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第1章 法制問題小委員会

第4節 契約・利用ワーキングチーム

  【参考資料】

  ・著作権制度審議会答申(昭和41年4月)
第八 著作権の譲渡・相続
 譲渡
 
1  著作権の譲渡が書面によって行われることは望ましいことであり,そのような慣行が育成されるべきものとは考えるが,法律上,書面によるべきものとし,書面によらないものを無効とすることは,我が国の法制と従来の実情からすれば,適当ではないと考える。

・著作権制度審議会答申説明書
第八 著作権の譲渡・相続
 財産権としての著作権は,その全部または一部を譲渡することができるものする現行法のたてまえは維持することとした。
1  著作権の譲渡に関する契約については,契約内容を明らかにする趣旨から書面によって行われることが望ましいことはもとよりであり,そのような慣行が育成されるべきものと考える。
 しかしながら,我が国においては,法律上,書面によることを契約の方式として要求することは適当でないこと,および従来の実績からすれば,すべての場合に書面による契約を期待することは適当でないことから,書面によらないものを無効とする法制はとらないこととした。

・著作権審議会マルチメディア小委員会ワーキング・グループ検討経過報告(平成7年2月)
6 著作権等の帰属,譲渡,利用許諾等
 (2)著作権契約の要式化
  <問題の所在>
   著作物等の利用方法の多様化に伴い,口頭による契約や内容の曖昧な契約によって後日にトラブルが発生する場合が増加するおそれがあるとの指摘がある。
 (中略)
 <考えられる対応例>
  〔A〕 著作権等の全部又は一部の譲渡契約は,書面によってなされなければならないこととする(六十一条参照)。
〔B〕 〔A〕に加え,著作物等の利用許諾契約はすべて書面によってなされなければならないこととする(六十三条参照)。
<考察>
 この問題は民法の契約法上の基本的な原則に関わっているので,制度改正には消極的な意見が多く,まず当事者の自覚と努力によって,書面による契約の励行と登録制度の利用促進を図るべきことが指摘された。

  【外国の立法例】

  ・米国(注75)
第204条 著作権の移転の実行(注76)
 (a) 著作権の移転は,法の作用によるものを除き,譲渡証書または移転の記録もしくは覚書が書面にて作成され,かつ,移転される権利の保有者またはその適法に授権された代理人が署名しなければ効力を有しない。
 (b)

・英国
 (譲渡及び許諾)
第90条(注77)
 (1)(2)略
 (3) 著作権の譲渡は,譲渡人により,又はその者のために署名された書面によらない限り,有効ではない。
 (4)

・フランス
第131の2条(注78)この章に定める上演・演奏契約,出版契約及び視聴覚製作契約は,文書で作成しなければならない。演奏の無償許諾についても,同様とする。
2 その他のいずれの場合にも,民法典第1341条から第1348条までの規定が,適用される。(注79)

(注75)  なお米国では契約一般法理としてUCC第201条・第202条があり,一定以上の取引についての書面の作成を要求するとともに口頭証拠排除を規定している。
(注76)  山本隆司・増田雅子共訳「外国著作権法令集(29)-アメリカ編-」2000社団法人著作権情報センター
(注77)  大山幸房訳「外国著作権法令集(34)-英国編-」2004社団法人著作権情報センター
(注78)  大山幸房訳「外国著作権法令集(30)-フランス編-」2001社団法人著作権情報センター
(注79)  その他の契約について,民法の訴訟における口頭証拠の扱いに関するルールを適用する旨を規定。第1341条では,800ユーロを超える契約について文書又は公証された方式で行われるべきこと,そして書面がなければ裁判において契約上の権利を立証することができないことを定める。

 
(4) 著作権法第61条第1項の解釈について(一部譲渡における権利の細分化の限界)

 
1 現行制度

   著作権は,その全部又は一部を譲渡することができる(第61条第1項)。

2 問題の所在

   著作権法は,著作権の一部を譲渡することができるとしているが,ここでいう一部とはどのような単位を指すのか,利用形態,期間,地域による細分化が認められるのかについては明らかではない。

3 立法趣旨

   旧著作権法第2条は,「著作権ハ之ヲ譲渡スルコトヲ得」と定めていたが,昭和9年法律第48号により,出版権の創設と同時に「著作権ハ其ノ全部又一部ヲ譲渡スルコトヲ得」と改正された。現行著作権法は,この規定をそのまま引き継いでいる。

 
 旧著作権法立法時(明治32年)

   著作権の譲渡については,明治32年制定時から,登録が対抗要件とされていたが(第15条第3項),おそらく後述する昭和6年著作権法施行規則の制定までは,「興行権のみの譲渡」や「年限を限定した譲渡」を登録できる制度は用意されていなかったようである。

 著作権法中改正案(大正15年)

   内ヶ崎作三郎他三名の議員が,制限を付した著作権の譲渡が可能である旨を規定する条文案(注80)を含む「著作権法中改正法律案」(大正15年第51議会)を提出したが,審議未了により不成立に終わっている。

 著作権法施行規則(昭和6年)

   内務省は,昭和6年7月28日制定の著作権法施行規則第3条において,一部譲渡・制限付移転の登録手続を定めている(注81)。この施行規則制定についての解説は見つからなかったため,この時期にこのような改正をなぜ行ったのかは不明である。また従前から行われていた登録実務を明文化したものか,変更したものかも不明である。しかしながら,少なくとも所管官庁たる内務省の考えとしては,一部譲渡や制限付譲渡が可能であるとの理解に立っていたことは確かである。

 旧著作権法の一部改正(昭和9年)

   出版権の創設に伴い,著作権の一部譲渡が可能であることを確認的に規定する改正が行われた(注82)。
 なお,本改正の起草担当者であった小林尋次氏は,この改正は大正15年改正案の第2条及び第2条の4の改正案と「全く同一趣旨に則ったもの」であるとしている(注83)。

 著作権制度審議会答申・答申説明書(昭和41年)

   昭和9年改正後,解釈上及び実務上著作権の可分性の範囲及び譲渡の際に付し得る制限の範囲が不明確であるという問題が生じ,これは著作権制度審議会における検討当時も認識されていた問題であった。例えば,答申審議の段階において,あまりにも細分化された著作権の分割譲渡の登録は文部省(当時)において受理しないように措置することが望ましいとの指摘が一部の委員からあったとされる。
 しかしながら,著作権制度審議会答申はこの問題については触れず,答申説明書において,著作権の全部又は一部を譲渡することができるとする旧著作権法を維持すると説明するに留まっている。

4 検討内容

 
 一部譲渡を認める意義

   我が国著作権法は,著作権の譲渡又は出版権の設定以外に,第三者が著作物の利用についての「物権的な権利」を得るための制度を有していない。現行制度では,許諾は全て債権的権利であり,被許諾者(ライセンシー)は,独占利用許諾契約を結んだとしても当該独占性は債権的効力しか有さないため第三者が利用することについて当然には差し止めることはできない。更に,利用許諾について対抗要件制度が存在しないため,著作権者(ライセンサー)が破産した場合や第三者に著作権が譲渡された場合,引き続き当該著作物を利用することについても,破産管財人や譲受人に対抗することができないと解されている。
 著作物には多様な利用形態が存在し,利用形態ごとに独立の経済的効用を期待し得る。著作物の利用に係る「物権的な権利」を,第三者に与えるに際し,著作権の全部を譲渡するか又は全く譲渡しないかの二者択一しかないとすれば,著作権者及び利用者の双方にとって不便であり,ここに著作権の一部譲渡を積極的に認める意義がある。

 著作権の可分性の検討

 
(ア) 著作権法に具体的に規定されている個別的な利用態様別の権利の譲渡
   著作権法第21条から第28条までに規定する複製権,上演権,演奏権,上映権,公衆送信権等については,これらの単位での譲渡が認められるというのが通説である。第61条第2項の規定からも,少なくとも,第27条に規定する権利,第28条に規定する権利が分割して個別に譲渡できることについては疑いがない。ただし,法改正により著作権法の規定が変わったもの(例えば,放送権と公衆送信権など)があることには留意する必要がある。
 しかしながら,著作権法に具体的に規定されている個別的な利用態様別の権利の譲渡についても,複製権と譲渡権の譲渡を別々に認める必要性があるかどうか(独立の経済的効用を期待できると言えるか),また,複製権と公衆送信権若しくはみなし侵害規定等における権利間の重複という問題がある。
 なお,「著作権法に具体的に規定されている個別的な利用態様別の権利ごとに別々に譲渡できる」との解釈は,かえって「著作権全部の譲渡」を難しくする可能性がある。例えば,破産した著作者の著作権について破産財団に帰属することとなるが,破産手続きの終了後に,新しい権利(例えば貸与権)が著作権法に規定された場合,著作者は新しい権利を有するとの解釈論が存在し得ることとなる。これは,合意による譲渡についても同様である。

(イ) 更に細分化された利用態様別の権利の譲渡
   著作権法に具体的に規定されている個別的な利用態様別の権利よりも細分化された権利,例えば,著作物を英語に翻訳して出版する権利,音楽の著作物をレコードに録音する権利小説を映画化する権利といった,実務上も別個の権利として区別されており,かつ社会的にそのような取り扱いをする必要性が高いものについては,細分化が可能とする見解が一般的であるが,その限界は明確ではない。
 判例には,著作権法に具体的に規定されている個別的な利用態様別の権利よりも細分化された権利単位で譲渡できることを前提とした判決(注84)がある。

(ウ) 期限付き譲渡(時間的な限定を付した譲渡)
   期限付き譲渡は,譲渡としての効力は認められるとする考え方が一般的である。判例も傍論であるが「時間的一部の譲渡」を認めたものがある(注85)。期限付き譲渡については,時間的に分割された著作権の譲渡とする(注86)(期限付き譲渡を一部譲渡として認める)考え方と,解除条件付きの譲渡契約や買い戻し特約付きの譲渡契約とする(一部譲渡としての期限付き譲渡は認めない)考え方がある。
 両者の考え方の違いは,期限の到来前に譲渡人・譲受人が破産した場合等に現れる。期間限定を解除条件,買戻特約付の譲渡と解する場合,期間の限定が登録簿に公示されていても(この立場からは本来公示すべきでないことになるが),原著作権者は譲受人の破産時に期間制限の存在を第三者に主張できない可能性がある。期限付譲渡を一部譲渡として認める見解からは,期間が限定されていることが公示されていれば原著作権者は第三者に期間の制限を主張することができる。

(エ) 地域を限定した一部譲渡
   地域を限定する譲渡は認められるとする考え方が一般的だが,対外的な権利関係が不明確になる,錯綜する場合については効力が否定される可能性があるとする見解や,境界を跨いだ複製物の流通を阻止できるような解釈論までは許容されないとする見解がある。
 また,同一国内(同一法領域)における地域的分割が可能であるかについては国際的にも議論のあるところである。

 他の財産権との比較

 
(ア) 所有権の場合
   物の使用,収益及び処分をなし得る権利として所有権があるが,所有権はその一部を譲渡することはできない(共有持分の譲渡は除く)。例えば,所有権を時間的に分割して第三者に譲渡することもできない。
 所有権者は,物を部分的に又は一定期間に支配する定型的な内容の制限物権を第三者に設定することができる。例えば,土地の所有権者は地上権(民法第285条)を設定できる。
 地上権者は,その地上権を(多くの場合工作物と共に)他者に譲渡すること,及び土地を他者に賃貸することができると解されている(永小作権については民法第272条で明示されている)。地上権の設定によって,所有権の排他的支配力は設定した範囲について制限されるが,設定した期間が終了すれば制限物権は消滅し,所有権は自動的に元の排他的支配力を回復する。

(イ) 特許権の場合
   現行法上,特許権はその一部を譲渡することはできない。
 しかしながら,第三者に特許権の一部の利用について「物権的な権利」を設定することができる専用実施権制度を有している。特許法の専用実施権は,旧特許法下の「特許権の制限付移転(いわば一部譲渡)」と「独占的利用許諾」の双方に対応するものとして創設されたものであり,登録しなければ効力を生じない。なお,実務的に,期間,実施態様,地域等の制限を付した登録が可能との実務運用がなされている。
 専用実施権は,特許権者の承諾を得なければ,第三者に譲渡すること(特許法第77条3項)や,第三者に通常実施権を許諾すること(特許法第77条4項)ができない。専用実施権設定時における,特許権者の侵害者に対する差止請求権については,最判平成17年6月17日平成16年(受)第997号がこれを肯定している。

 登録を効力発生要件としたために,「登録による専用実施権」はあまり用いられておらず,実務的には,「契約による独占的通常実施権」が用いられることが多い(特に,代表取締役が特許権を有し,会社に実施させている事案については,会社に黙示の独占的通常実施権が認定されることが多い)。そして,特許権の侵害者に対する独占的通常実施権者による損害賠償請求については,一般論として否定する判例は存在しない(大半の判例では結論としても認容)。差止請求については,訴訟提起の段階では専用実施権登録を済ませている場合や,特許権者が差止請求をする事案が多いため,最近の判例では余り争点となっていない。

5 検討結果

 
 現行制度の評価

 
(ア) 一部譲渡の意義・機能
   著作物の利用行為につき,内容的・時間的制限を付して物権的権利を設定する実際上の必要性が存在し,現に一部譲渡が用いられている。国際的にも,内容的・時間的制限を付された著作権の譲渡(一部譲渡)あるいは排他的許諾が有効とされている。我が国の著作権法は,法定の内容を有する出版権と共に,当事者が譲渡される権利の範囲を決定できる一部譲渡の制度を設けている。これにより,著作権者は柔軟な内容の排他的権利を他者に移転することができ,また譲渡された権利が一部に過ぎないことを登録しておけば,第三者(譲渡された権利の転得者)に対抗できる。
 また細分化された一部譲渡を認めることは,著作者が譲渡した権利の範囲を限定的に解釈する余地を広げる機能を果たしている。

(イ) 「一部譲渡の問題点」の検討
   著作権の一部を譲渡することについては,所有権との対比において理論的に問題があるとの指摘があり,特に期間が限定された著作権の譲渡は一部譲渡とは認めるべきでないとの意見がある。しかし,国際的な動向にも鑑みると,所有権との対比において論ずべき問題かどうかは議論のあるところであり,今後の検討が待たれよう。ただし旧著作権法・現行著作権法が著作権の一部譲渡を明示的に定めてきたこと,また,期限付譲渡については立法担当者等が一部譲渡に含まれると解してきたこと,さらにア.で述べた一部譲渡の機能を考えると,一部譲渡の限界を明確化する立法を直ちに行う必要はないと解される。
 他方,一部譲渡を認めることの実質的な問題点として,法律関係の複雑化による権利関係の混乱が指摘されている。しかし,この権利関係の混乱は,主に当事者間の契約あるいは登録において,譲渡の範囲(特に利用態様)が十分に特定されていないことによって生じる問題と思われる。従って,明確に利用態様が特定された上でそれが公示されている場合にまで細分化された一部譲渡の効力を否定する根拠としては十分でない。むしろ具体的な譲渡ごとに,契約および登録の文言に照らして譲渡範囲の特定・公示の解釈により解決されるべき問題であろう。

(ウ) 代替案としての専用利用権制度
   (イ)で述べた理論的な問題点に鑑み,特許法において特許権の制限付移転を廃し専用実施権を創設したように,著作権法においても専用利用権(注87)制度を創設することも考えられる。しかし,実質的な問題点としての権利関係の複雑化は,専用利用権制度にあっても共通の問題となる(注88)。また,著作権の一部譲渡を前提に実務上取引がなされていることを考えると,用語の変更,デフォルトルールの変更により無用の混乱を招くおそれもある。

 今後の立法対応等

   一部譲渡の限界を明確化するためだけの立法を早急に行う必要はない。
 ただし,ライセンシー保護の立法及び登録制度の見直しとの関係で一部譲渡の問題を再検討する必要が出てくる可能性がある。例えば,対抗要件を備えることにより,独占的な利用許諾を受けた者が独占性を第三者(著作権の譲受人,及び著作権者から後に許諾を受けた者)に主張できるとの制度設計を行った場合には,排他的な利用許諾は一部譲渡と同様の物権的効力を有することにもなる。また,著作権移転の対抗要件としての登録制度を見直す場合には,譲渡範囲が一部であることの公示方法についても見直しが必要となろう。
 以上のことから,一部譲渡の問題は,ライセンシー保護の制度・登録制度の検討の中で,著作権者が物権的権利を第三者に設定・移転するための制度設計の問題(定型的な内容のみを認めるのかそれとも当事者の合意に委ねるのか,対抗要件はどうするのか等)として,専用利用権制度を含む著作物の「利用権」に係る制度の創設も視野に議論されるべきものと思われる。

(注80)  第二条 著作権ハ制限ヲ付シ又ハ付セスシテ之ヲ譲渡スルコトヲ得
 第二条ノ四 著作権譲渡ノ場合ニ於テ左ノ行為ヲ為ス権利ハ別段ノ契約ナキ限リ移転セザルモノトス
 一〜四 (略)
(注81)  著作権法施行規則(昭和6年7月28日内務省令第18号)
 第三条 著作権ノ一部移転又ハ制限付移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ移転スベキ権利ノ部分又ハ制限ヲ登録申請書ニ記載スベシ著作権又ハ之ヲ目的トスル質権ノ承継人ガ多数ナル場合ニ於テ登録原因ニ持分ノ定アルトキ其ノ持分ニ付亦同ジ
(注82)  第二条 著作権ハ其ノ全部又一部ヲ譲渡スルコトヲ得
(注83)  小林尋次「現行著作権法の立法理由と解釈−著作権法全文改正の資料として−」昭和33年文部省
(注84)  東京地判平成14年10月24日平成12(ワ)22624等〔風雲ライオン丸〕では,地上波による放送権のみが譲渡され,有線放送・衛星放送に係る権利は原著作権者に留保されていると認定した。東京地判平成15年12月19日判時1847号95頁〔記念樹・第二訴訟2〕では,編曲権及び編曲権侵害に係る二次的著作物に関する28条の権利が信託譲渡の対象ではないと認定している。
 他方,東京地判平成6年10月17日判時1520号130頁〔ポパイベルト〕は被告による著作権の時効取得の主張を退けるに際し,連載漫画中のどこのコマかも特定されていない著作物の量的一部についての複製権の譲渡は許されないと述べている。
(注85)  東京地判平成9年9月5日判時1621号130頁〔ダリ展覧会用パンフレット事件〕・東京高判平成15年5月28日平成12(ネ)4720〔ダリ山梨控訴審〕
(注86)  著作者Aから第三者Bに「2007年までの著作権」が譲渡された場合,この譲渡を一部譲渡として位置付けると,2007年に著作権がBからAに戻ってくるというよりも,論理的には,Bは現在から2007年まで効力を有する著作権を有し,Aは2007年以降保護期間満了まで効力を有する著作権を有することになるであろう。
(注87)  専用利用権の内容を仮に現行特許法の専用実施権と同様のもの(但し登録を効力発生要件とはしない)とした場合,専用利用権の主要な内容は以下のようになる(もっとも,専用利用権の立法次第では現行法の一部譲渡と全く同じ内容にすることも可能である)。
 (1)専用利用権の譲渡,専用利用権者による利用の許諾に著作権者の承諾が必要となる(但し,現行法の一部譲渡でもこれらの特約・および「処分の制限」としての登録が可能であるから,これらはデフォルトルールの変更にとどまる)。
 (2)専用利用権の設定範囲内での侵害行為に対し,専用利用権者・著作権者共に差止・損害賠償請求権を有する。
 (3)専用利用権の登録により,専用利用権者は専用利用権の設定を第三者に対抗できる。専用利用権の内容に制限がある場合には,その登録により著作権者は第三者(利用権の譲受人等)にその制限の存在を主張することができる。
(注88)  但し専用利用権の譲渡,専用利用権者による利用許諾につき著作権者の同意を必要とすれば,一部譲渡の範囲を広く誤解した譲受人による侵害の危険は減ずる。

  【参考資料】

  ・水野 錬太郎『著作権法要義』(有斐閣,1899年)19頁以下
 特許法に於は制限を附し若は附せすして譲渡すことを得云々とあるも制限を附し若は附せさることは特に明言するの必要なし,苟も譲渡することを得る以上は其の全部たると一部たると,将た又条件を附すると否とは法の明文なくして随意に為し得らるることにして恰も民法上の凡ての権利の譲渡に此ることを明言せさると同一なり,故に明文なきも著作権は其の一部たる翻訳権又興行権のみを譲渡し又は年限を附して之を譲渡することを得るや勿論なり

・小林 尋次著「現行著作権法の立法理由と解釈−著作権法全文改正の資料として−」(昭和33年文部省)
 第五章 著作権(財産権)の内容
 第五節 著作権の譲渡及相続
 一 著作権の譲渡
 (中略)
 なお又財産権的部面たる著作権を譲渡した場合に於ても,通常の場合に於ては著作権の内容たる各種の権能全部を移転すると言うのが本則ではなく,契約の性質,著作物の性格,譲受人の職業的地位等から考えて,必要の限度に一種の権能即ち著作権の一部が移転されたものと解釈するのが至当の場合が多い。
 (中略)
 我国著作権法に於ては,昭和九年の一部改正の際に,初めて出版権設定と言う制度を取り入れたので,これと合わせて上記の点をも外国立法例に見習って著作者に留保されるべき権能を法定しようとも考えたのであるが,この部面に限り,権利規定が明確すぎて全般の均衡を害するに至ることを心配して,著作権法全文改正の機会に譲ることとして止めた。しかし少なくともこの間の事情を法文上に明かにして置くことが必要と考え,第二条中に「其ノ一部又ハ全部ヲ」なる字句を加えることとした。
 (中略)
 昭和九年の一部改正で「一部又は全部ヲ」なる字句を加えたのは,如上の改正案と全く同一趣旨に則ったものであって,同改正案の如き詳細規定は設けなかったが,法律運用面に於ては同趣旨に解釈して貰いたい意図を以て立案した次第である。

第65回帝国議会貴族院出版法中改正法律案特別委員会議事速記録
政府委員勝田 永吉(内務省参興官)による趣旨要綱の説明
 「第二条を改正いたしまして,著作権は其全部又は一部を譲渡し得る旨を明確に致しました。現行法第二条は,単に著作権は之を譲渡し得る旨を規定して居るのでございますから,果して其一部,例へば翻訳権のみとか,又は興行権のみを譲渡し得るか否かが明瞭でないのでございます,それ故法文上の明確に,著作権の一部を譲渡し得る旨を規定いたしまして,著作権の財産的価値の増大をはかったのでございます。」

・一部譲渡を巡る昭和9年3月19日の議論
○岩田 宙造議員
 ちょっと伺いたいのでありますが,此第二条中の改正に「其の全部又は一部」と云うことに改められた「之を」と云うのを「全部又は一部」と云うことに改められたやうでありますが,此全部と云うのは分かりましたが,一部と云うのは之を当事者が勝手に区分することは自由なのでありませうか 或は法律の中に翻訳権とか出版権とか云って或種類を認められて居る,其の範囲に限られるのでありませうか

○政府委員(大森 浩太・司法省民事局長)
 是は只今お話の通りの趣旨でありまして,当事者が勝手にどこ迄も細分せられると云う意味でなしに法律に現在認めて居りまする興行権,或は翻訳権さう云うものを範囲にして分かち得ると云う考えであります。他の立法例等を見ますと制限を附し,又は制限を付せずしてと云うやうなことも書いては居りますけれども,矢張り全部又は一部と云う用例の方が宜くはないかと云うやうな意味を以て此用例を選んだ訳であります。尚ほ現在此規定はありませぬが,大体に於て此規定通りに解釈をして居るやうでありまして,現在の解釈を法文で明らかにしたと云う程度に考へて居るのであります。

(中略)

○内田 重成議員
 私も今の二条に付きまして岩田君の質問に関連して伺いたい。只今のご説明に依って此二条と云う之を「其の全部又は一部」と云うことに改められた御趣意は承ったのでありまするが,しますると是は場所に付て制限して譲渡す,又は時期に付て制限して譲渡すと云うやうな,場所又は時の制限を以て,譲渡は許さぬと云うやうな御見込になりますか

○政府委員(大森 浩太)
 立案の際に今の御尋の点が大分問題になったのでありまするが,解釈としては私共制限を時に於ても或いは場所に於ても差支なからうと思ったのであります。但し,登録等の関係で稍々うるさい問題は生じませうけれども,先ず実際に於てはさう云う場合は少ないかに承って居ります。解釈と致しては御説の通りの場合も包含し得るものと云う頭で進んで居ります。

○内田 重成議員
 さう致しますると先程岩田君にお答えになったのと稍々抵触するやうに考えますが,如何でありますか。又従来此現行法の2条の解釈は廣い解釈のやうに相成って居るやうに考へるのであります。判決例はどうであるか知れませぬが,従来の解釈としては廣く解釈されて居るやうに考へて居るのであります。先程の御答と只今の御答と抵触は致しますまいか,其点をもう一度伺いたい。

○政府委員(大森 浩太)
 先程の私の申上げ方が不徹底でありましたが為に,左様な御疑を生じたことは恐縮に存ずるのであります。先程申しましたのは翻訳権とか興行権…此法文に現れて居りまする権利を更に細かくして,それ以下の権利に分ってそれを譲渡することは出来ない,此う云う積りでありまして,興行権翻訳権と云うのを制限的に譲渡しますることを禁ずると云う積ではない趣旨であったのであります。

・著作権制度審議会答申説明書(昭和41年)
第八 著作権の譲渡・相続
 一 譲渡
 財産権としての著作権は,その全部又は一部を譲渡することができるものとする現行法のたてまえは維持することとした。

  【外国の立法例】

  ・米国(注89)
第201条 著作権の帰属
 (a)〜(c)略
 (d) 著作権の移転(注90)
 
(1)  著作権は,あらゆる手段による譲渡または法の作用によって,その全部または一部を移転することができ,また,遺言によって遺贈しまたは無遺言相続法によって人的財産として移転することができる。
(2)  第106条に列挙する権利を含む,著作権に含まれるいかなる排他的権利も,上記第(1)項に規定するとおり移転し,また,個別に保有することができる。特定の排他的権利の保有者は,かかる権利の範囲内で,本編が著作権者に対して認める全ての保護および救済を受けることができる。

第204条 著作権の移転の実行
 (a) 著作権の移転は,法の作用によるものを除き,譲渡証書または移転の記録もしくは覚書が書面にて作成され,かつ,移転される権利の保有者またはその適法に授権された代理人が署名しなければ効力を有しない。
 (b)

・英国(注91)
 (譲渡及び許諾)
第90条
 (1)  著作権は,人的財産又は動産として,譲渡,遺言による処分又は法律の作用により,移転することができる。
 (2)  著作権の譲渡その他の移転は,1部分とすること,すなわち,次のものに適用されるように限定することができる。
 
(a)  著作権者が行う排他的権利を有する事項の1又は2以上であって全部でないもの
(b)  著作権が存続すべき期間の1部分であって全体でないもの
 (3)  略
 (4)  著作権者により付与される許諾は,対価を支払った善意の購入者であって許諾の通知(現実の又は推定による)を受けていない者又はそのような購入者から権限を得ている者を除き,著作権上の利益についてのすべての権利承継人を拘束する。また,この部における著作権者の許諾を得て又は得ずにいずれかのことを行うことへの言及は,それに従って解釈される

 (排他的許諾)
第92条
 (1)  この部において,「排他的許諾」とは,著作権者が別途排他的に行使することができる権利を行使することを,許諾を付与する者を含む他のすべての者を排除して,許諾を得た者に許可する許諾であって,著作権者により又はその者のために署名された書面によるものをいう。
 (2)  排他的許諾に基づいて許諾を得た者は,許諾を与える者に対して有すると同一の権利を,許諾により拘束される権利承継人に対しても有する。

 (排他的許諾を得た者の権利及び救済)
第101条
 (1)  排他的許諾を得た者は,著作権者に対する場合を除き,許諾の付与の後に生じる事項について,許諾が譲渡であったものとして,同一の権利及び救済を有する。
 (2)  その者の権利及び救済は,著作権者の権利及び救済と併存する。また,この部の関係規定における著作権者への言及は,それに従って解釈される。
 (3)  排他的許諾を得た者がこの条に基づいて提起する訴訟において,被告は,訴訟が著作権者により提起されたならば利用することができたいずれの抗弁をも利用することができる。

○フランス(注92)
131の3条 著作者の権利の移転は,譲渡される各権利が譲渡証書において個別の記載の対象となり,かつ,譲渡される権利の利用分野がその範囲,用途,場所及び期間に関して限定されるという条件に従う。
2〜4 略

131の4条 著作者によるその著作物についての権利の譲渡は,全部又は一部とすることができる。譲渡は,販売又は利用から生ずる収入の比例配分を著作者のために伴わなければならない。
2・3 略

131の7条 一部譲渡の場合には,権利譲受人は,契約に定める条件及び制限に従い,契約に定める期間の間,及び報告の義務を条件として,譲渡を受けた権利の行使において著作者を代理する。

・ドイツ(注93)
 第31条 利用権の許与
1  著作者は,著作物を個別的利用方法又はすべての利用方法にて利用する権利(利用権)を他者に許諾することができる。
 利用権は,非排他的権利として又は排他的な権利として,許与することができ,かつ場所的,時間的又は内容的に制限を付して,許与することもできる。
2  略
3  排他的利用権は,他のすべての人々を排して,その保有者に対して,著作物を許諾された方法により利用する権限及び利用権を許与する権限を与える。著作者による利用は留保されていると約定することもできる,第35条は,これにより影響を受けない。
4,5略

 第34条 利用権の譲渡
1  利用権は,著作者の同意がある場合にのみ,譲渡することができる。著作者は,信義誠実に反し,この同意を拒むことができない。
2〜5略

 第35条 更なる利用権の許与
1  排他的利用者は,著作者の同意がある場合にのみ,利用権を更に許与することができる。排他的利用権が著作者の利益を管理するためにのみ許与される場合には,同意は要しない。
2

(注89)  山本 隆司・増田 雅子共訳・前掲書
(注90)  「著作権の移転(transfer of copyright ownership)」には,著作権の譲渡(assignment)はもちろん,著作権に含まれるいずれかの独占的権利についての排他的使用許諾(exclusive license)も含まれる(その効力が時間的・場所的制限を受けるか否かに関わらない。但し,被排他的許諾は著作権の移転に含まれない。第101条)。
(注91)  大山 幸房訳・前掲書
(注92)  大山 幸房訳・前掲書
(注93)  渡邉 修訳,「ドイツ著作権法(上)」,『(知財プリズム』,vol.3,no.34,2005年 7月号,P12-15

 
(5) 著作権法第61条第2項の存置の必要性について

 
1 現行制度

   著作権を譲渡する契約において,第27条又は第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは,これらの権利は,譲渡した者に留保されたものと推定するとしている(第61条第2項)。そして,特掲の要件を満たすためには,単に「全ての著作権を譲渡する」という表現では足りないと解されている。
 また,本項による推定は,売買,贈与,交換,信託等のあらゆる譲渡契約に及び,かつ現行著作権法施行前になされた契約にも適用される。

2 問題の所在

   このような規定の存在は,譲渡契約の解釈について事後的に当事者間のトラブルを招く原因になりかねないという意見があり,著作権法の単純化の観点から廃止することの是非が検討されてきた。特にプログラムの著作物の著作権の譲渡については,その利用の実態から当該規定を適用すべきでないという著作権法改正要望も出されているところである。
 さらに,第27条及び第28条に規定する権利のみが譲渡にあたり特掲することを求められていることは,その他の著作権法に具体的に規定されている個別的な利用態様別の権利と扱いを異にし,制度上もアンバランスなものとなっているとの指摘もある。

3 立法趣旨

   著作権制度審議会は,「著作権の譲渡に関しては,形式的には譲渡される権利の範囲の限定が無い場合にあっても,具体的状況に応じてその範囲が限定されるものであるとする趣旨の解釈規定を設けることが適当」であると答申している(昭和41年4月)。このような答申が出されたのは,出版社等による懸賞小説募集のような約款による著作権譲渡への対応が必要であるとの認識があったとされる(注94)。

 答申を受けて作成された文部省文化局試案(昭和41年10月)では,著作権譲渡に関し,「契約上予想されない方法により著作物を利用する権利」を譲渡人に留保する推定規定を置いていたが,その後の検討を経て,現行第61条第2項と同様の条文案が作成された。

 なお,条文案検討の過程で,留保が推定される権利を限定し明確化した理由としては,第1に,「予想されない方法」という語が,あたかも「契約時に存在しなかった未知の利用方法」を含むものであるという印象を与え,本来の立法趣旨を超えて,そのような問題(解釈問題)にまで当該条項が適用されるおそれがあること,第2に,現実の契約において,具体的にどのような権利が譲渡されたのか若しくは留保されたのかが不明確となり,実務に支障を来すおそれがあること,があったと思われる。

 また,留保が推定される権利を第27条及び第28条に規定する権利に限定したのは,著作権制度審議会答申が念頭に置いていた「懸賞小説への投稿」のような譲渡契約については,第1に,著作権の譲渡は,著作物を原作のままの形態で利用する権利の譲渡を内容とはしていても,それに付随して例えば小説を映画化したり翻訳したりするといった,二次的著作物を作成したり利用したりすることについての権利までが移転することは,一般に予定していないという判断と,第2に,具体的な二次的著作物の作成・利用が予定されていないにもかかわらず,二次的著作物を作成・利用する権利が著作者から移転することは,著作者保護に欠けるという判断があったものと思われる。

 第61条第2項の規定については,平成13年の総括小委員会,平成14年の契約・流通小委員会,平成15年の法制問題小委員会において,「著作権法の単純化」という観点で,その存続の是非が検討されたが,賛否両論があり,法改正につながる結論には至らなかった。

4 検討内容

 
 適用範囲の妥当性

 
(ア) 企業間の譲渡
   著作権制度審議会の答申の前提にあった問題意識からすれば,企業間で行われる,約款によらず交渉により契約を作成する著作権譲渡について,本項適用の必要性は低いと思われる。

(イ) プログラムの著作物の著作権の譲渡
   プログラムの著作物は,著作権制度審議会の検討当時には意識されていなかった著作物であり,かつ,答申が念頭に置いていた著作権譲渡契約の場合と異なり,譲受人が改変や翻案して利用することが一般的である。また,個人著作者が企業に著作権を譲渡することも想定しがたい。従って,プログラム著作物の著作権の譲渡について,本項適用の必要性は低いと思われる(注95)。

(ウ) 留保が推定される権利の範囲
   著作権制度審議会答申に従うならば,譲渡人に留保される権利を第27条及び第28条に規定する権利に限定する理由は乏しいように思われる。
 なお,第27条及び第28条に規定する権利を留保することについては,「創作活動を奨励するという意味でもそれなりの合理性を認めることができる。」とする見解(注96)もある。

 規定としての有効性

   約款の作成者は,譲渡される権利に第27条及び第28条に規定する権利が含まれていることを特記すれば,本規定の推定の適用を免れることができる。そして,特記することは約款作成者が本項を知っていれば,何ら難しいことではない。その場合,本項は,譲渡される権利に第27条及び第28条に規定する権利が含まれていることを,著作権法に精通していない譲渡人に自覚させる以上の効果はない。

 譲渡人を経済的弱者と仮定することの妥当性

   著作権譲渡契約において,常に,譲渡人が譲受人に対して「弱者」であるとすることは困難である。従って,譲渡契約一般について,譲渡人を「弱者」として保護することは適当ではない。
 しかしながら,著作権制度審議会が答申に当たり念頭に置いていた,「懸賞小説への投稿」の類型について,個人が譲渡人で出版社等が譲受人である譲渡契約であって,出版社等が作成した約款が適用されるような場合には,出版社等と個人との間で情報の質及び量,そして交渉力の格差が存在する個人と企業の約款契約であり,個人を「弱者」として保護すべきであるとするとの考え方をとるならば,立法による何らかの手当が引き続き必要である。

5 検討結果

   あらゆる著作権の譲渡契約について本推定規定が適用されるのは,適用範囲が広くなり過ぎるため適当ではないが,一方で,著作権制度審議会が念頭に置いていた「懸賞小説への投稿」のように,個人から出版社等に対し,出版社等が作成した約款によって著作権が譲渡されるような場合については,引き続き何らかの立法による手当が必要と思われる。
 しかしながら,あらかじめ約款作成者が第27条及び第28条に規定する権利を約款において特掲していれば意味がなく,著作権者に譲渡する著作権の範囲について認識させる程度の効果しかない。また,著作権者が著作権法の本推定規定を知らなければ救済にはならないとの指摘もある。
 また,第27条及び第28条に規定する権利のみ,かかる特別な推定規定にかからしめる必然性は乏しい。
 以上のことから,第61条第2項は廃止の方向で検討すべきであるが,本規定はあくまで推定規定であること,及び廃止する場合には著作権制度審議会が念頭に置いていた出版社等による懸賞小説募集のような約款による著作権譲渡といった一定の譲渡契約について何らかの手当を行う必要があると考えられるところから,現状においては,本規定のみを直ちに廃止するための法改正を行うことは適当ではない。

  【参考資料】

  ・文化審議会著作権分科会報告書(平成16年1月)
1第61条第2項の廃止について
○検討結果
 契約で個々の権利の譲渡を明記しない限り,権利が譲渡されないという規定は,著作権法を相当に読み込んでいないとわからない規定であり,著作権法を単純化する観点から廃止すべきであるという意見が多く示された。
 他方,第61条第2項の規定は,著作権の譲渡の際に,著作権者に改めて何を譲渡するのかといった一考を促す意味があることから,規定の廃止については慎重な検討が必要であるとの意見もあった。

  【外国の立法例】

  ・フランス(注97)
131の3条 著作者の権利の移転は,譲渡される各権利が譲渡証書において個別の記載の対象となり,かつ,譲渡される権利の利用分野がその範囲,用途,場所及び期間に関して限定されるという条件に従う。
2  略
3  視聴覚翻案権を対象とする譲渡は,印刷著作物の本来の出版に関する契約とは別個の文書による契約書の対象としなければならない。
4  略

・ドイツ(注98)
第31条 利用権の許与
1〜4略
5  利用権を許与するに際して,利用方法が明確にひとつひとつ表示されていない場合には,両当事者が基礎とした契約目的にしたがい,利用権がいかなる利用方法に及ぶかが決定される。利用権が許与されたか否か,通常利用権か排他的利用権か,利用権及び禁止権はいかなる範囲に及ぶか,並びに利用権はいかなる制限に服するかについても,同様とする。

・イタリア(注99)
第3節 出版契約
第119条
1  契約は,契約時に効力をもつ法律によって規定される契約の範囲および期間について,著作者が出版に関して著作者に属する利用権の全部または一部を内容とすることができる。
2  反対の約定がないかぎり,移転された権利は排他的権利であると推定される。
3  将来の法律によって与えられる権利およびより広い範囲またはより長い期間の著作権保護を規定する将来の権利は,移転には含まれないものとする。
4  明示の約定がないかぎり,移転は,映画に翻案し,放送し,および機械的機器に録音することを含む,後に著作物になされる変更や改変の利用権には及ばないものとする。5 反対の約定がないかぎり,利用権の1つまたは2つ以上の権利の移転は,第1編の規定にもとづき,その権利が同一種類の排他的権利に含まれる場合であっても,移転された権利には必ずしも従属しない他の権利の移転を含むものではない。

(注94)  例えば,加戸 守行著「著作権法逐条講義四訂新版」365〜366頁,「本項創設に当たり念頭にありましたのは,懸賞募集の場合のように,画一的フォームの一方的契約約款による著作権譲渡のケースであります。」「全く対等の契約当事者間の著作権譲渡契約の場合のように原権利者において一定の権利を留保する機会や地位が認められる場合はともかく,画一的な契約約款によって譲受人側の一方的意思に対する抗弁の余地が実際上存在しない形において締結される契約にあっては,経済的に弱者の地位にある著作者側を保護する必要性が強く認められるからであります。」
(注95)  社団法人情報サービス産業協会提出の「著作権改正に関する要望事項」では,プログラム及びデータベースの著作物について,本項適用を除外すべきとしている。また,経済産業省の「著作権法改正要望事項に対する意見について(回答)」においても,特にプログラムの著作物について本項の見直しが必要としている。
(注96)  田村 善之「著作権法概説(第2版)」有斐閣507頁。例として,「漫画の作者がデビュー作の「著作権」を出版社に譲渡する契約を締結してしまった場合に,譲渡の対象に翻案権までもが含まれているということになると,作者がその作品の登場人物を用いて続編を書くことが,出版社の有する翻案権の侵害となってしまう」ケースが挙げられている。
(注97)  大山 幸房訳・前掲書
(注98)  渡邉 修訳・前掲書
(注99)  三浦 正広訳「外国著作権法令集(32)-イタリア編」2003社団法人著作権情報センター

 
(6) 未知の利用方法に係る契約について

 
1 現行制度

   著作権者が著作物を第三者に利用させる方法としては,契約による著作権の譲渡と利用許諾(本節2(6)において「利用契約」とする。)がある。ただし,利用契約の解釈に関する規定としては,第61条第2項と第63条第4項を置くのみである。

2 問題の所在

   当事者が利用契約の締結時に予見しえなかった著作物の利用方法(以下「未知の利用方法」という。)が,利用契約の対象に含まれているか否かについて,当事者間で問題となる場合がある。

3 検討結果

 
 著作権者保護の必要性の問題について

   まず問題となるのは,著作物の利用契約の解釈において,一般に「著作権者は弱者である」という理由から保護されるべきであると考え,利用契約により与えられる利用権の範囲を限定的に解釈するとの原則を採るべきかどうかという点である。
 諸外国の例を参考にすると,著作物を創作した著作者は,著作物から引き出されたあらゆる経済上の利益に関与させられるべきであり,著作者に十分に報いることなく著作物の利用から利益を獲得することは正義に反するという見地から,利用契約において個別的に表示された利用目的以外は含まれず,未知の利用方法を目的とする利用契約は無効であるとの規定を設けることや,利用契約の解釈に当たっては,「疑わしきは著作者に有利に解釈する」という原則を採用すべきであるとの考え方があり得る。

 しかし,一律に「著作権者は弱者である」との前提を採ることは,必ずしも適切ではないと考えられる。一方で,未だ無名の若い個人の著作者が利用契約の一方当事者である場合には,契約締結において経済力または情報力の格差から十分な交渉力を有さず,たとえ自己にとって不利な内容の利用契約であっても実際には契約締結を余儀なくされるという事態は十分にあり得るところであるが,他方で,大企業が著作権者として利用契約の一方当事者である場合も少なくなく,利用契約の実態は千差万別である。そうすると,全ての利用契約について,「著作権者は構造的な弱者である」との前提で法律上特別な扱いをすることは,現状にも合致しないであろう。
 したがって,この点は,我が国における利用契約の実態をも踏まえた上で,個別具体的なケースごとに検討するのが適切であると考えられる。

 利用契約の解釈の問題について

   以上からすると,当事者が利用契約の締結時に予見しえなかった未知の利用方法が利用契約の対象に含まれているか否かは,個別の利用契約の解釈問題に帰着すると考えられる。 ここでの問題の実質は,新たな技術発展等によって実現した著作物の新たな利用から生ずる経済的な収益を,利用者のみが獲得すると解してよいか,それとも,著作権者にも相当の範囲で収益の分配を認めるべきであるか否かにある。
 当初の利用契約を締結した時点においては,契約当事者が,問題となっている新たな利用方法については「予見し得なかった」のであるから,当事者の意思が必ずしも決め手にはなるとは言えない。しかし一般論としては,譲渡人が取得すべき将来の不確定な収益に対する権利を契約によって包括的に譲渡することも可能であるから,著作権者が当該利用方法の経済的価値を認識した上で利用契約を締結していないからといって,一般に予見し得なかった利用方法が利用契約の対象に含まれないというわけでもない。

 そうすると,未知の利用方法が利用契約の対象に含まれていると解すべきかどうかの判断にあたっては,著作権者が利用契約に基づく著作物の利用について,十分な対価を得ていると評価されるか否かが重要となろう。
 この点では,利用の対価の決定方法として,利用者が取得する収益に比例した方法が採られている場合には,新たな方法を利用契約に含めて解してもそれほど問題は生じないと思われる。問題となるのは,一括かつ定額の対価によって,包括的に利用権が付与された場合であるが,この場合については,将来の不確定な利用方法から得られる収益の可能性を,当事者が十分に評価した上で,対価を決定したとみることができるかどうかが重要な考慮要素となるであろう。

 解釈方法・解釈準則の立法化の必要性

   以上のような考え方に立つときに,未知の利用方法に関し,利用契約の解釈方法ないし解釈準則を著作権法に設けるべきか否かが問題となる。利用契約の解釈が争われる具体的な場面としては,次の二つを区別することができよう。

 
(ア) 利用契約に「個別の利用目的が掲記されていた場合」
   利用契約において「個別の利用目的が掲記されていた場合」には,未知の利用方法がそれに含まれるかどうかという形で問題が現れる。典型例としては,従来はアナログ形式で利用していた著作物をデジタル化して利用する場合に,これが当初の利用契約の対象に含まれるか否かが問題となる場合などがある。
 この場合に,例えば,「当初の利用契約に掲記された利用目的または利用方法と経済的に同視し得るものは,特段の事情がない限り,当初の利用契約の内容に含まれる」といった解釈規定を設けることが考えられる。しかし,上記の考え方に立てば,「経済的に同視し得るか」の判断は,具体的なケースに即した諸事情が総合的に考慮されるべきであるから,このような解釈準則を設けることにそれほどの有用性は認められないといえる。

(イ) 利用契約に「包括的な文言が使われている場合」
   利用契約の文言上は,典型例としては,「すべての複製権を譲渡する」のように,包括的な形で利用契約の対象が示されている場合がある。この場合には,利用契約の文言を形式的にとらえれば,未知の利用方法についても契約内容に含まれると解釈すべきことになるが,上記の考え方からすれば,利用契約の範囲を限定して解釈することも十分に可能である。
 その場合に裁判所が用いることができる法的手法としては,利用契約を合理的ないし限定的解釈によるほか,公序良俗(民法第90条)により利用契約の効力を一部否定することなどが考えられる(将来譲渡人に生ずべき収益の包括的な処分の有効性については,将来債権の一括譲渡に関する判例(最3小判平成11年1月29日民集53巻1号151頁)が参考になる)。
 以上からすれば,未知の利用方法に関する利用契約の解釈問題については,個別具体的な事案に即して,民法の一般原則を用いて裁判所が合理的な解釈を行うことに委ね,判例の集積を通じて法形成がなされるのが適切であり,少なくとも現時点においては,著作権法に特別な規定を設ける必要はないと考える。
 なお,上記のような裁判所による利用契約の解釈等による対応には限界があることが判明した場合には,諸外国の法制で採用されている法的手法を参考にしながら,我が国における利用契約の実態等の把握を踏まえつつ,適切な立法対応の可能性について検討を行うこととなろう。

  【外国の立法例】

  ・米国(注100)
第203条 著作者の権利付与による移転および使用許諾の終了
(a)  終了の条件
 職務著作物以外の著作物の場合,1978年1月1日以後に著作者が遺言以外の方法によって行った,著作権またはこれに基づく権利の移転または独占的もしくは非独占的な使用許諾の付与は,以下の条件において終了する。
  (1)・(2)略
 
(3)  権利付与の終了は,権利付与の実施の日から35年後に始まる5年間にいつでも行うことができる。また,権利付与が著作物を発行する権利にかかる場合,上記期間は,権利付与に基づく著作物の発行の日から35年後または許可の実施の日から40年後のうち,いずれか早く終了する期間の最終日から起算する。
(4)  略
(5)  権利付与の終了は,いかなる反対の合意(遺言を作成しまたは将来の権利付与を行う合意を含む)にかかわらず行うことができる。
(b)  略

・フランス(注101)
第122の7条 上演・演奏権及び複製権は,無償又は有償で譲渡することができる。
2  上演・演奏権の譲渡は,複製権の譲渡を伴わない。
3  複製権の譲渡は,上演・演奏権の譲渡を伴わない。
4  契約が,この条にいう二の権利の一方の全部譲渡を伴う場合には,その有効範囲は,契約に定める利用方法に限定される。

131の2条 この章に定める上演・演奏契約,出版契約及び視聴覚製作契約は,文書で作成しなければならない。演奏の無償許諾についても,同様とする。
2  その他のいずれの場合にも,民法典第1341条から第1348条までの規定が,適用される。

131の3条 著作者の権利の移転は,譲渡される各権利が譲渡証書において個別の記載の対象となり,かつ,譲渡される権利の利用分野がその範囲,用途,場所及び期間に関して限定されるという条件に従う。
2  略
3  視聴覚翻案権を対象とする譲渡は,印刷著作物の本来の出版に関する契約とは別個の文書による契約書の対象としなければならない。
4  譲受人は,この契約によって,譲渡された権利を利用するように職業上の慣行に従って努力することを約束し,及び翻案の場合には,受け取った収入に比例する報酬を著作者に支払うことを約束する。

131の4条 著作者によるその著作物についての権利の譲渡は,全部又は一部とすることができる。譲渡は,販売又は利用から生ずる収入の比例配分を著作者のために伴わなければならない。
2  ただし,次の各号に掲げる場合には,著作者の報酬は,一括払い金として算定することができる。
 
(1)  比例配分の算定基礎を決定することが実際上できない場合
(2)  その配分の適用を管理する手段を欠く場合
(3)  その算定及び管理の実施のための経費が,到達すべき結果と釣合いがとれない場合
(4)  著作者の寄与が著作物の知的創作の不可欠の要素の一を構成しないため,又は著作物の使用が利用される目的物と比較して付随的なものにすぎないために,利用の性質又は条件が,比例報酬の規則の適用を不可能とする場合
(5)  ソフトウェアを対象とする権利の譲渡の場合
(6)  その他この法典に規定する場合
3  有効な契約から生ずる使用料を,著作者の求めに応じて,両当事者間において,両当事者間で定める期間について一括年払い金に変更することも,同様に適法とする。

131の5条 利用権の譲渡の場合において,著作者が過剰損害又は不十分な予測に基づいて著作物から生ずる収益の12分の7以上の損害を受けたときは,著作者は,契約の価格条件の修正を要求することができる。
2  この要求は,著作物が一括払いの報酬と引き換えに譲渡された場合に限り,行うことができる。
3  過剰損害は,そのような契約による損害を受けたと主張する著作者の著作物の譲受人による利用の全体を考慮して,評価される。

131の6条 契約の日に予想することができなかった,又は予想されなかった形式で著作物を利用する権利を付与するための譲渡条項は,明示規定とし,かつ,利用から生ずる利益の相関的な配分を定めなければならない。

131の8条 この法典第112の2条に定める著作物の譲渡,利用又は使用に際して著作者,作曲家及び芸術家に対して最後の3年間に支払われるべき使用料及び報酬の支払いに関して,これらの著作者,作曲家及び芸術家は,民法典第2101条第4号及び第2104条に規定する特典を享有する。

・ドイツ(注102)
第31条 利用権の許与
1〜3略
4  未知の利用方法に対する利用権の許与及びこれに対する義務付けは,無効とする。
5  利用権を許与するに際して,利用方法が明確にひとつひとつ表示されていない場合には,両当事者が基礎とした契約目的にしたがい,利用権がいかなる利用方法に及ぶかが決定される。利用権が許与されたか否か,通常利用権か排他的利用権か,利用権及び禁止権はいかなる範囲に及ぶか,並びに利用権はいかなる制限に服するかについても,同様とする。


第32条 相当な報酬
1  著作者は,利用権の許与及び著作物利用の許諾と引き換えに,約定された報酬を求める請求権を取得する。報酬の額の定めがない場合には,相当な報酬が約定されたものとみなす。約定された報酬が相当なものではない場合には,著作者は,契約の相手方に対して,著作者に相当な報酬を認める契約の改定に同意するよう求めることができる。
2  略
3  契約の相手方は,第1項及び第2項に反し,著作者の不利になる約定を援用することはできない。第1文に掲げる規定は,別の方法により回避される場合にも適用される。但し,著作者は,何人に対しても,無償にて,通常利用権を許与することができる。
4  略

第32a条 著作権の更なる利益配当
1  著作者が,相手方に対して,利用権を許与したが,その条件が,約定された反対給付が著作者の相手方に対する全関係に鑑みて著作物利用から生ずる収益及び利益に対して明らかに不均衡をもたらすものであった場合には,この相手方は,著作者の求めに応じて,契約の改定に同意する義務を負う。この契約の改定により,著作者には,状況次第で,更に相当な利益分配が認められる。契約当事者が,得られた収益又は利益の額を予期していたか否か,又は予期することができたか否かは,重要ではない。
2  相手方が,利用権を譲渡し又は更に利用権を許与した場合であって,第三者の収益又は利益から明らかな不均衡が生じているときは,この第三者は,ライセンスの連鎖における契約関係を顧慮して,第1項にしたがい,著作者に対して,直接,責任を負う。相手方は,責任を負わない。
3  第1項及び第2項に基づく請求権は,あらかじめ放棄することができない。この請求権に対する期待権は,強制執行を受けない。この期待権の処分は無効とする。
4  略

(注100)  山本 隆司・増田 雅子共訳・前掲書
(注101)  大山 幸房訳・前掲書
(注102)  渡邉 修訳・前掲書

3  今後の検討

   これまでの検討に基づき,本ワーキングチームは,検討6項目について以下に示す方向で取りまとめを行うこととする。

 まず,著作権法と契約法の関係に関する,いわゆる契約による著作権法のオーバーライド問題に関しては,著作権法第30条以下の各制限規定の立法趣旨及び目的を踏まえつつ,本ワーキングチームにおいて引き続き検討し,立法による対応の必要性も含めて平成19年を目途に結論を得る。

 第2に,著作権法第63条第2項の規定に定める,許諾に係る利用方法及び条件の範囲の解釈については,立法的対応の必要性は認められなかった。もともとこの問題は解釈問題でもあり,この領域における今後の判例及び学説の展開と蓄積を注視したい。

 第3に,著作権の譲渡契約の書面化については,契約自由の原則を採用する我が国の法体系の下で,直ちになんらかの立法的手当を正当化する緊急の必要性は認められなかった。もっとも,主要な先進国においては書面化を求める立法例が少なくないことから,渉外的な利用契約実務においては,書面が必須のものとなっている実態がある。また,国内における利用契約についても,書面による契約が常態化している取引領域も少なくないと思われることから,引き続き検討を行い,今後の方向性について判断することとしたい。

 第4に,著作権法第61条第1項に規定する,著作権等の一部譲渡における権利の細分化の限界の問題については,一部譲渡の禁止あるいは限界を示すべき立法上の対応をこの段階で行う必要性は認められなかった。
 この問題は,著作物等の利用許諾制度の在り方,更にはこれと第三者対抗制度の在り方と密接に関係するところであり,他の知的財産制度における第三者対抗制度の議論の進展を踏まえつつ,ライセンシー保護の制度及び登録制度についての検討の中で,専用利用権制度を含む著作物の「利用権」に係る制度の創設も視野に入れた検討を行い,平成19年を目途に結論を得るものとしたい。

 第5に,著作権法第61条第2項の規定については,積極的な存在理由に乏しく廃止の方向で検討を進めるが,この規定があることにより直ちに取引実態への混乱をもたらしているというものでもないことから,他の検討事項における結論が得られ,著作権法改正がなされる際にあわせて再度検討の上,最終的な立法措置について判断を行うものとする。

 最後に,利用契約における未知の利用方法の取り扱いであるが,契約全般に妥当する解釈原則による対応で当面足りるものと考える。この問題に関する裁判例において,契約全般に妥当する解釈原則では足りない法状況が認められれば,その段階で,著作権法においても特有な解釈規定を置くこと等について検討したい。

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