平成28年5月20日(金曜日) 10時00分~11時30分
経済産業省 本館17階 国際会議室
(東京都千代田区霞が関1-3-1)
斎藤委員、高橋委員、田中委員、中野委員、橋本委員、土方委員、松崎委員、間野委員、三沢委員、山本委員、ジム・スモール委員 ※欠席:長谷部委員、次原委員
(各委員の主な意見)
○メジャーリーグのオールスターゲームは、1試合のゲームに対して、1週間のMLBの祭典として「お祝い」イベントとして位置づけられている。 ファンはもちろん、MLBのパートナー・スポンサーに対してのホスピタリティという意味合いもある。スポーツ・ホスピタリティという考え方は重要な要素になってきており、マーケティングミックスとして非常に重要な位置づけ。MLBスポンサー/パートナー各社の取引先に対してホスピタリティをしたいということで毎年需要や要望が増え続けている。
○IOCのアジェンダ2020でも指摘されているとおり、スポーツの試合単体では無く、トータルなイベントとしてプロモーションをすることが重要。スポーツの興行をする団体などに対して高い課金をすると、スポーツ団体や観客のチケット代に跳ね返ってきてしまう。スポーツをする人からはなるべくお金をとらずに人を集め、スタジアムの中でショッピングをしたり食事をしたり、他のところで課金・マネタイズをしていく仕組み、いわゆるマルチサイドプラットフォーム型ビジネスが必要。スポーツ興行がOne to Oneのビジネスモデルではないことを記述したほうがよい。
○基本的な考え方の前にビジョンを出すべき。この会議がビジョンクリエーションの場で、目的・ビジョンを提示して、方向性を決めていくことが大事。アメリカでは、ケネディ大統領が「ムーンショット=人類を月面に着陸させる」というビジョンを掲げ、そのビジョンに向かって資源を集中させて基幹産業を伸ばした。例えば東京オリンピックを黒字化するというビジョンを掲げることで、それぞれの取組に紐づき全体最適につながる。
○基本的な考え方の中に、障害者スポーツも、健常者のスポーツと一緒であるということを入れてほしい。掲げられている課題はすべて障害者スポーツもくくられているはずだが、スポーツ庁やスポーツ基本法によって障害者スポーツもスポーツが統合されているとはいえ、都道府県行政の窓口に聞いてもまだまだ区別がされている現状。大前提として、障害者の有無に関わらず、健常者も障害者スポーツも課題のすべてが同じ傘のもとにある。
○経営人材の育成・確保について、「国際的な」という言葉をいれたほうが良い。事例の中に、Jリーグに加えて、国際的な経営マネジメント人材育成としてTIASの取組を加筆してはどうか。IOCやFIFA 、UEFAがどのようなスポーツマネジメント人材を育てようとしているか、競技団体も含めたコンソーシアム型の体制が必要。
○今後人材育成プラットフォーム協議会ができた場合には、現在の取組を素材にして、より良いものは何かについて議論していただきたい。
○スポーツを産業として捉えることは、始まったばかり。日本の産業特性を捉え、将来の産業像や新たなビジネスを生み出す仕組みについては引き続き議論が必要。
○日本企業全体の傾向として、新しいビジネスを生み出す力、イノベーション力が低下している中で、スポーツ産業として独自のエコシステム、新しいものを生む仕組みや仕掛けを継続的に考える必要がある。
○IoTを使った新ビジネス創出は重要なテーマ。日本のIoTサービスは、データや製造業を起点とする欧米とは異なり、スマートサービスの方向へ進んでおり、スポーツを積極的に捉えることが可能。
○国際的な人材育成は非常に重要で、また国際人として「日本は何を考えているのか」ということや、日本のスポーツの功罪などを整理してまとめるシステムが必要。そのことで、国際的な場に出たときに、我々が発言をする中で、情報収集や情報戦略ができると考える。
○スポーツ産業の活性化でコア・リソースになるものがアスリート。コア・リソースとしてのアスリートが有する個々の資質や能力を整理していくことが、国際発展、スポーツ産業の収益力にもつながる。
○各競技団体(NF)がガバナンスや統率力、指導力を強く持つことが、競技の成長に不可欠。収益力の強化を実現するためには、具体的なガバナンス強化策が必要であり、それを実践する人材が少ない現状も課題。
○保守的な考え方の人たちがNFの中で組織を構成していることや、公益性の観点で、収益に対する自由な発想ができていない。NFは、収益力の強化だけでなく、ガバナンスや指導力強化について強調してほしい。
○「体育」から「スポーツへ」という言葉は必要なのか。学校体育を充実することで、スポーツ参加人口を拡大させることにつながるし、女性のスポーツ参加、障害者スポーツ理解にも貢献できる。
○企業スポーツのことがほとんど触れられていないので、企業スポーツの経営力の強化や新ビジネスの創出について記述してはどうか。
○子供の頃から楽しむスポーツ環境の整備について、ほとんど運動部のことになっている。家族で楽しむ、地域コミュニティで楽しむといった豊かなスポーツライフという面からの記述がもっと必要。
○運動部活動に関しては経済格差がスポーツ格差も生んでいる。学校の運動部では安価にスポーツに親しむことができ、日本のスポーツのシステムの中で非常に重要な役割をもっている。運動部の運営の仕方の視点も盛り込んでほしい。
○日本が優れている点を伸ばす視点も重要。規律正しい生活習慣、ホスピタリティ精神、清潔な生活などは、子供の教育に生かせる日本が持つ特徴といえる。アジア各国で関心が高いのは日本のヘルスケア分野で、日本の健康づくりを学ぼうという意識が非常に高いので、日本が有する特性を生かしたアジアへのビジネス展開を考える必要がある。
○シニアのスポーツを開発し、学校の校庭や体育館を活用して、学童とシニアが出会う場を作り、そこで体育・スポーツをする仕組みがビジネスにもなり得る。また、学校や企業の運動会もビジネスにつながる可能性がある。
○「体育からスポーツへ」という言葉の表記については、懸念も含め異論があるかもしれないが、日本人が持つスポーツと体育に対する特有の混同意識に対して変化を促す強いメッセージとして文言を残してはどうか。言葉が不足している部分については、誤解のないように説明を補足してほしい。
○bjリーグの24チームある中で、黒字化のチームは約60%で平均1500~1600人の動員があるが、チケット販売による興行売上のほとんどが遠征費に消えるため、他の部分で利益を上げる必要がある。
○例えば、アオーレ長岡はスポーツを核にした取組で、自治体がお金を投入している。施設の利益はあがっていないが90%稼働していて、駅前のシャッター街がすべて解消され、商店街全体の利益が上がっている。スポーツをまちづくりや都市開発の計画とマッチングさせたり、スタジアムやアリーナの周辺でバーベキューができたり、スポーツ施設の稼働率ではなく、スポーツを通じた利益率を上げる具体策について広い視野で考えて、スポーツを通じて地域にお金を循環させることが重要。
○NFだけでなく、2000年とそれ以降に向けた、JOC、日本体育協会、JPCなどの統括組織の活性化や融合も必要と感じている。強化と普及は、より一体化していくことが必要だが、現状感じられない。
スポーツ庁参事官(民間スポーツ担当)
-- 登録:平成28年06月 --