「地方独立行政法人会計基準」及び「地方独立行政法人会計基準注解」に関するQ&A 第10章

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10章 附属明細書及び注記

Q 76-1 セグメント情報について、以下の事項の取扱いはどのようになるのか。
1  目的積立金の取崩し
2  一般管理費の取扱い
3  損益外減価償却相当額
A
1  セグメント情報における事業費用、事業収益の開示は、損益計算書における経常費用及び経常収益を事業単位で按分した内訳表と捉えることができる。目的積立金の取崩しを財源とする費用が発生した場合、当該費用はセグメント情報の事業費用に含めて記載され、目的積立金取崩額は損益計算書の経常収益に含まれず、当期純利益の次に記載されることとなる。目的積立金取崩額をセグメント情報へ加えることは明瞭な表示を損ねるおそれがあることから、目的積立金の取崩しがある場合はセグメント情報の脚注として記載する。
2  セグメント情報作成にあたっては、損益計算書における経常費用を合理的な基準により各セグメントへ配賦することが求められる。しかし、経常費用のうち一般管理費については、管理部門における費用を主たる内容とすることが想定されることから、一般管理費に区分されるすべての費用を各セグメントへ配賦することが困難な状況が考えられる。このような場合には、各セグメントへ配賦不能な一般管理費は配賦不能費用として法人共通の欄に記載することとなる。
3  損益外減価償却相当額及び引当外退職給付増加見積額は損益計算上、費用として計上されないことから、損益情報としてセグメント情報には記載ができない。しかしながら、損益外減価償却相当額及び引当外退職給付増加見積額は一般的に金額的にも質的にも重要性があり、かつ、セグメントの発生コストを把握する上では重要であるため、セグメント情報の脚注に各セグメント別の金額を記載する。

Q 76-2 決算報告書について、以下の事項の取扱いはどのようになるか。
1  決算報告書で記載される予算とは年度計画に記載している予算と同一と解してよいか。
2  予算執行の段階で予算を変更した場合に、当該事項を決算報告書に反映させる必要があるか。
3  決算報告書で記載される決算はどのように解すればよいか。
A
1  地方独立行政法人においては、法第27条第1項の規定に基づく年度計画の一項目として、予算が公表されている。決算報告書は当該予算の執行状況を表すものであると想定されることから、決算報告書に記載される予算は年度計画に記載されている予算と同一のものである。
2  年度計画自体を変更せずに、例えば、一般管理費として割り当てられた予算を合理的な理由に基づき業務経費として執行した場合、決算報告書の予算区分は変更せず、決算額を業務経費として処理する。この処理により生じる差額の発生理由は備考欄において簡潔に記載することとなる。
3  決算報告書は割当予算に対してその執行状況を報告する準拠性報告であるから、決算額は予算執行した金額を記載すべきである。
 決算報告書は財務諸表とあわせて設立団体の長に提出され、承認を受けた後、一般の閲覧に供されることとなる。そのため、財務諸表に記載されている数値と予算執行額との関係を明確に開示することが、財務諸表及び決算報告書の利用者の理解可能性を高めることになる。しかしながら、会計基準第38の規定により、地方独立行政法人の財務諸表は発生主義により処理することが定められており、必ずしも財務諸表上の数値と予算執行額が一致するものではない。
 そこで、決算報告書に記載する決算額は収入については現金預金の収入額に期首期末の未収金額等を加減算したものを記載し、支出については、現金預金の支出額に期首期末の未払金額等を加減算したものを記載した上で、損益計算書の計上額と決算額の集計区分に差がある場合には、その相違の概要を備考欄に記載することとしたものである。

Q 77―1 重要な債務負担行為とは、具体的にどのような事象を指しているのか。
A
1  債務負担行為とは、地方独立行政法人が金銭の納付を内容とする債務を負担する行為であって、当該会計年度内に契約は結ぶが、実際の支出の全部又は一部が翌期以降になるものをいう。債務負担行為は建物あるいは施設の工事請負契約あるいは重要な物品購入契約のような将来確実に支出がなされるものと、損失補償及び保証契約のように偶発債務であるものと2つに分類される。
2  重要な債務負担行為とはこれらの債務負担行為のうち地方独立行政法人の事業に照らし、内容的又は金額的に重要なものをさしている。

Q 77―2 会計基準では、「財務諸表には、その作成日までに発生した重要な後発事象を注記しなければならない」(会計基準第77第1項、注49第1項参照)とあるが、ここでいう財務諸表の作成日とはいつなのか。
A
1  財務諸表の作成日とは、文理解釈上は、監事の監査を受けるための財務諸表を地方独立行政法人が作成した日、また、会計監査人の監査を受けなければならない地方独立行政法人にあっては、会計監査人及び監事の監査を受けるための財務諸表を地方独立行政法人が作成した日が財務諸表作成日となると考えられる。
2  しかしながら、企業会計においては、後発事象は「商法施行規則」(平成14年法務省令第22号)に従い営業報告書に記載されるが、民間企業は営業報告書を監査役に提出するために取締役会にて営業報告書を承認した日までに発生した後発事象を営業報告書に記載している。また、会計監査人の監査を受ける商法上の大会社においては、営業報告書を取締役会にて承認した日以降会計監査人の監査報告日までに発生した後発事象に関しても、営業報告書上記載することが望ましいとされている(日本公認会計士協会監査第一委員会報告第40号「商法監査に係る監査上の取扱い」、同第76号「後発事象に関する監査上の取扱い」参照)。このように、後発事象の開示目的を鑑みれば、地方独立行政法人においても、監事の監査を受けるための財務諸表を法人が作成した日までのみならず、法人による財務諸表の作成日以降監事の監査報告日または会計監査人の監査報告日までに発生した後発事象に関しても、財務諸表に注記を行うことが望ましいと考える。

Q 77―3 会計基準第77第1項におけるその他地方独立行政法人の状況を適切に開示するために必要な会計情報とは具体的にはどのような注記が考えられるか。
A
 具体的には、民間企業が実務上において財務諸表に開示している、有価証券関係、退職給付関係等の注記をいう。その他、各地方独立行政法人の状況に応じて、財務諸表等規則などを参考の上適切な開示を行うものとする。


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-- 登録:平成21年以前 --