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2.私的録音録画補償金の見直しについて

2 問題の所在

(1)新たな録音・録画機器の開発・普及と対象機器の指定にかかる問題

 平成4年に現在の補償金制度が実施されて以降、新たな録音・録画の機器の開発・販売に伴い、随時補償金の対象機器や関連する媒体の追加指定がなされてきたところである。ところが、近年市場に導入されたハードディスク内蔵型録音機器は、携帯型の機器として市場において急速にMDプレーヤーにとってかわりつつあり、また録画機器についても、従来の機器に比べ格段に画質等の向上が図られる機器が市場に導入されようとしており、これらは対象の機器等として現時点においては指定されていない。
 さらに、近年では録音・録画機能を有するパーソナルコンピュータによって、データ用の記録媒体に録音録画されるケースが激増し、最近の調査では専用機器による複製より多くの複製がこれによりおこなわれているが、これも指定されていない。
 さらに、現行の指定方式は「政令による個別指定方式」であるが、これでは急速に発達する技術の進歩に機敏に対応できないという問題が指摘されているところである。

(2)補償金制度が抱える諸問題

 当小委員会での検討の過程において指摘された諸問題であり、詳細は3(2)参照。

(3)上記諸問題にかかる現状

○ ハードディスク内蔵型録音機器等(以下、「内蔵型機器」という)及び汎用機器の普及状況

 「内蔵型機器」は、近年急速に売り上げが増加しており、出荷台数を見る限り、携帯型機器として市場においてMDに代わりつつあると考えられる。
 特に今後は、こうした機器はオンラインによる音楽配信サービスと連携しながら、市場に急速に普及していくことが見込まれている。


携帯オーディオ機器の国内出荷台数の推移

図

(単位:千)
  2001年 2002年 2003年 2004年 2005年予測
ヘッドホンステレオ 1,490 977 552

355

246
ポータブルCDプレーヤー 2,492 2,350 1,737 1,311 1,000
ポータブルMDプレーヤー 3,036 3,082 3,173 2,907 1,800
携帯デジタルオーディオプレーヤー 300 650 1,700 2,700
7,018 6,709 6,112 6,273 5,746
数値はJEITA統計資料「民生用電子機器国内出荷台数」による
  は上記統計資料2005年6月現在までの実績値を倍にしたもの
  は電波新聞社推計値(同紙2005年4月8日日刊より)


【オンライン音楽配信事業等の売り上げ推移】(出典:「デジタルコンテンツ白書2005」)

(単位億円)
2001年 2002年 2003年 2004年
インターネット配信(音楽配信) 5 11 17 36
着信メロディ・「着うた」・「着うたフル」 503 664 897 1,099


パーソナルコンピュータの国内出荷実績の推移

図

(単位:千台)
  2000年度 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度
本体台数 12,102 10,686 9,840 10,783 12,075
*JEITA発表資料により作成


録音用CD‐R 及びデータ用CD-Rの国内需要の推移

図

(単位:百万枚)
  2000年度 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度
録音用CD‐R 9 18 23 25 28
データ用CD‐R 216 329 395 400 360
*JRIA発表資料により作成


○「内蔵型」機器の権利者への影響

ア.MDとの容量の比較

 「内蔵型機器」の記録容量及び保存曲数を、MDと比較すると、データの圧縮形式の違いもあるが、MDのような従来の媒体に保存をしていた曲数が10数曲であったのに対して、数百〜数千曲の保存が可能となっている。


MD及びハードディスク内蔵型機器等の記憶容量・保存曲数
(出典:主要メーカーの発表資料等により作成)
種類 記憶容量注1 保存曲数注2
MD 177MB(80分用) 20曲 データなし
フラッシュメモリ内臓型機器 256MB〜1GB 240曲 記録容量1GBの機器に128キロビット・パー・セコンドで記録した場合
ハードディスク内蔵型機器 10GB〜60GB 5000曲 記録容量20GBの機器に128キロビット・パー・セコンドで記録した場合
注1 各種別のうち、代表的な機種等の記憶容量(参考:1GBイコール1024MB)
注2 1曲イコール4分として計算、機器の保存曲数はメーカーの発表による。


イ.ハードディスク内蔵型録音機器等の使用実態
(出典:野村総合研究所(社団法人日本音楽著作権協会・社団法人日本芸能実演家団体協議会・社団法人日本レコード協会による委託調査)「ハードディスク内蔵型録音機器等による私的録音から著作権者・著作隣接権者が受ける経済的な影響」(速報版・平成17年9月))

 ハードディスク内蔵型録音機器等への私的録音は14億円
 ハードディスク内蔵型録音機器等所有者の当該機器における私的録音による保有曲数は、平均で260.3曲であり、2005年までのハードディスク内蔵型録音機器等の予測普及台数が535万台であることを考えると、この場合私的録音される曲数は、のべ14億曲に達する。
 録音した音楽を聴く機能の使用比率は91.6パーセント
 ハードディスク内蔵型録音機器等の機能のうち、録音した音楽を聴くための機能の使用比率が91.6パーセントにも及んでおり、且つ他の機能はどの機能も非常に低い比率でしか使用されていない。
 所有者は、それまで使用していた補償金支払い対象機器の使用比率が減少
 ハードディスク内蔵型録音機器等所有者の73.9パーセントはハードディスク内蔵型録音機器等を購入する以前に補償金支払いの対象となっている記録媒体(MD等)を使用していた。ハードディスク内蔵型録音機器等所有者の37パーセントはMD等を全く使用しなくなり、MD等の使用比率が50パーセント未満となった所有者をあわせると、その比率は77パーセントに及び、ハードディスク内蔵型録音機器等は、補償金支払い対象機器・記録媒体を代替していることがわかる。

○汎用機の権利者への影響

(出典:株式会社野村総合研究所(社団法人私的録音録画補償金管理協会による委託調査)「デジタル録音機器ユーザーの私的録音等実態調査」(平成17年1月))

 私的にデジタル録音を行った曲数のうち、約半数(51パーセント)の曲が、パソコン等の政令指定されていない機器において行われているというデータがあり、汎用機による権利者への影響は、補償金の対象となっている機器において行われる私的録音と同程度の影響があると考えられる。

【諸外国の状況】
(出典:Stichting de Thuiskopie(オランダ私的複製協会)調査に基づくsarah調査(第3回法制問題小委員会配布資料)等により作成)

図

○いわゆる「DRM」(コピーガードなど権利管理システム)の普及の状況

 録音録画専用機の分野では、CDやMD、DVD、さらに地上波デジタルTV放送では、複製を制限する一定のシステムが導入されている。
 音楽配信事業においては、提供されるいずれのサービスにおいても、課金を含めた何らかのシステムが導入されているが、複製の制限の程度は、サービスや提供される楽曲により異なっている。
 但し、一般に、内蔵型機器が対応しているDRMにより、内蔵型機器から他の機器への複製はできない仕組みとなっているものが多い。

【デジタル環境下における主なDRMの例】
音源 保存先 使用機器
データなし データなし 録音録画専用機
(補償金の対象)
PC
(補償金の対象外)
CD CD‐R
CD‐RW
MD
SCMS 広く普及しているDRMはない
音楽配信 CD‐R
CD‐RW
データなし WMDRM
OpenMG
Fair Play
デジタル放送 DVD−R
DVD‐RW
DVD‐RAM
B−CAS
CPRM
DTCP
HCDP

○補償金制度の認知度

 社団法人私的録音補償金管理協会(sarah)による平成13年度調査では、私的録音補償金制度について「知っている」とした人の割合は9.8パーセントであった。
 また、ビジネスソフトウェアアライアンス(BSA)が本年6月に行った調査では、内容をよく知っている者2.0パーセント、ある程度知っている者15.1パーセント、名前だけしっている者19.4パーセントであり、まったく知らない者は63.4パーセントであった。

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