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(1) |
故障の木解析(FTA)
ノズル内側からの加熱を頂上事象とするFTAを行った結果は、図2−3−6のとおりである。ノズル内側から燃焼ガスが漏洩する経路としては、次の2つの事象が考えられる。
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a) |
ホルダB/アウタパネルの損傷による漏れ |
b) |
ホルダA/ホルダBの結合部からの漏れ |
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(2) |
想定事象についての検討
ホルダB/アウタパネルの損傷による漏れの想定事象としては、ライナアフトB2の表面後退、またはライナアフトB2とホルダA/ホルダB間の接着層より燃焼ガスがホルダBに到達し、ホルダBが溶融・破孔し、燃焼ガスが後部アダプタ内に漏洩することが考えられる。
ホルダA/ホルダBの結合部からの漏れの想定事象としては、何らかの要因でライナアフトB2とホルダA/ホルダB間の接着層及びホルダA/ホルダB間の結合部に、燃焼ガスの漏れる経路が生成され、結合部のボルト孔、フランジ面から燃焼ガスが後部アダプタ内に漏洩することが考えられる。
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(3) |
ホルダB/アウタパネルの損傷による漏れについての検討
燃焼ガスがホルダBに到達する経路についての検証を行うため、サブサイズモータより小型の固体のモータを使用した加熱試験を実施した。
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1) |
ノズル温度センサ 近傍でホルダBが加熱・破孔する場合
ノズル温度センサ 近傍において、ライナアフトB2に表面後退が発生し、燃焼ガスがホルダBに到達し、ホルダBが溶融・破孔することにより燃焼ガスが漏洩することが考えられる。
この事象を模擬した実験結果から、ホルダBが溶融・破孔した場合の温度上昇は、実際のノズル温度 の挙動と一致しており、本事象が発生した可能性が高いと推定する。
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2) |
ノズル温度センサ から離れた箇所でホルダBが破孔する場合
ノズル温度センサ から離れた箇所で、ライナアフトB2に表面後退が発生し、ホルダBが溶融するとともに、アウタパネル/ホルダB間の接着層が軟化し、燃焼ガスが漏洩する経路が生成され、アウタパネル端部から燃焼ガスが漏洩することが考えられる。
この事象を模擬した実験結果では、ノズル温度センサ から離れた箇所(65 以上)では、アウタパネルの破孔及び接着層からの燃焼ガスの漏れは発生せず、ノズル温度の上昇もわずかであった。
このことから、本事象が発生した可能性はないと推定する。
なお、ホルダBの溶融・破孔を模擬した熱伝導解析の結果から、ノズル温度センサ から40 以内で加熱された場合、実際のノズル温度 の挙動と一致することが確認された。
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3) |
アウタパネルが破孔する場合
ノズル温度センサ から離れた箇所で、ライナアフトB2に表面後退が発生し、ホルダBが溶融・破孔するとともに、さらにその破孔した部分でアウタパネルも破孔し、燃焼ガスが漏洩することが考えられる。
この事象を模擬した実験結果では、約2秒間の燃焼ガスの噴射に対して、アウタパネルの破孔は発生しなかった。また、アウタパネルをあらかじめ破孔させた場合の実験でも、実際のノズル温度 の挙動と一致しないことが確認された。
このことから、本事象が発生した可能性はないと推定する。
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4) |
接着層への燃焼ガス流入によりホルダBが破孔する場合
ライナアフトB2とホルダA/ホルダB間の接着層に何らかの要因で燃焼ガスが漏洩する経路が生成され、流入した燃焼ガスによりホルダBが加熱され、ホルダBが溶融・破孔することにより燃焼ガスが漏洩することが考えられる。
この事象を模擬した実験結果では、ノズル温度の上昇が小さく、実際のノズル温度 の挙動と一致しないことが確認された。また、ホルダA及びホルダBの熱伝導解析結果より、ホルダBに比べてホルダAが先に融点に達して破孔するため、ノズル温度 の温度上昇よりサーマルカーテンの温度上昇が早くならなければならず、実際のテレメトリデータと一致しない。
このことから、本事象が発生した可能性はないと推定する。
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(4) |
ホルダA/ホルダBの結合部からの漏れの検討
何らかの要因でライナアフトB2とホルダA/ホルダB間の接着層及びホルダA/ホルダB間の結合部に燃焼ガスが漏洩する経路が生成され、結合部のボルト孔、フランジ面から燃焼ガスが漏洩することが考えられる。
この事象を模擬(Oリングの欠損)した実験結果では、結合部からの燃焼ガスの漏れはなく、ノズル温度の上昇は微少であった。また、燃焼ガスが結合部から後部フランジ内に流入した場合の解析の結果から、想定される燃焼ガスの最大流量は、10 /秒程度であり、サーマルカーテンの温度上昇に必要な流量に比べ一桁小さいものである。
このことから、本事象が発生した可能性はないと推定する。
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(5) |
燃焼ガスの漏洩経路についての検討(まとめ)
燃焼ガスの漏洩を模擬した実験結果等から推定すると、燃焼ガスの漏洩経路は、ノズル開口部のライナアフトB2の表面後退により、ノズル温度センサ の近傍(数十 の範囲)のホルダBに燃焼ガスが到達し、その熱によりホルダBが溶融・破孔し、その結果、後部アダプタにまで通じたことによるものである。 |