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文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)

1 日時 :  平成16年9月2日(木曜日)10時30分〜
2 場所 :  三田共用会議所 C、D、E会議室
 議題
(1) 主査の選出について
(2) 国際小委員会の検討事項について
(3) 放送条約への対応の在り方について
(4) アジア諸国との著作権に関する連携の在り方について
(5) その他

配布資料
    文化審議会著作権分科会国際小委員会委員名簿
  2−1   文化審議会著作権分科会国際小委員会の検討事項(案)
  2−2   国際小委員会審議予定(案)
  3−1   第1回国際小委員会における論点ペーパー
  3−2   第11回WIPO著作権等常設委員会結果概要
  3−3   放送条約テキスト関連条文
  3−4   アジア諸国との著作権に関する連携の在り方(PDF:49KB)
EPA, FTA交渉における著作権関連事項について
アジア諸国における著作権制度の現状

【参考資料】
    文化審議会関係法令等
    文化審議会著作権分科会各小委員会委員名簿
    文化審議会著作権分科会の議事の公開について
    小委員会の設置について
    著作権法の一部を改正する法律の概要
    知的財産推進計画2004(著作権関係部分の抜粋)

午前10時30分開会
(池原国際課長より、資料1に基づき委員紹介、配布資料の確認の後、主査の選出を行う。)
 どなたか、主査の推薦があればお願いいたします。
松田委員 道垣内委員にお願いしたらいかがかと考えます。

池原国際課長 ありがとうございます。
 今、松田委員から、道垣内委員を本小委員会の主査としてご推薦がございましたけれども、いかがでしょうか。

(「異議なし」の声あり)


池原国際課長 ご異議がないようでございますので、道垣内委員を主査として選出をさせていただくことでご承認をいただきたいと思います。
 それでは、道垣内委員には、大変恐縮でございますけれども、主査席の方にお移りをいただきたいと思います。
 これからの議事進行につきましては、道垣内主査にお願いをいたしたいと思います。
 それでは、道垣内主査から一言ごあいさつをお願いしたいと思います。

道垣内主査 今選出されました道垣内でございます。
 私の専門は国際私法でございまして、国際私法の中の著作権には関心を持って勉強しておりますけれども、著作権法の中の国際問題がここのテーマだと思いますので、適任かどうか心配でございますけれども、よろしくお願いいたします。また、会議の運営につきましては慣れないところもあるかもしれませんけれども、その点お許しいただければと存じます。
 この小委員会は、これまでも存在いたしましたけれども、今回初めての方もいらっしゃいますので、少し私の方から、勉強したところといいますか、ここは何をするところなのかということを少しはっきりさせてから審議を始めた方が、混乱がないのではないかと思います。
 参考資料1に組織法がつけられておりますけれども、文部科学省の設置法で文化審議会が設置され、その文化審議会について文化審議会令という3ページのものがつくられております。その中で、5条に「分科会を置く」ということになっていて、その2番目に掲げられているのが著作権分科会です。
 これについてどういうふうに運営していくかということについて、10ページになりますが、著作権分科会の運営規則があって、今この規則に基づいてご就任いただいたわけですが、そもそも、お隣りにお座りの齊藤分科会長が皆さん方を委員に選出したというのが、どこかに委員の指名というのがあったと思いますが、3条2項ですね。
 そういうところからきておりまして、何をするかというと、結局、今回実は特別の審議をせよという諮問はないわけでございますが、ご専門の方々にお集まりいただいて、応用するべきところがあればそれについて意見具申をするということで、最終的には著作権分科会の報告書の中にここでの審議が取り入れられて、その報告書が文化庁の長官に提出されるということになると思います。
 そういうことでございますので、この後の議題で何を審議するかということについてお諮りするのも、その趣旨でございます。
 直接的なことでまずすべきことは、今最後に見ていただきました11ページの分科会の運営規則の3条5項で、主査に事故があるときに備えた措置ということで、実は代理の指名でございますが、これは私がするということになっておりますので私の方でさせていただきますが、大楽委員にお願いしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入ります前に、まず会議の公開の取扱いにつきまして、事務局の方からご説明いただけますでしょうか。

事務局 それでは、参考資料の3をごらんください。本内容につきましては、去る8月2日に行われました著作権分科会での決定事項でございます。趣旨は、本分科会及び小委員会での議事の公開を進める観点から決定をされたものでございます。
 今回の主な変更点は3つございます。
 第1点目が、3の(3)にございます、従来の傍聴者、傍聴につきましては、報道関係者及び委員関係、各省庁関係者に限られておりましたが、今後は一般傍聴者の傍聴も可能とするというものでございます。
 第2点目は、そのために、2のところにありますように、会議の開催日の1週間前までに文化庁ホームページにて会議の開催について案内するというのが2点目でございます。
 3点目ですが、議事の公開につきまして、6に書いてありますが、従来は発言者名は記さずに公開しておりましたが、今後は原則として発言者名を付して公開すると考えております。ただし、分科会長あるいは主査の判断によりまして非公開とすることもできます。
 以上の3点が、今回の議事の公開を進めるに当たりまして決定された内容でございます。
 その他の内容につきましては、従来どおりでございます。
 以上です。

道垣内主査 今のご説明にありましたとおり、議事の内容の公開を一層進めるという趣旨から、著作権分科会においてこれらの決定があったところでございます。
 これに従ってこの小委員会の方は動くということになると思いますが、具体的にはどうするかというのはここでの問題でございまして、特に人事にかかわる案件については非公開とするという方が、いろいろな議論があった場合にはふさわしいわけですが、今回の場合は特にその辺も、異論があってどうしたこうしたということはないわけですから、結論を示すということで、その部分についても、形の上では非公開にせよ公開にせよ区別はないと思いますけれども、結果のみそこは記すということで、これ以降の審議について、特段非公開にするには及ばないということから、すべて公開、今のご説明があったような趣旨の公開とするということでよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)


道垣内主査 それでは、これ以降の議事は、発言者の名前をつけた公開ということにさせていただきたいと思います。
 なお、傍聴の方がいらっしゃるかどうかという点は、どうなっていますでしょうか。

事務局 はい、いらっしゃいます。

道垣内主査 今までのところは非公開ということで、傍聴者も表に立っていたということでございます。よろしゅうございますか。
 それでは、今回は第1回ということでございまして、森口文化庁長官官房審議官に来ていただいておりますので、ごあいさつをいただきたいと思います。
 よろしくお願いいたします。

森口文化庁長官官房審議官 それでは、第1回の文化審議会の国際小委員会ということで、この開催に当たりまして一言ごあいさつ申し上げたいと思います。
 まず、皆様方におかれましては、ご多用の中、国際小委員会の委員をお引き受けいただきましてまことにありがとうございます。
 著作権分野におきます国際的な課題ということは、非常に多うございます。そういう中で、例えば国際的な著作権制度の調和、あるいは海賊版対策、こういったことについて、文化庁において取組みを行っているところでございます。
 そういう中で、政府全体といたしましてはいわゆる知的財産、知財と言っておりますが、知財につきまして非常に大きな政府全体としての動きがございます。知的財産基本法の整備ですとか、あるいはそれに基づきます推進計画ということが策定されておりまして、今年の5月にはその改定版の「知的財産推進計画2004」というものも策定されてございます。
 こうした中で、文化庁といたしましても、特にこの知的財産の中の大きな柱でございます著作権の分野におきまして、この動きに対応した施策ということを着実に進めていく必要があるわけでございます。そういう中におきまして、国際小委員会は非常に重要な位置づけになってございまして、ぜひこの委員会におきまして精力的なご審議をお願いしたいということでございます。
 この著作権分科会の方では、本年1月に分科会報告書を取りまとめてございまして、その中で、国際小委の関連部分といたしましては、いわゆる「世界知的所有権機関」、WIPOでございますが、そこで検討されております放送機関に関する条約、あるいは海賊版対策、そしてまた、インターネットを通じた著作権侵害にかかわる国際裁判管轄及び準拠法等の在り方と、こういったものをご審議をいただいておりまして、取りまとめをいただいたところでございます。文化庁といたしましても、この報告書に基づきまして、所要の施策というものを進めているところでございます。
 しかしながら、これは皆様方の方がよくご承知のとおりでございますが、デジタル化、あるいはネットワーク化、これらが非常に急速に進展をしてございます。それに対応する著作権といったものの環境も日々変化しておるわけでございまして、今年もまた引き続き、昨年同様にさまざまな課題が残されてございます。
 また、今年の9月、今月の末からは、ジュネーブでWIPOの総会も開かれますが、その中で、先ほど申し上げました放送条約が非常に大きな議題として挙がる予定になってございますし、なかなか現実に進んでいないんですけれども、いわゆる視聴覚的実演条約、こういったものも課題に上ってまいります。
 そういう中でこの小委員会が本日からスタートするわけでございますが、大変お忙しい中、大変恐縮でございますけれども、文化発展の基盤ということで、そういう観点、あるいは経済発展の基盤と、そういう観点からも、この著作権は非常に重要でございますので、ぜひとも適切な方向性をお示しいただくということで、ご審議をよろしくお願いしたいと思います。

道垣内主査 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、先ほど私の方から少し先回りしてこの会合の位置づけ等お話をいたしましたけれども、もう一度少し丁寧に、この小委員会の位置づけ、それから所掌事項等について、事務局から、資料に基づいてご説明いただけますでしょうか。

(事務局より「小委員会の設置」について参考資料2に基づき説明)

道垣内主査 どうもありがとうございました。
 今の件につきまして、ご質問等ございますでしょうか。
 よろしければ、引き続いて、検討事項の具体的な内容についてご説明いただきます。

(事務局より「本委員会の検討事項(案)」、「審議予定(案)」について資料2−1、2−2に基づき説明)

道垣内主査 今のご説明は、先ほどご説明がありました参考資料4の、著作権分科会がこの小委員会に与えているミッションが参考資料4の2の(3)にありますが、それを具体化しているものという位置づけかと思います。
 このうちの資料2−1の1と3が、国際的ルールづくりの委員会をするところで、2が参考資料4の方の2のアジア地域の関係のところかと思いますが、このような検討事項で必要十分か否かについてご意見をいただければ幸いでございますが、いかがでございましょうか。
 これは、この次の会合、1月という予定ですが、そのときにもし重大な問題が起きていれば、変更は可能ですね。参考資料4の枠内であれば可能だと思いますので、では、とりあえずこのように進めさせていただくということにさせていただきたいと思います。
 では、この中で具体的なことといたしまして、放送条約への対応の在り方について、事務局より、今年の6月に開催されましたWIPO著作権等常設委員会の結果について報告をしていただきまして、続いて、そこで提示された著作権条約のテキストの文句について説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

(事務局より「第11回SCCR結果概要」について資料3−2に基づき説明)

 まず、ここまでのところで何かご質問等があればお願いいたします。

道垣内主査 より具体的なことは、この後、条文に基づいてご説明いただいて審議する予定でございますが、今までのところの概要について、何かございますでしょうか。
 SCCRというのは、スタンディングコミッティなんですね、最初のSCは。

事務局 はい。

道垣内主査 ここには、こういう議事運営についての決定が委ねられているんですか。WIPOのこの会合の運営の仕方についての権限があると、そういうことで提案をしているということですか。

事務局 はい。スタンディングコミッティでございますので、常設の委員会ということでミッションが与えられまして、そこで条文案を練った上で、親の一般総会で決断をするということになっております。

道垣内主査 これまでの例では、大体そのように動いているんですね。

事務局 はい。

道垣内主査 総会でくつがえることはあまりなくて。

事務局 はい。

道垣内主査 そうですか。では、このようなスケジュールで進む可能性が高いということで。

事務局 そこが今回の一般総会の見通しなんですが、今回5つ議題がありまして、放送条約、AV条約以外に、PCTというのは、特許の審査のハーモナイゼーションを求めた条約の外交会議の議題と、あと遺伝資源、伝統的知識、フォークロアのうちの遺伝資源について今回議論が行われることになっています。あと、2カ年予算の見直しが行われることになっていて、この5つが議論になる予定です。
 途上国の反対がかなり予想されますので、放送条約についても、これらをパッケージとして議論される可能性がありますので、見通しについてはまだ。

道垣内主査 わからない。そうですか。この冒頭においてというのは、そういうのを排除するために、冒頭においてこの議題を済まそうということかと思ったんですが、そうなるかどうかもわからないということですね。

事務局 そうですね。

道垣内主査 わかりました。
 それでは、今の点、もしあればまた後でご発言いただくとして、具体的な内容についてご説明いただけますでしょうか。

(事務局より「放送条約に関する論点」について資料3−1、3−3に基づき説明)

道垣内主査 どうもありがとうございました。
 このテーマが本日の主要な一番の議題でございます。12時ぐらいまで時間をとってよいということでございますので、著作権の法体系全体の中での位置づけがしっくり行くのかどうかという話とともに、放送をめぐるビジネス、いろいろな関係の方がいらっしゃいますけれども、どういうリクエストがあって、どういう問題があるのかということをご審議いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 いかがでございましょうか。

上原委員 上原でございます。
 それでは、論点ペーパーをおつくりいただきましたので、論点につきまして、今までSCCRに出てきました者といたしまして、こちらの流れと、それから放送事業者といたしましての論点から、幾つかのお話をさせていただきたいと思います。
 まず、放送機関の定義でございますが、これは先生方ご承知のようにローマ条約の制定時から、各国さまざまな事情により、むしろいわゆる地雷を踏むことを避けるということで、放送機関の定義をずっと避けてきたところでございますが、今回の条約については、いわゆる放送に関する条約というところから避けることができないであろうということで、幾つかの国から提案がなされ、それを受けて、今度の条約テキストの中では、このような案が示されているということでございます。
 これにつきましては、一応放送事業者の団体の方からも、ほぼこれに近いような案が出ておりまして、実際には、今回の条約においては、基本としてスタンディングコミッティの認識としては、海賊行為に対抗するため、デジタル時代において、放送されたシグナルを保護するという基本的な考え方に基づいております。
 その結果、ローマのベースを踏まえて、いわゆる送信行為そのものと同時に、送信だけではなく、いわゆる放送するものについてしかるべき責任を持っているということを、もう1つの点として定義の中に入れていくということでございます。これにつきましては、いわゆる委託・受託の問題やら、ヨーロッパ系におきましては、当初から、いわゆる放送局がすべてを放送するのではなくて、日本で言うところの受託放送機関のようなものが最初からあったというようなことがベースにあるという状況がございますので、その辺もご理解いただければ、多少理解しやすくなるのではないだろうかと、こういうふうに考えております。
 なお、この放送機関の定義につきましては、ECは、いまだに定義をすること自体について賛成をしておりませんで、放送機関の定義はできるだけ避けたいという意向を持っておるところでございます。
 それから、すみません、全体として、私が申し上げることではないのかもしれませんが、放送条約テキストでございますが、各国の放送条約をまとめた、今まで出ている条文案の中で、ほぼ一致したところについては1つにし、どうしても分かれるところについてはオルタナティブという書き方をしておりますので、流れを追っていきますと矛盾していくものがいっぱい出てまいります。
 ウェブキャスティング機関の定義がオルタナティブとして入っておりますが、スコープの中でこれが外された場合には当然定義からも外れると、こういうことになりますので、その辺のところはそういうふうに条約テキストをお読みいただかないと、何かわけのわからないものになってしまうということになろうかと思います。
 それから、2番目の保護の適用範囲ということでございますが、これにつきましては既に昨年度の国際条約の検討の中でも申し上げたところでありますが、EUの提案というものにつきましては、基本的に放送事業者が、先ほど申し上げましたシグナルを保護する以上、放送事業者が出しているシグナルが放送として出てきたときには保護されるけれども、同時に、ほかの媒体で出ていったときには保護されないのでは、逆に言うと意味がないのではないかという考え方がベースにあるということでございます。
 そうしたところから、あくまで放送を同時にストリーミングでやっていくケースのみ、放送の信号の保護という観点から、このコンピューターネットワーク上に出したものについても保護したらどうかというのが、だから保護の対象に含めるというのが、ヨーロッパの意図でございます。
 なお、同様の主張につきましては、シンガポールが既に国内で同様の規定を置いているところから、SCCR9・10と非常に強い主張をしておりましたが、最終的にシンガポール提案が出された段階では、シンガポールはこの主張を特段入れておりません。国際的ハーモナイゼーションという意味では、この問題を今入れるべきではないだろうという判断で、シンガポールは逆にこの提案を、論議の中では主張しておりましたが、条約提案の中では外しているという状況がございます。
 私といたしましては、基本的にはウェブキャスティング上のすべての問題は、ウェブキャスティングの定義その他を含めて吟味する必要があるところから、米国のウェブキャスティングの提案と同様に、ヨーロッパの提案につきましても、別立ての検討ということの方が望ましいのではないかというふうに思っておりますが、ヨーロッパの意図といたしましては、シグナルを保護する以上、両方保護しないと、いわゆる片方の保護が穴から漏れてしまうという考え方であるというふうな状況でございます。
 それから、3番の単純再送信の扱いでございますが、単純再送信の扱いにつきましては大変ややこしいところがございまして、先ほど4ページ目の図のところで岩松さんの方からご説明がございましたところでありますが、この2の方の条約テキストの考え方が全部実線になっておりまして、重畳するということでございますが、基本的には、条約テキストをつくりましたリエデス議長の説明でも、並びに本人への直接のメールのやり取りで、現放送事業者の権利はどこまでも行くということが基本であるということは明確でありますが、次の受信者1、受信者2が次々どこまで行くのかということにつきましては、実際のところ、どこまでの重畳をするかということにつきましては、SCCRの中でも議論が分かれているところというふうに認識しております。つまり、重畳することについては、やはり問題があるのではないかという議論をしている国が幾つかあるという状況でございます。
 そういう状況を受けまして、逆に単純再送信の保護については取り除くということをすることによって、重畳部分をある程度減らすという考え方が、リエデス議長の頭の中にはあるということで、そのような解説を受けております。
 この問題につきましては、恐らく重畳をどう考えるのかということについて、さらにスタンディングコミッティの中では議論が進められるものであろうというふうに思っております。
 なお、放送事業者の立場から申し上げますと、特にこの4ページの1の我が国の著作権制度の方を見ていただくと極めてわかりやすいところでございますが、放送を受けて再放送をするということにつきましては、基本的には実態としてほとんどございません。我が国に限らず、世界じゅうでほとんど実態がございません。再放送というのは、放送を受信してもう一度放送することでございますので、いわゆるネットワークの放送とは違います。私どもの大阪の放送局が阪神−巨人戦を甲子園から出して、それを東京のテレビ朝日さんがネットで同時に放送するという場合には、これは私どもの放送をテレビ朝日さんが受信しているのではなくて、私どもは別途、別のラインでテレビ朝日さんまでお送りして、それをテレビ朝日さんがとって、つまりポイント・トゥ・ポイントで送ったものをおとりになってもう一度送信されているわけでございますので、再放送の規定には当たっておりません。
 ですから、通常他社の放送を空中波としてとらえ、それをもう一度自分のところの放送に乗せるということはしておりません。私が聞く限りにおきましては、数十年前に、NTTのネット回線が十分でないときに、岡山の放送局が私ども朝日放送の放送をどうしても同時にやりたいということで、岡山と兵庫県の県境で、アンテナでとって放送したという事例が1件あるそうでございますが、その程度でございます。それが逸話になって残っている程度でございまして、実際にもしあるとすれば、世界的にほとんどそれは海賊放送ということになろうかと思います。品質劣化という問題も含めまして、基本的には放送局が正式にライセンスして、相手、他の放送局にネットをしていくというような場合におきましては、放送を受信して再放送するという実態は原則的にございません。
 したがいまして、この権利というのは極めて理論的な権利ということと、もう1つは、日本では比較的少のうございますが、大陸国、例えば南米や、あるいはヨーロッパというようなところの場合には、これが、やろうと思えば可能であると。国による放送行政の仕切りが強くないところでは不可能ではないというところから、この規定はないというのも困るわけでございますが、現実の正規の放送においてはほとんどないことでありまして、実態としては、海賊放送としても、余り実例の多いところではございません。
 それに対しまして、放送を受けて有線放送をする。これは我が国においては非常に多く、一般的にいわゆるCATVで行われている再送信行為というところでございまして、これは世界じゅうで非常に多く行われているところでございます。
 したがいまして、こちらの方につきましては、実態といたしまして、いわゆる放送事業者が他の放送事業者のプログラムを放送するときに、丸々1日分の放送を全部放送するということはございませんで、例えば鹿児島の放送局であれば、ある時間帯は東京の放送局から、ある時間帯は大阪の放送局から、ある時間帯は自分のところのローカルの放送、ある時間帯はどこかの放送局のものというふうに編成していくわけでございまして、一日じゅうどこかの放送局のものをとって流すという地上波の放送局は、現在、基本的にはございません。
 それに対しまして、有線放送、いわゆるケーブルにおきましては、単純再送信、100%の単純再送信という形で、放送をそのままケーブルで見やすくお出ししますというところにむしろサービスの力点が置かれているところから、実態といたしましては、ケーブルに対して個別の番組ライセンス、番組売りというようなものがないわけではございませんが、こちらは非常に実例も少なく、また、それが放送を受信して行われていることは、これもございません。放送するときにライセンスしている場合には、やはり放送を受信するのではなくて、物の形でじきじきでお渡しするなり何なり、他の形で伝送するということが通常でございます。
 放送を受信して行われている有線放送につきましては、我が国の実態、あるいは他国の実態の多くにおきましても、丸々そのまま放送を流して、ケーブルの方が、アンテナから見るよりは受信状態がいいとか、そこに地上波が入っていることによって便利であるとかというビジネスとして成立しているところでございます。
 そこで、我が国の法律におきましても、そういう実態を考慮したところから、第9条の2で、いわゆる有線放送事業者が行うところの単純再送信につきましては、単に伝送機関として右から左へ渡して、そこのところでいわゆるビジネスをしているところのものということから、9条の2の規定が生まれているものというふうに考えております。
 そういう意味では、明確な定義としては出てきておりませんが、ものの考え方といたしましては、放送する内容、あるいはスケジューリングに何ら責任を持っていない単純再送信については、保護の対象としないということが9条の2で出てきておりますので、我が国の著作権法制の中にも既に一部、その内容に責任を持つ部分に対しての要件等を考える要素を取り入れている部分が、既に9条の2で入っているのではないかと、入っている部分があるのではないかというふうに考えております。
 というところが単純再送信の問題でございまして、4番目の同時・異時の再送信権の付与ということにつきましては、先ほどご説明がありましたとおりでございまして、この一番大きなところは、放送事業者といたしましては、ローマ条約では再放送は認めておりますが、有線放送権は認められておらないところから、これをぜひとも認めていただきたいというところでございます。
 それに対しまして、SCCRの中の議論では、今は有線だけではなくて、コンピューターネットワーク上のいわゆるインターネット送信も同様に当たり前に行われているところから、そういう3媒体を同等に扱った方が合理的であろうという議論が出てきているところから、今のような流れになっております。
 それと、もう1点大事なのは、現実にはローマ条約時代に比較的少なかったVTRによる異時送信というものが現在では簡単にできるようになったところから、異時送信を当然のこととして、同時再送信と同様の権利を与えなければならないだろうということになっておりますので、これについてはぜひともご理解を賜りたいところと思っております。
 ただ、コンピューターネットワークを通じた再送信については、もしこれが認められると、放送事業者だけが隣接権者の中で公衆送信権を持つということになって、バランスを欠くことになるのではないかというのは、他のNGOから、SCCRの中ではかなり言われているところでございます。これにつきましては、この前半にも書かれておりますように、我が国の今の法律で行われておりますように、固定されていない放送の送信可能化権を授与することによって、実質的にコンピューターネットワーク上の送信を止めることができますので、そちらでの手当てをするというのは1つの合理的な解決策ではないかというふうに考えており、私どももそうした主張をスタンディングコミッティの中でしているところでございますが、なかなか欧米各国の理解がついてこないという状況にあるのが現状であるというふうに考えております。
 しかしながら、私共はこちらの方が極めて合理的なものと考えておりますし、いわゆる公衆送信権よりは送信可能化権の方が、著作物のように、公衆送信権の中に送信可能化権も含むという形で権利が与えられれば別ですが、そうでなかった場合には、いわゆるストリーミングの場合、送信可能化権の方が、ホームページに乗っかっているのを見た瞬間に止めることができるという意味では、非常に武器として使いやすいという、海賊対策としては使いやすい武器であるというのがございますので、放送事業者としてはそちらの手段が望ましいというふうに考えているところでございます。
 最後に、暗号解除に係る措置というところでございますが、これにつきましては、昨年度の著作権分科会報告の国際小委のところで、暗号解除等に関しては、何らかの措置を講ぜられる必要があるというご結論をいただいているところでございまして、いろいろなバランス論上の問題はあろうかと思いますが、昨年度の議論の中では、暗号解除についてはアクセスの問題が出て、逆に他の分野の権利団体の方からは、放送を突破口として、逆に他のものもだんだんと考えていってほしいというようなお話があったというふうに記憶しております。したがいまして、当然この暗号解除に係る措置についての条文の構成の仕方等につきましては、どのような書きぶりがよいのかということは重要な問題であろうかというふうに考えておりますが、何らかの措置を設けるということについては、ぜひとも昨年の検討を受けて前向きに進めていただきたいというふうに考えております。
 ちなみに、現在10の政府から、WIPOには提案が出されておりますが、そのうち暗号解除に係る措置を認めているか、あるいは暗号の解除権そのものを認めている、どちらかの形で、これを何らかの形で保護するという提案は8つでございまして、全く認めていないのは、EUとシンガポール提案だけでございます。
 ちなみに、EUにつきましては、公式発言の中でも、提案には入っていないけれども、考えられないことではないという発言がございました。
 シンガポールにつきましては、個別の話し合いの中で、この提案については特別に反対するものではないという意見を聴取しているところでございますので、ぜひともこの件については前向きなご検討をお願いしたいと思っております。
 なお、書きぶりにつきましては、第16条の条約テキストにおきましては、テキストのとおりで、適切な法的措置ということでございまして、著作権法に限らない書き方をしているところから、対応が柔軟にとれるということで、私どもとしては非常に適切な書き方になっているのではないかというふうに考えております。
 6番の禁止権の取扱いにつきましては、米国が取り出しましたちょっと特別な形でございますが、禁止権ということになりますと、事前にそれはやってはいけないよということが言えなくて、言っていても効果が非常に少なくて、行われてからもう一度禁止に行くという形になるのが、恐らく現実になろうかと思います。許諾権であれば、最初からオーケーしないものは出せないよということに、どこにもオーケーしませんよというふうに認識を持って、事前に公にしておくということはできるのかもしれません。海賊版の取締り、あるいは海賊行為の取締りとしては、やはり許諾権の方が実質的に意味がある。あるいは著作権制度においても、ここに禁止権を持ってくるというのは極めて異例な措置であるところから、通常の許諾権で行くべきであろうかというふうに考えております。
 以上、長くなり恐縮でございます。

道垣内主査 どうもありがとうございました。
 上原委員は、今までこの問題に随分かかわられてから、SCCRの会合に行かれたことから、情報をたくさんご提供いただきましたが、日本の放送事業者としてどうあるのかということについてはちょっとわかりにくいところがございまして、ちょっとその前に、同じ放送事業者側の委員で、今の点について全く同じであればその結論だけを言っていただきたいということと、もし違う点があれば、そのような、要するに日本としてどうある、どうしてもらいたいのかということがはっきりわかると、議論しやすいと思うんですが、いかがでしょうか。

石井委員 今、日本の放送事業者としてということでございましたけれども、基本的に言いますと、この条約の基本的なところが認められて成立すればいいわけでございまして、具体的な規定ぶりというのは、条約で決めたものをまたそれぞれの国内法に持ち帰って、翻訳といいますか、それぞれの国内法制に合ったものにすればいいのではないかなというふうに思っております。
 今の上原委員のご発言とそう大きな違いはございませんけれども、1点申し上げますと、まず(4)のところですね。同時・異時の再送信権の付与の後段の「コンピューターネットワークを通じた再送信」の部分でございますけれども、これは私どもとしては、必ずしもここにありますように、利用可能化権の対象を固定物だけではなく非固定物に広げるということにはこだわりませんで、例えば同時のコンピューターネットワークを通じた再送信権というものが認められて、それを日本法でどう規定するかはともかくとして、そういうことによって、結果としてそういうものが規制されればそれでいいのではないかというふうに考えております。
 それから、暗号解除に係るところでございますけれども、そこはなかなか難しい問題も、特にアクセス権との関係ということになると難しい問題もあるかと思いますので、ここもある程度、各国の記載ぶりをにらみながら、そういうスクランブル放送をやっているところで、有料放送が実質的に保護されるということがあればいいというふうに考えております。
 それから、あと、放送機関の定義のところでございます。特にウェブキャスティング、放送機関の行うウェブキャスティングの、意義が述べられていますけれども、その部分でございますけれども、正直申しましてここは、私といたしましてはどのように考えたらいいのか、もう少し議論が必要だと思っているところであります。
 ただ、特にいわゆる放送機関のウェブキャスティングだけが保護されるかということについては難しい問題でありますけれども、一方で、放送と全く同じ内容を、同時にストリーム形式でウェブに出している場合について、もしインターネットの方からとられますと、インターネットからさらに別のサイトに持っていかれるとかそういうことをされますと、いろいろと、たとえ放送波の方が保護されていても、ちょっと穴があくという状態になるというところはご理解いただければというふうに思います。

道垣内主査 伝統的な放送事業をされている側のご意見というのは、今のでよろしい……もう少し。はい。

田嶋委員 民放事業者の立場から申しましても、項目としてはいずれも必要な事項であるということで、積極的な対応をお願いいたしたいと思います。
 暗号解除に係る措置につきましても、地上のデジタル放送が始まっており、国策としてこれを推進していくのだということになっております。
 いわゆるコピーワンスのシステムを維持していくために、暗号化も併用している訳ですが、大げさな言い方にもなりますが、1つの国家安全保障的な観点からも、基幹メディアのシステムを維持していくためにぜひ必要な手当てであろうと思います。前向きなご検討をお願いしたいと思います。
 
道垣内主査 橋本委員ですね、失礼いたしました。やや違うお立場の方から、今のお3方のご意見に対して、まとめてお願いいたします。

橋本委員 伝統的ではない放送事業に関係する者として、放送機関の定義なんですけれども、先ほど上原委員から追加の情報として、ECは定義を避けたいというお話がありましたけれども、理由は僕はよくわからないんですけれども、少なくとも今ヨーロッパの方でどういう新しい放送行為が行われているかというと、ここでずっとコンピューター云々という形の配信の、あるいは伝送のことが書かれていますけれども、今現在ブロードバンドという形で、光ファイバーのバックボーンが各国にどんどん敷設されていて、その中の帯域を占有して、ケーブルテレビ事業を行うということが起きておりますね。
 私どもも日本でやっていますし、私ども以外でも幾つかの事業者が、新しい放送の法律上の規定である電気通信役務利用放送法という法律に基づいて放送事業者の登録をしているという立場なんですね。だから、いろいろな議論の中でまさに定義がしにくい。放送、有線放送という伝統的なものに比べて、やはり議論がどうしてもあるであろうという、そういう状況にあります。
 だから、ここで放送機関の定義と言ったときに、ヨーロッパについて言うと、ロンドン市内で行っているもの、あるいはちょっと郊外ですけれども、2社ほど私どもと同じ通信バックボーン回線を使った仕掛けで行っているところがあります。これは、報告の論点ペーパーの中に……論点ペーパーではなくて別なやつですかね、BBCがインターネットで同時に流しているという例がありますけれども、実際はBBCの放送が、技術で言うとインターネット(IP)技術を使っているんですけれども、帯域を占有して、マルチキャストという形で流れているという、そういう新しい技術的な進化がございます。
 イタリアにファーストウェブという会社があって、ここが多分、規模的に言うと相当大きい規模なんですけれども、ここも同じくIPの技術を使ったケーブルテレビ事業ということで、イタリアの地上波が乗っかっているという実態があります。
 さらに、フランスのTF1という地上波放送局がありますけれども、TF1がリヨンという町で、ここのADSL・ブロードバンドのネットワークを使って、同じようにそういう事業を始めているという動きがある。
 アメリカはマルチキャストができるネットワークがないものですからまだなんですが、日本とヨーロッパにおいてはそれがインフラの進化で可能になっている。したがって、こういう伝統的でない新しい形態の放送を議論するときに、どうしても各国のインフラの状況によって大分議論が分かれてくるのだろうなと思います。
 放送機関の定義ということで、責任を持つ者、つまり送信であるとか、幾つかの主要な放送事業者の業務において責任を持つ者という部分の定義というか、解釈になるのかなと。それが各国の国内法、あるいはその国内法の解釈に委ねられるのかなということなのかもしれないんですけれども、可能な限り、技術進化に伴って、安全かつ非常に効率的にできる新しい形態の放送事業というのが排除されないものを、条約ベースで打ち出していただけると大変ありがたい。
 これは、単に日本で我々がやっているというだけではなくて、世界的な動きとして、巨大な光ファイバーのバックボーンというのは、過去数年の間に、アメリカの通信会社がおかしくなってから引き直されたに近い状態で、今後極めて充実していくと思っています。今から数年、あるいは10年ぐらい先には、非常に大きな部分がカバーされる伝送経路になると思いますので、ここでそれをある程度視野に入れた定義の議論をしていただければというふうに思います。
 それと適用範囲という意味では逆説的なんですけれども、今私がお話しした話というのは、マルチキャストという、本当にケーブルテレビの形態と同じというか近い仕掛けなんですけれども、ウェブキャストというのはやはりちょっとこれは異質だろうと思います。
 ウェブキャストというのは、もう本当に単純に1対1の、ください、あげます、というそういうやり取りなものですから、放送でいろいろと定義に入るそういうものと多少違うと。ただ、根源にあるのは、内容物の不正な使用を避けるであるとかがあってはいけない、見せるつもりではないものを見せてしまうということをきちっと排除しようということが議論の中心だろうと思いますので、またそういう方向でお願いできればと思います。
 あと、暗号解除等の部分なんですけれども、先ほど石井委員の方からアクセス権の問題等もご指摘がありましたけれども、原則としてこれもやはり安易に、暗号がかかっているものをその暗号を解く権利を持っていない人が解いて勝手に見るというのはあり得ない話で、それは当たり前のことで、だめですよということです。きちっとその措置が行われるということが一番だろうと思います。
 あと、よくDRMという言葉と、CASというコンディショナルアクセスという言葉をお聞きになると思うんですけれども、多くの方が混同して議論されているのをちょっと聞いたことがあるんですが、それでご説明したことがあるんですけれども、DRMというのは単なるソフトウェアなんですね。
 要は、そのソフトウェアというのはソフトウェアだけでは実に大したことはなくて、何がコンディショナルアクセスの差別化になっているかというと、暗号の鍵あけ・鍵閉めというのをちゃんとやっていい、あるいは暗号を解読していいというその認証、オーソライゼーションとかオーセンティケーションと言われる機能とDRMがセットになって、CASを提供する事業者がそれに対してある程度責任を負っているというのがコンディショナルアクセス・システムなんです。DRMというのは、例えば事業者が使おうとすると、DRMとSDKというシステム・デベロップメント・キットというのをくれるんですね。つまり、認証とか、オーソライゼーションとかオーセンティケーションを自分でつくりなさいという、そういうものなんですね。
 ですから、DRMというのは万能ではなくて、認証プロセスというのをハッキングされるとなりすまされてしまうという危険性を常に秘めていて、ソフトウェア会社は、それは私の責任ではありません、私はDRMを売ったのなんです。システム・デベロップメント・キットであなたがシステムをつくられたんですという、そういう世界です。
 安易に、DRMがあるから、責任を担保できない人がそれを使って何かをやるということを認めてしまうと、何か起きたときの、そのコンテンツを保有している方の権利というものが、要するに実態として守られにくい。賠償責任等を負えない人がやった行為をどこまで追及できるかという問題になってしまうのかなということを、1点感じました。
 以上です。

道垣内主査 具体的に、前半部分について、条文の関係で言いますと、放送とか、あるいは要するに有線放送の方なんですかね。それの最後の文章が、要するにコンピュータネットワークとの趣旨を含まないと。これが問題であるというご趣旨でしょうか。

橋本委員 そうではございません。放送、有線放送と言っているときに、放送は例えば地上波という電波で流す既存の放送を意味されておりますし、有線放送というのは、既存のケーブル局の放送を取り入れたものですね。既存のケーブル局というのは、同軸ケーブルに64QAMという仕掛けで、ちょっと多少技術的なことで恐縮ですが、流している。
 それに対して、ブロードバンド上、IPの技術を使って流しているテレビ事業というものが、我が国の放送法では認められていて、著作権法上はまだ、今いろいろなところで議論をしていただいているという、そういう状況なんですね。
 したがって、今すぐに明文で何かを追加するとかは難しいにしても、その有線放送の1形態というのがあり得るということを前提に、条約としても議論をしていただきたいというのが私の希望です。

道垣内主査 それを具体的に実現するには、この2条の(c)の最後の「コンピューターネットワークを通じた送信は含まない」という条文が邪魔になるということなんですか。そうではないんですか。

橋本委員 邪魔になっているのかどうかも、ちょっと僕にはわからないんです。なぜかというと、このコンピューターネットワーク云々というのは、要するにそもそもどういう理解をしなければいけないのかということが多分にあると思いますので、ちょっと勉強させていただいて、もし私の言っている趣旨で何かつけ加えられるのであれば、案としては、別途考えさせていただければと思います。

道垣内主査 それでは、一応2つのお立場からでございますが、それ以外の方々で、ビジネスの点でも、コンテンツ・ビジネス等でもよろしゅうございますし、著作権法の観点からでも結構ですし、それ以外の立場でもよろしいんですが、かつ、今の点に限らなくても結構ですけれども、何かございますでしょうか。
 これは、スケジュール的には割と早くどんどん決まっていってしまいますので、ここでの議論をぜひしておいていただくと、空気がわかると思うんです。

茶園委員 ちょっとお伺いしたいのですけれども、放送機関の定義について、ご説明では今までは放送行為に着目したものであったが、今回の放送条約においては、主導や責任というものが入ってくることになり、それが問題であるということだったと思います。確かに条文を見ればそうなのですが、例えば、レコード製作に関しては、物理的にレコード製作をした人を保護するというのではなく、レコード製作を主導する人、責任を有する人の保護が考えられていたと思いますし、実際WPPTにおけるレコード製作者の定義では、主導や責任が含まれています。
 放送に関しても、レコード製作と同様に、物理的に放送をした人を保護するというのではなく、放送について主導的な立場の人、責任を有する人を保護するということが当然の前提になっていたと思います。
 そうだとしますと、放送機関の定義に、主導や責任を入れても特に問題がないのではないかと思うのですけれども、実際問題として、このような定義にした場合に、これまで放送機関と考えられていた者から、放送機関でないとされて保護されないことになる者がいるのでしょうか。先ほどのお話では、24時間すべて他局から信号を受け取ってそれを有線放送するとかいった者は放送機関ではないとされますが、どのような者が放送機関の保護から排除されるのか、具体的に教えていただきたいのですが。

事務局 今のローマ条約がもとになるんですが、ローマ条約でその点は明確に述べていません。したがって、放送が定義されていまして、放送事業者としてどこまでその対象に加えるのかというのは各国の裁量に委ねられてます。日本はその2条8号でもって「放送を業として行う者」を保護の対象にしていて、政策的な判断で、先ほどの有線放送事業については一部制限を加えているわけですね。なので、ローマ条約のもとではそこは、放送を行う者をどこまでその範囲とするのかということで、厳格な規定というのは置いていません。
 ただ、今回は放送事業者を定義することによって要件を少し狭めているものですから、そこに該当しないものについては今後は排除する可能性がある。具体的に何かといったら、あり得ないんですが、放送を受け取って、そこで自分で単純に放送するような人は外れるのではないかというふうに考えています。ただ、それは実態で言うと、今の日本では行われているものではないと考えられます。

道垣内主査 よろしいでしょうか。手短に。

上原委員 すみません、私がご説明がごちゃごちゃしていたからいけないのかもしれませんが、実態上はこれによって狭められる部分はないと思います。理論的にはあるということかと思いますが、実態上はないというふうにお考えいただいていいと思います。

道垣内主査 よろしゅうございますか。
 どうぞ。

山地委員 2点申し上げます。まず1つはウェブキャスティングについてですが、日本は、資料3−1にありますように、従来から本件については別途検討する必要があるという主張を続けてきたわけでありまして、したがって日本の主張の内容は何かということをやはり早急にまとめておく必要があると思っています。ですから、本当は今日そういうものが、ドラフトでもあると大変よかったと思っていますが、これから議論されるんだろうと思って、それに関連することを申し上げたいと思います。
 E案、F案、それからアメリカ案とかヨーロッパ案は、やはりニーズベースのアプローチだと思うんですね。もっと言うと、EU案は現状追認型であるということで、その路線にそのまま日本が乗るということは、ちょっと問題が多いのではないかと思います。
 というのは、日本の著作権法はそれなりに放送と通信の明確な区別ができておりまして、例えば放送というのは、無線の放送であれば、取りにいかなくても常時、常にだれの手もとにも届いているのだと。それに対して、通信、特にインターネットですと、アクセスしに行かないと、そういうアクセスしに行くという行為を伴わないといけないんだというようなところで明確に区別されているわけですね。だから、そこは旧郵政省、日本の放送法で言う放送と通信の融合ということが存続形態が問題になっているわけですけれども、著作権の世界について言うと、もうそれはクリアなんだというのが文化庁のポジションだったと思うんですね。
 そこの議論をどうするのかということを避けては、私はいけないと思います。現状のままEU路線に行くと、そこが非常にあいまいになってしまうと思っていて、それが懸念されます。
 その懸念のバックグラウンドというのは、例えば通信であっても、非常に放送に近いものであれば、通信だけれども放送として認めようではないかというような議論も、理屈としてはあり得ると思うんですが、その延長線で行くと、例えば放送には特別の便宜とか、権利のようなものが与えられているわけですが、例えば放送前に固定するとか、音楽などの許諾権がある権利であったとしても、許諾を得ないで放送して、後、お金を支払うということで処理できるというような、そういう便宜というか特権みたいなものがあるわけですけれども、その基本はやはり公益性とか公共性とか、そういうところにあるんだろうと私は理解しています。
 ところが、通信の世界、インターネットの世界なんかで考えると、ブロードバンドとは言いながら、有線の放送の世界とはキャパシティがもう桁違いに違うわけですね。そこの議論が何にもなしで進むとすると、非常に危険ではないかと思います。
 例えば、資料3−3の(g)を見ても、「ウェブキャスティングとは」とあるんですけれども、「公衆に対してアクセス可能にすることをいう」と書いてあるだけであって、キャパシティが何だということは全然書いていないわけですね。そうすると、例えば個人的に、あるいはグループのようなことでウェブキャスティングを始めたとすると、例えば数百人とか数千人でパンクしてしまうようなことが十分に考えられるわけですね。
 そういうような世界であったとしても、だからそれは不特定多数ということかもしれませんけれども、その程度のことであっても例えば公共性は認めるのかと。従来の放送、NHKさんとか朝日放送さんが何千万人、何億人、日本全国を相手にしてやっていた場合と同じような、権利、特権、便宜を与えるんでしょうかと、そういうところの議論が欠落してしまうことを私は懸念しております。したがって、そこの議論を日本としては積極的にやるべきだというふうに思います。
 それから、もう1点は、暗号解除にかかわる点ですが、これもかなり昔からいろいろ日本でも議論されていると私は理解していまして、放送事業者さんとしてのニーズは理解しているつもりですが、法制小委員会で数年にわたって検討をしてきておりまして、その結果は、アクセス権と著作権の整合性は非常に問題が多いので、そう簡単に結論を出すべきではないという議論になっていると私は理解しております。
 ということは、放送において、たしかにニーズがわかるからということで、アクセス権の議論をして、いきなり放送でアクセス権を認めてしまったとするとどうなるかというと、それは直ちに、例えばDVDの暗号解除のような問題についても、放送で認めているんだから著作権で認めてくれという議論に行ってしまって、アクセス権の本来の議論というのが飛ばされてしまうのではないかと思います。
 したがって、本件をもし前向きに議論するのであれば、法制小委員会のアクセス権の議論をアクセラレートさせて、その検討をベースにした上で、では放送はどうするんだということの議論に行くべきだというふうに私は思っています。
 以上です。

道垣内主査 ありがとうございました。
 まだございますでしょうか。ちょっと時間的にはそろそろというところなんですけれども、よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、この件は本日はこのあたりにいたしまして、次にアジア諸国の著作権に関する連携の在り方について、資料に基づいて事務局の方からご説明いただきます。

(事務局より「アジア諸国との著作権に関する連携の在り方」について資料3−4に基づき説明)

道垣内主査 この点、まだまだ時間のかかることでござますけれども、ここに今ご説明いただきましたように、日本のコンテンツ産業にかかわる方にとっては大きな関心ではないか。この際、何か文化庁に望むところ等ございましたら、どうぞ。

久保田委員 とても一般的なお願いなんですけれども、この2ページ目の、いつもコンテンツ、映画、音楽、出版などにゲームソフトが入ってしまって、必ず「など」ではなくて、ゲームソフトを、特にアジアに向けてプログラムを考える上で、必ずそこを入れてほしいんですね。いつもその辺で、この後CODAの方の総会もあるんですけれども、ゲーム産業の方からいつも、そういう意味では「など」に入るのかと。実態としては、数字を見れば一番ひどい状況だし、特に産業面でといいますか、ハードウェアとの、プラットフォームとの関係もあって、非常に重要なコンテンツであろうと思うわけです。ぜひ「ゲームソフト」というように明記していただきたいと思います。よろしくお願いします。

道垣内主査 ほかにございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
 この点、鋭意ご努力いただくほかはないわけでございますけれども、よろしくお願いいたします。
 それでは、今日の審議は以上でございまして、これで第1回の会合は終わらせていただきます。
 最後に、事務局から連絡事項等、よろしくお願いします。

事務局 本日はありがとうございました。
 次回の日程につきましては、また改めて調整をさせていただきたいと思っております。
 昼食を用意しておりますので、お時間のある方はそのままお待ちください。
 どうもありがとうございました。
午前12時10分閉会

(文化庁長官官房国際課)

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