StuDX Styleを活用した研修例

「StuDX Style研修パッケージ」を活用した初任者研修

 
>

 愛知県春日井市(かすがいし)の公立小中学校では、標準仕様で使えるクラウドソフトを日々の授業で利活用しています。
 さらに、春日井市教育委員会が主催するICT研修で、運営及び講師を市の情報教育部会のメンバーが務める形で実施しています。
 今回は、春日井市立高森台中学校で実施された「夏期研修 中学校初任者ICT研修」の様子を参観させていただきました。研修会では、文部科学省「StuDX Style(スタディーエックススタイル)」にある「StuDX Styleを活用した研修パッケージ」の第1~4回の内容を組み合わせながら、アレンジした形で実施されていました。(令和4年9月29日掲載)
 
令和4年8月4日(木)
「春日井市教育委員会 夏期研修 中学校初任者ICT研修(指定)」
 
○「StuDX Styleを活用した研修」について
1.共同編集機能を活用した研修で、先生が協働的に学ぶ体験を
【①クラウドで共同編集機能を活用して各自入力→②活動の途中をリアルタイムに共有→③グループの先生の考えにコメントする】

     

 「StuDX Styleを活用した研修」の資料と標準機能のクラウドツール(文書作成ソフトや表計算ソフト等)を組み合わせた研修が始まりました。
 講師は、春日井市立高森台中学校の水谷年孝校長先生です。水谷校長先生は、1人1台端末を活用した1学期の授業実践の振り返りをクラウド上の表計算ソフトに各自入力する時間を3分間設けました。クラウド上で表計算ソフトを操作する利点は、各自が入力している内容(途中の活動)がリアルタイムで閲覧・共有できることです。入力を終えた後は、グループの先生が入力した内容について、コメントしていく流れで進んでいきました。

 
 

 3分後、水谷校長先生から解説が入ります。
「色々な地区に行くと、よく受ける質問があります。『端末ばかりに向かっているとコミュニケーションが不足しませんか。』という質問です。先生方、どうですか?端末があった方が、かえってコミュニケーションが増えますよね。それは、話したいことを先に整理しているからです。事前に内容を整理しているので、中身のある話に繋がり、コミュニケーションが進みます。」
 その後、入力やコメントした内容を基に情報共有する時間が3分間設けられました。そこでは、どのグループでも積極的に意見交流する姿が多く見られました。

2.一枚の資料から情報を読み取り、デジタル付箋紙を活用し、クラウド上で考えを焦点化・整理する
【①デジタル付箋紙に情報を蓄積→②ほかのグループの活動も途中共有・参照→③蓄積した情報を整理・分析する→④まとめた内容を隣の班に発表する】
 

 次に、水谷校長先生は、「StuDX Styleを活用した研修」第1回「GIGAスクール構想の目的を知ろう」の資料1にある「新学習指導要領とGIGAスクール構想の関係」を示しました。水谷校長先生から「GIGAスクール構想がどうして重要なのか、また今の学習指導要領とどんな関係があるのかをしっかりと理解してほしいです。そのために、必要な情報をこの資料から抜き出して下さい。」という指示があり、先生方はデジタルホワイトボードソフト上の付箋に各グループや各々で読み取った情報を記録・蓄積していきました。各グループでの個人作業でしたが、端末上ではリアルタイムで付箋の情報が追加され、それを見ながら会話が始まるなど、協働的に作業を進めていました。10分という短い時間でしたが、蓄積された情報を分類することや矢印等で考えを整理するなど、各グループでわかりやすく情報を整理する活動が多く見受けられました。

   
 
 この活動では、グループの話合いの様子を共有できますが、他のグループの「途中の様子」もリアルタイムで参考にすることができます。

 

  デジタル付箋の活動が終わりの時間になると、水谷校長先生から研修方法について説明がありました。
「端末ではなく、紙の資料を見て、紙の付箋紙等で行っていた研修スタイルでは、10分でこんなことはできなかったと思います。」
  次は、各グループでまとめたデジタル付箋の内容を隣のグループに説明する活動でした。その活動の前に、水谷校長先生は作戦会議の時間を2分間設けました。説明する内容について、活発な話合いが行われた後、自分のグループでまとめたデジタル付箋を各自の端末で確認しながら、隣のグループに発表していきました。
 春日井市のICT研修では、情報教育部会の先生方が研修の講師だけではなく、メンター役として助言やサポートをしている姿がとても印象的でした。各グループの発表の後には、メンター役の先生がコメントをする場面や初任者の先生の発表内容を補完する場面、価値づけする場面などがあり、とても充実した研修でした。

 

3.StuDX Styleを閲覧し、参考になる事例を選び出し、クラウド上のプレゼンテーションソフトに入力する。
【①StuDX Styleから参考になる事例を収集する→②収集した事例をもとにスライドへ入力する→③スライドに入力した内容を整理する→④スライドにまとめた内容をグループで発表する】

 

 まず、実際のStuDX Style(ウェブサイト)を端末上で開くとともに、「StuDX Style」慣れる・つながる活用事例一覧(66事例:R4/3/4)の資料を紙面でも手元に置き、両方を確認しながら、自分の授業の参考になる事例を探す時間を設けました。参考になる事例や実践したい事例を選び、それをクラウド上のプレゼンテーションソフトに入力していく活動を10分間設けました。その中で、実践したい内容や活動場面等を各自スライドへ入力していきました。スライドの左側を見ると、それぞれの参加者が入力しているスライドも見ることが可能です。講師の水谷校長先生は、初任者の入力状況や進捗状況を確認しながら、その都度、声掛けをして研修を進めていました。
 時間になると、グループでアウトプットする場を設けました。各グループでスライドにまとめた内容を情報共有しながら発表していき、発表後は、メンター役の先生から総括的なアドバイスをもらい、理解を深めていきました。
 


 研修のまとめでは、水谷校長先生が「StuDX Styleを活用した研修 第4回【資料6】『1コマの授業の流れ』意識した1人1台端末の活用シーン(例)」を提示し、「この資料を参考にして、自分の授業や子供達の学びのために積極的に活用して欲しいと思います。」とまとめました。

【初任者の感想から】
・ICTの活用では、他の先生の授業の様子から学ぶことしかできていませんでした。こうやってStuDX Styleに多くの事例が掲載されていることを知り、今後も参考にして活用をしていきたいと思いました。
・デジタル付箋を活用した研修を経験して、今後、授業でも活用していきたいと思いました。
・GIGAスクール構想について、大事であるということは知っていたのですが、どうして大事なのか、また背景にどういうことがあるかについては、あまりわかっていなかったので、それを改めて資料を見ながら、自分たちで整理することで、理解が深まる貴重な機会となりました。
StuDX Styleを初めて知ることができて、大変参考になる事例が豊富で、非常に勉強になりました。

【水谷年孝校長先生から】
 各校で基本的な活用方法はすでに学んではいますが、現在のGIGAスクール構想の環境下での授業を受けたことがない初任者にとって、単なる操作研修ではなく、実際の場面で活用しながら体験することは、とても重要なことです。また、GIGAスクール構想がどうして重要なのか、学習指導要領とどのような関係があるのかをしっかり学ぶことも今後の授業実践のために重要なことです。この内容の説明をただ聞くだけでなく、実際にその環境を活用しながら学ぶことで、さらに理解が深まります。このような2つのことをねらって、計画的に研修を行っています。

 


※写真の無断転載を禁止します。
 
(文責:GIGAStuDX推進チーム)