由によりルール作りが進んでいない。その理由としては「まだビジネスになっていないので積極的に進められない、小額の使用料しか手当てできない」といったものである。
新規参入の通信事業者については、コンテンツに資金を投入する意欲がある事業者が若干あるものの、おおむね放送局と同様で、「売り上げに応じて支払う」といった権利者側の犠牲の元にした、リスクを負わない方式での提示が大半である。また、新規制作の番組については、「映画の著作物としたい、二次利用や回数の制限を考えられるだけ広くしたい」というのが配信する側の実態であり、放送・通信事業者側の理由により話し合いの進展が遅くなっている。しかしながら、いずれ解決するものとして現行法に則った交渉を進めているところであり、法改正による早計な解決を図ることなく、状況を十分に見据えた上で、検討することを望むものである。
役務利用放送協議会 1IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」の意見
本報告書(案)の内容に賛成致します。2006年中の出来るだけ早い国会において本報告書(案)の内容に沿った形で法改正の手続きが行われることを希望します。
また、報告書(案)P27記載のとおり、IPマルチキャスト放送による自主放送の取り扱い、およびIPマルチキャスト放送事業者に対する著作隣接権の付与等について、引き続き早急に検討されることを希望します。
個人 IPマルチキャスト放送については、利用者(一般視聴者)から見た場合は報告書(案)にあるとおり、その差異はほとんどないことは否定できませんが、RIAJ、CPRAで権利の集中管理を 行う体制を整備し、地上デジタル放送の完全実施における権利処理にも対応する方向での取組みが進められているにも関わらず、実演家及びレコード製作者の送信可能化権を縮減する方向で報告書(案)が取り纏まったことは非常に残念に思います。
しかしながら、報告書(案)において、地上デジタル放送の完全実施という公共目的と権利保護とのバランスに一定の配慮を示している点は評価でき、今後も、そうした観点から法制度の細部を検討していただきたいと思います。
尚、IPマルチキャスト放送に関しては現実的に「権利の切り下げ」になるので、これに対する「報酬請求権」は現在の放送二次使用料を前提として検討されるべきではなく、「許諾権切り下げの対価を含んだ報酬請求権」であることを前提として検討を行うべきですし、また、有線放送とIPマルチキャスト放送を原則として同等に取り扱うのであれば、例えば、有線放送による放送の同時再送信に関して、従来は、実演家及びレコード製作者に一切の権利が認められていなかったといった「有利な取扱」については、実情を勘案し、利用者と権利者とに不均衡が生じないような調整をおこなうべきであると思います。
日本知的財産協会
デジタルコンテンツ委員会
標題の件に関し、当協会といたしまして、以下の通り意見を申し述べさせていただきます。よろしくご査収の上、ご勘案下さいますようお願い申し上げます。

2.IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について
2〜30ページ
報告書(案)の趣旨に基本的に賛同します。IPマルチキャスト放送は、著作物等の利用形態(特に、サービス利用者側から見た場合)において、有線放送とほとんど変わりがないと思われます。「放送の同時再送信」については、有線放送と同様の取扱いとすることが適当であると考えます。技術革新によるコンテンツ流通の活性化を促すため、また平成18年末に開始が予定されているIPマルチキャスト放送による地上デジタル放送の同時再送信を円滑に進めるためにも、本報告書(案)の検討結果を実現する著作権法改正が早期になされるべきと考えます。
また、「自主放送」の取扱いについても、総務省ほか関係省庁間連携の下、早急にご検討いただき、通信と放送の融合をはじめとするユビキタス社会の到来に適応する必要があるものと考えます。
IPマルチキャスト放送による利用に対する権利制限は、基本的には有線放送と同様の扱いでよいものと考えられますが、権利者に与える影響を勘案のうえご検討いただきたいと思います。
IPマルチキャスト放送事業者に対する著作隣接権の付与、一時的固定を認めることについても、今後慎重な検討をお願いします。
個人 IPマルチキャスト放送は、情報の伝達に用いられる技術の方式に違いがあるものの、著作物等の利用形態としては、報告書に記載のあるとおり、従来の有線放送とほぼ同様であると考えられます。
従って、地上デジタル放送の完全実施という公共の利益を図るため、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信を有線放送と同様に取り扱うことはやむを得ないと考えます。

しかしながら、具体的な法案(報酬請求権等)の検討に際しては、米国盤レコードなどの、原則として放送二次使用料の対象外でありながら、送信可能化権が認められているレコードについては、少なくとも報酬請求権が賦与されるなどのバランス的な措置・配慮が必要であると考えます。よろしくご検討ください。
エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社 2. IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」「6.検討結果」「2IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し」(28頁以下)について

IPマルチキャスト技術を用いた有線電気通信の送信(以下「IPマルチキャスト放送」という。)により放送を同時再送信することについて、実演家及びレコード製作者に対して現行著作権法上認められている送信可能化権を二次使用料に関する報酬請求権に改めることについて反対である。現行著作権法上認められている実演家及びレコード製作者の送信可能化権を維持したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理することで、IPマルチキャスト放送を用いた地上デジタル放送の再送信を行う上では必要十分である。それにもかかわらず、地上デジタル放送の再送信を行うために充分な審議をせずに、実演家及びレコード製作者にとって大変価値のある著作隣接権を拙速に撤廃することは、実演家及びレコード製作者に対する配慮を欠き、結果として国際競争力あるコンテンツの育成に重大な支障を及ぼすことになる。

理由は以下のとおりである。

(1)IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになる

文化審議会著作権文化法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)(以下「本報告書案」という。)では、IPマルチキャスト放送のうち、放送を同時再送信する場合に限り、IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱うよう著作権法を改正することが提案されているが、IPマルチキャスト放送については、あくまでも現行著作権法上の「自動公衆送信」としての取扱いを堅持すべきであると考える。
すなわち、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになると考えられる。他方、IPマルチキャスト放送事業は、登録制の事業であり(電気通信役務利用放送法第3条)、また、放送内容等について地上放送事業者と同等の制約が課せられていないことから(同法第15条)、様々な性質を有する新規事業者が多数参入することが想定されることに留意しなければならない。

レコード製作者においては、このような多数の新規参入事業者が仮に発生した場合、市販されたCDの音源を用いた「自主放送」がレコード製作者の許諾を得ずに行われることになるのではないかと大変憂慮しているのである。また、「自主放送」が広くなされることになると、実務的に二次使用料が名目的となり、その回収が困難となることが容易に想像できる。その上、CDの音源を用いた番組のみを流す「自主放送」がCDあるいは音楽配信よりも遙かに廉価で提供され、さらにコピーによる音質の劣化がないデジタル録音が容易にできるPCと親和性のあるIPマルチキャスト方式により「番組」が提供されることになるとすれば、消費者がCD等を購入しなくなり、レコード制作事業者にとっては死活問題となる。
このようなことになれば、コンテンツ制作について萎縮作用がもたらされ、その結果、我が国がコンテンツ大国となることは困難となるものと考える。

(2)競争力のあるコンテンツ育成のためにはコンテンツの利用許諾権が必要不可欠である

実演家及びレコード製作者としては、自己の保有するコンテンツを流通させることについては、自らの戦略に従って、当該コンテンツの価値の最大化を図るべく経営努力を行っており、二次使用料を受領することのみではコンテンツの価値の最大化を図ることができないことは明らかである。自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることは著作隣接権者としての基本的な権利であって、かかる権利なくして国際競争力のあるコンテンツを育成することなど到底できない。放送及び有線放送について許諾権がないのは、放送及び有線放送の持つ高度の公共性のためのいわば「特権」であって、既存のコンテンツの流通を容易にするために近視眼的にこの「特権」を安易に流用することは、我が国における将来のコンテンツ育成に大きな禍根を残すことになる。
仮に、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信、さらにはそれに続くと懸念される「自主放送」についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱い、その結果、実演家又はレコード製作者において、これらに対する許諾権が撤廃されれば、例えば、自らの戦略にとって不都合な者が自らの意思に反してコンテンツを利用してしまうこと(例えば、競業他社によるIPマルチキャスト放送によるコンテンツの希釈化や、近い将来に同放送を行う事業者が多く登場した場合における無秩序なコンテンツの配信等が容易に考えられる。)が想定され、コンテンツプロバイダーとしての事業戦略(業務提携等)に大きな支障を来すことが予測される。
エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社 (3)コンテンツの流通促進のためには著作権の集中管理制度を整備することが最善の道である

以上のとおり、国際競争力のあるコンテンツを育成するためには、コンテンツ保有者がその意思に反するコンテンツの利用を差し止めることができるように、実演家及びレコード製作者に許諾権を残すことが必要不可欠である。
他方、許諾権を残したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理し、利用料率を明確に定める新たな仕組みを早急に立ち上げることが実務上可能である以上、IPマルチキャスト放送事業者側の不都合が生じないことは明らかである(かかる新たな集中管理制度においては、例えば、技術的保護手段(DRM)あるいは技術的制限手段の存否、及びDRMにおけるコピー可能回数等を要素とした利用料率を定めること等が考えられ、立法的措置(デジタルコンテンツ立法)も検討の余地があろう。)。

(4)競争力のあるコンテンツ育成のために国際条約の改正も含めコンテンツの利用に関する立法をすすめるべきであって、条約に形式的に反しないことをもってIPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いに関する著作権法改正することができるとする議論には問題がある

本報告書案は、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様にし、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者に現在認められている送信可能化権を撤廃し、二次使用料の請求権に改めることの主な根拠として、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(以下「実演・レコード条約」という。)第10条及び第14条に反しないことを挙げている。
しかしながら、そもそも、実演・レコード条約は今から10年前の1996年に締結されたものであり、同条約が締結された当時の状況と現在の状況とは全く異なっており、同条約はIPマルチキャスト放送の存在を前提としていない。そればかりか、そもそも、現時点において、IPマルチキャスト放送の取扱いについて明示的に合意された国際条約は存在していない。
このような状況の下、実演・レコード条約第10条及び第14条の規定に反しないことをもって、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者の送信可能化権を撤廃することは根拠が薄弱である。


以上のとおり、現在我が国が保有する優良なコンテンツを保護し、将来にわたっても国際競争力のある優良な我が国発のコンテンツを育成するためには、一方で、自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることができる権利である許諾権を堅持するとともに、他方では、コンテンツの流通の促進を図るための新たな制度(集中管理制度等)を整備すること等を行うことが、最善の方法であると思料する。
個人 2. IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」

地上デジタル放送の完全実施の必要性は理解できるが、その範囲(同時再送信)を越えて、実演家及びレコード製作者の送信可能化権を縮小することとならないよう、要
望する。
具体的な法案検討にあたり、米国盤レコード等の、原則として放送二次使用料の対象外でありながら送信可能化権が認められているレコードについて、少なくとも報酬請求権が付与されるべきだろう。
個人 A.「IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について(報告書案26〜30ページ)」

地上デジタル放送への完全移行はわが国として非常に重要な課題であり、これを実施するためにはIPマルチキャスト放送による同時再送信が有効であることも理解する。しかしながら、これら同時再送信については権利の集中管理による対応が可能であり、実際にそのような協議が進められている。こうした状況下にあって、実演家およびレコード製作者の権利を安易に切り下げることには疑問なしとはしない。
また、報告書(案)にあるとおり、IPマルチキャスト放送を有線放送と同等に取り扱うとした場合も、洋盤(特にその大多数を占める米国盤)のレコード製作者の権利については、慎重に検討すべきである。IPマルチキャスト放送・イコール・有線放送といった短絡的な解釈により、例えば米盤レコードの製作者には送信可能化権はおろか放送二次使用における報酬請求権も与えないということになれば、邦盤のレコード製作者(送信可能化権から報酬請求権への権利縮小)と比べ、権利縮小の度合いが大きく、著しく均衡に欠けると考える。
個人 2. IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」「6.検討結果」「2IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し」(28頁以下)について

IPマルチキャスト技術を用いた有線電気通信の送信)により放送を同時再送信することについて、実演家及びレコード製作者に対して現行著作権法上認められている送信可能化権を二次使用料に関する報酬請求権に改めることについて反対である。現行著作権法上認められている実演家及びレコード製作者の送信可能化権を維持したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理することで、IPマルチキャスト放送を用いた地上デジタル放送の再送信を行う上では必要十分である。それにもかかわらず、地上デジタル放送の再送信を行うために充分な審議をせずに、実演家及びレコード製作者にとって大変価値のある著作隣接権を拙速に撤廃することは、実演家及びレコード製作者に対する配慮を欠き、結果として国際競争力あるコンテンツの育成に重大な支障を及ぼすことになる。
理由は以下のとおりである。

(1) IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになる
文化審議会著作権文化法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)(以下「本報告書案」という。)では、IPマルチキャスト放送のうち、放送を同時再送信する場合に限り、IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱うよう著作権法を改正することが提案されているが、IPマルチキャスト放送については、あくまでも現行著作権法上の「自動公衆送信」としての取扱いを堅持すべきであると考える。
個人 すなわち、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになると考えられる。他方、IPマルチキャスト放送事業は、登録制の事業であり(電気通信役務利用放送法第3条)、また、放送内容等について地上放送事業者と同等の制約が課せられていないことから(同法第15条)、様々な性質を有する新規事業者が多数参入することが想定されることに留意しなければならない。レコード製作者においては、このような多数の新規参入事業者が仮に発生した場合、市販されたCDの音源を用いた「自主放送」がレコード製作者の許諾を得ずに行われることになるのではないかと大変憂慮しているのである。また、「自主放送」が広くなされることになると、実務的に二次使用料が名目的となり、その回収が困難となることが容易に想像できる。その上、CDの音源を用いた番組のみを流す「自主放送」がCDあるいは音楽配信よりも遙かに廉価で提供され、さらにコピーによる音質の劣化がないデジタル録音が容易にできるPCと親和性のあるIPマルチキャスト方式により「番組」が提供されることになるとすれば、消費者がCD等を購入しなくなり、レコード制作事業者にとっては死活問題となる。
このようなことになれば、コンテンツ制作について萎縮作用がもたらされ、その結果、我が国がコンテンツ大国となることは困難となるものと考える。

(2)競争力のあるコンテンツ育成のためにはコンテンツの利用許諾権が必要不可欠である
実演家及びレコード製作者としては、自己の保有するコンテンツを流通させることについては、自らの戦略に従って、当該コンテンツの価値の最大化を図るべく経営努力を行っており、二次使用料を受領することのみではコンテンツの価値の最大化を図ることができないことは明らかである。自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることは著作隣接権者としての基本的な権利であって、かかる権利なくして国際競争力のあるコンテンツを育成することなど到底できない。放送及び有線放送について許諾権がないのは、放送及び有線放送の持つ高度の公共性のためのいわば「特権」であって、既存のコンテンツの流通を容易にするために近視眼的にこの「特権」を安易に流用することは、我が国における将来のコンテンツ育成に大きな禍根を残すことになる。
仮に、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信、さらにはそれに続くと懸念される「自主放送」についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱い、その結果、実演家又はレコード製作者において、これらに対する許諾権が撤廃されれば、例えば、自らの戦略にとって不都合な者が自らの意思に反してコンテンツを利用してしまうこと(例えば、競業他社によるIPマルチキャスト放送によるコンテンツの希釈化や、近い将来に同放送を行う事業者が多く登場した場合における無秩序なコンテンツの配信等が容易に考えられる。)が想定され、コンテンツプロバイダーとしての事業戦略(業務提携等)に大きな支障を来すことが予測される。

(3)コンテンツの流通促進のためには著作権の集中管理制度を整備することが最善の道である
以上のとおり、国際競争力のあるコンテンツを育成するためには、コンテンツ保有者がその意思に反するコンテンツの利用を差し止めることができるように、実演家及びレコード製作者に許諾権を残すことが必要不可欠である。
他方、許諾権を残したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理し、利用料率を明確に定める新たな仕組みを早急に立ち上げることが実務上可能である以上、IPマルチキャスト放送事業者側の不都合が生じないことは明らかである(かかる新たな集中管理制度においては、例えば、技術的保護手段(DRM)あるいは技術的制限手段の存否、及びDRMにおけるコピー可能回数等を要素とした利用料率を定めること等が考えられ、立法的措置(デジタルコンテンツ立法)も検討の余地があろう。)。

(4)競争力のあるコンテンツ育成のために国際条約の改正も含めコンテンツの利用に関する立法をすすめるべきであって、条約に形式的に反しないことをもってIPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いに関する著作権法改正することができるとする議論には問題がある
本報告書案は、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様にし、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者に現在認められている送信可能化権を撤廃し、二次使用料の請求権に改めることの主な根拠として、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(以下「実演・レコード条約」という。)第10条及び第14条に反しないことを挙げている。
しかしながら、そもそも、実演・レコード条約は今から10年前の1996年に締結されたものであり、同条約が締結された当時の状況と現在の状況とは全く異なっており、同条約はIPマルチキャスト放送の存在を前提としていない。そればかりか、そもそも、現時点において、IPマルチキャスト放送の取扱いについて明示的に合意された国際条約は存在していない。
このような状況の下、実演・レコード条約第10条及び第14条の規定に反しないことをもって、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者の送信可能化権を撤廃することは根拠が薄弱である。

以上のとおり、現在我が国が保有する優良なコンテンツを保護し、将来にわたっても国際競争力のある優良な我が国発のコンテンツを育成するためには、一方で、自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることができる権利である許諾権を堅持するとともに、他方では、コンテンツの流通の促進を図るための新たな制度(集中管理制度等)を整備すること等を行うことが、最善の方法であると思料する。
個人 ○IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いについて
IPマルチキャストによる放送の同時再送信について、レコード製作者と実演家の現行の許諾権を報酬請求権に改めるとの結論が出されたことについて、非常に残念な思いがあるが、他国の取扱い等も踏まえた場合、同時再送信については致し方ないとも思える。しかし、一方で、有線放送による放送の同時再送信について、他国では少なくとも報酬請求権であるのに対して、日本ではレコード製作者と実演家に権利が認められていなかった。これについて、今回新たに権利付与がなされるべきという結論が出されたことについては高く評価したい。関連して、レコードの公衆演奏について、他国ではレコード製作者と実演家に権利が認められているのに対して、日本では認められておらず、前記の同時再送信と同様の状況が存在する。これについても、今後見直しを進めていただき、新たな権利付与の検討をお願いしたい。
また、IPマルチキャスト放送における報酬請求権の管理の仕組みがまだ見えない中、米国等ローマ条約非加盟国のレコードが同様に保護されるのかどうか、この結論によっては今後国際的に大きな議論を呼ぶ可能性がある。これについて、早期に明確化していただくようお願いしたい。
個人 2. IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について
5.テレビ放送の同時再送信等にかかる著作権契約の現状(22ページから25ページまで)

ここのページにまとめられている「著作権契約の現状」で、実演家・レコード製作者の著作隣接権を集中管理する団体が用意できていないため、権利処理上のボトルネックを生じている様よく判る。JASRAC(ジャスラック)や日脚連・文芸家協会らによる包括契約が実現している著作権者とは対照的である。同時再送信に限らず放送番組等の二次利用を促進していくには実効性ある集中管理機構の稼働を芸団協・日本レコード協会の両者に急がせる必要があり、それが近い将来に実現する見込みが立たなければ権利制限等を視野に入れた法整備も検討すべきである。
現在はIPマルチキャストの同時再送信のみが議論されている状態であるが、これに限らず議論を進めるべきである。例えばインターネットを通じた同時再送信や自主放送(IPマルチキャストもインターネットも両方視野にいれるべき)について、著作物流通の阻害要因を排除していく努力が必要である。

また、本報告書では放送番組に限定して議論されている。芸団協・レコード協会が予定している著作隣接権集中管理機構もそれに特化したものを提案されているようである。しかしながらインターネットでの流通が期待されている著作物はそれだけではなく、例えば音楽配信やポッドキャスティング・ネットラジオのように、実演家・レコード製作者の権利集中管理機構がないため実現が阻害されている利用態様もある。

著作物流通の促進(および権利者への確実な利益還元)を本旨とする以上、実演家・レコード製作者の著作隣接権を集中管理するにあたり、音楽配信等を除外せず進めるよう強く求めたい。

なお、IPマルチキャスト放送でのデジタル地上放送同時再送信にかかるJASRAC(ジャスラック)ら著作権者4団体の意向を明らかにされたい。実演家・レコード製作者の著作隣接権を報酬請求権へ制限する意向でまとまったとしても、著作権者4団体の許諾がスムーズに得られる見込みが無ければ無意味である。当然に許諾を得られるものとの前提で議論されていると推察されるが、是非このあたりには念を入れて確認して戴きたい。
個人 2. IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について
6.検討結果
(1)基本的な考え方(26ページ)

IPマルチキャスト放送事業者に対して「有線放送事業者と同程度の公共性等が確保されるのであれば、政策的には、有線放送事業者と同様の有利な取扱いとすることは差し支えないと考えられる」とある。これは妥当な判断と思われる。
しかしながら、その一方で「IPマルチキャスト放送を有線放送と同等の取扱いとする場合、有線放送に対する有利な取扱いについても、現在の有線放送の実情等を十分に踏まえ、必要な見直しを行うべきである」とある。これには強い疑問を感じる。

有線放送事業者には難視聴地域での放送再送信義務がある(これはIPマルチキャスト放送事業者にも同様に課される
べき義務と考えられる)。そのため、こうした再送信について著作隣接権者への使用料が発生することは妥当と考えられない。放送の同時再送信から直接の利益を得ることができない有線放送事業者に、義務再送信のため新たな負担が発生することは避けるべきである。

仮に有線放送事業の営利性(その拡大)を問題視するのであれば、営利か非営利かはともかく、有償サービスの中で行なわれている放送再送信にのみ使用料が発生すると考えるべきでないか。有償サービスの枠外で行なわれている再送信(都市型難視聴を含む難視聴地域でのもの)は、著作物利用の実質からみてアンテナ受信の代用にすぎず、有線放送事業者による著作物利用と見るのは酷かと思われる。
有線放送事業者に、支払う使用料と利益とのかねあいで同時再送信サービスを提供するか否かを判断する自由があるのならともかく、法律による義務を負わせたままで一方的に使用料支払いを課すのでは不公平である。
個人 2. IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について
6.検討結果
(2)具体的措置内容(27ページ)

地上放送の再送信は、有線放送事業者の規模拡大とは本質的に関係ない。
有線放送事業者の提供サービスにおいて地上放送同時再送信は「売り」とは言えないものであり、事業の営利性から同時再送信による「利益」を導くことは困難である。なぜなら難視聴地域(特に都市型難視聴地域)においてはアンテナ受信の代替として無償で提供されており、わざわざ有線放送事業者に料金を払わずとも視聴できるからである。
しかもこの難視聴地域における同時再送信は法律によって義務化されている。こうした、有線放送事業者に選択の余地のない再送信において著作隣接権使用料を発生させるのは不公平である。
個人 2. IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について
6.検討結果
(2)具体的措置内容(30ページ)
実演家・レコード製作者にかかる「集中管理体制の整備」は急務である。
また、IPマルチキャストによる地上放送同時再送信や自主放送・番組二次利用といった放送番組関係に限らず、音楽配信・ポッドキャスティング・ネットラジオ等においても「集中管理体制の整備」を求めていくべきである。
インターネットを通じた著作物流通の阻害要因となっているのは、どの場面でも実演家・レコード製作者である。
個人 2. IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について
6.検討結果(26〜30ページ)

●有線放送での「有利な取扱い」
IPマルチキャストでの地上放送の同時再送信を「有線放送」とみなすことと引き替えに、有線放送での同時再送信にかかる権利制限を撤廃するとの方向性には反対である。有線放送での地上放送同時再送信は難視聴対策としての実施が重要性を持つのであって、特に都市型難視聴に対する措置としても軽視すべきではない。
こうした再送信は、有線放送事業者が他のサービスを開始し事業規模が拡大することとは本質的に関連がない。放送関連法上の義務として無償で提供されている同時再送信については引き続き権利制限を維持すべきである。
「営利目的」との理由だけで判断すべきではない。仮に著作権法上の「有利な取扱い」が撤廃されるのであれば、有線テレビジョン放送法での再送信義務を同時に撤廃しなければバランスがとれない。

●放送関連法についても提言を
本報告書については、著作権法の議論にとどまらず有線テレビジョン放送法・電気通信役務利用放送法との関わりについても提言すべきである。すなわち、IPマルチキャストでの地上放送同時再送信をおこなうにあたっては、電気通信通信役務利用放送法の規制をうけている事業者も有線テレビジョン放送法並みの規制(同時再送信義務など)と裁定手続の確保が必要である。
ここまで踏み込んだ提言でなければ、著作権法上「有線放送」とみなされた電気通信役務利用放送が結局実現されないで終わってしまうおそれがあるのではないか。

●本来議論すべきはIPマルチキャストだけではない
今回の議題の中心はIPマルチキャストであり、文化庁も総務省も電気通信役務利用放送事業者に限定して議論が進められた印象がある。しかしながら今後の通信において最も期待されているのはインターネットで送信する放送なのであって、今回のようにIPマルチキャスト(しかも事業者曰く「インターネットとは別の閉じた環境」での通信)に議論を限定してしまっては「放送・通信の融合」を進めるのに資する提言は出てこないのではないか。
当面は電気通信役務利用放送法の規制を受ける事業者に限定して議論せざるをえないのは仕方ないにしても、その番組送出手段についてはインターネットでの放送も視野に入れて議論すべきである。

●「放送・通信の融合」は映像だけではない

「放送・通信の融合」を真剣に考えるのなら、映像番組の放送だけではなく音声のみの放送についても議論すべきである。今期の法制問題種委員会での資料によれば、いわゆるインターネットラジオ(番組が決定しており聴取者が選曲できない種類のもの)についてレコード製作者・実演家への許諾権付与が必ずしも必要ないと示唆されている。
権利者(特にレコード製作者)が許諾をしないことで日本ではなかなか音楽配信が本格化していない現状だが、国内で流通するコンテンツ量を欧米並みに引き上げるためにはネットラジオにかかる権利制限も検討すべきと考える。

●「放送・通信の融合」もほどほどに

もっとも「放送・通信の融合」を完全に達成する必要はないように思う。公共の放送とプライベートな通信とがはっきりと区別できる部分も存在するのであり、これら全てに同じ法規制をかけることは不可能であるし、また言論・表現の自由や通信の秘密という価値観から否定されることでもあろう。
その観点から、放送関連法の規制を受ける通信事業者に対してのみ著作権法上の「有利な取扱い」を与えるというのも考え方のひとつである。
日本商品化権協会 1 IPマルチキャスト放送の著作権法上の取り扱いについて
コンテンツ利用環境を整える趣旨の改正については、一部に慎重論あるもおおむねは法改正に賛成。実演家、レコード製作者の許諾権は報酬請求権に置き換える。但しこの場合、知的財産権推進計画2006の「クリエーターに十分な報酬が支払われるよう配慮する」の主旨を尊重しつつ「放送の同時再送信」についてIP放送事業者を有線放送事業者と同等の取り扱いとする。
社団法人日本民間放送連盟 “IPマルチキャスト放送”(IPマルチキャスト技術を用いた有線役務利用放送)については、著作権法上、これまで「自動公衆送信(および送信可能化)」であるか、「有線放送」であるかについて明確な結論が出されていなかったところ、今回の報告書案において、これを「自動公衆送信(および送信可能化)」であると位置付けられたことは、国際条約との整合性の観点からも現時点では妥当なものと考える。また、“IPマルチキャスト放送の著作権法上の取り扱いを有線放送並みとすべき”との求めに対し、当面の制度改正を、放送の同時再送信に限定したことも妥当であると考える。そのうえで、今後の法制問題小委員会における検討および制度改正にあたっては、以下のとおり要望する。

1.著作権法において、新たにIPマルチキャスト放送を定義するにあたり、同時再送信に関して有線放送並みとするとの前提を踏まえ、送信区域を制限できることを必須条件とすべきである。

2.非営利かつ無料のIPマルチキャスト放送により放送を同時再送信する場合の規定については、当該同時再送信の送信区域が放送法における「放送対象地域」内に限定されることを明記すべきである。

3.現行法において、放送事業者の送信可能化権は、有線放送により再送信された放送を送信可能化する場合には及ぶが、自動公衆送信により再送信された放送を送信可能化する場合の規定はない。IPマルチキャスト放送における放送の同時再送信を有線放送と同様に取り扱う場合には、自動公衆送信により再送信された放送にも送信可能化権が及ぶよう措置すべきである。これとあわせて、有線放送あるいは自動公衆送信により再送信された放送を放送あるいは有線放送する場合にも、放送事業者の再放送権あるいは再有線放送権が及ぶことを明確に規定すべきである。

4.IPマルチキャスト放送で放送を再送信する場合に必要となる著作権および著作隣接権(あるいは実演家およびレコード製作者の報酬請求権)等に関する一切の許諾手続きおよび使用料の支払い(あるいは報酬の支払い)について、それらを行う主体が当該IPマルチキャスト放送事業者であることを改めて報告書において明確に示すべきものと考える。また、有線放送による再送信についても、実演家およびレコード製作者の報酬請求権に関する使用料の支払いを行う主体が当該有線放送事業者であることを明示すべきである。
個人 2. IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」「6.検討結果」「2IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し」(28頁以下)について

IPマルチキャスト技術を用いた有線電気通信の送信(以下「IPマルチキャスト放送」という。)により放送を同時再送信することについて、実演家及びレコード製作者に対して現行著作権法上認められている送信可能化権を二次使用料に関する報酬請求権に改めることについて反対である。現行著作権法上認められている実演家及びレコード製作者の送信可能化権を維持したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理することで、IPマルチキャスト放送を用いた地上デジタル放送の再送信を行う上では必要十分である。それにもかかわらず、地上デジタル放送の再送信を行うために充分な審議をせずに、実演家及びレコード製作者にとって大変価値のある著作隣接権を拙速に撤廃することは、実演家及びレコード製作者に対する配慮を欠き、結果として国際競争力あるコンテンツの育成に重大な支障を及ぼすことになる。
理由は以下のとおりである。

(1) IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになる。
文化審議会著作権文化法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)(以下「本報告書案」という。)では、IPマルチキャスト放送のうち、放送を同時再送信する場合に限り、IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱うよう著作権法を改正することが提案されているが、IPマルチキャスト放送については、あくまでも現行著作権法上の「自動公衆送信」としての取扱いを堅持すべきであると考える。
すなわち、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになると考えられる。他方、IPマルチキャスト放送事業は、登録制の事業であり(電気通信役務利用放送法第3条)、また、放送内容等について地上放送事業者と同等の制約が課せられていないことから(同法第15条)、様々な性質を有する新規事業者が多数参入することが想定されることに留意しなければならない。レコード製作者においては、このような多数の新規参入事業者が仮に発生した場合、市販されたCDの音源を用いた「自主放送」がレコード製作者の許諾を得ずに行われることになるのではないかと大変憂慮しているのである。また、「自主放送」が広くなされることになると、実務的に二次使用料が名目的となり、その回収が困難となることが容易に想像できる。その上、CDの音源を用いた番組のみを流す「自主放送」がCDあるいは音楽配信よりも遙かに廉価で提供され、さらにコピーによる音質の劣化がないデジタル録音が容易にできるPCと親和性のあるIPマルチキャスト方式により「番組」が提供されることになるとすれば、消費者がCD等を購入しなくなり、レコード制作事業者にとっては死活問題となる。
このようなことになれば、コンテンツ制作について萎縮作用がもたらされ、その結果、我が国がコンテンツ大国となることは困難となるものと考える。

(2)競争力のあるコンテンツ育成のためにはコンテンツの利用許諾権が必要不可欠である
実演家及びレコード製作者としては、自己の保有するコンテンツを流通させることについては、自らの戦略に従って、当該コンテンツの価値の最大化を図るべく経営努力を行っており、二次使用料を受領することのみではコンテンツの価値の最大化を図ることができないことは明らかである。自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることは著作隣接権者としての基本的な権利であって、かかる権利なくして国際競争力のあるコンテンツを育成することなど到底できない。放送及び有線放送について許諾権がないのは、放送及び有線放送の持つ高度の公共性のためのいわば「特権」であって、既存のコンテンツの流通を容易にするために近視眼的にこの「特権」を安易に流用することは、我が国における将来のコンテンツ育成に大きな禍根を残すことになる。

仮に、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信、さらにはそれに続くと懸念される「自主放送」についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱い、その結果、実演家又はレコード製作者において、これらに対する許諾権が撤廃されれば、例えば、自らの戦略にとって不都合な者が自らの意思に反してコンテンツを利用してしまうこと(例えば、競業他社によるIPマルチキャスト放送によるコンテンツの希釈化や、近い将来に同放送を行う事業者が多く登場した場合における無秩序なコンテンツの配信等が容易に考えられる。)が想定され、コンテンツプロバイダーとしての事業戦略(業務提携等)に大きな支障を来すことが予測される。

(3)コンテンツの流通促進のためには著作権の集中管理制度を整備することが最善の道である
以上のとおり、国際競争力のあるコンテンツを育成するためには、コンテンツ保有者がその意思に反するコンテンツの利用を差し止めることができるように、実演家及びレコード製作者に許諾権を残すことが必要不可欠である。
他方、許諾権を残したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理し、利用料率を明確に定める新たな仕組みを早急に立ち上げることが実務上可能である以上、IPマルチキャスト放送事業者側の不都合が生じないことは明らかである(かかる新たな集中管理制度においては、例えば、技術的保護手段(DRM)あるいは技術的制限手段の存否、及びDRMにおけるコピー可能回数等を要素とした利用料率を定めること等が考えられ、立法的措置(デジタルコンテンツ立法)も検討の余地があろう。)。
個人 (4)競争力のあるコンテンツ育成のために国際条約の改正も含めコンテンツの利用に関する立法をすすめるべきであって、条約に形式的に反しないことをもってIPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いに関する著作権法改正することができるとする議論には問題がある
本報告書案は、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様にし、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者に現在認められている送信可能化権を撤廃し、二次使用料の請求権に改めることの主な根拠として、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(以下「実演・レコード条約」という。)第10条及び第14条に反しないことを挙げている。
しかしながら、そもそも、実演・レコード条約は今から10年前の1996年に締結されたものであり、同条約が締結された当時の状況と現在の状況とは全く異なっており、同条約はIPマルチキャスト放送の存在を前提としていない。そればかりか、そもそも、現時点において、IPマルチキャスト放送の取扱いについて明示的に合意された国際条約は存在していない。
このような状況の下、実演・レコード条約第10条及び第14条の規定に反しないことをもって、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者の送信可能化権を撤廃することは根拠が薄弱である。
以上のとおり、現在我が国が保有する優良なコンテンツを保護し、将来にわたっても国際競争力のある優良な我が国発のコンテンツを育成するためには、一方で、自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることができる権利である許諾権を堅持するとともに、他方では、コンテンツの流通の促進を図るための新たな制度(集中管理制度等)を整備すること等を行うことが、最善の方法であると思料する。
個人 2. IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」「6.検討結果」「2IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し」(28頁以下)について
IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信することについて、実演家及びレコード製作者に対して現行著作権法上認められている「送信可能化権」を「二次使用料に関する報酬請求権」に改めることについて反対である。
実演家及びレコード製作者にとって大変価値のある著作隣接権を充分な審議をせずに撤廃することは、実演家及びレコード製作者に対する配慮を欠くもので、結果として国際競争力あるコンテンツの育成に重大な支障を及ぼすことになる、と考えるからである。
主たる理由は以下のとおり。

(1) IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになる
文化審議会著作権文化法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)(以下「本報告書案」という。)では、IPマルチキャスト放送のうち、放送を同時再送信する場合に限り、IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱うよう著作権法を改正することが提案されているが、IPマルチキャスト放送については、あくまでも現行著作権法上の「自動公衆送信」としての取扱いを堅持すべきであると考える。
すなわち、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることになると考えられる。他方、IPマルチキャスト放送事業は、登録制の事業であり(電気通信役務利用放送法第3条)、放送内容等についても地上放送事業者と同等の制約は課せられていないことから(同法第15条)、様々な新規事業者が多数参入することが想定される。レコード製作者においては、このような新規参入事業者が発生した場合、市販されたCDの音源を用いた「自主放送」がレコード製作者の許諾を得ずに行われることになると、実務的に二次使用料が名目的となり、その回収が困難となることが容易に想像できる。
個人 その上、CDの音源を用いた番組のみを流す「自主放送」がCDあるいは音楽配信よりも遙かに廉価で提供され、さらにコピーによる音質劣化がないデジタル録音が容易にできるPCと親和性のあるIPマルチキャスト方式により「番組」が提供されることになれば、消費者がCD等を購入しなくなり、実演家およびレコード製作事業者にとっては死活問題となる。
このようなことになれば、コンテンツ制作への意欲は激減し、その結果、我が国がコンテンツ大国となることは困難となるものと考える。

(2)競争力のあるコンテンツ育成のためにはコンテンツの利用許諾権が必要不可欠である
実演家及びレコード製作者としては、コンテンツの流通については、自らの戦略に従って、当該コンテンツの価値の最大化を図るべく経営努力を行っており、二次使用料を受領することのみではコンテンツの価値の最大化を図ることができない。自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることは著作隣接権者としての基本的な権利であって、かかる権利なくして国際競争力のあるコンテンツを育成することなど到底不可能である。放送及び有線放送について許諾権がないのは、放送及び有線放送の持つ高度の公共性のためのいわば「特権」であって、この「特権」を安易に流用することは、我が国における将来のコンテンツ育成に大きな禍根を残すことになる。
仮に、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信、さらにはそれに続くと懸念される「自主放送」についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱い、その結果、実演家又はレコード製作者において、これらに対する許諾権が撤廃されれば、例えば、自らの戦略にとって不都合な者が自らの意思に反してコンテンツを利用してしまうこと(例えば、競業他社によるIPマルチキャスト放送によるコンテンツの希釈化や、近い将来に同放送を行う事業者が多く登場した場合における無秩序なコンテンツの配信等)が想定されコンテンツプロバイダーとしての事業戦略(業務提携等)に大きな支障を来すことが予測される。

(3)コンテンツの流通促進のためには著作権の集中管理制度を整備することも最善の道である
以上のとおり、国際競争力のあるコンテンツを育成するためには、コンテンツ保有者がその意思に反するコンテンツの利用を差し止めることができるよう、実演家及びレコード製作者に「許諾権」を残すことが必要不可欠である。
他方、「許諾権」を残したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理し、利用料率を明確に定める新たな仕組みを早急に立ち上げることが実務上可能である以上、IPマルチキャスト放送事業者側の不都合が生じないことは明らかである(かかる新たな集中管理制度においては、例えば、技術的保護手段(DRM)あるいは技術的制限手段の存否、及びDRMにおけるコピー可能回数等を要素とした利用料率を定めること等が考えられ、立法的措置(デジタルコンテンツ立法)も検討の余地があろう。)。

(4)条約に形式的に反しないことをもってIPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いに関する著作権法改正することができるとする議論には問題がある
将来に向けたコンテンツ育成のために国際条約の改正も含めコンテンツの利用に関する立法をすすめるべきである
本報告書案は、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様にし、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者に現在認められている送信可能化権を撤廃し、二次使用料の請求権に改めることの主な根拠として、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(以下「実演・レコード条約」という。)第10条及び第14条に反しないことを挙げている。
しかしながら、そもそも、実演・レコード条約は今から10年前の1996年に締結されたものであり、同条約が締結された当時の状況と現在の状況とは全く異なっており、当然ながら同条約はIPマルチキャスト放送の存在を前提としていない。そればかりか、そもそも、現時点において、IPマルチキャスト放送の取扱いについて明示的に合意された国際条約は存在していない。
このような状況の下、実演・レコード条約第10条及び第14条の規定に反しないことをもって、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者の送信可能化権を撤廃することは根拠が薄弱である。

以上のとおり、我が国発のコンテンツを健全に保護・育成するためには、
・自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることができる権利である「許諾権」を堅持する
・コンテンツの流通の促進を図るための新たな制度(集中管理制度等)を整備する
ことが最善の方法であると確信するものである。
個人 2. IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」「6.検討結果」「2IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し」(28頁以下)について

IPマルチキャスト技術を用いた有線電気通信の送信(以下「IPマルチキャスト放送」という。)により放送を同時再送信することについて、実演家及びレコード製作者に対して現行著作権法上認められている送信可能化権を二次使用料に関する報酬請求権に改めることについて反対である。現行著作権法上認められている実演家及びレコード製作者の送信可能化権を維持したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理することで、IPマルチキャスト放送を用いた地上デジタル放送の再送信を行う上では必要十分である。それにもかかわらず、地上デジタル放送の再送信を行うために充分な審議をせずに、実演家及びレコード製作者にとって大変価値のある著作隣接権を拙速に撤廃することは、実演家及びレコード製作者に対する配慮を欠き、結果として国際競争力あるコンテンツの育成に重大な支障を及ぼすことになる。
理由は以下のとおりである。

(1) IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになる
文化審議会著作権文化法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)(以下「本報告書案」という。)では、IPマルチキャスト放送のうち、放送を同時再送信する場合に限り、IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱うよう著作権法を改正することが提案されているが、IPマルチキャスト放送については、あくまでも現行著作権法上の「自動公衆送信」としての取扱いを堅持すべきであると考える。
すなわち、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになると考えられる。他方、IPマルチキャスト放送事業は、登録制の事業であり(電気通信役務利用放送法第3条)、また、放送内容等について地上放送事業者と同等の制約が課せられていないことから(同法第15条)、様々な性質を有する新規事業者が多数参入することが想定されることに留意しなければならない。

レコード製作者においては、このような多数の新規参入事業者が仮に発生した場合、市販されたCDの音源を用いた「自主放送」がレコード製作者の許諾を得ずに行われることになるのではないかと大変憂慮しているのである。また、「自主放送」が広くなされることになると、実務的に二次使用料が名目的となり、その回収が困難となることが容易に想像できる。その上、CDの音源を用いた番組のみを流す「自主放送」がCDあるいは音楽配信よりも遙かに廉価で提供され、さらにコピーによる音質の劣化がないデジタル録音が容易にできるPCと親和性のあるIPマルチキャスト方式により「番組」が提供されることになるとすれば、消費者がCD等を購入しなくなり、レコード制作事業者にとっては死活問題となる。
このようなことになれば、コンテンツ制作について萎縮作用がもたらされ、その結果、我が国がコンテンツ大国となることは困難となるものと考える。

(2)競争力のあるコンテンツ育成のためにはコンテンツの利用許諾権が必要不可欠である
実演家及びレコード製作者としては、自己の保有するコンテンツを流通させることについては、自らの戦略に従って、当該コンテンツの価値の最大化を図るべく経営努力を行っており、二次使用料を受領することのみではコンテンツの価値の最大化を図ることができないことは明らかである。自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることは著作隣接権者としての基本的な権利であって、かかる権利なくして国際競争力のあるコンテンツを育成することなど到底できない。放送及び有線放送について許諾権がないのは、放送及び有線放送の持つ高度の公共性のためのいわば「特権」であって、既存のコンテンツの流通を容易にするために近視眼的にこの「特権」を安易に流用することは、我が国における将来のコンテンツ育成に大きな禍根を残すことになる。

仮に、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信、さらにはそれに続くと懸念される「自主放送」についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱い、その結果、実演家又はレコード製作者において、これらに対する許諾権が撤廃されれば、例えば、自らの戦略にとって不都合な者が自らの意思に反してコンテンツを利用してしまうこと(例えば、競業他社によるIPマルチキャスト放送によるコンテンツの希釈化や、近い将来に同放送を行う事業者が多く登場した場合における無秩序なコンテンツの配信等が容易に考えられる。)が想定され、コンテンツプロバイダーとしての事業戦略(業務提携等)に大きな支障を来すことが予測される。

(3)コンテンツの流通促進のためには著作権の集中管理制度を整備することが最善の道である
以上のとおり、国際競争力のあるコンテンツを育成するためには、コンテンツ保有者がその意思に反するコンテンツの利用を差し止めることができるように、実演家及びレコード製作者に許諾権を残すことが必要不可欠である。
他方、許諾権を残したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理し、利用料率を明確に定める新たな仕組みを早急に立ち上げることが実務上可能である以上、IPマルチキャスト放送事業者側の不都合が生じないことは明らかである(かかる新たな集中管理制度においては、例えば、技術的保護手段(DRM)あるいは技術的制限手段の存否、及びDRMにおけるコピー可能回数等を要素とした利用料率を定めること等が考えられ、立法的措置(デジタルコンテンツ立法)も検討の余地があろう。)。
個人 (4)競争力のあるコンテンツ育成のために国際条約の改正も含めコンテンツの利用に関する立法をすすめるべきであって、条約に形式的に反しないことをもってIPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いに関する著作権法改正することができるとする議論には問題がある
本報告書案は、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様にし、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者に現在認められている送信可能化権を撤廃し、二次使用料の請求権に改めることの主な根拠として、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(以下「実演・レコード条約」という。)第10条及び第14条に反しないことを挙げている。
しかしながら、そもそも、実演・レコード条約は今から10年前の1996年に締結されたものであり、同条約が締結された当時の状況と現在の状況とは全く異なっており、同条約はIPマルチキャスト放送の存在を前提としていない。そればかりか、そもそも、現時点において、IPマルチキャスト放送の取扱いについて明示的に合意された国際条約は存在していない。
このような状況の下、実演・レコード条約第10条及び第14条の規定に反しないことをもって、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者の送信可能化権を撤廃することは根拠が薄弱である。

以上のとおり、現在我が国が保有する優良なコンテンツを保護し、将来にわたっても国際競争力のある優良な我が国発のコンテンツを育成するためには、一方で、自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることができる権利である許諾権を堅持するとともに、他方では、コンテンツの流通の促進を図るための新たな制度(集中管理制度等)を整備すること等を行うことが、最善の方法であると思料する。
個人 2. IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」「6.検討結果」「2IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し」(28頁以下)について

IPマルチキャスト技術を用いた有線電気通信の送信(以下「IPマルチキャスト放送」という。)により放送を同時再送信することについて、実演家及びレコード製作者に対して現行著作権法上認められている送信可能化権を二次使用料に関する報酬請求権に改めることについて反対します。

現行著作権法上認められている実演家及びレコード製作者の送信可能化権を維持したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理することで、IPマルチキャスト放送を用いた地上デジタル放送の再送信を行う上では必要十分です。
それにもかかわらず、地上デジタル放送の再送信を行うために充分な審議をせずに、実演家及びレコード製作者にとって大変価値のある著作隣接権をすぐに撤廃することは、実演家及びレコード製作者に対する配慮を欠いていて、結果として国際競争力あるコンテンツの育成に重大な支障を及ぼすことになります。

理由
(1)
IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになる文化審議会著作権文化法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)(以下「本報告書案」という。)では、IPマルチキャスト放送のうち、放送を同時再送信する場合に限り、IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱うよう著作権法を改正することが提案されているが、IPマルチキャスト放送については、あくまでも現行著作権法上の「自動公衆送信」としての取扱いを堅持すべきであると考える。

すなわち、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになると考えられる。
他方、IPマルチキャスト放送事業は、登録制の事業であり(電気通信役務利用放送法第3条)、また、放送内容等について地上放送事業者と同等の制約が課せられていないことから(同法第15条)、様々な性質を有する新規事業者が多数参入することが想定されることに留意しなければならない。レコード製作者においては、このような多数の新規参入事業者が仮に発生した場合、市販されたCDの音源を用いた「自主放送」がレコード製作者の許諾を得ずに行われることになるのではないかと大変憂慮しているのである。また、「自主放送」が広くなされることになると、実務的に二次使用料が名目的となり、その回収が困難となることが容易に想像できる。その上、CDの音源を用いた番組のみを流す「自主放送」がCDあるいは音楽配信よりも遙かに廉価で提供され、さらにコピーによる音質の劣化がないデジタル録音が容易にできるPCと親和性のあるIPマルチキャスト方式により「番組」が提供されることになるとすれば、消費者がCD等を購入しなくなり、レコード制作事業者にとっては死活問題となる。このようなことになれば、コンテンツ制作について萎縮作用がもたらされ、その結果、我が国がコンテンツ大国となることは困となるものと考える。
(2)
競争力のあるコンテンツ育成のためにはコンテンツの利用許諾権が必要不可欠である実演家及びレコード製作者としては、自己の保有するコンテンツを流通させることについては、自らの戦略に従って、当該コンテンツの価値の最大化を図るべく経営努力を行っており、二次使用料を受領することのみではコンテンツの価値の最大化を図ることができないことは明らかである。自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることは著作隣接権者としての基本的な権利であって、かかる権利なくして国際競争力のあるコンテンツを育成することなど到底できい。放送及び有線放送について許諾権がないのは、放送及び有線放送の持つ高度の公共性のためのいわば「特権」であって、既存のコンテンツの流通を容易にするために近視眼的にこの「特権」を安易に流用することは、我が国における将来のコンテンツ育成に大きな禍根を残すことになる。
仮に、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信、さらにはそれに続くと懸念される「自主放送」についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱い、その結果、実演家又はレコード製作者において、これらに対する許諾権が撤廃されれば、例えば、自らの戦略にとって不都合な者が自らの意思に反してコンテンツを利用してしまうこと(例えば、競業他社によるIPマルチキャスト放送によるコンテンツの希釈化や、近い将来に同放送を行う事業者が多く登場した場合における無秩序なコンテンツの配信等が容易に考えられる。)が想定され、コンテンツプロバイダーとしての事業戦略(業務提携等)に大きな支障を来すことが予測される。
(3)
コンテンツの流通促進のためには著作権の集中管理制度を整備することが最善の道である
以上のとおり、国際競争力のあるコンテンツを育成するためには、コンテンツ保有者がその意思に反するコンテンツの利用を差し止めることができるように、実演家及びレコード製作者に許諾権を残すことが必要不可欠である。
個人 他方、許諾権を残したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理し、利用料率を明確に定める新たな仕組みを早急に立ち上げることが実務上可能である以上、IPマルチキャスト放送事業者側の不都合が生じないことは明らかである(かかる新たな集中管理制度においては、例えば、技術的保護手段(DRM)あるいは技術的制限手段の存否、及びDRMにおけるコピー可能回数等を要素とした利用料率を定めること等が考えられ、立法的措置(デジタルコンテンツ立法)も検討の余地があろう。)。
(4)
競争力のあるコンテンツ育成のために国際条約の改正も含めコンテンツの利用に関する立法をすすめるべきであって、条約に形式的に反しないことをもってIPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いに関する著作権法改正することができるとする議論には問題がある
本報告書案は、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様にし、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者に現在認められている送信可能化権を撤廃し、二次使用料の請求権に改めることの主な根拠として、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(以下「実演・レコード条約」という。)第10条及び第14条に反しないことを挙げている。

しかしながら、そもそも、実演・レコード条約は今から10年前の1996年に締結されたものであり、同条約が締結された当時の状況と現在の状況とは全く異なっており、同条約はIPマルチキャスト放送の存在を前提としていない。そればかりか、そもそも、現時点において、IPマルチキャスト放送の取扱いについて明示的に合意された国際条約は存在していない。
このような状況の下、実演・レコード条約第10条及び第14条の規定に反しないことをもって、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者の送信可能化権を撤廃することは根拠が薄弱である。
以上のとおり、現在我が国が保有する優良なコンテンツを保護し、将来にわたっても国際競争力のある優良な我が国発のコンテンツを育成するためには、一方で、自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることができる権利である許諾権を堅持するとともに、他方では、コンテンツの流通の促進を図るための新たな制度(集中管理制度等)を整備すること等を行うことが、最善の方法であると思料する。
個人 (IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について)
「放送の同時再送信」部分について、下記の通り意見を提出いたします。

地上デジタル放送の完全実施は、権利の集中管理によって対応可能であり、実際にその方向での取り組みが進められているにも拘わらず、実演家及びレコード製作者の送信可能化権を制限する方向で報告書案が取りまとめられたことは大変遺憾である。IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信を有線放送と同様に取り扱うことが、公共の利益を図るためにやむを得ないこととの一定限の理解はできるものの、具体的な法案検討に当たっては、米国盤レコード等の、原則として放送二次使用料の対象外でありながら、送信可能化権が認められているレコードについては、少なくとも報酬請求権を付与する等、実演家及びレコード製作者の権利が不当に縮小されることのないよう、強く要望する。
個人 2. IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」「6.検討結果」
2IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し」(28頁以下)について

まず、下記について表現を統一するため「IPマルチキャスト放送」と記したが、本来は「IPマルチキャスト通信」あるいは「IPマルチキャスト配信」に改めるべきだと思っていることを前置きします。
IPマルチキャスト技術を用いた有線電気通信の送信(以下「IPマルチキャスト放送」という。)により放送を同時再送信することについて、実演家及びレコード製作者に対して現行著作権法上認められている送信可能化権を二次使用料に関する報酬請求権に改めることについて反対である。現行著作権法上認められている実演家及びレコード製作者の送信可能化権を維持したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理することで、IPマルチキャスト放送を用いた地上デジタル放送の再送信を行う上では必要十分である。それにもかかわらず、地上デジタル放送の再送信を行うために充分な審議をせずに、実演家及びレコード製作者にとって大変価値のある著作隣接権を拙速に撤廃することは、実演家及びレコード製作者に対する配慮を欠き、結果として国際競争力あるコンテンツの育成に重大な支障を及ぼすことになる。理由は以下のとおりである。

(1)IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを
「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになる
文化審議会著作権文化法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)(以下「本報告書案」という。)では、IPマルチキャスト放送のうち、放送を同時再送信する場合に限り、IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱うよう著作権法を改正することが提案されているが、IPマルチキャスト放送については、あくまでも現行著作権法上の「自動公衆送信」としての取扱いを堅持すべきであると考える。
すなわち、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても
著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになると考えられる。
他方、IPマルチキャスト放送事業は、登録制の事業であり(電気通信役務利用放送法第3条)、また、放送内容等について地上放送事業者と同等の制約が課せられていないことか(同法第15条)、様々な性質を有する新規事業者が多数参入することが想定されることに留意しなければならない。レコード製作者においては、このような多数の新規参入事業者が仮に発生した場合、市販されたCDの音源を用いた「自主放送」がレコード製作者の許諾を得ずに行われることになるのではないかと大変憂慮しているのである。また、「自主放送」が広くなされることになると、実務的に二次使用料が名目的となり、その回収が困難となることが容易に想像できる。その上、CDの音源を用いた番組のみを流す「自主放送」がCDあるいは音楽配信よりも遙かに廉価で提供され、さらにコピーによる音質の劣化がないデジタル録音が容易にできるPCと親和性のあるIPマルチキャスト方式により「番組」が提供されることになるとすれば、消費者がCD等を購入しなくなり、レコード制作事業者にとっては死活問題となる。
このようなことになれば、コンテンツ制作について萎縮作用がもたらされ、その結果、我が国がコンテンツ大国となることは困難となるものと考える。

(2)競争力のあるコンテンツ育成のためにはコンテンツの利用許諾権が必要不可欠である
実演家及びレコード製作者としては、自己の保有するコンテンツを流通させることについては、自らの戦略に従って、当該コンテンツの価値の最大化を図るべく経営努力を行っており、二次使用料を受領することのみではコンテンツの価値の最大化を図ることができないことは明らかである。自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることは著作隣接権者としての基本的な権利であって、かかる権利なくして国際競争力のあるコンテンツを育成することなど到底できない。放送及び有線放送について許諾権がないのは、放送及び有線放送の持つ高度の公共性のためのいわば「特権」であって、既存のコンテンツの流通を容易にするために近視眼的にこの「特権」を安易に流用することは、我が国における将来のコンテンツ育成に大きな禍根を残すことになる。
仮に、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信、さらにはそれに続くと懸念される「自主放送」についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱い、その結果、実演家又はレコード製作者において、これらに対する許諾権が撤廃されれば、例えば、自らの戦略にとって不都合な者が自らの意思に反してコンテンツを利用してしまうこと(例えば、競業他社によるIPマルチキャスト放送によるコンテンツの希釈化や、近い将来に同放送を行う事業者が多く登場した場合における無秩序なコンテンツの配信等が容易に考えられる。)が想定され、コンテンツプロバイダーとしての事業戦略(業務提携等)に大きな支障を来すことが予測される。
個人 (3)コンテンツの流通促進のためには著作権の集中管理制度を整備することが最善の道である

以上のとおり、国際競争力のあるコンテンツを育成するためには、コンテンツ保有者がその意思に反するコンテンツの利用を差し止めることができるように、実演家及びレコード製作者に許諾権を残すことが必要不可欠である。
他方、許諾権を残したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理し、利用料率を明確に定める新たな仕組みを早急に立ち上げることが実務上可能である以上、IPマルチキャスト放送事業者側の不都合が生じないことは明らかである(かかる新たな集中管理制度においては、例えば、技術的保護手段(DRM)あるいは技術的制限手段の存否、及びDRMにおけるコピー可能回数等を要素とした利用料率を定めること等が考えられ、立法的措置(デジタルコンテンツ立法)も検討の余地があろう。)。

(4)競争力のあるコンテンツ育成のために国際条約の改正も含めコンテンツの利用に関する立法をすすめるべきであって、条約に形式的に反しないことをもってIPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いに関する著作権法改正することができるとする議論にある。

本報告書案は、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様にし、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者に現在認められている送信可能化権を撤廃し、二次使用料の請求権に改めることの主な根拠として、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(以下「実演・レコード条約」という。)第10条及び第14条に反しないことを挙げている。
しかしながら、そもそも、実演・レコード条約は今から10年前の1996年に締結されたものであり、同条約が締結された当時の状況と現在の状況とは全く異なっており、同条約はIPマルチキャスト放送の存在を前提としていない。そればかりか、そもそも、現時点において、IPマルチキャスト放送の取扱いについて明示的に合意された国際条約は存在していない。
このような状況の下、実演・レコード条約第10条及び第14条の規定に反しないことをもって、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者の送信可能化権を撤廃することは根拠が薄弱である。

以上のとおり、現在我が国が保有する優良なコンテンツを保護し、将来にわたっても国際競争力のある優良な我が国発のコンテンツを育成するためには、一方で、自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることができる権利である許諾権を堅持するとともに、他方では、コンテンツの流通の促進を図るための新たな制度(集中管理制度等)を整備すること等を行うことが、最善の方法であると思料する。
個人 「IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について(報告書案26頁〜30頁)」について。
地上デジタル放送の実施のため、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信を有線放送と同様に取り扱うことにはやむを得ないとしても、具体的な法案検討にあたっては、原則として放送二次使用料の対象外でありながら送信可能化権が認められているレコード(米国盤レコード等)について、少なくとも報酬請求権が付与されるよう、強く要望いたします。また、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信を有線放送と同様に取り扱う際の具体的な法案検討においても、米国盤レコード等が無権利となるようなことがないよう求めます。
個人 IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について

(1)IPマルチキャスト放送による「放送の同時再送信」について

現行法は、放送及び有線放送に関して種々の特権を定めているが、これは公共政策上の配慮に基づく例外的取扱いである。したがって、かような例外的取扱いを安易に拡大することは、適切な権利保護の観点から疑問視せざるを得ない。IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信が地上デジタル放送の円滑な実施を主眼としているとしても、第一に検討すべきは、実演及びレコードの集中管理体制の整備であると考えるが、その点の検証作業が些か不足していた感がある。
従前の「許諾権」が「報酬請求権」に制限される場合、利用者は禁止権の行使を受けることなく、安心して実演及びレコードを利用することが可能になるが、他方、実演家及びレコード製作者は、禁止権を行使することが認められないことの現実的結果として、利用者側との使用料交渉において不利を強いられることとなる。しかし、許諾権を報酬請求権に変更する趣旨は、禁止権の行使を認めないということであり、許諾権である場合に比して安価な使用料を認めることではないことを申し述べたい。

(2)有線放送による放送の同時再送信について

今般、有線放送による放送の同時再送信について、新たに報酬請求権を実演家及びレコード製作者に付与することになった点は、有線放送事業の実態に照らして適当だと考えるが、実演家・レコード製作者と有線放送事業者側の契約ルールが早期に策定されるよう、文化庁の支援が望まれる。 

(3)IPマルチキャスト放送による「自主放送」部分の取扱い

実演及びレコードの集中管理体制が進められている現状に鑑みた場合、IPマルチキャスト放送による「自主放送」に関して、実演及びレコードの許諾権を報酬請求権に変更する理由は存在しないと考える。 
個人 地上デジタル放送の完全実施の必要性は理解できるが、その範囲(同時再送信)を越えて、実演家及びレコード製作者の送信可能化権を縮小することとならないよう、強く要望致したく。なお、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について報酬請求権への切り下げになるにしても、具体的な法律案を作成するに当たっては、原則として放送二次使用料の対象外である米国盤レコード等の取扱いに十分留意するよう強く要望致したく。
個人 2. IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」「6.検討結果」「2IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し」(28頁以下)について

IPマルチキャスト技術を用いた有線電気通信の送信(以下「IPマルチキャスト放送」という。)により放送を同時再送信することについて、実演家及びレコード製作者に対して現行著作権法上認められている送信可能化権を二次使用料に関する報酬請求権に改めることについて反対である。現行著作権法上認められている実演家及びレコード製作者の送信可能化権を維持したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理することで、IPマルチキャスト放送を用いた地上デジタル放送の再送信を行う上では必要十分である。それにもかかわらず、地上デジタル放送の再送信を行うために充分な審議をせずに、実演家及びレコード製作者にとって大変価値のある著作隣接権を拙速に撤廃することは、実演家及びレコード製作者に対する配慮を欠き、結果として国際競争力あるコンテンツの育成に重大な支障を及ぼすことになる。
理由は以下のとおりである。

(1)IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになる
文化審議会著作権文化法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)(以下「本報告書案」という。)では、IPマルチキャスト放送のうち、放送を同時再送信する場合に限り、IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱うよう著作権法を改正することが提案されているが、IPマルチキャスト放送については、あくまでも現行著作権法上の「自動公衆送信」としての取扱いを堅持すべきであると考える。

すなわち、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになると考えられる。他方、IPマルチキャスト放送事業は、登録制の事業であり(電気通信役務利用放送法第3条)、また、放送内容等について地上放送事業者と同等の制約が課せられていないことから(同法第15条)、様々な性質を有する新規事業者が多数参入することが想定されることに留意しなければならない。レコード製作者においては、このような多数の新規参入事業者が仮に発生した場合、市販されたCDの音源を用いた「自主放送」がレコード製作者の許諾を得ずに行われることになるのではないかと大変憂慮しているのである。また、「自主放送」が広くなされることになると、実務的に二次使用料が名目的となり、その回収が困難となることが容易に想像できる。その上、CDの音源を用いた番組のみを流す「自主放送」がCDあるいは音楽配信よりも遙かに廉価で提供され、さらにコピーによる音質の劣化がないデジタル録音が容易にできるPCと親和性のあるIPマルチキャスト方式により「番組」が提供されることになるとすれば、消費者がCD等を購入しなくなり、レコード制作事業者にとっては死活問題となる。
このようなことになれば、コンテンツ制作について萎縮作用がもたらされ、その結果、我が国がコンテンツ大国となることは困難となるものと考える。

(2)競争力のあるコンテンツ育成のためにはコンテンツの利用許諾権が必要不可欠である
実演家及びレコード製作者としては、自己の保有するコンテンツを流通させることについては、自らの戦略に従って、当該コンテンツの価値の最大化を図るべく経営努力を行っており、二次使用料を受領することのみではコンテンツの価値の最大化を図ることができないことは明らかである。自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることは著作隣接権者としての基本的な権利であって、かかる権利なくして国際競争力のあるコンテンツを育成することなど到底できない。放送及び有線放送について許諾権がないのは、放送及び有線放送の持つ高度の公共性のためのいわば「特権」であって、既存のコンテンツの流通を容易にするために近視眼的にこの「特権」を安易に流用することは、我が国における将来のコンテンツ育成に大きな禍根を残すことになる。

仮に、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信、さらにはそれに続くと懸念される「自主放送」についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱い、その結果、実演家又はレコード製作者において、これらに対する許諾権が撤廃されれば、例えば、自らの戦略にとって不都合な者が自らの意思に反してコンテンツを利用してしまうこと(例えば、競業他社によるIPマルチキャスト放送によるコンテンツの希釈化や、近い将来に同放送を行う事業者が多く登場した場合における無秩序なコンテンツの配信等が容易に考えられる。)が想定され、コンテンツプロバイダーとしての事業戦略(業務提携等)に大きな支障を来すことが予測される。

(3)コンテンツの流通促進のためには著作権の集中管理制度を整備することが最善の道である
以上のとおり、国際競争力のあるコンテンツを育成するためには、コンテンツ保有者がその意思に反するコンテンツの利用を差し止めることができるように、実演家及びレコード製作者に許諾権を残すことが必要不可欠である。
他方、許諾権を残したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理し、利用料率を明確に定める新たな仕組みを早急に立ち上げることが実務上可能である以上、IPマルチキャスト放送事業者側の不都合が生じないことは明らかである(かかる新たな集中管理制度においては、例えば、技術的保護手段(DRM)あるいは技術的制限手段の存否、及びDRMにおけるコピー可能回数等を要素とした利用料率を定めること等が考えられ、立法的措置(デジタルコンテンツ立法)も検討の余地があろう。)。

(4)競争力のあるコンテンツ育成のために国際条約の改正も含めコンテンツの利用に関する立法をすすめるべきであって、条約に形式的に反しないことをもってIPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いに関する著作権法改正することができるとする議論には問題がある
本報告書案は、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様にし、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者に現在認められている送信可能化権を撤廃し、二次使用料の請求権に改めることの主な根拠として、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(以下「実演・レコード条約」という。)第10条及び第14条に反しないことを挙げている。

個人 しかしながら、そもそも、実演・レコード条約は今から10年前の1996年に締結されたものであり、同条約が締結された当時の状況と現在の状況とは全く異なっており、同条約はIPマルチキャスト放送の存在を前提としていない。そればかりか、そもそも、現時点において、IPマルチキャスト放送の取扱いについて明示的に合意された国際条約は存在していない。
このような状況の下、実演・レコード条約第10条及び第14条の規定に反しないことをもって、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者の送信可能化権を撤廃することは根拠が薄弱である。

(5)IPマルチキャスト放送が、IPマルチキャスト技術を用いるということで定義されていて、受信機の著作権保護の仕組みについての議論が十分にされていない
IPマルチキャスト放送の受信が、セットトップボックスあるいはPCなどのいずれかでおこなわれるにしても技術革新などにより、私的利用の大義名分のもとに個人音楽再生などの目的で複製されることが容易に想像される。このような音楽、コンテンツビジネスの根本を破壊するようなことを防ぐ手段をまず明確に議論すべきである。


以上のとおり、現在我が国が保有する優良なコンテンツを保護し、将来にわたっても国際競争力のある優良な我が国発のコンテンツを育成するためには、一方で、自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることができる権利である許諾権を堅持するとともに、他方では、コンテンツの流通の促進を図るための新たな制度(集中管理制度等)を整備すること等を行うことが、最善の方法であると思料する。
個人 2. IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」「6.検討結果」「2IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し」(28頁以下)について

IPマルチキャスト技術を用いた有線電気通信の送信(以下「IPマルチキャスト放送」という。)により放送を同時再送信することについて、実演家及びレコード製作者に対して現行著作権法上認められている送信可能化権を二次使用料に関する報酬請求権に改めることについて反対であります。現行著作権法上認められている実演家及びレコード製作者の送信可能化権を維持したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理することで、IPマルチキャスト放送を用いた地上デジタル放送の再送信を行う上では必要十分である。それにもかかわらず、地上デジタル放送の再送信を行うために充分な審議をせずに、実演家及びレコード製作者にとって大変価値のある著作隣接権を拙速に撤廃することは、実演家及びレコード製作者に対する配慮を欠き、結果として国際競争力あるコンテンツの育成に重大な支障を将来に渡り、及ぼすことになる。
理由は以下のとおりであります。

(1) IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになる
文化審議会著作権文化法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)(以下「本報告書案」という。)では、IPマルチキャスト放送のうち、放送を同時再送信する場合に限り、IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱うよう著作権法を改正することが提案されているが、IPマルチキャスト放送については、あくまでも現行著作権法上の「自動公衆送信」としての取扱いを堅持すべきであると考える。

すなわち、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになると考えられる。他方、IPマルチキャスト放送事業は、登録制の事業であり(電気通信役務利用放送法第3条)、また、放送内容等について地上放送事業者と同等の制約が課せられていないことから(同法第15条)、様々な性質を有する新規事業者が多数参入することが想定されることに留意しなければならない。レコード製作者においては、このような多数の新規参入事業者が仮に発生した場合、市販されたCDの音源を用いた「自主放送」がレコード製作者の許諾を得ずに行われることになるのではないかと大変憂慮しているのである。また、「自主放送」が広くなされることになると、実務的に二次使用料が名目的となり、その回収が困難となることが容易に想像できる。その上、CDの音源を用いた番組のみを流す「自主放送」がCDあるいは音楽配信よりも遙かに廉価で提供され、さらにコピーによる音質の劣化がないデジタル録音が容易にできるPCと親和性のあるIPマルチキャスト方式により「番組」が提供されることになるとすれば、消費者がCD等を購入しなくなり、レコード制作事業者にとっては死活問題となる。
このようなことになれば、コンテンツ制作について萎縮作用がもたらされ、その結果、我が国がコンテンツ大国となること、文化大国になることは困難となるものと考える。

(2)競争力のあるコンテンツ育成のためにはコンテンツの利用許諾権が必要不可欠である
実演家及びレコード製作者としては、自己の保有するコンテンツを流通させることについては、自らの戦略に従って、当該コンテンツの価値の最大化を図るべく経営努力を行っており、二次使用料を受領することのみではコンテンツの価値の最大化を図ることができないことは明らかである。自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることは著作隣接権者としての基本的な権利であって、かかる権利なくして国際競争力のあるコンテンツを育成することなど到底できない。放送及び有線放送について許諾権がないのは、放送及び有線放送の持つ高度の公共性のためのいわば「特権」であって、既存のコンテンツの流通を容易にするために近視眼的にこの「特権」を安易に流用することは、我が国における将来のコンテンツ育成に大きな禍根を残すことになる。
個人 仮に、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信、さらにはそれに続くと懸念される「自主放送」についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱い、その結果、実演家又はレコード製作者において、これらに対する許諾権が撤廃されれば、例えば、自らの戦略にとって不都合な者が自らの意思に反してコンテンツを利用してしまうこと(例えば、競業他社によるIPマルチキャスト放送によるコンテンツの希釈化や、近い将来に同放送を行う事業者が多く登場した場合における無秩序なコンテンツの配信等が容易に考えられる。)が想定され、コンテンツプロバイダーとしての事業戦略(業務提携等)に大きな支障を来すことが予測される。

(3)コンテンツの流通促進のためには著作権の集中管理制度を整備することが最善の道である
以上のとおり、国際競争力のあるコンテンツを育成するためには、コンテンツ保有者がその意思に反するコンテンツの利用を差し止めることができるように、実演家及びレコード製作者に許諾権を残すことが必要不可欠である。
他方、許諾権を残したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理し、利用料率を明確に定める新たな仕組みを早急に立ち上げることが実務上可能である以上、IPマルチキャスト放送事業者側の不都合が生じないことは明らかである(かかる新たな集中管理制度においては、例えば、技術的保護手段(DRM)あるいは技術的制限手段の存否、及びDRMにおけるコピー可能回数等を要素とした利用料率を定めること等が考えられ、立法的措置(デジタルコンテンツ立法)も検討の余地があろう。)。

(4)競争力のあるコンテンツ育成のために国際条約の改正も含めコンテンツの利用に関する立法をすすめるべきであって、条約に形式的に反しないことをもってIPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いに関する著作権法改正することができるとする議論には問題がある
本報告書案は、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様にし、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者に現在認められている送信可能化権を撤廃し、二次使用料の請求権に改めることの主な根拠として、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(以下「実演・レコード条約」という。)第10条及び第14条に反しないことを挙げている。
しかしながら、そもそも、実演・レコード条約は今から10年前の1996年に締結されたものであり、同条約が締結された当時の状況と現在の状況とは全く異なっており、同条約はIPマルチキャスト放送の存在を前提としていない。そればかりか、そもそも、現時点において、IPマルチキャスト放送の取扱いについて明示的に合意された国際条約は存在していない。
このような状況の下、実演・レコード条約第10条及び第14条の規定に反しないことをもって、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者の送信可能化権を撤廃することは根拠が薄弱である。

以上のとおり、現在我が国が保有する優良なコンテンツを保護し、将来にわたっても国際競争力のある優良な我が国発のコンテンツを育成するためには、一方で、自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることができる権利である許諾権を堅持するとともに、他方では、コンテンツの流通の促進を図るための新たな制度(集中管理制度等)を整備すること等を行うことが、最善の方法であると思料する。
個人 2. IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」「6.検討結果」「2IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直し」(28頁以下)について

私は、IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信することについて、実演家及びレコード製作者に対して現行著作権法上認められている送信可能化権を二次使用料に関する報酬請求権に改めることについて反対です。現行著作権法上認められている実演家及びレコード製作者の送信可能化権を維持したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理することで、IPマルチキャスト放送を用いた地上デジタル放送の再送信を行う上では必要十分だと思います。それにもかかわらず、地上デジタル放送の再送信を行うために充分な審議をせずに、実演家及びレコード製作者にとって大変価値のある著作隣接権を拙速に撤廃することは、実演家及びレコード製作者に対する配慮を欠き、結果として国際競争力あるコンテンツの育成に重大な支障を及ぼすことになります。

IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様の取扱いとすることは、IPマルチキャスト放送による「自主放送」についても著作権法上の「有線放送」と同様の取扱いとすることに途を開くことになると考えられます。一方、IPマルチキャスト放送事業は、登録制の事業であり(電気通信役務利用放送法第3条)、また、放送内容等について地上放送事業者と同等の制約が課せられていないことから(同法第15条)、様々な性質を有する新規事業者が多数参入することが想定されます。このような多数の新規参入事業者が仮に発生した場合、市販されたCDの音源を用いた「自主放送」がレコード製作者の許諾を得ずに行われることになるのではないかと大変憂慮されます。また、「自主放送」が広くなされることになると、実務的に二次使用料が名目的となり、その回収が困難となることが容易に想像できます。その上、CDの音源を用いた番組のみを流す「自主放送」がCDあるいは音楽配信よりも遙かに廉価で提供され、さらにコピーによる音質の劣化がないデジタル録音が容易にできるPCと親和性のあるIPマルチキャスト方式により「番組」が提供されることになるとすれば、消費者がCD等を購入しなくなり、レコード制作事業者にとっては死活問題となります。このようなことになれば、コンテンツ制作について萎縮作用がもたらされ、その結果、我が国がコンテンツ大国となることは困難となるものと考えられます。

実演家及びレコード製作者としては、自己の保有するコンテンツを流通させることについては、自らの戦略に従って、当該コンテンツの価値の最大化を図るべく経営努力を行っており、二次使用料を受領することのみではコンテンツの価値の最大化を図ることができないことは明らかです。自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることは著作隣接権者としての基本的な権利であって、かかる権利なくして国際競争力のあるコンテンツを育成することなど到底できません。放送及び有線放送について許諾権がないのは、放送及び有線放送の持つ高度の公共性のためのいわば「特権」であって、既存のコンテンツの流通を容易にするために近視眼的にこの「特権」を安易に流用することは、我が国における将来のコンテンツ育成に大きな禍根を残すことになります。仮に、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信、さらにはそれに続くと懸念される「自主放送」についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様に扱い、その結果、実演家又はレコード製作者において、これらに対する許諾権が撤廃されれば、例えば、自らの戦略にとって不都合な者が自らの意思に反してコンテンツを利用してしまうこと(例えば、競業他社によるIPマルチキャスト放送によるコンテンツの希釈化や、近い将来に同放送を行う事業者が多く登場した場合における無秩序なコンテンツの配信等が容易に考えられる。)が想定され、コンテンツプロバイダーとしての事業戦略(業務提携等)に大きな支障を来すことが予測されます。
以上のとおり、国際競争力のあるコンテンツを育成するためには、コンテンツ保有者がその意思に反するコンテンツの利用を差し止めることができるように、実演家及びレコード製作者に許諾権を残すことが必要不可欠です。また、許諾権を残したとしても、実演家及びレコード製作者の有する著作隣接権を集中管理し、利用料率を明確に定める新たな仕組みを早急に立ち上げることが実務上可能である以上、IPマルチキャスト放送事業者側の不都合が生じないことは明らかです(かかる新たな集中管理制度においては、例えば、技術的保護手段(DRM)あるいは技術的制限手段の存否、及びDRMにおけるコピー可能回数等を要素とした利用料率を定めること等が考えられ、立法的措置(デジタルコンテンツ立法)も検討の余地ありと考えます。)。
本報告書案は、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信についての著作権法上の取扱いを「有線放送」と同様にし、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者に現在認められている送信可能化権を撤廃し、二次使用料の請求権に改めることの主な根拠として、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(以下「実演・レコード条約」という。)第10条及び第14条に反しないことを挙げています。しかしながら、そもそも、実演・レコード条約は今から10年前の1996年に締結されたもので、同条約が締結された当時の状況と現在の状況とは全く異なっており、同条約はIPマルチキャスト放送の存在を前提としていません。そればかりか、そもそも、現時点において、IPマルチキャスト放送の取扱いについて明示的に合意された国際条約は存在していません。このような状況の下、実演・レコード条約第10条及び第14条の規定に反しないことをもって、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について実演家及びレコード製作者の送信可能化権を撤廃することは根拠が薄弱と考えます。
以上のとおり、現在我が国が保有する優良なコンテンツを保護し、将来にわたっても国際競争力のある優良な我が国発のコンテンツを育成するためには、自己の保有するコンテンツの利用許諾先を独自に決めることができる権利である許諾権を堅持するとともに、他方では、コンテンツの流通の促進を図るための新たな制度(集中管理制度等)を整備すること等を行うことが、最善の方法であると思います。
個人 地上波デジタルの普及によって国民の文化的水準が向上することは喜ばしいことであるが、集中管理によって実演家及びレコード製作者の送信可能化権が従来通り保護されるべきだと
思う。送信可能化権が縮小されれば、CDパッケージ等の売り上げもますます減少が予想され、それはすなわち我が国の今後の音楽文化を担う音楽家のモチベーション衰退を意味するものであり、本来の知的財産立国の本質と逆行することになるからだ。
個人 IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について
首記の件に関して、ホームページで広く意見を募集しているとのことを拝見致しましたので、僭越ながら少しだけ気になる点について、述べさせていただきます。と申しますのも、IPマルチキャスト放送も含め、放送が多種多様化していくことは個人的にも娯楽や情報が充実することなので、歓迎すべきことだと思います。ただし、別のホームページでは、著作者(制作者?)の権利が軽るんじられているのではないか、という意見も拝見しました。そこには、制作者が費用を掛けて作ったものに対して、利益が享受できないのでは、その利益を費用に充てた次の作品が作れなくなる、ということが書かれていました。これではいくら放送という器を充実させても、いずれ中身が伴わないことになるように思えます。著作権そのものはよくわかりませんが、先に述べたような観点から、著作者が持っている権利を尊重し、不利益を被らない法案の制定をお願いします。
ソフトバンクBB株式会社
ビー・ビー・ケーブル株式会社
BBテクノロジー株式会社
日本テレコム株式会社
本報告書(案)の内容に賛成いたします。2006年中の出来るだけ早い国会において本報告書(案)の内容に沿った形で法改正の手続が行われることを希望します。また、報告書(案)2.6章の検討結果に記載の通り、IPマルチキャスト放送による自主放送の取扱い、およびIPマルチキャスト放送事業者に対する著作隣接権の付与等について、引き続き早急に検討されることを希望します。
社団法人日本レコード協会 (1)「放送の同時再送信」部分について 
放送番組のネット利用について、当協会は、従来から、レコードに係る送信可能化権の一任型管理を検討し準備を進めており、こうした取組みを十分考慮することなく、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について、現行の送信可能化権を報酬請求権に権利を切り下げるとの結論に至ったことは遺憾である。しかし、地上デジタル放送の完全実施という公共政策目的と権利保護のバランスに留意し、有線放送事業の実態に照らして有線放送による放送の同時再送信について、レコード製作者に報酬請求権を付与することとした点は高く評価したい。
なお、今後、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について具体的な法律案を作成するに当たっては、原則として放送二次使用料の対象外である米国盤レコード等の取扱いに十分留意するよう強く要望する(米国等のレコード製作者の権利が、送信可能化権から「権利なし」に切り下げられることのないよう強く要望する)。

(2)IPマルチキャスト放送による「自主放送」部分について
IPマルチキャスト放送による地上デジタル放送の同時再送信については、公共性の観点から一定の権利制限もやむを得ないとしても、同様の理が、IPマルチキャスト放送による「自主放送」にも当てはまるとは考えられない。当協会としては、IPマルチキャスト放送の積極的活用の名のもとに、権利制限の範囲を安易に拡大することには強く反対する。

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