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第2章 知的財産の保護

1 知的財産の保護を強化する

 
3. 知的財産権制度を強化する

 
(7) データベースの保護を強化する
 2004年度は、産業構造審議会においてデータベースの保護について検討されたが、今回、不正競争防止法による保護の仕組みは導入しないこととし、権利を与えるsui generis型の保護の導入も含め検討を進めることが適切であるとされた。2005年度から、データベースの保護の在り方について改めて検討し、必要に応じ制度を整備する。
  (文部科学省、経済産業省)

(9) 知的財産の保護を強化するための制度を整備する
 大企業が取引関係において従属的な地位にある中小企業の知的財産について不当な取扱いをしているという指摘、訴訟において被害企業が損害に見合う十分な賠償を受けられず侵害企業の侵害し得であるという指摘、知的財産侵害訴訟は、その立証に必要な証拠が侵害者側に偏在しているため、特に、証拠調査能力に乏しい中小企業には立証が極めて困難であるという指摘、また、侵害訴訟に付随して無効審判請求や周辺特許の関連訴訟が多発されるため、特に、資力等に乏しい中小企業には訴訟対応が極めて困難であるという指摘等、知的財産の保護に関し、様々な法制度上、実務上の問題が指摘されている。
 これらの事情にかんがみ、最近改正された証拠開示制度等の周知徹底を図るとともに、中小企業関連法制や独占禁止法上の指針等による中小企業の知的財産の保護や大企業の優越的地位の濫用の防止、損害額の算定制度等知的財産に関する損害賠償制度による権利者の適正な救済の実現、知財訴訟における立証責任等の面における訴訟当事者の負担の軽減等の諸課題について、実態の把握や民事訴訟における知財訴訟の位置付け、訴訟実務等を考慮しつつ2005年度も引き続き検討を行い、必要に応じ法制度等を整備する。
  (公正取引委員会、法務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)

(10) 知的財産権侵害に係る刑罰を見直す
 知的財産権侵害に対する抑止効果を高めるため、知的財産権の侵害に係る刑罰(懲役)の上限を10年とすることについて2005年度から検討し、必要に応じ制度を整備する。
  (法務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)


6. 知的財産の国際的な保護および協力等を推進する

 
(4) 国際的な紛争処理に係るルールの整備を促進する
 インターネット等による国境を越えた知的財産権の行使や紛争処理に関する国際ルールを明確化するため、2005年度も引き続き、知的財産の有効性や侵害等に関する訴訟の国際裁判管轄等に関する議論に積極的に取り組む。
  (法務省、外務省、文部科学省、経済産業省)

(5) 自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)等を活用する
 自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)や投資協定などの二国間・複数国協定の交渉の機会において、交渉相手国の知的財産制度の整備や実効的なエンフォースメントの確保を促し、我が国産業界等の要望に沿ったTRIPS協定等の規定以上の知的財産の保護が達成されるよう、2005年度も引き続き積極的に働きかける。
  (外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)

(6) 知的財産に関連する法律の英訳を国際的に発信する
 我が国の知的財産に関連する法律などが国際的に理解され、利用しやすくするため、2005年度も引き続き、関係府省や関係団体と協働しつつ、正確かつ統一された英訳の国際的な発信を推進する。
  (内閣官房司法制度改革推進室、法務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、関係府省)


2 模倣品・海賊版対策を強化する

 
1. 外国市場対策を強化する

 
(1) 侵害発生国・地域への対策を強化する
 
1 海外市場での模倣品・海賊版対策を強化する
 
3  2005年度も引き続き、模倣品・海賊版被害にあった場合の対応策や事例など、我が国の企業が侵害国において訴訟提起などの権利行使をするために必要なノウハウなどの情報を収集し、資料としてまとめ、企業へ配布する。
  (外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)

4  2005年度も引き続き、我が国の企業による諸外国での模倣品・海賊版対策の取組を支援するため、国際知的財産保護フォーラム、コンテンツ海外流通促進機構、不正商品対策等協議会等の民間団体の諸外国での活動を支援する。
  (警察庁、外務省、文部科学省、経済産業省)

5  2005年度から、海賊版の摘発活動を容易にするため、コンテンツ海外流通マーク(CJマーク)の普及や調査・摘発活動を支援する。
  (警察庁、文部科学省、経済産業省)

3 侵害発生国・地域に対し具体的要請を行う
 
1  2005年度も引き続き、中国をはじめとするアジア諸国などの侵害発生国・地域に対し、デザイン模倣対策の強化、執行の強化、再犯防止の強化、周知商標の認定促進、水際における権利者負担の軽減など、具体的な制度改善や取締りの実効ある強化について閣僚レベルをはじめ様々なレベルで強力に要請する。
  (外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)

2  海外における模倣品・海賊版を撲滅するためには、知的財産を重視する風土を醸成し、自ら模倣品・海賊版を生まない国となることが肝要である。このため、2005年度も引き続き、侵害発生国・地域において対策に取り組む当局や団体との連携を強化するとともに、模倣品・海賊版が社会悪であることを侵害発生国・地域の国民が広く認識するよう、啓発活動の支援に取り組む。
  (外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)

4 模倣品・海賊版の被害の実態を調査する
 中国をはじめとする海外市場において、模倣品・海賊版の被害を受ける我が国企業が増加していることにかんがみ、2005年度も引き続き、模倣品・海賊版による被害の実態等を調査・分析し、その結果を広く公表するとともに、国際交渉にも活用する。
  (外務省、文部科学省、経済産業省)


(2) 二国間の枠組みを活用する
 
1  2005年度も引き続き、アジア諸国との自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)や投資協定・税関相互支援協定などの二国間・複数間協定に、知的財産関連の法制度の整備のみならず、実効的なエンフォースメントの確保のための状況を盛り込むよう積極的に交渉する。また、エンフォースメントも含めた実際の執行状況等を協定上のメカニズムの場等を利用してレビューする。
  (外務省、関係府省)

2  2005年度も引き続き、二国間協議においては、我が国企業の被害実態などを取り上げて取締強化や制度改善を要請するなど、戦略的かつきめ細かく対応する。
  (外務省、関係府省)


(3) 欧米との連携を強化する
 
1 EU・欧州各国との連携を強化する
 2005年5月に開催された日・EU定期首脳協議において、アジアにおける模倣品・海賊版問題に対応するため、「アジアにおける知的財産権の執行に関する日・EU共同イニシアティブ」を更に推進していくことが合意された。2005年度も引き続き、侵害発生国・地域への働きかけをより有効に行うため、首脳間、閣僚間をはじめとする日・EU間の定期協議や個別協議などを積極的に活用するとともに、上記イニシアティブに基づく作業計画に基づき取組を推進し、EUとの連携を強化する。
 また、EUとの連携を効果的に行うために、日仏間をはじめ欧州各国との二国間協議など欧州各国との連携を進める。
  (外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)

2 米国との連携を強化する
 2005年度も引き続き、アジアにおける知的財産権の保護を推進するため、首脳間、閣僚間をはじめとする日米間の二国間協議などを積極的に活用し、米国との連携を強化する。
  (外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)

(4) 多国間の取組をリードする
 
1  2004年6月のシーアイランド・サミットの議長総括において、知的財産の不正使用及び海賊行為と闘う必要が認識された。2005年度も引き続き、G8サミットをはじめとして、経済協力開発機構(OECD)、アジア太平洋経済協力(APEC(エイペック))、アジア欧州会合(ASEM)、世界貿易機関(WTO)、世界知的所有権機関(WIPO)等の国際機関・フォーラムにおいて、模倣品・海賊版問題が首脳をはじめハイレベルで取り上げられるよう、準備や働きかけを行う。
  (外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)

2   OECDにおいて検討が開始されている模倣品対策プロジェクトについて、2005年度も引き続き、諸外国と連携しつつ積極的に議論を推進する。
  (外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)

4   ASEMにおいて、2004年10月に開催された第5回首脳会合の議長声明及び経済宣言の中に、今後、知的財産権の分野での活動を強化することが盛り込まれた。2005年度は、首脳会合で採択された事項を着実に実施するため、ASEM貿易円滑化行動計画の下、知的財産権分野での活動に積極的に取り組むとともに、欧州とも協力し、知的財産権保護のためにアジア・欧州間で協力する。
  (外務省、関係府省)

5  2005年度も引き続き、WTOの対中国経過的レビューメカニズム及び知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)の法令レビュー、貿易政策検討制度(TPRM)を積極的に活用し、アジア諸国・地域に模倣品・海賊版を取り締まるよう強力に要請する。
  (外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)

6  2005年度も引き続き、WIPOにおいて、模倣品・海賊版のエンフォースメント問題を主要議題として取り上げ、模倣品・海賊版の取締りをWIPO加盟国が一体となって取り組むべき問題であるとの認識を加盟国間で共有するよう積極的に取り組む。
  (外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)

(5) 模倣品・海賊版拡散防止条約を提唱する
 模倣品・海賊版問題は、特定の国に止まらず世界各国に拡散しており、また犯罪組織やテログループの資金源となったり、消費者の健康や安全を脅かす問題であることにかんがみ、TRIPS協定を補完する実効性のある措置として、各国と連携しつつ、世界税関機構(WCO)、国際刑事警察機構(インターポール)などの国際機関と協力して、模倣品・海賊版の拡散防止を明確な国際規範とする条約を提唱し、早期にその実現を目指す。このため、2005年度は、例えば、以下のような項目をはじめとして日本提案を幅広く検討し、各国との協議を行う。
 
  a) 模倣品・海賊版の輸出・通過の禁止と水際措置
 加盟国は、模倣品・海賊版が製造国・地域から世界中に拡散することを防止するため、模倣品・海賊版の輸出・通過を禁止する。税関当局は、輸出・通過されようとしている模倣品・海賊版を没収する。
  b) 個人輸入の禁止と水際措置
 加盟国は、個人による模倣品・海賊版の輸入を禁止する。税関当局は、輸入されようとしている模倣品・海賊版を没収する。
  c) 形態模倣行為の禁止と水際措置
 加盟国は、不正競争からの有効な保護を確保するために、形態模倣行為を禁止する。税関当局は、輸出又は輸入されようとしている形態模倣品を没収する。
  d) 水際でのマーク外し
 税関当局は、不正商標商品について、例外的な場合を除くほか、輸入者が違法に付された商標を単に除去することをもって、当該商品の輸入を認めてはならない。
  e) 犯罪収益の没収及び犯罪人の引渡
 加盟国は、知的財産犯罪について「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」に倣った規定を置くこと等により、当該犯罪の収益の没収及び犯罪人の引渡を可能とする。
  f) 協力・運用・紛争解決
 当局間の適切な情報交換や相互協力を推進するとともに、運用状況の報告や紛争解決のメカニズムを整備する。
    (外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)


(6) アジア諸国の模倣品・海賊版対策の能力構築を支援する
 
1  開発途上国における貿易投資の拡大と経済発展のために知的財産権の適切な保護が不可欠であることにかんがみ、2003年8月に決定されたODA大綱を踏まえ、2005年度も引き続き、個別の援助計画において必要性及び優先度に応じ開発途上国の知的財産制度の整備・執行の強化を支援する。
  (外務省、関係府省)

2  模倣品・海賊版対策に積極的に取り組むアジア諸国の政府関係者や民間の団体・企業等に対し、各府省が実施している知的財産権の保護に関する能力構築(キャパシティービルディング)を、2005年6月に策定された「知的財産保護強力・能力構築支援戦略」に基づき、2005年度から、我が国企業と協力しつつ、関係府省や国際協力機構(JICA)、JETRO等の関係団体が協調して実施する。
 また、毎年度終了後に事業内容のレビューを行う。
  (警察庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)



2. 水際での取締りを強化する

 
(5) 模倣品等の流通態様に応じた取締りを強化する
 
1 模倣品・海賊版の税関での取締りを強化する
 
2  模倣品・海賊版が侵害品発生国・地域から第三国で積み替えて輸出を行うなどの新たな手口が発生している現状を踏まえ、税関が輸出・通過貨物についても水際で機動的に取締りを実施できるよう、2005年度から、模倣品・海賊版拡散防止条約(仮称)の議論と並行して制度面から幅広く検討し、必要に応じ法改正等制度改善を行い、税関での取締りを強化する。
  (法務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)


(6) 個人輸入等の取締りを強化する
 模倣品・海賊版の個人輸入や個人所持は、現状では法律で禁止されておらず、また模倣品・海賊版に対する国民の意識も極めて低い。このため、模倣品・海賊版の個人輸入・個人所持が社会悪であることを国民に明確にするとともに、模倣品・海賊版が氾濫することを防止するため、2005年度中に、模倣品・海賊版の個人輸入・個人所持の禁止について更に検討を行い、必要に応じ新法の制定等法制度を整備する。
  (警察庁、法務省、財務省、文部科学省、経済産業省)


4. 官民の連携を強化する

 
(1) 政府内の連携を強化する
 
1  外国市場対策や水際及び国内での取締りに関し、関係府省が一体となって対策に取り組むよう、2005年度も引き続き、以下のような対策に取り組み、関係府省の連携を強化する。
 
  a) 政府模倣品・海賊版対策総合窓口の周知徹底と連携の強化
 政府模倣品・海賊版対策総合窓口の周知を徹底するとともに、権利者や企業等からの相談に対し迅速に対応するために関係府省の連携を強化する。2005年度から、中小企業知的財産権保護対策事業に関する受付も行う。また、総合窓口年次報告書を毎年度作成する。
  b) 関係府省の情報共有
 関係府省で模倣品・海賊版に関する情報を共有できるようネットワークやデータベースを構築する。
  c) 取締当局による情報の活用
 外国市場での模倣品・海賊版の製造・流通情報や被害情報等を警察・税関が活用し、当該模倣品等の国内市場へ流入防止、国内からの排除を進める。
  d) 政府の政策への反映
 国内外で収集・分析した各種情報に基づき模倣品・海賊版対策に関する政策を立案・実施するとともに、その結果を関係者にフィードバックする。
  e) 関係府省の政策調整と総合的実施
 各種対策については、関係府省間で相互に調整を行うとともに、「模倣品・海賊版対策関係省庁連絡会議」を機動的に開催し、政策調整を密に行い、総合的に実施する。
  (警察庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)


(2) 侵害発生国・地域の当局との当局間の連携を強化する
 侵害発生国・地域の当局(権利付与官庁、警察当局、税関当局、行政取締当局、司法当局)との連携を具体的に強化するため、2005年度も引き続き、日常的な情報交換に加え、相互支援協定の締結や当局間での定期協議などを進める。
  (警察庁、外務省、財務省、文部科学省、経済産業省)


(3) 官民・民民の連携を強化する
 
1  侵害発生国・地域の当局との交渉や働きかけを効果的に行うため、2005年度も引き続き、官民合同ミッションの実施等を通じ官民の連携を強化する。
  (文部科学省、経済産業省、関係府省)

2  2005年度も引き続き、QBPC(商標保護委員会)やBSA(ビジネス・ソフトウェア・アライアンス)といった諸外国の模倣品・海賊版対策団体と国内の模倣品・海賊版対策関連団体間の連携の強化及び国内での関連団体間の連携の強化を積極的に奨励する。
  (文部科学省、経済産業省、関係府省)


(4) 民間企業の体制を強化する
 
1  2005年度も引き続き、関係府省がより緊密に連携を取りつつ、企業等を対象にした模倣品・海賊版対策のためのセミナーを全国各地で開催する。
  (警察庁、財務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)

2  2005年度も引き続き、主要業界団体に模倣品・海賊版対策に係る委員会の設置などの組織の充実・強化を奨励するとともに、我が国企業に海外事業拠点の模倣品・海賊版対策のための体制の強化を奨励する。
  (文部科学省、経済産業省)


(5) 国民啓発を強化する
 模倣品・海賊版を撲滅するためには、模倣品・海賊版が社会悪であることを国民に広く認識してもらうことが重要であり、そのため、2005年度も引き続き、国民への啓発活動を進めるとともに、学校教育等を通じ適切な消費行動等についての教育を進める。
  (警察庁、法務省、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)


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