国の研究開発全般に共通する
評価の実施方法の在り方についての大綱的指針


第5章  研究開発課題の評価


  研究開発課題(国費により実施される特殊法人、民間機関、公設試験研究機関等にお ける研究開発課題を含む。)の評価については、上記共通原則に加え、それらの内容・ 種類に応じて、以下に掲げる通り実施するものとする。

  なお、研究開発課題の評価では、課題設定の評価と成果の評価が重要である。課題の 設定は、それによって研究開発投資の対象が決まり、我が国の将来に影響を与えること になる。また、成果の評価は、研究開発の目的が達成されたかどうかを判断することに なり、何れも国民が大きな関心を持つものであると考えられる。課題評価を行うに当た っては、このような重要性を特に認識することが適当である。

  いわゆる分布型メガサイエンス(注)や国際共同研究として実施される研究開発課題、 一定の目標の下に複数の省庁等が連携しつつ実施する研究開発課題群については、関係 国間又は省庁間等の連携・協力による、効果的・効率的な評価を行う必要がある。さら に、これらのうちで、複数の省庁等が連携しつつ実施する研究開発課題に関する推進方 策の在り方に係る評価は、必要に応じ、科学技術会議において実施することも考慮する。

  委託先や共同研究の相手先となる民間機関で国費の支出を受けて実施される研究開発 課題や、公設試験研究機関等で国費による支援を受けて実施される研究開発課題につい て、各評価実施主体は、評価実施上の共通原則を踏まえつつも、国費の負担度合い等も 勘案し、適切な方法で相応の評価を行うものとする。

(注)分散型メガサイエンス:参画が期待される研究者や活用すべき施設・設備、情報等が広範な地域、科学技術分野に分布しており、これらの有機的連携により効果的に推進し得るメガサイエンス。

1.競争的資金による研究開発課題の評価

  「競争的資金」による研究開発とは、一般に、いくつかの候補の中から優れたものを 競争的に選択し、実施されるものである。このような研究開発は、公募型が多く、課題 採択の審査がすなわち事前評価の役割を持つこととなるが、その一層の充実を図るもの とする。また、短期間又は少額のものを除き、事前評価に加えて中間及び事後における 評価の徹底を図ることも必要である。事後評価は、事前あるいは中間評価の結果をさら に評価することともなり、また将来、新たな課題の選択に当たっての有用な資料を提供 してくれる意義も有している。

  各評価実施主体は、研究開発課題の評価の結果を集約するなどにより、これらの課題 を包括する制度自体の在り方や目的、運用方針等の評価を定期的に実施し、制度そのも の、あるいはその運用等の適切さを判断するものとする。なお、その際には、評価者に 外部有識者も加えるとともに、できる限り国民各般の意見を反映させることが必要であ る。

2.重点的資金による研究開発課題の評価等

  「重点的資金」による研究開発は、各種のプロジェクト研究などをはじめ、国が定め た明確な目的や目標に沿って重点的に推進されるものである。こうした研究開発課題は、 用いられる資金の額が他に比して高額のものも少なくなく、慎重な評価が求められる。 また、評価者の選任は、機密の保持が必要な場合を除いては、本指針に定める評価実施 上の共通原則を踏まえたものとする必要がある。
  特に事後評価は、事前評価や中間評価の適切さを判断することになるとともに、国民 の関心も高いと考えられるため、その結果は、類似の課題の事前評価をより適切に実施 するために有効に活用される必要がある。

  重点的資金による研究開発課題の中で大規模なものについては、特に、全体の研究開 発の在り方、研究開発推進計画等の評価を定期的に実施し、研究開発の進め方の適切さ を判断して、研究開発の継続の判断、見直し等に反映させるものとする。その際、評価 者に外部有識者を加えるとともに、できる限り国民各般の意見を評価に反映させること が必要である。

3.国を挙げて実施するメガサイエンス等の特に大規模かつ重要なプロジェクトの評価

  例えばメガサイエンスといわれるような、多額の財政支出を伴う特に大規模かつ重要 なプロジェクトについては、評価の客観性・公正さをより高めるため、研究開発を実施 する主体から独立したかたちで、外部専門家及びその他の外部有識者によって構成され た組織による評価を実施することが必要である。また、プロジェクトの内容、計画等に ついて社会への周知を図り、できる限り早い段階から、広く国民の意見を評価に適切に 反映させるものとする。このようなプロジェクトに関する推進方策の在り方についての 評価を、プロジェクトの内容如何によって、科学技術会議において実施することも考慮 する必要がある。

  個々のプロジェクトについては、国際協力であればその点にも配慮しながら、研究開 発期間を具体的に設定するとともに、その内容に関し、科学的・技術的観点からの分析、 緊急性、費用対効果、資源配分のバランス、社会的・経済的ニーズ等の観点から特に厳 正な事前評価を行うものとする。また、3年程度毎の期間を目安として、計画・進度の 妥当性の中間評価を行うとともに、事後評価によって、研究開発の達成度の把握、研究 計画の妥当性に関する考察と反省を行い、将来に資することが必要である。
  なお、これらの評価に当たっては、できる限り多くの客観的なデータを基に厳格に評 価することとし、その評価結果を、プロジェクトの継続の是非を含め、目的、目標、手 法、研究資金・人材等の研究開発資源の配分などの見直しに的確に反映させるものとす る。また、評価経過や評価結果等を含め、研究開発全般の内容及び成果については、国 民にわかりやすい形で公表するなど、積極的に情報提供を実施するものとする。

4.基盤的資金による研究開発課題の評価

  「基盤的資金」による研究開発とは、人当研究費(注)等により実施される経常的な 研究開発を指す。これらの研究開発についても、適切な評価が行われるべきであること は当然であるが、これらの研究開発は一般に小規模、かつ基礎的・基盤的な研究であり、 将来の研究開発の芽を生む多くの可能性を秘めている。したがって、こうした研究開発 課題の評価の在り方としては、研究者による論文発表等を通じた学会等における評価や 研究者自身による自己評価、あるいは研究開発機関自身が、その具体的な設置目的に照 らしてこれら課題について行う評価などを基本とするとともに、必要に応じて機関評価 の対象に含めることにより、その実を上げることが適当である。

(注)人当研究費:研究者一人当たりの経常的な経費の単価を定めている研究資金



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