「地方独立行政法人会計基準」及び「地方独立行政法人会計基準注解」に関するQ&A 第2章

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2章 概念

Q 8―1 地方独立行政法人における研究開発費は、企業会計審議会が公表した「研究開発費等に係る会計基準」に従って処理すべきか。そうだとすると、特定の研究開発目的のみに使用され、他の目的に使用できない有形固定資産は研究期間が複数年にわたる場合でも、取得時に費用処理するのか。
 (関連項目:第78運営費交付金の会計処理)
A
1  会計基準は、研究開発費の会計処理について基準を設けていないが、会計基準に定められていない事項については、企業会計原則に従う(地方独立行政法人会計基準の設定について4参照)こととされているほか、注解8において「研究開発費等に係る会計基準」(平成10年3月13日企業会計審議会)を引用していることからも、研究開発費等に係る会計基準に準拠した会計処理を求めているものと考える。
2  研究開発費等に係る会計基準では、研究開発費は、すべて発生時に費用として処理することを原則としており、特定の研究開発目的のみに使用され、他の目的に使用できない機械装置等は研究期間が複数年にわたる場合でも、取得時に即時償却することとなる。なお、受託研究は受託収入を獲得することが確実な活動であり、受託収入で購入した償却資産については、このような即時償却の会計処理は適用されない。
3  なお、ある特定の研究開発目的に使用された後、他の目的に使用できる場合には、機械装置等として資産に計上することとなるが、この場合、他の目的に使用できる場合とは、地方独立行政法人の他の業務に使用できる場合のほか、他の研究開発目的に使用できる場合を含むほか、必ずしも判定の時点において他の目的への使用予定・計画が明確になっている場合に限ることなく、使用予定が明らかでなくても、汎用性があり他の目的に使用することが容易な場合には、当該機械装置等を資産に計上することが認められる(「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A」(平成11年9月29日日本公認会計士協会会計制度委員会)参照。)。
4  また、「特定の研究開発目的」とは、地方独立行政法人の定款において「業務の範囲」として規定されているような大きな目的ではなく、「個々の具体的な研究開発目的」を意味している。したがって、長期的な研究プロジェクトの研究テーマAに使用する目的で購入した償却資産を同一プロジェクトの研究テーマBで使用することが想定されるような場合には、資産に計上することとなる。

Q 8―2 ある研究のための研究受託収入で償却資産を購入し、当該資産が他の研究に使用可能な場合は、どのような会計処理を行うべきか。当初の研究が終了した後も当該資産について償却を続けなければならないのか。
A
1  設問のような受託研究は受託収入として収益を獲得することが確実な活動であるため、「研究開発費等に係る会計基準」(平成10年3月13日企業会計審議会)が適用される研究活動には当たらないものと考えられる。
2  したがって、受託研究収入によって償却資産を購入した場合には、購入時において当該資産を使用する予定の期間を耐用年数として償却し費用化することになる。

Q 8―3 固定性配列法としたのはどうしてか。
A
 地方独立行政法人の主要な財産は、建物、土地、機械装置等の固定資産から構成されることが想定され、これらが住民等から地方独立行政法人に付託された経済資源の基礎を形成することから、企業会計の貸借対照表における「流動性配列法」とは異なる「固定性配列法」を採用している。
 なお、企業会計においても、電力、ガス、鉄道等で、また、国立大学法人会計で固定性配列法が採用されている。

Q 9―1 地方独立行政法人の貸借対照表における固定資産の計上基準は何万円以上とするか。(関連項目:第4重要性の原則)
A
1  地方独立行政法人においては、その業務目的を達成するために所有し、かつ、加工若しくは売却を予定しない財貨で、耐用年数が1年以上の財貨は固定資産に計上することになる(注解9第5項参照)。
 ただし、償却資産のうち、この条件を満たすものであっても、1個または1組の金額が一定金額以下で、重要性の乏しいものについては、貸借対照表の固定資産には計上せず、消耗品費等その性格を表す適切な費用科目を付して損益計算書に計上することも認められる(会計基準第4参照)。
2  貸借対照表上の固定資産に計上するか損益計算書において適切な費用科目で処理するかの判断は、地方独立行政法人移行前の組織である設立団体での当該資産についての物品管理の状況等も参考にしながら、地方独立行政法人の業務の性格や当該資産の利用状況及び管理状況等により法人ごとに判断するべきものである。
3  なお、出資対象資産の中に基準となる一定金額未満の償却資産がある場合には、当該資産は貸借対照表に計上されることに留意しなければならない。
 また、非償却資産については、金額に関わらず固定資産に計上することとする。

Q 13―1 地方独立行政法人の通常の業務活動において発生した取引を「未収入金」、「未払金」とした理由如何。
A
1  企業会計において、一般に「通常の取引に基づいて発生した営業上の未収入金又は未払金」を「売掛金」「買掛金」という勘定科目で表示している(財務諸表等規則(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和38年大蔵省令第59号。)第15条第3号及び第47条第2号参照)。
 ただ、企業会計の実務においても、通常の取引に基づいて発生した営業上の未収入金や未払金について、「××未収入金」「××未払金」などという勘定科目に置き換えて表示されることも広く行われるなど、弾力的な取扱いが認められているところである。
2  そこで、営利を目的としない地方独立行政法人の会計基準においては「未収入金」、「未払金」としたほうが適切であると考えたものである。また、地方独立行政法人においては、企業会計における「通常の取引」よりは「通常の業務活動」という表現が適切と考えられることから、そのように表現を修正している。ただし、企業会計と同様に、弾力的な取扱いも認められると考える。
3  なお、通常の業務活動には、地方独立行政法人の経常的な業務活動は全て含まれる。したがって、経常的な業務活動である限り、当該法人の業務目的に直接関連する活動のみならず、間接的な活動も含まれると解する。

Q 13―2 地方独立行政法人がその出先機関に一定期間(1カ月)の資金をあらかじめ交付する場合、「流動資産」の勘定科目「前渡金」として整理し、精算報告をもって該当勘定科目に振り替えることになるのか。
A
 「前渡金」は、あくまでも外部の取引者に対し支払った原材料、商品等の購入のための前渡代金等を表す勘定科目であり、設問のようなケースにおいては、財務諸表上「現金及び預金」として表示される。
参考)
 なお、期中に、出先機関など自己の組織内の会計単位への資金移動を行う場合は、通常「前渡金」という勘定科目を使用せず、出先機関の会計組織によるが、「小口預金」(日常頻繁に生ずる小口経費の支払いのために一般現金から区分された現金の出納を処理する勘定)とするか、出先機関を支店ととらえ、支店に対しての現金預金の振替とみて、支店会計の「現金及び預金」とすることが通例である。

Q 15―1 償却資産を無償取得した場合の会計処理として、貸方項目に資産見返負債を計上することになるのか。
 (関連項目:第26無償取得資産の評価、第78運営費交付金の会計処理、第80補助金等の会計処理、第82寄附金の会計処理)
A
 償却資産を無償で取得した場合の扱いについては、以下のとおり、寄附金や運営費交付金によって、資産を取得した場合の扱いに準じて考えることができる。
1  設立団体から譲与を受けた場合
 設立団体からの譲与については、運営費交付金で償却資産を購入した場合と同様に考えられることから、会計基準第78第4項(1)イと同じ取扱いとする。すなわち、資産見返の負債項目を計上し、毎事業年度、減価償却相当額を取り崩して収益に振り替えることが適当である。
2  設立団体以外の者から贈与された場合
 設立団体以外の者から贈与された場合は、寄附金により償却資産を購入した場合と同様に考えられることから、会計基準第82第2項(2)及び第3項と同じ取扱いとする。すなわち、その寄附財産について、寄附者がその使途を特定した場合又は地方独立行政法人が使用に先立ってあらかじめ計画的に使途を特定した場合においては、資産見返の負債項目を計上し、毎事業年度、減価償却相当額を取り崩して収益に振り替えることが適当である。また、客観的に寄附財産の属性や地方独立行政法人の業務目的等を総合的に判断すると当該財産を換金し無目的の寄附金として管理せざるを得ない場合など、寄附者若しくは地方独立行政法人のいずれにおいてもあらかじめ使途が特定したと認められない場合には、取得資産の時価に相当する額を受贈益として計上することが適当である。

Q 15―2 会計基準第15では、資産見返負債(中期計画の想定の範囲内で、運営費交付金により、又は国若しくは地方公共団体からの補助金等により補助金等の交付の目的に従い、若しくは寄附金により寄附者の意図に従い若しくは地方地方独立行政法人があらかじめ特定した使途に従い償却資産を取得した場合に計上される負債をいう。)が固定負債に属するとされているが、ここで言う「特定した使途」とは、具体的にどのようなことを考えているのか。地方独立行政法人の業務の用途に供することでよいのか。
 (関連項目:第14負債の定義、第82寄付金の会計処理)
A
1  寄附金は、寄附者が地方独立行政法人の業務の実施を財政的に支援する目的で出えんするものであって、その本来的な性格は、地方独立行政法人にとって直ちに会計的な意味での負債に該当するものとはいえない。したがって、法人が寄附金を受領した時点で預り寄附金として負債に計上するためには、会計基準が規定する負債の定義に合致することが必要であって、受領した寄附金のすべてについて預り寄附金として負債計上できるとするものではない。負債の定義に合致せず、かつ、資本剰余金に計上すべき場合にも該当しない場合には、企業会計の慣行に立ち返り、受領時点で寄附金相当額を収益に計上することになる。
2  会計基準第14の第1項では、「地方独立行政法人の負債とは、過去の取引又は事象に起因する現在の義務であって、その履行が地方独立行政法人に対して、将来、サービスの提供又は経済的便益の減少を生じさせるもの」と規定している。地方独立行政法人の会計において負債に計上するには、その前提として、当該寄附金の受領が地方独立行政法人に何らかの義務をその時点において生じさせていることが必要である。
3  このような観点から、会計基準では、(ア)寄附者がその使途を特定した場合及び(イ)寄附者が特定していなくとも地方独立行政法人が使用に先立ってあらかじめ計画的に使途を特定した場合において、寄付金を受領した時点では預り寄付金として負債に計上すると規定したところである(会計基準第82参照)。(なお、設問の資産見返負債とは、この預り寄附金を負債に計上し得る場合で、かつ、当該寄附金を財源として、会計基準第82第2項(2)に沿った会計処理が行われる場合において発生する別の負債項目である。)
4  使途の特定の程度については、この趣旨に従い、地方独立行政法人において寄附金を何らかの特定の事業のために計画的に充てなければならない責務が生じていると判断できる程度、すなわち、法人に対して当該寄附金の使用状況について管理責任が問える程度に特定されていることが必要である。
5  具体的には、地方独立行政法人の業務に使用するといった漠とした程度では不十分であり、当該法人の業務に関連した用途の種類、使用金額、使用時期などが明確になっていることが必要と考える。
6  特定の方法については、典型的には、中期計画において定めることを想定しているが、中期計画において特定することが客観的に難しいと判断される場合には、寄附金受領後使用するまでに当該寄附金の使途を定めた事実が事後的に検証可能な事例においても、中期計画において特定した場合に準じた取扱いも認められるものとする。

Q 15-3 受託研究及び共同研究、受託事業及び共同事業のそれぞれの定義は何か。
A
1  「受託研究」とは、公立大学法人において外部からの委託を受けて法人の業務として行う研究で、これに要する経費を原則として委託者が負担するもののことである。
2  「共同研究」とは、
1  公立大学法人において、民間等外部の機関から研究者及び研究経費等を受け入れて、当該法人の教員が民間等外部の機関の研究者と共通の課題について共同して行う研究
2  公立大学法人及び民間等外部の機関において共通の課題について分担して行う研究で、当該法人において、民間等外部の機関から研究者及び研究経費等、又は研究経費等を受け入れるもののことである。
3  「受託事業」とは、公立大学法人において外部からの委託を受けて法人の業務として行う諸活動のうち、受託研究を除くものであり、これに要する経費を原則として委託者が負担するもののことである。公立大学法人は、契約に基づき当該業務の成果を委託者に報告する等の義務を負う。
4  「共同事業」とは、公立大学法人において民間等外部の機関と特定の業務について法人の業務として共同して行う諸活動のうち、共同研究を除くものであり、これに要する経費は原則として民間等外部の機関が負担するもののことである。

Q 16-1 次の科目は、具体的にはどのようなものか。
(1) 授業料債務
(2) 預り補助金等
(3) 預り科学研究費補助金等
(4) 預り金
(5) 未払消費税等
A
(1) 授業料債務
 教育の対価として学生より受領した授業料の未経過分のこと。学生に教育というサービスを提供する義務という意味で負債計上される。
処理例】
 授業料受領時(前年度3月に次年度前期分を受領)
 (借)現金預金 1,000 (貸)前受金 1,000

 当年度4月1日付で前受金を授業料債務に振り替え
 (借)前受金 1,000 (貸)授業料債務 1,000

 当年度中に授業料債務を授業料収益に収益化(期間進行基準)
 (借)授業料債務 1,000 (貸)授業料収益 1,000

 期間(学期)の経過とともに収益化されるべきものであるため、原則として期末に負債残高が残ることはない。
(2) 預り補助金等
 公立大学法人が行う業務のうち、特定の事務事業に対して交付された補助金等の未使用額のこと。
(3) 預り科学研究費補助金等
 研究費等を補助する目的で国から交付された科学研究費補助金等の未使用額のこと。研究者に渡すべき一時的な預り金という意味で負債計上される。
(4) 預り金
 寄宿寮における私費負担光熱水料、学内宿泊施設雑費等の、寄宿寮または学内宿泊施設等における経費の対価として学生、研究者等より受領した個人負担に係る負担金等のこと。
(5) 未払消費税等
 納付すべき消費税等のうち未納付額のこと。消費税の処理方法は、税込方式によるので、年度末においては、消費税申告作業時に認識された未払消費税額を計上する。なお、還付消費税がある場合には未収消費税を流動資産の部に計上する。

Q 19―1
(1) 注解12第2項(1)にいう「「第84特定の償却資産の減価に係る会計処理」を行うこととされた償却資産を取得した場合」とは、地方公共団体による現物出資財産及び施設費による償却資産を取得した場合が該当すると思われるが、現物出資財産の場合は資本金が計上されることとなるため、結局、注解12第2項(1)に該当して資本剰余金が計上される場合とは、施設費による償却資産(会計基準第79施設費の会計処理)を取得した場合となると考えられる。だとすると、注解12第2項(1)で「施設費により非償却資産」と規定し、施設費により手当てされる事例を非償却資産に限定したのは何故か。
(2) 施設費による償却資産で、「第84特定の償却資産の減価に係る会計処理」に該当しないことがあるのか。
(3) 注解12第2項(3)の「固定資産」とは、非償却資産及び償却資産の全てが該当することとなるのか。
(4) 注解12第2項(5)は、無償取得資産の非償却資産を取得した場合も、該当するものと考えてよいのか。
(5) 中期計画に定める「剰余金の使途である目的積立金」で「機械・装置」等の償却資産を購入した場合も同様の取扱いとなるのか。(目的積立金で取得した「機械・装置」の減価償却額が損益計算書に反映されないこととなる。)運営費交付金で「機械・装置」などの償却資産を購入した場合は、その金額を別の負債項目である「資産見返運営費交付金」に振り替え減価償却額を取り崩すこととなっているが、それと矛盾することにならないか。それとも目的積立金では、「機械・装置」などの固定資産は購入できないのか。
 (関連項目:第84特定の償却資産の減価に係る会計処理、第79施設費の会計処理)
A
1  地方独立行政法人が固定資産(非償却資産及び償却資産を包含する概念)を取得した場合において、取得原資拠出者の意図や取得資産の内容等を勘案し、地方独立行政法人の財産的基礎を構成すると認められる場合には、相当額を資本剰余金として計上することとしている(注解12第1項)。
2  注解12第2項(1)は、国からの施設費を財源とする事例において、資本剰余金を計上するのは、非償却資産又は会計基準第84の適用される償却資産を取得した場合とすることを規定するものである。したがって、この注解12第2項(1)の文言の「地方公共団体からの施設費により」は、「非償却資産」のみならず、「「第84特定の償却資産の減価に係る会計処理」を行うとされた償却資産」にもかかると解釈すべきである。
3  施設費を財源とする償却資産については、通常、会計基準第84に従って減価償却の処理を行うことが想定されるが、理論上は、会計基準第84にいう特定がされないこともあり得る。
4  中期計画において機械・装置を剰余金の使途として定めれば、目的積立金を財源に当該機械・装置を購入することは可能である。
5  このような考え方を基本にして、地方独立行政法人による固定資産の取得と財源別の貸方科目との関係を整理すると、以下の表のようになる。

取得財 源貸方科目
非償却資産の場合 償却資産の場合
出資
(現物出資も含む)
資本金 資本金
施設費 資本剰余金 資本剰余金
(会計基準第84適用の場合)
目的積立金 資本剰余金 資本剰余金
運営費交付金 資本剰余金
(中期計画の想定の範囲内)
資産見返
補助金等 資本剰余金 資産見返
設立団体からの譲与 資本剰余金 資産見返
使途特定寄附金 資本剰余金
(中期計画の想定の範囲内)
資産見返

取得財源 貸方科目
非償却資産の場合 償却資産の場合
使途不特定寄附金 受入時に収益(受贈益)計上
使途特定寄附財産 資本剰余金 資産見返
使途不特定寄附財産 受入時に収益(受贈益)計上
自己収入 受入時に収益計上

6  運営費交付金で償却資産を購入した場合と目的積立金で償却資産を購入した場合の貸方の整理が異なるのは、前者においては、当該資産を購入するかどうかは法人の裁量に委ねられているのに対して、後者においては、中期計画に定める剰余金の使途についての設立団体の長の認可(法第26条)を経ており、取得原資拠出者の意図や取得資産の内容等を勘案した結果差異が認められるためであり、後者の場合は地方独立行政法人の財産的基礎を構成すると考えるためである。

Q 23―1 行政サービス実施コストについて、「住民等」の負担に帰せられるものとしたのはどうしてか。
A
 行政サービス実施コスト計算書は、地方独立行政法人の行う業務に関して住民等の負担に帰せられるコストを集約して表示するものである。この場合、地方独立行政法人の業務に要する納税者が負担するコスト全体を把握するためには、当該地方公共団体の住民はもとより、その他の地方公共団体、国の補助金等がある場合には、その他の地方公共団体の住民及び国民の負担に係るコストも存在するものであり、「住民等」と整理したものである。

Q 24―1 無償使用資産については、リース会計基準の適用はないと考えて良いか。(関連項目:第29リース資産の会計処理、第75注記事項)
A
 会計基準においては、行政サービス実施コスト計算書において、国又は地方公共団体の財産の無償又は減額使用から生じる機会費用について表示することが記載されている。
 したがって、無償又は減額使用資産については、「リース取引に係る会計基準」(平成5年6月17日企業会計審議会第1部会)を適用するのではなく、この規定に従って、例えば、近隣の地代や賃貸料などを参考にして無償又は減額使用資産に係わる機会費用の計算を行い行政サービス実施コスト計算書に記載するとともに、計算方法を注記することになる。

Q 24―2 委託費の交付を受けて研究を行う場合、従来の委託研究のやり方だと、研究のために購入した資材は法人が委託期間中に地方公共団体等から無償で使用している形になる。このようなものも無償使用コストとして「行政サービス実施コスト計算書」に表示しなければならないのか。
A
 委託費に基づいて資材を購入する場合の扱いについては、委託契約の内容に応じて適切に対応する必要がある。
 例えば、購入した資材の所有権が地方独立行政法人に帰属するとされている場合には、(委託期間経過後に当該資材の地方公共団体等への返還義務がある場合であっても、)その資材の使用は委託契約の一部であり、自らの財産を使用しているため、「無償使用」の問題は生じない。

Q 24―3 国又は地方公共団体からの出向職員に係る退職給付の増加見積額は、機会費用の対象となるのか。また、その場合、表示区分はどのようになるのか。
A
1  退職給付増加見積額を機会費用として行政サービス実施コスト計算書に計上するのは、「第85退職給付に係る会計処理」により退職給付引当金の計上を要しない場合である。設問の趣旨は、運営費交付金に依存しない業務運営が予定される地方独立行政法人(又は勘定)において、国又は地方公共団体からの出向職員が存在する場合の取扱いと考える。
2  退職給付引当金の計上が必要な場合の計上額は、地方独立行政法人の給与規則等において定められている退職給付支給基準等を基に算定することとなるが、国又は地方公共団体との人事交流による出向職員であり国又は地方公共団体に復帰することが予定される職員であって、地方独立行政法人での勤務に係る退職給与は支給しない条件で採用している場合は、退職給付に係る将来の費用は発生しないことから、退職給付引当金の計上は要しないこととなる。
3  このような出向職員退職給与は、当該職員が復帰後退職する際に地方独立行政法人での勤務期間分を含め、国又は地方公共団体において支払われることとなるため、行政サービス実施コストとして認識する必要がある。行政サービス実施コスト計算書における表示区分については、引当外退職給付増加見積額とし、国又は地方公共団体からの出向職員の係るものであることを注記することとする。

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-- 登録:平成21年以前 --