平成28年2月24日(水曜日) 15時00分~16時30分
経済産業省 本館17階 国際会議室
(東京都千代田区霞が関1-3-1)
間野座長、斉藤委員、ジム・スモール委員、高橋委員、田中委員、次原委員、中野委員、長谷部委員、土方委員、松崎委員、三沢委員、山本委員
(各委員の主な意見)
○産業化の一丁目一番地はスタジアム・アリーナ改革。熱狂空間をスタジアムやアリーナで作ることによって、放映権も上がる好循環が生まれる。稼いだお金がいろいろなものに投資されることによって、スポーツが本来もつ健康、教育、セカンドキャリア、障害者スポーツ、地域活性化の課題解決につながる。日本がスポーツビジネスを通じて経済活性化を図るには、スポーツに対する考え方やコストセンターのイメージを払拭して、本来スポーツがもつポテンシャルを見出すことが必要。
○Jリーグはプロスポーツとして成功したと言われているが、スタジアムの観点では世界的なレベルで見たら大失敗。2002年のW杯で作られたスタジアムが札幌を除いて全て赤字。同じように、新国立で失敗するとまた世界の動きから10年、20年遅れてしまうことになる。新国立の立地は最高で、複合施設にもできるので、後利用まで考えて世界に誇れるものを提言しないといけない。また、新国立建設計画については、責任者が誰なのか不明確である。
○スーパーボウルが行われたアメリカのLevi’s Stadiumは、新国立と同じ1,500億円で官民協働の努力によって建設され、今では莫大な利益を生み出している。ドイツのブンデスリーガも、2006年のW杯に向けて、アメリカの事例を勉強してスタジアム整備を行いうまくいっている。
○日本のスポーツは教育的価値をすでにもっていて、海外からも注目されている。大学スポーツは、これまでの教育的価値に加えて、産業的価値を見出していくことが必要。筑波大学では大学スポーツの産業化について学長・教員側では賛成されている。一方で、大学職員は、既存の考え方で冷静に判断してくる。震災後に体育館の改修を検討し観客席の設置の議論をしたが、するスポーツを重視した従来の規格でしか考えていない。大学スポーツの産業化について、国立大学法人を動かそうと思ったら国からのトップダウンによる連動が必要。
○スポーツの財とは、無形財として選手が競技を通じて培ったポテンシャル。このポテンシャルは個人によって異なるものであり、競技以外でも使えるライフスキルとして活用を促すキャリアプログラムが未整備。現状、職業訓練プログラムやデュアルキャリアプログラムはある。競技引退後の自己のアイデンティティ再構築にあたって、身につけたスキルの整理・応用など体系化して取り組むことが必要。
○MLBはベースボールビジネスではなく、エンターテイメントビジネスとして捉えている。すべてカスタマーフォーカスで観客のニーズを大事にし、スタジアムに滞在する3時間をどれだけ楽しいものにできるかが重要。そのためにチケットやフードをいかに買いやすくするかなど、ゲームのスコアと天候以外は全てコントロールするつもりでビジネスを行っている。
○ルネサンスとしてスポーツクラブ事業の安定化を考えた場合、基本的にはスポーツが好きな人たちだけでなく、スポーツをしない人とシニアを巻き込んでいくことが必要。これまでもスポーツを行わない人たちへのアプローチは企業などと取り組んできた。スポーツに疎い人々がスポーツをすることに喜びを感じるという観点でもう一度スポーツ産業を捉えなおしてはどうか。例えば、テレビゲームなどはスポーツの敵ではなく味方になり得るものであると考えている。
○ブラインドサッカーは、昨年、一昨年と有料で国際大会を開催した。それまでは野球場の外野スタンドが観客席となり、観る側にとってサッカーを楽しめない環境だったが、原宿という立地で、観る環境を整えて2つの大会を開催し、チケットの平均価格を値上げすることができた。障害者スポーツであっても競技の魅力をしっかりと伝えることができればお金を払ってもらえることを実感した。一方、施設の利用に関しては条例の制約があり、料金設定で1万円とるコンサートと1,800円のブラインドサッカーが画一的に扱われるなど、公と民の線引きの問題が存在。
○アルビレックス新潟は、スタジアムを盛り上げるにあたって、お年寄りが子供を連れてきたらタダにするという取組を行った。強豪ではないチームが集客できたのは、試合を見に来た家族が、試合の結果ではなくスタジアムの雰囲気について食卓で話すことによって、観るスポーツが語るスポーツに変わったことが大きな要因。地方には娯楽が少ないので、街ぐるみでスポーツを盛り上げてくれるし、田舎では選手がヒーローとして語られる。また都会でも地域に密着しているチームは街ぐるみで応援される。地域の波及効果も踏まえた、企業誘致ならぬプロスポーツチーム誘致もあるのではないか。
○Bリーグは、30億のスポンサーがついたので、ビジネスとしての発展にも大いに期待している。一方で、協会・統括団体は、スポーツ産業、スポーツビジネスがどうあるべきかを自ら考えるべき。Jリーグは、一つの成功モデルであり参考になるが、各競技団体やリーグが充実していくためには、各協会がオリジナルの大きなビジョンを描き、方向性と目標に向かって方策を考えることが必要。
○かつては、公園で自由にキャッチボールやボールを蹴って遊ぶことができたが、今では不自由な環境が増えて、将来のスポーツ産業の顧客を創造できるのに、むしろスポーツ嫌いを作っているのではないか。それはメーカーにも突きつけられた課題だと感じている。そうした、規制を作っている今の組織に対する検証が必要。既存の組織にある問題点を解決することによって、子どもたちがスポーツに触れる機会の改善につながる。また、新しいスポーツ産業に対するマネジメントの必要性も生まれていると感じる。例えば、10年前に始まった東京マラソンは、今では市民ランナーが増え、東京だけでなく地方にも派生して、新たな産業が生まれている。
○観るスポーツの観点でスポーツ施設を思い浮かべてみたが、残念ながら地元自治体にはそういったスタジアムやアリーナがない。新国立はナショナルスタジアムとして、エンターテイメント性のある素晴らしいスタジアムを作ってほしい。一方で、公共スポーツ施設は赤字運営であり、施設の収益化という考え方は地方自治体にも当てはめられる。例えば、学校には温水プールがあるので、これを民間のスイミングクラブに管理させて収益を上げて、その収益を育成に回していくということも考えられる。新国立のような大きな施設の収益化の議論は、実は地方自治体の小さな施設にも当てはまる話。
○また、地元の公園では改修を予定しているが、この場所の特性を活かしてスポーツを観せる場として活用していきたいと考えている。収益にはつながらなくとも、障害者スポーツのウィルチェアラグビーや車いすバスケのイベントを月に1回開催するなどすれば、情報発信につながる。
○既存の組織を変えるためには、まずは人の意識を変えなければならない。週1回の運動実施率が40%のところを10%あげるだけで非常に大きな経済効果になる。オーストラリアなどは週1回の運動実施率が70%に上る。日本においては、定時に帰宅してスポーツをするような雰囲気が組織全体として希薄なので、国を挙げた施策として国民に運動習慣を定着させるような啓発をしていく必要がある。
○日本スポーツ振興センターの施設利用料の見直しが必要。規模が小さな団体であっても興行やスポンサー付のイベントを目的として使用する場合は、高い利用料をとられてしまう。その結果、例えばなでしこリーグは試合に見合った料金設定をすることができず、無料の試合をやらざるを得ない状況がある。
スポーツ庁参事官(民間スポーツ担当)
-- 登録:平成28年06月 --