平成29年3月24日(金曜日)9時00分~11時00分
文部科学省 3階講堂
斎藤委員、地下委員、髙橋委員、田中委員、次原委員、中野委員、土方委員、松崎委員、間野委員、三沢委員、山本委員※欠席:ジム・スモール委員、長谷部委員 ※合同会議の出席者として、スタジアム・アリーナ推進官民連携協議会、スポーツ経営人材プラットフォーム協議会より、赤羽氏、市原氏、太田氏、大河氏、大塚氏、木村氏、小林氏、坂井氏、林氏(代理:島田氏)、村井氏(代理:佐藤氏、中村氏)、山内氏が出席。
(各委員の主な意見)
○中学校で活動しているスポーツクラブで年間1億円の事業規模のところがあるが、全国に中学校は1万校あることを考えると、学校を中心とした民間のスポーツクラブが部活動を担うという発想は一つの成長産業のドライビングフォースになる。
○各地方自治体にスポーツ人材バンクの組織があるが、機能していない。民間の知恵を活用して、部活動等の外部指導者のマッチングを進めることが必要。問題点は、雇用に結びつけるための待遇の改善。
○競技団体の特性を十分に意識した経営力強化、人材の育成が重要。オリンピックを目指す競技団体と、収益型・興行型の団体に分類される。スポーツの国際戦略は、競技団体が大きな役割を果たす。JOCの進める方向性をしっかりと競技団体が追随できるバックアップが必要。
○JOCの国際人養成アカデミーや、Jリーグが運営するSHC(Sports Human Capital)、トップリーグ連携機構の講座等の出口と直結したアカデミーの存在は非常に重要。 今後スポーツ経営人材の育成・活用に取り組むにあたって一番重要なのは運営事務局で、SHC等のプロフェッショナルと組むことが考えられる。管理、ガバナンス、マーケティング、競技力向上等を総合的戦略的にマネージメントできる人材のプラットフォームを運営することが大事。来年度も稼働させていくため、国のバックアップが必要。
○業界を良くするために最も重要なのは人材だが、人材をスポーツ界に呼び込むには、ある程度お金が回る業界にしなければいけない。これまでのスポーツ界では、適切な対価が発生していなかった。アマチュアスポーツでも会員を組織化して、データベースを確立すれば、それをプラットフォームにしたビジネスの可能性がある。
○スポーツ・健康の国際戦略について各省庁の協力体制が必要。日本の強いところは健康長寿とスポーツの連携、あるいは大衆的なスポーツが充実している点で、中国からも日本に学びたいという需要があるが、そういった強い点を前面に出していかなければいけない。
○障害者スポーツとして柱を立てるというよりは、それぞれの柱の中で視点を持ち、障害をもった子供たちが当たり前に参画できる機会を作ることが必要。10年、20年先を見据えると、団体の経営基盤強化には、重点的に障害者スポーツを巻き込んでいただきたい。出口が用意される人材育成の取組については、障害者スポーツに関わりたい人材を優先的に、投資的に割り当てるといったことも考えられる。
○女性の社会的な進出は、女性のスポーツ率の向上には必要不可欠であるとともに、とてつもない消費を生み出す。アメリカでは1ブロックに1つ、スポーツジムがあり、その横には女性が髪をセットするための美容室が増えているなど、スポーツの最前線のシーンには、男性陣が気付かなかったようなイノベーションが生まれている。
○アスリートのキャリアデザインで最も大事なのは、インテリジェンスはすごくあるが、何らかの理由で、スポーツ界を活躍の場に選ばないような人の卓越した部分を、スポーツ界でもっと引退後に引き出してもらうこと。競技力の面では思うように活躍できなかったけれども、スポーツならではのインテリジェンスを持つような人材への着目が重要。
○トップリーグ連携機構ではキャリアデザイン・セカンドキャリアと依存症という2つの問題に取り組んでいる。スポーツ選手は勝ちに執着する傾向があることもあり、ギャンブル依存といったことが多少潜在的にあるのではないかと思っている。
○指導者を地域の部活動等に派遣する際には、指導者のコーチングスキルを上げないと、現場でうまくいかない。指導者の資質向上のためのアカデミーをビジネスとして回せないか。
○スポーツの周辺産業の分野でアメリカが強いのは、競技スポーツとスポーツ産業の循環による市場拡大により、世界のマーケットを支配している大企業があるから。日本の国内でも、企業があげた収益をスポーツ界に還元し、産業として成長する仕組みをつくることが重要。女性がスポーツに関心をもつためには、ユニフォームを格好よくすることが大事。デザインには、それだけで選手たちを生き生きさせる力がある。
○スポーツベッティングについては、合法化の是非と、対策についての議論がある。世界におけるスポーツベッティングの規模は300兆円程度、日本のGDPの60%ぐらいで、イギリスなどでは日本のJリーグも相撲も野球も既に対象になっている。アメリカでも四大プロスポーツはこれまでギャンブルに対して関わらないという姿勢を明確にしていたが、最近は風向きが変わってきた。八百長監視システムや教育等も含め、包括的な検討をすべきではないか。
○大学スポーツ振興に関する検討会議において、大学トップ層の理解の醸成の必要性が掲げられた結果、多くの私立大学等でも、実際議論が始まり、全国大学体育連合による、大学体育教員の意識醸成の活動も広がりつつある。教育の世界に儲け主義を導入するものだ、という誤解に対しては、学生主体のスポーツが質を向上させるために、稼ぐという手段がある、という考え方を理解してもらうことが必要。大学の職員に対する意識の醸成のためには、文部科学省、高等教育局の更なる後押しが必要。
○スタジアム・アリーナ改革や大学スポーツ振興等についての理解は高まってきているが、もっとグローバルスタンダードの視点に立って考える必要がある。大学スポーツにしても、事故のリスクをどうするかといったマイナスから出発する話から始め、それを踏まえて何をやっていくかという議論が必要で、ただNCAAを作ればいいということではない。それぞれの大学が改革をしていく意思を持てば、最終的に収益力の拡大にもつながる。
○スタジアム・アリーナ改革において民間資金を導入する際には、行政職員だけでは対応しきれない専門性が必要になるので、経営の人材という視点は非常に重要。弁護士としてみても、スポーツ業界はコンプライアンスの強化・徹底が必要。民間資金はいざとなれば資金を引き揚げてしまうかもしれないという視点を従来のコンプライアンス指導にも加えて頂きたい。
○今後、スポーツ人口という観点では、ますますシニアの割合が増えてくることが考えられるが、その割にはマスターズという言葉が余り聞かれない。競技性が高いというイメージがあるのではないか。経営者とスポーツ団体の役員がスポーツを通じて交流する機会があれば、お金も集まる。そのようなアイデアを出すような組織がマスターズの組織の中にもあればよい。
○スタジアム・アリーナ改革において、民間事業者が参入すると、公的な目的と民間事業者の目的が異なるという問題が出てくる。体育館を使った収益的な事業を行った結果、市民の利用にしわ寄せがきてしまうという問題。自治体が中心となり、施設の目的を明確にして事業を行う必要がある。競技団体をみていると、収益構造が旧態依然で新しいビジネスモデルが生まれてこないという点に問題があり、経営基盤強化には経営人材の育成・活用が重要。スポーツ界でも、プライシングをもっと工夫すると、様々な面で収益の拡大ができる。大学のアメリカンフットボール部の部長として学生の活動をみているが、大学のスポーツ振興についても同じく収益モデルの改善が必要。
○スポーツ人材の育成というテーマにおいて実際に施策を展開していく際には、経団連として貢献ができると考えている。是非お声がけをしていただきたい。
○スタジアムの整備は長い時間がかかる。このような議論を常に継続、更新してもらいたいし、スポーツ未来開拓会議を東北や四国で開催するというような地域への直接のアプローチもあってよいと思う。グラスルーツの世界では、クラブハウスの環境を変えていかないといけない。
○日本の場合ではいわゆる補助金に発想がいってしまうがそうではなく、官民が連携・協力するということが重要。スタジアムの整備ではプロ野球などでもよい事例が出てきている。欧米では、スタジアムを保有して、柔軟に改築していくことで収益モデルを作っており、その収益がリーグ全体の利益、競技力にも影響している。官民が連携・協力は大学でもなされるべきで、スポーツブランドと大学が協力してお互いのブランド価値を上げていくことで収益が生まれ、それが大学にも還元される。
○沖縄でアリーナのプロジェクトをしているが、非常に時間軸が長い。スタジアム・アリーナが国のスポーツの未来を10年、20年、30年単位で変えてしまうという意味では、日本再興戦略の目標である2015年から2025年というタイムスパンはまだまだ短い。アリーナを作ればすぐ変わるものではない。現在のアメリカのトップスポーツと日本のスポーツとは競技力のレベル以上に、環境が余りにも違い過ぎる。これは20~30年の積み重ねであり、それくらいの覚悟で方向性を提示するべき。
○スタジアム・アリーナ改革は近年進められている都市開発のように、建設までの官民連携による協議やエリアマネージメントのような組織を作ったりすることが重要になってくると考える。建設期間の短縮には限界があるので、期間中に建築後のソフト、ハードのことをどれだけ話し合えるかが重要。施設整備については、スタジアムを核にしたまちの活性化など、地方創生等の色々な政策との組み合わせが考えられる。
○NFやリーグはコンテンツホルダーであるが、元々スポーツ界で産業とは最も縁遠い位置にあった。今後のスポーツ産業を考えれば、コンテンツホルダーの成長が重要になるし、今後は色々な事業計画を具現化していく必要がある。スタジアム・アリーナに関しても、時間軸の長い話ではあるが、良いモデルになるところに関与していきたい。BリーグやJリーグ等が現場に人を投資できるような仕組みをつくり、リーグと現場との間の人材の循環を実践的に行いたい。
○県からプロチームに、選手の一部を部活動に派遣することはできないかという依頼がある。選手の持つノウハウを地域のお年寄りの健康増進につなげられないかということも検討している。石川で成功例を作りたい。
○実際に経営人材の育成に2年間取り組んだが、一般のビジネスパーソンにもスポーツビジネスに関わりたいという潜在的ニーズがあり、スポーツ団体においても経営人材を活用しようというニーズがあって実際にマッチングの実績も出てきている。今後もさらに事業を推進していきたい。
○今後29年度版、30年度版の報告書を出していくという形で、どんどん時代の変化に対応していくということが良いのではないか。
スポーツ庁参事官(民間スポーツ担当)
-- 登録:平成29年06月 --