「地方独立行政法人会計基準」及び「地方独立行政法人会計基準注解」に関するQ&A 第11章

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11章 地方独立行政法人固有の会計処理

Q 78―1 運営費交付金を未収計上する会計処理は認められるのか。
A
 運営費交付金について未収計上することは認められない。

Q 78―2 運営費交付金債務を「業務の進行に応じて収益化を行う」とは、具体的にどのように行うことになるのか。
A
 運営費交付金債務の収益化の基準については、あらかじめ法人の達成すべき成果を定め、これに対応する収益化額を設定しておき、成果を達成するごとに当該額を収益化していく手法が考えられる。また、業務の性質上このような設定が困難な場合や合理的でない場合には、地方独立行政法人の業務の進行に伴い費用が発生したときに、その同額を収益化する手法も考えられる。両者を組み合わせることも考えられる。いずれにせよ、法人の業務内容からみてその業務の進捗状況を最も適切に反映し、法人にできるだけ成果達成へのインセンティブを与える手法を法人ごとに定める必要がある。

Q 78―3
(1) 運営費交付金の収益化基準について、一つの法人において、複数の基準を採用することは可能か。
(2) 複数の基準を採用する場合は、運営費交付金を性質及び使途に基づき分類し、適切な基準を設定することとなるのか。例えば、
1  運営費交付金を予定使途別に分類し、それぞれに適当な収益化基準を設ける。
2  業務別に分類し、それぞれに適当な収益化基準を設ける。など
A
 業務の進行に応じて収益化を行う場合、進行の基準の設定は各地方独立行政法人に委ねられているところであり、設問(2)の1及び2のように行うことも可能である。ただし、会計監査が適切に行えるような客観的な基準を設定しなければならないことに留意する必要がある。

Q 78-4 公立大学法人について、運営費交付金債務等を「原則として業務の進行が期間の進行に対応するものとして収益化を行う」とは、具体的にどのように行うことになるのか。また、「他の方法により収益化することがより適当であると認められる場合」とはどのような場合か。
A
1  運営費交付金債務等の収益化の基準については、公立大学法人においては、中期計画及びこれを具体化する年度計画等において、業務の実施と運営費交付金及び授業料財源とが期間的に対応しているものとして、一定の期間の経過を業務の進行とみなし、運営費交付金及び授業料債務を収益化することを原則としている。
 これは、公立大学法人の業務である教育・研究については、それぞれが相互に複雑に関連し合いながら実施されているため区分けが困難、かつ、個々の業務の達成度の客観的な把握が困難であると考えられることから、当該業務の達成度に応じて、財源として予定されていた運営費交付金債務等の収益化を進行させることが適当でなく、また、単に業務のための支出額を限度として収益化しては、剰余金が生じる余地がなく、公立大学法人に業務の効率化のインセンティブが働かないためである。
 当該進行基準によると、天変地変等による業務の中断等、予定された業務が実施されていないと明らかに認められる場合を除き、期間の進行に伴って運営費交付金債務等を収益化することとなる。
2  但し、当該進行基準によることとしても、運営費交付金等に固有の会計処理である中期計画の想定の範囲内で償却資産を取得した場合に資産見返運営費交付金等への振替を行う必要があり、交付金の収益化の時期によっては、資産見返負債に振り替えるべき交付金債務が残らないことも考えられるため、各法人の実情に合わせ収益化の時期を工夫する必要がある。
3  また、公立大学法人におけるいわゆるプロジェクト研究等の中には、達成度の測定が可能である場合も想定される。そうした業務においては、あらかじめ法人の達成すべき成果を定め、これに対応する収益化額を設定しておいて、成果を達成するごとに当該額を収益化していく手法によることも適当と考えられる。こうした場合、会計監査が適切に行えるような客観的な基準をもって業務を特定し、適用する進行基準を定めるべきことに留意する必要がある。

Q 78―5 地方独立行政法人が固定資産を取得した際、その固定資産が運営費交付金により支出されたと合理的に特定できる場合、できない場合とはどのような場合を指すのか。
A
 地方独立行政法人が固定資産を取得した際、その固定資産の取得についてあらかじめ中期計画やその添付書類等において運営費交付金を財源とするということが記載されているような場合、「合理的に特定」されているものと考える。例えば、運営費交付金の進行基準について定めている記述のうち、固定資産を取得することが予定されているような場合や施設・設備に関する計画の中で財源を運営費交付金とする旨が記載されているような場合が想定される。

Q 78―6
(1) あらかじめ中期計画等において、固定資産の取得が運営費交付金を財源とすることが記載されていれば、「運営費交付金により支出されたと合理的に特定できる」場合と考えられるが、このような場合においては、当該取得の対象となった固定資産が「非償却資産で中期計画の想定外」であることは想定されないのではないか。
(2) Q78-4回答中の「その固定資産の取得についてあらかじめ中期計画やその添付書類等において運営費交付金を財源とするということが記載されている」について、固定資産の記載は、予算の事項レベルでの記載でよいのか。
A
1  確かに中期計画で運営費交付金を財源とするということが記載されている場合には、「中期計画の想定外」ということは有り得ないと考えられるが、「合理的に特定できる場合」とは、中期計画で記載されている場合だけに限られず、「その添付書類等」において特定できる場合や期末において事後的に初めて合理的に特定できるような場合、さらには全額を運営費交付金で賄うような地方独立行政法人において中期計画において資産を特定していないような場合も想定される。(なお、念のため、何故中期計画で区別するかについては、中期計画は設立団体の長の認可を要するという点で出資者たる地方公共団体の意思が反映されている度合が高いと考えられるためであって、非償却資産で中期計画で想定しているものについては財産的基礎である資本剰余金へ振り替えるという考え方に基づいているからである。)
2  固定資産の記載の程度は、必ずしも予算の事項レベルとはリンクしない。中期計画においては、個々の財産一つ一つを特定することまでは要せず、ある程度その資産が属する用途や案件ごとのカテゴリーなど概括的に記載することでよいと考えられる。言い換えると、取得した資産を見た場合、中期計画に記載されている括りの中に入るのか入らないのかを明確に認識できる程度まで、中期計画で特定されている必要はあると考える。

Q 78―7 会計基準第78第4項(1)イにいう「非償却資産であって上記アに該当しないとき」(すなわち、中期計画の想定の範囲外)とは、当該非償却資産に相当する額を資産見返運営費交付金に計上したままとしておくのか、それともいずれかの時点で収益化を行うのか。
A
 当該非償却資産を保有している間は、資産見返運営費交付金に計上したままとするが、注解50第6項により、当該資産を売却、交換又は除却した場合には、その時点で全額収益化する。

Q 78―8
(1) 会計基準第78第4項(2)にいう「運営費交付金により支出されたと合理的に特定できない場合」とは、運営費交付金以外の収入により固定資産を取得した場合を想定しているのか。
(2) ここでいう「相当とする金額」とはどのような金額か。
(3) また、「相当とする金額」を収益に振り替える結果、2年目以降は減価償却費のみが計上されることになると思われるが、それで良いのか。この場合、減価償却相当額が損益計算書上の費用ではなく、資本剰余金の減額とする整理はないのか。
A
1  「運営費交付金により支出されたと合理的に特定」できる場合とは、中期計画、中期計画に添付された書類、年度計画その他により資産の取得が運営費交付金からなされたということが明らかである場合であり、それ以外の場合が「運営費交付金により支出されたと合理的に特定できない場合」である。したがって、「運営費交付金により支出されたと合理的に特定できない場合」は運営費交付金以外の収入により固定資産を取得した場合も当然入り得るものであるが、会計基準第78においては運営費交付金債務からの振替について記述されているものであり、運営費交付金以外の収入により固定資産を取得した場合についての処理に直接関心があるわけではない。ここでは、中期計画等により運営費交付金によって支出されたということが合理的に特定できない場合であっても、一定の按分計算によって運営費交付金によって支出されたとみなす額を「相当とする額」とし、この額について運営費交付金債務から収益に振り替える処理を定めている。
2  この結果、設問の中にもあるように、取得年度は収益が立ち、次年度以降は減価償却費が計上されることとなる。
3  なお、このような資産についての減価償却の処理を会計基準第84により行うことができるか否かの問題は、会計基準第84にいう「その減価に対応すべき収益の獲得が予定されないものとして特定された資産」となるかどうかの問題であり、このような資産とすることを否定する記述はないが、取得について資本剰余金に計上されないにもかかわらず、減価償却を資本剰余金の減額によって行うことは結果的に損益のバランスを欠くこととなるので、認められないものと解する。

Q 78―9
(1) 運営費交付金を財源としてリース料を支払う場合で、当該リース取引をファイナンス・リース取引と整理し、リース資産を資産計上する場合、どのような会計処理を行うのか。
(2) 当該運営費交付金の会計処理は、一旦運営費交付金債務に計上した後、リース料支払を業務の進行と認識してリース料支払に応じて当該運営費交付金債務を収益化するのか、それともリース資産を償却資産の取得と認識し、当該運営費交付金債務を資産見返運営費交付金に振り替えるのか。
 (関連項目:第29リース資産の会計処理)
A
1  ファイナンス・リースの場合は、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行う(会計基準第29参照)のであるから、リース契約時に借方にリース資産、貸方にリース債務が計上される。毎年度におけるリース料の支払いは、会計上はリース債務の減少と支払利息を意味することになり、運営費交付金を財源としてリース料を支払う場合は、その額(自己収入等がある場合は運営費交付金に相当する額)が収益化されることになる。この際、会計上費用として認識されるのは、支払利息相当分と当該資産の減価償却費のみである。
2  具体的な会計処理のイメージは以下のとおり。なお、貸手側のリース物件購入額○○○円、減価償却額×××円、毎年のリース料△△△円、リース料は運営費交付金により手当されるとする。
<契約時> (借) リース資産 まるまるまる (貸) リース債務 まるまるまる
<毎年度> (借) 減価償却費 ばつばつばつ (貸) 減価償却累計額 ばつばつばつ
    現金 さんかくさんかくさんかく   運営費交付金債務 さんかくさんかくさんかく
    運営費交付金債務 さんかくさんかくさんかく   運営費交付金収益 さんかくさんかくさんかく
    リース債務 くろさんかくくろさんかくくろさんかく      
    支払利息 したさんかくしたさんかくしたさんかく   現金 さんかくさんかくさんかく

Q 78―10 運営費交付金の収益化において成果進行型を採用した場合、業務の達成度はどのように測定し、収益化するのか。
A
 業務の達成度としては「予定された成果の達成度」がまず考えられるが、「業務実施の進捗度」もここで言う業務の達成度に含めて考えられる。成果の達成度が収益化の基準としてはもっとも望ましいものと言えるが、成果の把握が明確に定量化できない場合は業務実施の進捗が生み出される成果と一定の相関関係をもつことは容易に想定されるものであり、「業務実施の進捗度」をもって業務の達成度を示すこととすることもできると思われる。「業務実施の進捗度」について具体的に見てみると、業務の進行状態を定量的、客観的に把握することができる場合は当該進捗をもって計測し、進捗度について明確な外形的測定を行うことが困難な場合等ではコスト面に着目する方法も考えられる。すなわち、業務実施の進捗はコストの発生と比例的な場合が多く、この場合は予定されたコストに対する発生したコストの比率を基礎として「業務実施の進捗度」とすることも可能と思われる。

Q 78―11 運営費交付金の収益振替を「成果進行型」とした場合(注解50第2項(1)に該当する場合)に、当初の予算を満額使い切って120パーセントの成果を出しても、利益は出ないと考えて良いのか。すなわち、経費を浮かして当初予定していた成果を達成した場合のみ現金の裏付けのある利益が計上できるため、「剰余金の使途」としての財源となり得ると考えて良いのか。
A
 運営費交付金の収益化において「成果進行型」を採った場合、当初の予定した金額を満額使い切って120パーセントの成果を出したとしても、利益は生じない。

Q 78-12 運営費交付金を財源として「重要性が認められるたな卸資産」を取得した場合は、資産見返運営費交付金に振り替えることとされているが、重要性が認められるたな卸資産とはどのようなものか。
A
1  運営費交付金は、地方独立行政法人の支出ベースでその所要額が算定され交付されるものである(運営費交付金が支出ベースで交付されることを前提として、会計基準第78運営費交付金の会計処理も規定されている。)。したがって、たな卸資産を取得した場合と役職員の給与等を支払った場合とで異なる取扱いを行う必要性は基本的にはないものと考える。
2  しかしながら、損益計算書は地方独立行政法人の業務運営の状況を適切に表示する必要があるとの観点から、会計基準第78は、固定資産及び重要性が認められるたな卸資産を取得した場合には、当該資産が費用化される時点において運営費交付金の収益化を行う会計処理を認めているものである。
3  「重要性が認められるたな卸資産」とは、地方独立行政法人の業務の性格や貸借対照表におけるたな卸資産の占める割合等を総合的に勘案して決定すべきものであるが、例えば、プロジェクト等の業務に必要なたな卸資産であって、当該業務との関係から、年度末の保有高が事業年度ごとに大きく変動するようなものが該当する。
 なお、事務用の消耗品等、経常的な事務処理を円滑に行うため通常一定量を保管しているものについては「重要性が認められるたな卸資産」には該当しないものとして取り扱う。

Q 78―13 運営費交付金を財源として固定資産を取得した場合の会計処理について、企業会計原則注解24国庫補助金等によって資産を取得した場合の圧縮記帳を適用するのか。
参考)企業会計原則注解24
 国庫補助金、工事負担金等で取得した資産については、国庫補助金等に相当する額をその取得原価から控除することができる。
 この場合においては、貸借対照表の表示は、次のいずれかの方法によるものとする。
1  取得原価から国庫補助金等に相当する額を控除する方式で記載する方法
2  取得原価から国庫補助金等に相当する額を控除した残額のみを記載し、当該国庫補助金等の金額を注記する方法
A
1  運営費交付金を財源として固定資産を取得した場合の会計処理については、会計基準第78に定められているため、企業会計原則注解24「国庫補助金等によって資産を取得した場合の圧縮記帳」は適用されない。
2  さらに、貸借対照表によって地方独立行政法人の財政状態、行政サービス実施コスト計算書によって行政サービス実施コストを表示するという目的に照らしても、圧縮記帳は認められるべきものではないと考えられる。
3  なお、同様に、施設費及び補助金等を財源として固定資産を取得した場合においても、圧縮記帳は認められない。

Q 79-1 施設費により受け入れた金額は、全額地方独立行政法人の資産計上の対象となるべきものか。施設費で執行する固定資産の取得に関連して、固定資産の取得原価を構成しない支出についてはどのような会計処理となるのか。
A
1  施設費を財源として固定資産を取得した場合であって、当該支出のうち固定資産の取得原価を構成しない支出については、当期の費用として処理することとなるが、この場合の施設費の会計処理については、費用相当額は、施設費収益の科目により収益認識を行い、資本剰余金への振り替えは行わないことになる。
2  上記1に関連して、施設費を財源として支出することが可能な経費の範囲は、当該施設費の交付決定や交付要綱の内容により判断することとなるが、附帯事務費として支出することが認められる経費は、設計料、検査・監督等の資産取得のために直接必要となる経費に限られ、地方独立行政法人職員の人件費等の間接的な経費は含まれないものと考えられる。
3  また、施設費は原則として、公債発行対象経費である施設整備に係る補助金として予算に計上されるが、その計上額は、地方独立行政法人の要望を基礎として地方公共団体において予算措置されることから、地方独立行政法人が、施設費の要望額を計算するに際しては、固定資産の原価を構成するものに限り施設費に計上し、費用処理すべき項目については、含まないようにすることが要請される。

Q 79―2 施設費を財源にして取得した特定償却資産の除却損は、行政サービス実施コストを構成することになるのか。
A
1  企業会計においては、有形固定資産の処分時の会計処理は全て損益計算の範疇となる。他方、地方独立行政法人においては、固定資産を取得した際、取得原資拠出者の意図や取得資産の内容等を勘案し、地方独立行政法人の財産的基礎を構成すると認められる場合には、相当額を資本剰余金として計上することとなる場合がある。そのため、当該固定資産の処分時の会計処理は、取得時の会計処理が資本計算に属するのか、損益計算に属するのかによって、対応が異なってくる。このことから、施設費を財源にして取得した特定償却資産を除却した場合、除却損相当額は資本剰余金から減額されることになる。
2  行政サービス実施コストは「地方独立行政法人の業務運営に関して、住民等の負担に帰せられるコスト」を意味するものであるので、資本剰余金を減額して整理された特定償却資産に係る除却損相当額は行政サービス実施コストを構成することになる。ただし、下記の例のように会計処理においては取得財源全額を資本剰余金から控除するが、行政サービス実施コストの計算においては、過去において行政サービス実施コストとして計上された部分を除くことに注意が必要となる。
例示>
 特定償却資産(取得価額100、損益外減価償却累計額80)の資産を除却した場合
 会計処理は、
資本剰余金 100 固定資産 100
減価償却累計額 80 損益外減価償却累計額 80
 となるが、行政サービス実施コストに計上すべき額は20となる。
 なお、この場合の行政サービス実施コスト計算書の表示は次のようになる。
行政サービス実施コスト計算書(抜粋)

2 損益外減価償却等相当額   ばつばつばつ
    損益外減価償却相当額   ばつばつばつ
    損益外固定資産除却相当額   20

Q 80-1 補助金等を財源として会計基準第84の特定の償却資産を取得することは可能か。
A
 地方独立行政法人制度の基本的な仕組みとして、地方独立行政法人の財産的基礎となる固定資産の取得については、出資による方法と施設費による方法が予定されており、補助金等による方法は予定されていない。したがって、補助金等により会計基準第84の特定の償却資産を取得することは予定されていない。

Q 82―1 会計基準第82第1項にいうところの寄附金を預り寄附金として計上するための「使途の特定」とは、具体的にどのように行えばよいのか。
 (関連項目:第14負債の定義)
A
1  寄附金は、寄附者が地方独立行政法人の業務の実施を財政的に支援する目的で出えんするものであって、その本来的な性格は、地方独立行政法人にとって直ちに会計的な意味での負債に該当するものとはいえない。したがって、法人が寄附金を受領した時点で預り寄附金として負債に計上するためには、基準が規定する負債の定義に合致することが必要であって、受領した寄附金のすべてについて預り寄附金として負債計上できるとするものではない。負債の定義に合致しない場合には、企業会計の慣行に立ち返り、受領時点で寄附金相当額を収益に計上することになる。
2  会計基準第14第1項では、「地方独立行政法人の負債とは、過去の取引又は事象に起因する現在の義務であって、その履行が地方独立行政法人に対して、将来、サービスの提供又は経済的便益の減少を生じさせるもの」と規定している。会計基準における負債に計上するには、その前提として、当該寄附金の受領が地方独立行政法人に何らかの現在の義務を生じさせていることが必要である。
3  このような観点から、会計基準では、1寄附者がその使途を特定した場合及び2寄附者が特定していなくとも地方独立行政法人が使用に先立ってあらかじめ計画的に使途を特定した場合において、負債に計上すると規定したところ。
4  使途の特定の程度については、この趣旨に従い、地方独立行政法人において寄附金を何らかの特定の事業のために計画的に充てなければならない責務が生じていると判断できる程度、すなわち、法人に対して当該寄附金の使用状況について管理責任が問える程度に特定されていることが必要である。
5  具体的には、地方独立行政法人の業務に使用するといった漠とした程度では不十分であり、当該法人の業務に関連した用途の種類、使用金額、使用時期などが明確になっていることが必要と考える。
6  特定の方法については、典型的には、中期計画において定めることを想定しているが、中期計画において特定することが客観的に難しいと判断される場合には、寄附金受領後使用するまでに当該寄附金の使途を定めた事実が事後的に検証可能な事例においても、中期計画において特定した場合に準じた取扱いも認められるものとする。

Q 82―2 ある事業の実施の財源として使途が特定された寄附金15百万円を受入れ、当該事業を実施したが、当該事業には間接費も含め13百万円の支出となった。この場合の会計処理はどのようになるのか。
A
1  会計基準第82では、「寄附者がその使途を特定した場合又は寄附者が使途を特定していなくとも地方独立行政法人が使用に先立ってあらかじめ計画的に使途を特定した場合において、寄附金を受領した時点では預り寄附金として負債に計上し、当該使途に充てるための費用が発生した時点で当該費用に相当する額を預り寄附金から収益に振り替えなければならない。」とされている。
2  したがって、受け入れた寄附金は○○事業の実施に当り寄附者から使途特定されたものであるので、受け入れた15百万円は預り寄附金として処理し、当該費用の発生した時点で当該費用相当額について預り寄附金を取崩して寄附金収益として収益計上されることになる。なお、「当該費用に相当する額」には、管理部門などの費用も含めることができると考えられるが、これらを含めてもなお、当該費用に相当する額が受け入れた寄附金の額よりも下回った場合については、使途が特定された事業が終了した時点で、受け入れた寄附金に対する負債性はなくなると考えられるので、預り寄附金全額を取り崩し、寄附金収益として処理するものと考えられる。

Q 82―3
(1) 寄附金で購入した償却資産の耐用年数が中期計画の期間より長い場合、当該資産及び資産見返負債は中期計画期間を繰り越せるのか。
(2) 寄附金を財源として、中期計画の想定の範囲外で非償却資産を取得した場合、当該資産及び資産見返負債は中期計画期間を繰り越せるのか。
A
1  地方独立行政法人が寄附金を受け、寄附者又は法人が当該寄附金の使途を特定したときには、まず、会計基準第82第1項により、その使途を定めた寄附金の額と同額を預り寄附金として負債に計上する。次に、その特定された使途として、1中期計画で想定していない非償却資産を購入した場合や、2償却資産を購入した場合には、会計基準第82第2項(2)により、資産取得額と同額を預り寄附金から別の負債項目である資産見返寄附金へ振り替えることになる。
2  このような使途の定めがある寄附金については、その特定された使途に沿って計画的に業務を行っていくことが寄附者の意思を反映した法人の責務であると考えられ、この責務は中期計画の期間とは関係がないので、預り寄附金は中期計画期間には連動しない負債としての性格を持つことになる。したがって、預り寄附金は中期計画期間が終了しても、当該使途に沿った費用が発生するまで負債のまま計上される(注解54参照)。この、中期計画期間と連動しない負債としての性格は、資産の取得に伴って預り寄附金から振り替えられた負債である資産見返寄附金についても同様なので、購入した資産が貸借対照表に資産として計上されている間は、資産見返寄附金も中期計画期間を超えて存続することになる。
3  なお、寄附金の使途に基づいて実施していた業務が終了した場合には、新たに別の使途が定められない限り、その時点で残っている預り寄附金や資産見返寄附金は収益化されることになる。

Q 82―4 会計基準第82第2項(2)にいう「当該資産が非償却資産であって、上記(1)に該当しないとき」(すなわち、中期計画の想定の範囲外)とは、具体的にどのような状況を想定しているのか。この場合においては、当該非償却資産に相当する額を資産見返寄附金に計上したままとしておくのか、それともいずれかの時点で収益化を行うのか。
A
1  会計基準第82第2項(2)の「当該資産が非償却資産であって、上記(1)に該当しないとき」とは、地方独立行政法人が寄附金を受け、寄附者又は地方独立行政法人によって当該寄附金の使途として特定の業務を実施することが定められ、そのために土地などの非償却資産を取得したものの、このような使途が設立団体の長の認可を受けた中期計画に記載されていなかったような場合を指している。この場合には、使途が定められた時点でまず寄附金と同額が預り寄附金として負債計上されることになるが、資産を取得した際の扱いとしては、設立団体の長の監督の下で行う計画的な資本増強とは言えないため、資本剰余金ではなく資産見返寄附金へ振り替えることになる。
2  この場合には、取得資産が非償却資産であるので、当該資産を保有している限り、中期計画期間の終了とは関係なく、資産見返寄附金として計上され続けることになる。

Q 83―1
1  受託研究収入のように、初年度に受託収入を得て、複数年度にわたってサービス(研究)を行う場合、最終年度にサービス(研究)成果が得られることから、サービスの実現がなされた場合、各年度に発生している費用についてはどのように考えるのか。
2  例えば、次のような処理案が考えられるのか。
1  各年度の費用をサービスとして認識して、費用に対応する受託収入を収益化する。(一種の費用進行)
2  各年度の費用を建設仮勘定のような仮勘定科目を設け最終年度において、サービスの実現時に費用と収益を対応させる。
A
1  設問の例にあるような受託研究収入など、いわゆる自己収入の会計処理は、会計基準第83によることになる。すなわち、「地方独立行政法人がそのサービス提供等により得た収入については、その実施によって実現したもののみを各期の収益として計上する。」ことになる。(実現主義)
2  問題は実現主義における実現とは何かということであるが、会計学の通説では、1財貨を引渡し又は役務を提供し、2それと引き換えに流動性ある対価を獲得することを指すとされ、具体的には、販売基準として適用されているところである。
3  この観点に立って販売基準を原則的な収益認識基準とみなせば、設問の例のような事案においては、最終年度においてサービス(研究)成果が得られ、当該サービス成果を委託者に引き渡した時点で、一括して収益を計上し、それにあわせて、それまでの年度に発生した費用は最終年度まで計上を繰り延べる会計処理を行うのが原則と考えられる。したがって、設問(2)の事例では原則2のような会計処理を行うのが適切と考える。(なお、費用を繰り延べるための勘定科目は、仮勘定科目ではなく、仕掛品が適切ではないかと考える。)
4  なお、請負契約の場合であって、契約締結の段階で総収益と総原価が当事者間で合意されており、かつ、契約の結果を信頼性をもって見積ることができるような場合には、サービス(研究)の進行程度に応じて収益を認識する進行基準的な考え方も採り得るものと考える。
5  簡単な数値例で完成基準を適用した場合と進行基準を適用した場合の違いを示すと以下のとおり。なお、5年契約で、1年目に受託収入100を現金で受領、毎年の費用は15で現金払い、サービスは均等に進行すると仮定する。

  完成基準 進行基準
(借) (貸) (借) (貸)
1年目
仕掛品   15
現金   100
現金   15
前受金   100
費用   15
現金   100
現金   15
前受金   80
収益   20
2年目
仕掛品   15
現金   15
費用   15
前受金   20
現金   15
収益   20
3年目
仕掛品   15
現金   15
費用   15
前受金   20
現金   15
収益   20
4年目
仕掛品   15
現金   15
費用   15
前受金   20
現金   15
収益   20
5年目
仕掛品   15
前受金   100
費用   75
現金   15
収益   100
仕掛品   75
費用   15
前受金   20
現金   15
収益   20

Q 83―2 自己収入で計上された原価と運営費交付金の原価をどのように振り分けるのか。例えば、運営費交付金と業務との対応関係を明らかにすることが困難な場合、地方独立行政法人が次のような収入・支出を行った場合、会計処理はどうなるのか。
ケース1]
収入 運営費交付金 500  
  自己収入 300  
支出 給与等 600  
  固定資産購入 200 (耐用年数5年、残存価額ゼロ)
ケース2]
収入 運営費交付金 500  
  自己収入 400  
支出 給与等 600  
  固定資産購入 200 (耐用年数5年、残存価額ゼロ)
ケース3]
収入 運営費交付金 500  
  自己収入 250  
支出 給与等 600  
  固定資産購入 200 (耐用年数5年、残存価額ゼロ)
A
 いずれのケースにおいても、共通する処理は以下のとおり。なお、ここでは、資産購入、自己収入、給与等の取引は現金によって行われたものと仮定する。
(借方)   (貸方)
資産 200 現金 200
現金 XXX ○○収入 XXX
人件費 YYY 現金 YYY
 また、取得後における当該資産の減価償却の処理も共通であるが、当該資産が会計基準第84の適用をうけるか否かにより処理が異なる。ここでは、会計基準第84の適用を受けないとすると、
減価償却費 40 / 減価償却累計額 40
の処理が基本的に毎年度行われる。以下ではこの減価償却の処理は省略する。
 ところで、ここでのポイントは、受け入れた運営費交付金を収益化する額はいくらになるかという点である。設問では、取得資産が運営費交付金より支出されたと合理的に特定できるかどうかについての記述がないので、まずここで処理が異なる。すなわち、合理的に特定できる場合は、その額を会計基準第78第4項(1)イにより運営費交付金債務から資産見返運営費交付金に振り替えることとなり、合理的に特定できない場合は、同(2)により「相当とする金額」を計算により求め、その額を運営費交付金債務から運営費交付金収益に振り替える。また自己収入も計上されているので、運営費交付金と業務との対応関係を明らかにすることが困難な場合は、注解50第2項(3)により、運営費交付金債務残高と当該収益とで財源を按分して支出したものとみなす等の適切な処理を行った上で収益化する。なお、受け入れる運営費交付金の額を超えた収益化はできないことに注意する必要がある。
1  当該資産が運営費交付金より支出されたと合理的に特定できる場合
ケース1]
現金 500 運営費交付金債務 500
資産 200 現金 200
現金 300 ○○収入 300
人件費 600 現金 600
運営費交付金債務 200 資産見返運営費交付金 200
運営費交付金債務 300(注釈 運営費交付金収益 300
注釈  この場合、「運営費交付金債務残高」は300(いこーる500マイナス200)であり、自己収入は300であるから、費用額の600のうち、運営費交付金から支出されたとみなされる額は、
 600かける300わる(300プラス300)いこーる300
 が運営費交付金債務から運営費交付金収益に振り替えられる額である。
ケース2]
現金 500 運営費交付金債務 500
資産 200 現金 200
現金 400 ○○収入 400
人件費 600 現金600
運営費交付金債務 200 資産見返運営費交付金 200
運営費交付金債務 257(注釈 運営費交付金収益 257
注釈  同様に、600かける300わる(300プラス400)いこーる257
ケース3]
現金 500 運営費交付金債務 500
資産 200 現金 200
現金 250 ○○収入 250
人件費 600 現金 600
運営費交付金債務 200 資産見返運営費交付金 200
運営費交付金債務 300(注釈 運営費交付金収益 300
注釈  この場合は、600かける300わる(300プラス250)いこーる327であるが、合計527となり、運営費交付金の受入額を超えてしまうため、限度である300を収益化する。
2  当該資産が運営費交付金から支出されたと合理的に特定できない場合
ケース1]
現金 500 運営費交付金債務 500
資産 200 現金 200
現金 300 ○○収入 300
人件費 600 現金 600
運営費交付金債務 125(注釈 運営費交付金収益 125
運営費交付金債務 375(注釈2 運営費交付金収益 375
注釈  取得した固定資産に係る額200のうち、その財源が運営費交付金に帰するものとして求められる「相当とする額」は、200かける500わる(500プラス300)いこーる125である。
注釈2  費用額の600のうち、運営費交付金から支出されたとみなされる額は、600かける500わる(500プラス300)いこーる375である。
ケース2]
現金 500 運営費交付金債務 500
資産 200 現金 200
現金 400 まるまる収入 400
人件費 600 現金 600
運営費交付金債務 111(注釈 運営費交付金収益 111
運営費交付金債務 333(注釈2 運営費交付金収益 333
注釈  同様に、200かける500わる(500プラス400)いこーる111
注釈2  同様に、600かける500わる(500プラス400)いこーる333
ケース3]
現金 500 運営費交付金債務 500
資産 200 現金 200
現金 250 まるまる収入 250
人件費 600 現金 600
運営費交付金債務 133(注釈 運営費交付金収益 133
運営費交付金債務 367(注釈2 運営費交付金収益 367
注釈  同様に、200かける500わる(500プラス250)いこーる133
注釈2  この場合、同様の計算を行えば、600かける500わる(500プラス250)いこーる400を収益化したいところであるが、これに133を足すと533となり、運営費交付金の受入額を超えてしまうので、限度である合計500を収益化することとなる。

Q 84―1
(1) 会計基準第84(特定の償却資産の減価に係る会計処理)に該当する資産の範囲如何。
(2) 資本剰余金に計上されている償却資産及び現物出資の償却資産が該当するのか。
A
1  会計基準第84(特定の償却資産の減価に係る会計処理)が適用される資産に該当すると判断するには、当該地方独立行政法人の財務構造等を勘案して設立団体の長が、その減価に対応すべき収益の獲得が予定されないものとして、あらかじめ取得時までに地方独立行政法人の外から個別に資産を特定していることが必要であって、直ちに資本剰余金に計上されている償却資産や現物出資の償却資産が該当するものではない。したがって、設立団体の長が、当該資産の使用目的等に照らし合わせ、減価に対応する収益を獲得することが可能であるかどうかを個々に判断して特定することになる。
2  また、ここでいう特定の償却資産とは、当該資産に投下された資本を当該資本から獲得される収益によって回収できない資産のことを指すものである。したがって、当該資産の稼動によって生じる販売物の価格設定において当該資産の減価分を織り込まず、それが資産の保有目的から妥当である場合には、ここでいう特定の償却資産に該当するものと考えられる。
3  なお、外側から特定する方法としては、具体的には、設立団体の規則において対象資産あるいは特定の要件や手続を規定することが適当と考えられる。

Q 84―2
(1) 現物出資財産のうち、減価に対応すべき収益の獲得が予定されていない固定資産は、1貸借対照表上において、有形固定資産(資産の部)と地方公共団体出資金(資本の部)に計上するのか、2貸借対照表上において、有形固定資産(資産の部)と資本剰余金(資本の部)に計上するのか。
(2) 上記1の場合には、現物出資の償却資産で、収益の獲得が予定されない償却資産の減価償却相当額は資本剰余金の損益外減価償却累計額(―)に計上されるので、資本剰余金がマイナスになることもあり得るのか、それでも良いのか。(関連項目:第55資本の表示項目)
A
1  地方独立行政法人が地方公共団体から有形固定資産の現物出資を受けた場合には、貸借対照表上、当該資産の評価額が有形固定資産に、またその同額が地方公共団体出資金に計上される(譲与でなく現物「出資」である以上、資本剰余金となることはあり得ない)。
2  当該資産が、「その減価に対応すべき収益の獲得が予定されないもの」として特定された場合には、当該資産の減価償却相当額は、資本剰余金の控除項目である損益外減価償却累計額として計上することになるが(会計基準第55第2項、第84参照)、他に資本剰余金がない場合には、控除後の資本剰余金合計(広義の資本剰余金)がマイナスとなることもある。

Q 84―3 取得後償却終了以前の途中の段階で、会計基準第84による特定資産に変更することはできるのか。また、いったん会計基準第84による特定がされた償却資産を、途中で変更し、通常の減価償却を行うものとすることは可能か。
A
1  会計基準第84による減価償却の会計処理は、運営費交付金に依存する地方独立行政法人については、資産の減価分が通常は運営費交付金の算定対象とならず、また減価分を運営費交付金以外の収益によって充当することも考えられないなどといった状況にあることから、このような資産に限った例外的な扱いとして行われるものである。一般的には、資産を取得する際にその資産による収益獲得可能性を推定することが可能と考えられ、また、資産の取得後にその見通しを安易に変更することは好ましくないと考えられることから、注解57では会計基準第84のルールが適用される資産の特定を資産の取得時までに行うこととしている。
2  しかしながら、理論的には、取得後の事情の変更により収益構造が大幅に変化し、更新のための財源の負担者を変更することが決定している場合に、指定の解除又は追加指定を行うことが排除されているわけではない。ただし、資産の特定は設立団体の長により法人の外部から行われることを想定しているので、設立団体の長がこのような指定の解除または追加を行うためには、別途設立団体の規則の規定の整備を行う必要がある。

Q 85―1 退職給与については、国又は地方公共団体との交流人事によって地方独立行政法人外に移籍する職員がいる場合にはどうなるのか。
A
1  会計基準第85にあるとおり、地方独立行政法人の職員の退職給与については、自己収入を財源とするものについては「退職給付引当金」を貸借対照表の本体に、運営費交付金を財源とするものについては「退職給付引当金の見積額」を貸借対照表の注記に表示すべきものとされている。したがって、地方独立行政法人に勤務する全職員について、原則として、上記いずれかの形で退職給付に関する計上が行われるものと考える。
2  仮に、国又は地方公共団体との交流人事によって、職員が法人外に移籍する場合には、上記の「引当金または見積額」が取り崩されるが、一方、交流人事で迎える職員については、「引当金または見積額」を積み増す必要が生ずることとなる。
3  国又は地方公共団体との人事交流による出向職員であり国又は地方公共団体に復帰することが予定される職員について、地方独立行政法人での勤務に係る退職給与は支給しない条件で採用しており、退職給与を支給しないことが地方独立行政法人の給与規則等において明らかな場合は、退職給付に係る将来の費用は発生しないことから、退職給付引当金の計上は要しないこととなる。

Q 85―2
(1) 退職給付が運営費交付金で措置されている場合において、退職給与を支給したときにその支給額は当該年度の損益計算書に計上されるのか。
(2) その場合、その支給額には当該地方独立行政法人に所属していない期間に対応する退職給与が含まれていることは不合理ではないか。
A
1  会計基準第85第2項に該当する場合には、退職給与の支給額全額を損益計算書に計上する。
2  地方独立行政法人が設立団体の職員を引き継いだ場合には、設立団体での勤務期間も通算して退職給与の支払いを行わねばならない。その際、設立団体と地方独立行政法人との間では、退職給与の期間配分を行うという考え方に立っておらず、最終的に地方独立行政法人で退職した場合には、当該地方独立行政法人が退職給与の全額を支払うこととなる。運営費交付金による財源措置は「地方独立行政法人の業務運営」のためであって、設立団体の勤務期間に相当する退職給与を精算するためではない。
3  したがって、損益計算書においては、支払われた退職給与全額を「費用」として計上し、財源となる運営費交付金全額を「収益」として計上することが適当である。なお、行政サービス実施コスト計算書においては、当該支払額は「業務費用」として計上される。

Q 85―3 退職一時金に係る退職給付引当金の計上に関して、地方公共団体の職員であった期間の過去勤務分については、どのように考えればよいのか。
A
 設立団体の職員を地方独立行政法人が引き継いだ結果、会計基準第17第1項及び第85第1項に該当するならば、設立団体の職員であった期間の勤務分も含めて引当金に計上する。

Q 89―1 目的積立金を財源に固定資産を取得した場合に取得原価を目的積立金から資本剰余金に振り替えることになっているが、この場合利益処分に関する書類を通さずに直接振替処理で行うと理解してよいか。
A
1  利益の処分に関する書類は、会計年度終了時における地方独立行政法人の当期未処分利益を求め、その処分の内容を明らかにするものであるので、利益処分として目的積立金を積み立てた旨を表示すれば書類として完結し、その後の目的積立金の取崩しについてまで記載する必要はない。
2  目的積立金を財源として固定資産を取得した場合には、その取得時に当該資産の取得価額と同額を目的積立金から資本剰余金へ振り替えることになるが、これは貸借対照表の利益剰余金と資本剰余金との振替を意味する会計処理である。

Q 89―2 目的積立金を中期計画に定める「剰余金の使途」に従って固定資産を取得したときは、当該積立金は資本剰余金に振り替えることとなるが、その場合、減価償却相当額は資本剰余金を減額することになるのか。
A
 目的積立金をもとに「剰余金の使途」に従って取得した固定資産の減価償却についても、他の資産の減価償却と同様である。すなわち、「その減価に対応すべき収益の獲得が予定されないもの」であるかの判断が行われ、これに該当するものとして特定された場合には、会計基準第84による会計処理が行われることになる。

Q 89―3 前中期目標期間繰越積立金を使用する際の会計処理はどうなるのか。
A
 前中期目標期間繰越積立金については、それが積み立てられている時点で効力を有している中期計画において、その使途が定められているはずであるので、その使途に照らして目的積立金の会計処理(会計基準第89)と同様の処理が行われることになる。


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