スポーツ未来開拓会議(第4回) 議事要旨

1.日時

平成28年3月16日(水曜日) 14時00分~16時00分

2.場所

経済産業省 本館17階 国際会議室

(東京都千代田区霞が関1-3-1)

3.議題

  1. スポーツ×テクノロジー

4.出席者

委員

斎藤委員、高橋委員、中野委員、橋本委員、長谷部委員、土方委員、間野委員、三沢委員、山本委員 ※欠席:ジム・スモール委員、田中委員、次原委員、松崎委員

5.議事要旨

(各委員の主な意見)
○スポーツの産業化を目指すにあたって重要なことは、いかにICTを使ってカスタマーエクスペリエンスを最大化するか。ビジネスでのIT活用は、ファンエンゲージメント、チームパフォーマンス、ベニューオプティマイゼーションの3つがポイント。それらを全て一人もしくは一つの会社が一点で見られるようにする(シングルビュー)ことで、全てを最大化し、最適化することができる。
○ファンエンゲージメントでのIT活用としては、個人の属性や特性、好みといった情報がネットワーク化され、スタジアム・アリーナの売店等で、店員が顧客のニーズに合わせた情報を提供することが考えられる。そうすることによって顧客の消費促進につながる。
○チームパフォーマンスでのIT活用は、技術が進んでいて、アメリカやヨーロッパでは五感の可視化やけがの予防にも活用されている。
○アメリカのLevi’s Stadiumでは、チケットの購入からスマートフォンで行い、駐車場の空車状況、駐車場から座席までの導線といった情報が、スマホで確認できる。そのため、7万人が集まるスタジアムでもストレスが少ない。
○日本ではカスタマーエクスペリエンスの観点がないので、ITの活用は遅れているし、ビッグデータの議論には到底及ばない。海外の事例から学び、マイナスの状態からフラットまでもっていく必要がある。
○日本は、東京都内ですら、トップリーグがゲームをするときであっても、体育館のWi-Fi通信環境が整備されていない。そもそも技術が使える環境ではないのが日本のスポーツ施設の現状。その現状は、データアナリスト、オぺレーションの仕組みを理解している人材の不足につながっている。スポーツ施設に技術が整備されていても、その技術を最大化するためには、外部発注して余計に費用が発生するに全て任せることになり、ますますお金がかかる悪循環になっている。そういう意味では全てを回せるオペレーターの育成が必要。
○Bリーグがソフトバンクとスポンサー契約したことによって、全試合がライブ配信される。そのため、36球団のアリーナ全てにWi-Fi通信環境が設置されることを期待している。コンテンツに関しては、通信業界の競争が必要だと思うが、インフラ整備に関しては行政が積極的にバックアップしていくことが必要だと感じる。
○さまざまな情報が、デジタル化する中で、トップレベルの選手たちの映像や画像など、体を動かす技術の特許、選手への見返りがあるような、アスリートの特殊な技術を評価する仕組みが必要。
○スポーツ×テクノロジーだけでは価値の創造にはつながらないと痛感した。これにクリエイティブという考え方を加えて、人の心に訴える力がなければ新しい価値の創造ができないと感じた。
○IT利用の促進については、スポーツに限らず進んでいない。ITの活用というのは、新しいビジネスや市場をいかにつくるか、どのようにアイデアを産業化していくかが重要なポイントだが、日本の場合、技術やハードが先行して、ビジネスで稼げる形にすることころが根本的に弱い。
○民間企業は、将来に備えて投資や新たなことに挑戦する必要があるが、リスクがとりにくい環境がある。設備投資調査でのIoT利用への回答は、検討を含めて2割くらいの企業しか検討しておらず消極的で慎重な姿勢。
○目的を共有化して、公民がパートナーシップを組んだプロジェクトやオープンイノベーション的な場が必要。社会ニーズと技術の仲介者、コンサルティング、プロデューサーの役割を果たすような企業を育成することも必要。
○ビッグデータを共有できるプラットフォームを作り、ヘルスケア、健康、子ども、ユーザーの裾野を広げるいろいろな組み合わせ、ビジネス展開など、稼げる形を複合的に考える必要がある。
○スマートフォンの普及によってICTが非常に身近になった。フィットネス業界でも、ウェアラブル&アプリでフィットネス革新をという特集が組まれるほど定着している。
○理論的な技術は分かってきているので、その技術を活用して、あまねく人々にスポーツを行ってもらうためには行動経済学を取り入れた議論も必要だと思う。スポーツクラブに来ない人たちを、やる気にさせるためには、どのようにアプローチするのか。アプリを活用したお知らせ機能の自動化など、高度なものではなく比較的単純な技術を心理学的な側面などからも活用することによって、運動をする人が増え、健康寿命につながると考えている。
○スポーツを通じて、一般の人や他の分野に技術が応用されてビジネスにつながると感じた。もっとパラスポーツに注目して、例えば、義手、義足、車いすといった最新のテクノロジーは日常の生活に役立つものだと思う。パラスポーツをサポートすることからスポーツをビジネスにつなげるといういいストーリーができる。
○「超福祉展」というイベントでは、障害と交わる仕組みとして、引っ越し屋さんとパワースーツを組み合わせる、テクノロジーの拡張機能が紹介されていた。もともとは、障害者のために開発された技術が、高齢者など歩行機能を補うものとして、一般的に提供でき役立つものになる。
○クリエイティブ、ファッションと組み合わせれば、おしゃれな機能拡張スーツや医療分野での応用など、マーケットは世界に広がり、世界の障害者だけではなく、世界中の高齢者、治療中の人につながる。
○bjリーグでは、試合会場の天井にカメラを設置して、そこで得た情報の共有を監督と選手で試みたことがある。しかし、映像を解析して活用するまでのノウハウや人材が未熟で、活用には至らなかった。それらを活用できる人材育成が必要。
○テクノロジーは、選手の技術向上や子ども向けのスクール事業で指導に活用できるし、プロ選手の映像と自分の映像を重ね合わせて比較できるようなデータビジネスも考えられる。
○バスケの試合を会場の2階席から撮影した映像を見ることによって、オフェンスとディフェンスの距離感が分かったり、プレイを予測したりする感覚が身につく。子どもの頃から、テクノロジーが身近にあることによって、感性のいい子どもが活躍する選手になりえる。
○経団連が行うオリパラ推進委員会では、トヨタやパナソニックなど、企業から140名くらいが参加してディスカッションをしている。経団連のメンバーとトップアスリートが組んで、日本全国を回る企画を検討している。注目される機会の少ないスポーツ種目や選手を盛り上げることが狙い。
○バレーの川合俊一さんや水泳の寺川綾さんなど、アスリートの言葉は実体験をもとに話すので、感動的で心に響く。経済界とトップアスリートが組むことによって、情報の伝わり方が広がると思っている。権利や法律を詳しく理解していないが、現場でのIT活用として、LINEのスタンプを販売するなど、収益事業にできないかを考えている。
○テクノロジーは、競技力向上、障害者、高齢者、する、みる、支える、それぞれのスポーツに活用できて発展につながると感じた。世界的に活躍するアスリートは、その人にしかできない技や動きを持っていて、アーティストともいえる。しかし、特許のような仕組みはなく、その権利で稼ぐことはできない。アスリートがもつ特有の技などを特許として証明することできれば面白い。
○スクリーンタイム(画面視聴時間)が長い子どもはスポーツ実施率が低い。子どもは、スクリーンに対するアレルギーがないので、テクノロジーを使うことによって、スポーツに引き込むことができると思う。20~30代の若い世代にも同じことがいえる。
○バーチャルを含めて、観るスポーツが活性化されて、ファン拡大の点では成果が出るように思う。我々は、する側のサポートを考えている団体なので、「観る」から「する」への行動変容について、スポーツファンからスポーツを実施する人を増やしていく取組について考える必要がある。
○大学の体育授業でもICTの利用は始まっている。内容は、カメラやドローンを使って自分の動きを撮影して、フォームの解析や練習の記録、コーチングに役立てている。中学、高校ではコーチがいないスポーツ現場もあるので有効な技術。
○今後は、スキルの学習に活用するだけでなく、目標設定や実行計画など、PDCAサイクルのマネジメントや心理的に成長するサポートなどにも活用が広がり、コーチがいなくても練習ができたり、効率的なタイムマネジメントができたり、デュアルキャリアの取組にもつながるように思う。
○組織委員では、アクション&レガシープランを作っているが、スポーツとテクノロジーを掛け合わせるような会議はないので、未来開拓会議や総務省の議論に期待している。日本・東京の魅力をアピールできる幅広い提案をしてもらい、一つのプラットフォームとして集約したい。
○チケット観戦料、フィットネスクラブ会費、スポーツ専用の有料アプリなど、実際の個人消費支出につなげなければGDPは上がらないので、様々なテクノロジーの活用によって、スポーツへの個人消費を倍増させる策が必要。
○テニスラケットにセンサーを付けて、振動によってボールの速度や回転が分かる商品があり会員獲得にプラスになっている。スポーツクラブが提供するテニスやゴルフサービスの付加価値として、デジタル商品は活用でき、スポーツ実施者の拡大につながる。
○センシング技術とICTの組み合わせは、アスリートが持っている暗黙知をデータ化して、例えば、錦織選手と自分のフォームが比較できたり、鈴木長官のバサロの映像を購入できるアプリがあって、課金されたら鈴木長官の収入になるといったことも考えられる。アスリートの引退後のセカンドキャリアにもつながる議論かもしれない。
○スポーツ時のセンシングを活用したマーケットは大きく、パーソナルバーチャルコーチや一般的な健康管理など、企業も注目を集めている分野で、新たな商品、サービス開発によって消費拡大も出てきている。
○議論自体がグローバルスタンダードから10年遅れている。紹介のあった技術は、アメリカではすでにサービスとして実用化されている。世界では、IBMやSAPなどの大手企業がITに莫大な投資をしている。日本の技術に対する現状を謙虚に受け止めて、世界から学び、日本では何をすべきかの議論が必要。
○国立スポーツ科学センターや都道府県のスポーツ科学拠点体育センターがあっても、科学技術やITを活用したスポーツ技術の知識が、中学校の体育教員や小学校まで浸透していない。小手先の議論ではなく、実行につながる大きな道筋が必要。
○アスリートが持つ人間の体の奥深さは、他人が簡単に真似することはできない。それがアスリートの素晴らしい部分であり、アスリートがもつ特有の情報を守ることよりも、データ収集や分析によってトレーニングが改善されることのほうが重要。
○コンテンツを作る側として、スポーツへのテクノロジーの応用は、ゲームを含めて多様な可能性があるが、議論だけでは進まない。スポーツ現場において、テクノロジーを実際に使って、アスリートが実践するようなチャンスを多く作ってほしい。

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スポーツ庁参事官(民間スポーツ担当)

(スポーツ庁参事官(民間スポーツ担当))

-- 登録:平成28年06月 --