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資料3−1
第1回国際小委員会における論点ペーパー


1. 放送条約に関する論点

 本年4月、SCCR議長により条約テキストが提示され、本年6月、第11回SCCR会合にて検討が行われた。条約テキストにおける主な論点は以下のとおり。

(1) 放送機関の定義(第2条)

 ローマ条約等では、放送機関等の定義はなされていないが、本テキストでは、放送機関、有線放送機関、ウェブキャスティング機関の定義がなされている。
 著作権法では、「放送事業者」は「放送を業として行う者」として規定されているが、本テキストでは、「音若しくは影像若しくは影像及び音又はこれらを表すものの公衆への送信、及び送信のコンテンツの収集及びスケジューリングについて、主導し、かつ責任を有する法人」として「送信する内容に責任を持つ」ことが求められている。
 従来の我が国の著作権法では、その行為に着目して著作隣接権を付与してきたこと、一方、近年、放送など同一の行為を行う者が多様化してきていることなどから、本テキストにおいて、放送機関等の定義を規定する必要があるか、また、規定する場合、著作隣接権の趣旨、放送の実態などから、本規定を修正する必要があるか。

(2) 保護の適用範囲(第3条)

 条約テキスト第3条では、本条約の保護の対象が規定されている。このうち、ウェブキャスティングに関する規定はE案(EU提案)とF案(米国提案)がある。
 F案は「ウェブキャスティング機関がウェブキャスティングを行う場合に本条約の適用を受ける」というもの。また、E案は「放送事業者がウェブキャスティングを(地上波)放送と同時に内容を変更せずに行う場合には本条約の適用を受ける」というもの。
 E案については、近年、欧州において、放送機関がウェブキャスティングを開始したことが理由である。本案によれば、同じウェブキャスティングを行う場合でも、放送機関であれば権利が付与されるのに対し、ウェブキャスティング機関には権利が付与されない。著作隣接権の趣旨から、E案についてどのように対処すべきか。
 なお、我が国は、F案に関して、ウェブキャスティングの取扱いは別途条約で手当てすべきと主張している。ウェブキャスティングの保護の要否、定義、保護の在り方について別途検討する必要がある。

(3) 単純再送信の取扱い(第3条)

 条約テキスト第3条において、「単純再送信」が保護の対象から外されている。本規定は、(2)と同様、放送行為よりも放送内容への責任に重点を置いて、保護の主体をとらえている。なお、条約テキストでは、「単純再送信」の範囲が不明確である。著作隣接権の趣旨、放送の実態などから、「単純再送信」の保護の在り方について、いかに対処すべきか。

(4) 同時・異時の再送信権の付与(第2条、第11条、第12条)

 条約テキスト第2条では、「再送信」が定義されており、第6条、第11条では、それぞれ、同時・異時の「再送信権」が規定されている。ローマ条約では、「再放送権」に限定されているのに対し、条約テキストでは、同時・異時の「再送信権」の付与が検討されており、「再送信」としては、有線、無線のみならず、コンピュータネットワークなどあらゆる手段による送信行為が含まれる。
 「コンピュータネットワークを通じた再送信」はWPPTでは認められていない「自動公衆送信権」と保護の範囲が一部重なる。他の著作隣接権とのバランスを考慮すれば、「再送信権」の対象を限定する必要はないか、むしろ、「利用可能化権」(第12条)の対象を「固定物」だけではなく「非固定物」にも広げることにより、同様の法的効果が得られないか。

(5) 暗号解除に係る措置(第16条)

 条約テキスト第16条では、暗号化された番組信号の暗号解除に対する法的措置が規定されている。近年の放送のデジタル化などから、暗号解除に対する法的措置が求められるが、暗号解除への法的保護は、著作物へのアクセスを制御することとなることから、慎重な対応が求められる。また、暗号化が放送以外の他の手段でも用いられており、他の著作権・著作隣接権とのバランスを考慮する必要がある。
 暗号解除を技術的手段として保護することは、著作権制度の趣旨から受け入れられるか、また、条約テキスト第16条の規定を修正する必要があるか。

(6) 禁止権の取扱い

 条約テキストでは、米国の提案を受けて禁止権が規定されている。具体的には、無許諾固定物を複製、譲渡、利用可能化する場合には、権利者は許諾権ではなく、禁止権を有するというものである。本規定は、海賊版対策を重視したものであるが、著作権関連条約の趣旨から、いかに対処すべきか。

2. アジア諸国との著作権に関する連携の在り方

(1) 総論

 著作権を通じたアジア諸国との連携については、我が国著作物の海賊版対策にも資することから、我が国政府は、政府間協議や予算措置を通じて積極的に取り組んできた。この結果、アジア諸国の著作権関連条約の批准や著作権制度の整備が進展した。また、近年、アジア諸国と間で、経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)の協議が行われており、その中で、著作権に関する事項も検討されている。
 今後、著作権に関わる対話の場を通じて、アジア諸国と如何なる関係を築いていくべきかが課題となる。具体的には、
1   アジア諸国との協議を通じて、著作権法の確立、法の執行、権利処理・課金システムの確立など、如何なる課題に重点的に取り組むべきか。
2   我が国との経済面、文化面での関わりから、特に重点的に取り組む対象国はあるか。
3   今後、FTA等に基づき、二国間協議が定期的に開催される。アジア諸国の著作権制度の整備・執行を促進するために、協議の場をいかに活用すべきか。

(2) APACEプログラムの在り方

 文化庁では、1992年以降、アジア諸国での著作権制度の確立を目的として、人材育成等に重点を置いたAPACEプログラムを実施してきた。
 今後、同プログラムをどのように活用していくべきか。アジア諸国における著作権関連産業の発展、権利処理・課金システムの確立など、新たな課題に注力すべきか。

(3) EPA、FTAの活用の在り方

 従来、政府間協議を通じて、相手国政府に対して、著作権関連条約の締結、著作権制度の確立、確実な執行を求めてきた。今後、EPA、FTAに基づき、定期的な二国間協議が開催される。同協議で合意された事項は法的拘束力を有することから、EPA等でどのような事項を協議し、フォローアップすべきか。

(4) 欧米との連携の在り方

 アジア諸国における著作権の取締りについて、欧米諸国との連携が官民レベルで進められている。具体的には、政府レベルでは、日米協議、日EU協議が進められており、民間レベルでも、日米、日EUの産業界の対話が行われている。
 官民の連携の場を活用して、どのような課題を検討すべきか。具体的には、アジア諸国における著作権取締りや訴訟の実態に関する情報交換を行うべきか、さらに、海賊版対策にも共同で取り組むべきか。

以上



放送の保護の考え方について


1. 我が国の著作権制度
 我が国著作権制度は、放送行為の保護を趣旨として権利を付与している。ただし、有線放送については、放送を受信して行う「単純再送信」は保護しない(著作権法第9条の2)。

【放送事業者、受信者の再放送権、有線放送権】
  図

2. 条約テキストの考え方
 条約テキスト第2条では、「送信及び送信するコンテンツの収集及びスケジューリングを主導し、かつ責任を有する法人」とする。また、条約テキスト第3条(4)では、「単純再送信」は保護しないものとする。

【放送事業者、受信者の再放送権、有線放送権】
  図

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