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3−4  導爆線の機能喪失の可能性についての検討
 これまでの検討結果から、ホルダBが溶融・破孔したことにより燃焼ガスが後部アダプタ内に漏洩したと推定しているが、この現象により導爆線が機能喪失に至る可能性について検討する。

(1) 導爆線の加熱試験
 導爆線が高温の燃焼ガス等の熱環境にさらされるケースを想定し、温度上昇時の挙動を確認するため、導爆線の加熱試験(加熱率300キロワット毎平方メートル)を実施した。
 この結果、導爆線内部の爆薬が約200度を超えると、爆薬が分解反応を起こすことにより機能を喪失し、起爆されても爆薬により伝爆できなくなることを確認した(表2−3−1)。

(2) 後部アダプタ内の三次元ガス拡散解析
 ホルダBの溶融・破孔による後部アダプタ内への三次元ガス拡散解析を行い、導爆線の加熱率及び加熱率に基づく温度上昇を検討した。

1) 破孔面積の推定
 サーマルカーテンの加熱試験結果から、サーマルカーテンの温度上昇には、約13キロワット毎平方メートル程度の加熱率が必要であることを確認した。
 この加熱率を与えるような燃焼ガスの漏洩量を推定するため、三次元ガス拡散解析を行った。この解析結果から、破孔面積を25平方ミリメートルとした条件では、サーマルカーテンへの加熱率は、10キロワット毎平方メートル程度で安定することを確認した。
 このことから、実際のサーマルカーテンの温度上昇が発生するためには、25平方ミリメートル以上の破孔面積が必要であると推定する。

2) 導爆線の加熱率の推定
 導爆線の加熱率を推定するため、3次元ガス拡散解析を行った。解析の条件としては、25平方ミリメートルの破孔が維持された場合と破孔が拡大(100平方ミリメートル)した場合として解析を行った。
 破孔面積が25平方ミリメートルで維持された場合の解析結果から、後部アダプタ内の導爆線の位置によって加熱率は異なるが、システムトンネル近傍では1秒以内で数100キロワット毎平方メートル以上に上昇することを確認した。これは、システムトンネルを経由してSRB−Aの外に抜けるガスの流れが影響している。
 また、破孔面積が100平方ミリメートルまで拡大した場合、導爆線の位置にかかわらず、後部アダプタ内の導爆線の加熱率は、1秒以内で数100キロワット毎平方メートル程度に上昇することを確認した。

(3) 導爆線の機能喪失の可能性についての検討(まとめ)
 導爆線の実験結果及びガス拡散解析の結果から推定すると、ホルダBの破孔面積が25平方ミリメートルで維持された場合でも、そこから漏洩する燃焼ガスにより、数秒で導爆線が機能を喪失する加熱率に至り、その結果、導爆線内部の爆薬が分解反応を起こし、伝爆できなくなる。
 したがって、燃焼ガスの漏洩により、導爆線が機能を喪失したことからSRB−Aが分離できなかった可能性が高いと推定する。


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