第3節 諸外国の文化行政

4.韓国の文化行政

(1)概説

 韓国においては朝鮮戦争後,軍事政権下による文化等の統制が長く続きましたが,廬泰愚大統領政権(1988年〜1992年(平成元年〜4年))以降,民主化が進展しました。そうした状況の下,1990年(平成2年)に体育関係を含め文化・芸術政策を担当する文化体育部と,観光政策を担当する交通部が統合して,「文化観光部」が設立されました。
 この文化観光部は1文化政策が国家発展のための中軸機能として部(日本における省に相当)に位置付けられている点,2文化政策と観光政策が一体となっている点,3文化産業政策も包含されている点(1994年(平成6年)に文化産業局を新設)などが特徴となっています。
 文化観光部の外郭団体として,文化財を担当する「文化財庁」があるほか,文化観光部が所管する特殊法人形式の文化関連機関として「韓国文化芸術振興院」,「韓国放送映像産業振興院」,「韓国文化コンテンツ振興院」,「韓国映画振興委員会」などがあります。また文化観光部は,「国立中央博物館」や「国立国語研究所」,「国立中央図書館」などの文化施設等も所管しています。
 なお,1994年(平成6年)に「地方文化振興法」が成立しており,地域固有の文化を育成し奨励するための文化施設を設置するなど,地方自治体独自の文化政策が積極的に行われるようになっています。

(2)文化芸術の振興

 韓国の文化芸術振興のための主な法律として,1972年(昭和47年)に制定された文化芸術振興基本法が挙げられます。同法は文化芸術振興及び文化遺産の保存分野の基本法として,韓国の伝統文化芸術の継承,新しい文化芸術の創造,民族文化の創造・伝達に寄与することを目的としています。また,1999年(平成11年)に制定された文化産業振興基本法は文化コンテンツ産業の育成分野の基本法として文化産業の支援及び育成に必要な事項を定めています。同法は,デジタル技術の高度化など急速な文化産業の環境変化に積極的に対処し,デジタル文化コンテンツ産業支援のため,2002年度(平成14年度)に全文改正されました。
 文化芸術の振興のための主な施策として,新進芸術家の養成・研修や,文化芸術公演・展覧会等の活動の振興やインターネット等を活用した文化芸術の振興等を行っています。
 また,映画振興に関する支援に関しては,海外進出,国際交流,映画観客層の拡大,優秀なコンテンツ創作に集中して支援を行っているほか,1995年(平成7年)に制定された「映画振興法」により,映画館において韓国映画を義務的に上映する日数を定めたスクリーン・クォータ制度を実施し,韓国映画の上映日数を確保しています。

▲韓国国立中央博物館
(写真提供:駐日韓国大使館韓国文化院)

(3)文化財の保護

 韓国の文化財関連の法律には,文化財の定義,文化財の管理と保護,埋蔵文化財の保護,地方自治体の文化財指定などを定めた文化財保護法(1972年(昭和47年))や伝統的寺院保存法(1987年(昭和62年))などがあります。
 文化財の保護・伝承・活用は1999年(平成11年)に文化観光部から独立した文化財庁が所管しています。文化財庁の主な目的は,文化遺産の保存・維持,文化遺産の保護活用を通じた観光資源の啓発,世界に対する韓国の伝統文化遺産の紹介などです。また文化財庁の関連組織として,「国立文化財研究所」,「韓国国立文化遺産大学」,「国立古宮博物館」,「国立海洋博物館」などがあります。

▲世界無形文化遺産 パンソリ
(写真提供:駐日韓国大使館韓国文化院)

(4)国際文化交流

 韓国の国際文化交流の特徴的な施策として,約1か月間海外の主要都市において韓国の文化芸術を紹介するイベントを継続する「コリア・マンス」事業が挙げられます。また,映画の国際交流については,海外の主要な映画見本市や国際映画祭に韓国映画を紹介するブースを設置するほか,釜山国際映画祭やプチョン国際映画祭などの韓国内での国際映画祭の支援も行っています。そのほか,アジアの文化人・芸術家を韓国に招へいし,韓国内の文化関連施設で研修を行うことで韓国文化の理解を促進するアジア文化同伴者プログラムなどを実施しています。
 日本と韓国の文化交流については,2002年(平成14年)ワールドカップ・サッカー大会の共同開催を記念して行われた「日韓国民交流年」や2005年(平成17年)の日韓国交正常化40周年を契機に行われた「日韓友情年2005」を通じて文化・経済・社会など,あらゆる分野において進めており,日韓両国の交流は政府レベルから民間レベルまで非常に活発に行われています。

前のページへ

次のページへ