第3節 諸外国の文化行政

5.中国の文化行政

(1)概説

 中国では,1949年(昭和24年)に現在の中華人民共和国が成立して以来,主に文化部と国家文物局が文化行政を担当しています。
 文化部の主な機能として,1文化芸術活動の基本方針と政策,法案の策定及びその実施の監査,2文化産業の発展戦略と計画の策定及び指導,3文化芸術産業の管理及び芸術作品の創出と生産の指導,4文化産業の市場管理や社会文化事業の運営,5全国の図書館の管理,6海外との文化交流などです。また,国家文物局が,文化財の保護・伝承・活用を所管しています。
 文化政策の主な方針として,1「文学・芸術は人民のために奉仕し,社会主義のために奉仕する」方針(文化は一種の公共資源であり,全人民が平等に享受する権利を有し,国家の文化に関する政策は人民の利益を体現して制定されるとともに,文化芸術事業の発展は,社会公益を首位に置くべき),2「百家斉放,百家争鳴」の方針(法律に違反せず,思想上無害で,芸術上,人に芸術的喜びと娯楽を与えられる作品であれば,すべて存在が許される),3「古為今用,洋為中用,推陳出新」の方針(古いものを現代のために利用し,外国のものを中国のために利用し,古いものから新機軸を見いだす),4「保護を主とし,緊急救助を第一とする」方針(各民族の文化遺産の保護を重視する)の四つが挙げられます。

(2)文化芸術の振興

 中国の文化芸術の振興に関する施策として,新進芸術家の養成が挙げられます。首都北京には八つの芸術系大学が立地し,北京大学にも芸術学部が設置されており,芸術理論が教えられています。また,舞台芸術の成果を集中的に披露する「中国芸術祭」の開催や,優れた作品の製作及び公演を奨励する「国家舞台優秀作品」などの施策も行われています。さらに,2003年(平成15年)に開催された「第16回全国人民代表者大会」では,「文化産業」を推奨することが示されました。

(3)文化財の保護

 文化財保護に関する法律・施策としては,1982年(昭和57年)の文物保護法を基本とし,1992年(平成4年)には文化遺産の保護を重視する「保護を主とし,緊急救助を第一とする」方針を定めています。また,1995年(平成7年)には,文物保護を国家の責任であるとともに,社会全体の義務であることを強調し,社会全体が文物保護に参与することを求める「有効的保護,合理的利用,管理強化」の原則を掲げました。
 文化財の保護を所管する国家文物局は,このような政府の基本方針や原則に基づき,基本政策の研究,中長期計画の策定,文物保護及び緊急救助の研究・指導,文物・建築物の維持修理などを行っています。また,国家文物局は「故宮博物館」,「中国歴史博物館」,「魯迅博物館」などの国内の博物館や「中国文物研究センター」などの研究機関を所管しています。

(4)国際文化交流

 国際文化交流は,文化部の対外文化連絡局が所管しています。対外文化連絡局は,国際文化交流事業を管理するほか,国際文化交流政策の策定や国際文化協定の作成などを行っています。また,全世界に立地する中国大使館のうち,108館に文化担当の外交官を配置しています。
 日本と中国との文化交流については,2002年(平成14年),日中国交正常化30周年を記念し,「日本年」「中国年」と称する一連の記念行事を展開し,様々な分野の文化交流を推進しました。また,日中国交正常化35周年に当たる2007年(平成19年)を「日中文化・スポーツ交流年」と位置付け,日中間の人物交流,文化・スポーツの交流を飛躍的に拡大し,国民レベルの相互理解を促進し,日中友好協力の発展することを目指しています。

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